たこせんと蜻蛉玉
尾崎英子
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刊行日 2022/06/22 | 掲載終了日 2022/06/22
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内容紹介
小学5年生の息子・柊にはイマジナリー・フレンドがいる。いつからか学校には行かず、ベランダで”ネム君”と会話をしたり、UFOを探したりする日々だ。夫をがんで亡くし独りで柊を育てている宇多津早織は、夫が結婚前にがんを患っていたことを黙っていて、再発して亡くなったことに今もわだかまりを感じている。家に夫の気配のするものはなにも置いていない。
早織には、忘れられない恋があった。淡路島で過ごした高校時代、美術部の同級生・沢井文也。文也の幼なじみ・雨谷尚美も彼に思いを寄せていて、文也が早織にくれた蜻蛉玉を見て激怒した雨谷は、教室の窓から飛び降りた。大けがを負った雨谷、引っ越していった文也。
許せない思いを抱えたままの早織は、25年の時を経て、雨谷と偶然再会する。そして文也ともSNSを通じて再会。失ってきたものたちとようやく向き合えた早織は・・・・・・
母でなく、妻でなく。 ”役割”から自由になったとき、一人の女性が抱える思いを眩しく描いた傑作長編。
出版社からの備考・コメント
書影はダミーです。実物とは異なりますのでご注意ください。
おすすめコメント
繊細な息子を持つシングルマザーの生きる道。生きづらい世の中で、それでも自分の大切な気持ちに向き合う姿に、女性たちの共感を呼ぶ作品。
繊細な息子を持つシングルマザーの生きる道。生きづらい世の中で、それでも自分の大切な気持ちに向き合う姿に、女性たちの共感を呼ぶ作品。
販促プラン
書店の皆さま
初回指定のご希望がございましたら、
光文社書籍販売部 近藤、川原田までご連絡ください!(☎03-5395-8112)
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出版情報
ISBN | 9784334914738 |
本体価格 | ¥0 (JPY) |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
信頼し裏切られた想いが強い程
その想いが自分を縛っていく。
確かに喜怒哀楽の少ないニュートラルな
強さというものもありますが
自分を縛っていたものの正体に気づき
自分も他人も許し認められた時ほど
感動を得られる機会もない。
恨み辛みは対流し周囲にも影響を及ぼす
のですが多幸感もまた同じ道を辿る。
目の前の小石が相転移した地中の
マグマなのと一緒で
誰かの想いは巡り巡っていく。
ならば何を巡らせたいのかを
少しでも考える余裕があれば
自ずと答えは決まって来る。
昭和の終わり頃結婚して子供が出来ました。この時期Iに心臓の難病拡張型心筋症の疑いを指摘され、悪化した場合は突然死のリスクがあるのを把握しました。妻はどこまで理解してたか知りませんが、IT系の仕事にある程度自信があり資格があったので突然死しても妻が困らないように、妻の実家の近くに強引に転職しました。予想通り数年後体調不良が起きて大学病院で病名が確定しました。結構強引な転職だったので決して順風満帆の会社人生じゃなかったですが、あのまま東京で仕事して突然死したら妻や子供がこんな状況になったと感じました。病気は悪いばかりじゃなくて新しい出会いもあります。大学病院の心臓エコー室で出会ったご一家、奥さまが発病したのに続いて、子供さん2人が続いて発病、不幸の星に生まれたと思いこんでましたが、自分の与えられた環境でしっかり生きるを教えていただきました。この本もそんな感じです。最後の誤字が気になって。P43で看護婦さんの検音→検温ですよね。
小5の一人息子と暮らすシングルマザーの早織。
自分と同年代の母親である早織の現在と過去。
私とは全く違う人生を生きているのに、日常の些細な、なんてことのない風景をくっきりとした輪郭で描いてくれていて、本当にちょっとしたディテールに共感しまくる。
母親として未熟ながらももがいてバタバタしているわたしたちと、青々しく不器用にしか人と関われなかった高校生の頃のわたしたち。
どちらも同じ延長線上にいる私たちであって、同じように悩み苦しみながら一生懸命生きてきたよね、って肩を抱いて讃えあいたくなる。
手に入れたかったもの、手に入れられなかったもの、手にしているのに気がつかないもの、そういうものたちをようやく手放せるくらい大人になった私たちがやっと手に入れた、赦しの物語として読みました。
読み終えた今、タイトルを見ただけで胸が締め付けられます。
女として母として1人の人間としてのもどかしさや生きずらさなど、読んでいて心が抉られました。
眩しすぎるほど好きだった人の思い出は消えることはないけど、大人になってしまったら霞んでしまうものですよね、特に本人に会ってしまうと。相手が変わってしまったとか悪いとかではなくて、分かってしまう。同じような経験があったので、めちゃくちゃ感情移入しながら読んでしまいました。
そして女友達との友情。こっちの方が変わらない気がします!
