忘れられたベストセラー作家

文学史に名を刻む、森鷗外、夏目漱石、島崎藤村、志賀直哉、芥川龍之介、川端康成、……

しかし、「文豪」と崇められる大作家よりも遙かに「売れた」作家は数多くいた！

菊池幽芳―『己が罪』、『乳姉妹』／矢野龍渓―『経国美談』、『浮城物語』／菊亭香水―『惨風悲話　世路日記』／東海散士―『佳人之奇遇』／村上浪六『当世五人男』／村井弦斎―「道楽」シリーズ／徳冨蘆花―『不如帰』／半井桃水―『胡沙吹く風』／渡辺霞亭―『渦巻』／木下尚江―『良人の自白』／田口掬汀―『伯爵夫人』／小杉天外―『魔風恋風』／小栗風葉―『青春』／島田清次郎―『地上』／江馬修―『受難者』、『山の民』／倉田百三―『出家とその弟子』／白井喬二―『富士に立つ影』／大佛次郎―「鞍馬天狗」シリーズ／尾崎士