キラキラと眩しく切ない思い出と、どんよりとした現実。それらをひっくるめて子供と生きていかなければならない!とキラキラを取り戻した主人公をみて、自分も頑張ろう!頑張れる!と思えるような素敵な作品でした。ありがとうございました!
いい作品に出会えた!
号泣してすっきりしたわけでもなかったが、共感し心が動いて前を向ける作品でした。
それぞれの日常描写や、心情描写がとてもリアルに描かれていました。
こういう生きづらさあるよね、こういう過去ってあるよねと共感しました。
この作品を手に取るのは女性のほうが多いのかもしれませんが、ちょっと生きづらいなと思っている男性にもおすすめしたいです。
自分の世界を狭くしないで、枠外の空を見上げながら、それぞれの薔薇が咲きますように。
許したくないほど忘れたくないなにか、ずっと抱え続けてしまうわだかまりは、多少の深刻さは違っても誰もが身に覚えがある感情ではないだろうか。信頼していたからこそ、突きつけられた“死”が途方もなく辛く悲しく、うまく乗り越えられないから存在をなかったことのようにする。それにより、息子に対しての罪悪感が拭えない。
ベランダから見えるスカイツリーが見守る中、劇的ななにかが起きるわけではないけれど、シングルマザーの早織が周囲から貼りつけられる記号のような役割を消化しながら、息子の柊と向き合うまでが瑞々しく描かれています。
忘れられない恋。
手に入れられなかったからこそ、いつまでも輝き続けてしまうことってある。
今、目の前にある問題がどうしようもなくもて余す時、ふいに思い出すのかもしれない。
もしも、こうであったならと。
亡くなった夫や過去の出来事を赦せない早織にイライラしてくるのは、私にも似たところがあるからなんだろう。
そして、こうでなくてはならないと皆、何かの役割を知らず知らず担っていることに気づかされる。
人を赦すということは、自分の為にすることなんだな。
誰にでもある初恋の思い出。その思い出がもし、誰かによって突然に絶ち切られたものだったとしたら…。ずっと忘れられないものになってしまうだろう。誰もが密かに持っている甘い苦い思い出。その思い出を共有できる、そしてその思いを断ち切ることになった友人との思いがけない再会。そこから彼女の時間は動き始める。亡き夫への思い、学校に行くことができない息子への思い、初恋の彼への思いそして、再会した友人との新たな関係。交錯する過去と現在。彼女を通して、過去の初恋の胸がギュッとなる思いに共感し、現在の女として母としての思いに切なくなる。誰もが通り過ぎてきたこれは、鎮魂と再生の物語。
高校時代の友人、初恋の人、病死してしまった夫、不登校の息子…
色んな人との確執を、大人になってからでも乗り越えていけるのだと教えてもらった。時が経っていても、「いまさら…」と思うことはない。何も遅いことはない。ずっとわだかまっていたものが浄化されるようなお話だった。
一人息子柊の不登校の問題を抱えつつも、シングルマザーとして小学校の夏祭りの役員も引き受けた早織。淀んだ日常にも、日々の動きはあって、自分の役割を嫌でもこなさなければならない重圧。そんな折に25年ぶりに、許すことのできない疵を作るきっかけになった高校の同級生雨谷と再会する。忘れることのできない、瘡蓋の下で膿と体液のじくじくとした熱がぶり返す。忘れられない恋の、突然の別れの緒である雨谷との葛藤。恋い焦がれた文也との細々とした糸の端がうずうず揺れる。外側からでは決してわからない物事の熟成や成長が、バラのエピソードに結実していて、シンボリックな印象を残す。何かがきれいに片付くことなどないかもしれない。でも、昨日の自分から1㎜でも変わらない日なんてない。思い出したくない過去を葬り去るのではなく、きっかけにできればいい。それも含めての自分だと気づけたらいい。「たこせんと蜻蛉玉」……青春と恋の日々を今早織はようやく抱えられたのだと思う。
甘酸っぱい思い出と一緒についてくる、チリチリした痛み。そんな誰でも持っているあの頃の回想がヒラヒラと差し込まれながら、「今」を懸命に生きるシングルマザーの物語が綴られている。問題を抱える息子を時には許し、時には憤りながら、雨谷と再開したことで、消化しきれてなかったあの頃のざわめきが、今また主人公を翻弄する。
蜻蛉玉を通してみる青春の海はどんな色だろう。
母として、女性として、まさにリンクする年代でもあるので、心情に共感しながら読破!おススメです。
不登校の息子・柊と暮らすシングルマザーの早織。彼女には忘れられない恋があった。
東京での現在の暮らしと、20年前、淡路島で高校生だった頃の物語が交互に語られる。
高校時代の恋は甘くて、きゅんときた😍
その分、その後に起きたことが重い。
どうしても許せないことって、ある。
「たこせん(たこ焼きを挟んだお煎餅)」って初めて知ったけど、関西の方には馴染みがあるのでしょうか。
確かに初恋の君と食べるのには向かなそう🤭
ヴェネチアの蜻蛉玉の思い出がきらきらしていた。思い出はきらきらしたままの方がいいのかな。
20年前の初恋の人。インスタで見かけたら、自分ならどうするかな、と想像してしまった🙈
息子の柊くんも素敵な子だった。その感性を、いつか生かせる時が絶対にくる。
期待以上に好きな話で、楽しめました。
作者と私の世代が近いからだろうか。
現在進行形の子育てと生活の描写も、とっくに過ぎ去った(故におそらく少しばかり実際より美化されてる)学生時代の記憶の描写も、肌触りや温度まで伝わってきそうな切実さがあり、読んでいて胸が締め付けられた。
取り戻せない過去、ままならない現在、もしかしたらそんなに悪くないかもしれない未来。どこまでも解像度高く、私たちの日常に寄り添ってくれる作品。
日々の生活に追われて息切れしかけてるアラフォー女性には特に沁みる小説です。
不登校の小5の息子を抱える
シングルマザーの早織、42歳。
息子はイマジナリーフレンドのネムくんと、ベランダに居住空間を作ってUFO観察に余念がない。
なかなかユニークな息子君。
早織の夫は5年前に病死したのだが、
その時に受け入れられない出来事があり、
死後、籍を抜いた。
早織は父の存在を消している自分の行動から、息子に少し負い目を感じている。
さらに、早織の心の中には高校時代の、
忘れられない恋が燻り続けていた。
彼、なのではないかと思われるインスタを眺める日々。
ある日偶然、卒業以来の同級生と再会する。
同じ人が好きだった彼女とは辛い思い出がある。
まず、色々な要素が散りばめられ、
これらのピースが再会をきっかけに動き始めます。
甘酸っぱい青春時代の思い出。
現在の現実。
時を経て、全ての今が見えた時に早織が出した答えとは…
忘れられない人をインスタで見つけてしまったら…
早織の心情がスッと心に入ってきて、とても読みやすく、素敵な作品でした。
読み終わったあとにジワリジワリと感情が揺さぶられてきます。
不登校の子どものこと
職場での人間関係
大切なことを伝えずに逝ってしまったパートナー
在りし日の初恋
すべてが読後にブワっと押し寄せてきます。
自分もたまにはこれまでの人生を振り返ってみたくなりました。
しんみりとした人間ドラマを読みたい人にオススメです。
たこせん、大阪近辺ではありふれた食べ物なのだろうか。本書では淡路島なのだが、たこ焼きをせんべいで挟んだ食べ物、高校時代の懐かしい思い出の象徴のように描かれる。蜻蛉玉は短く淡い、でも生涯を貫きそうな恋の切ない象徴。ベランダ大好きで不登校の息子イマジナリーフレンド。亡き夫が病を隠していた、という思いから彼が亡くなったあとも許せない気持ちを抱える妻。ふとした出来事から淡路島時代の友人との再会。。。。たくさんのテーマがあって少し気持ちがついて行けなくなるところも正直あったのだが、それぞれがとても刺さり、不思議に心に残り続ける作品だった。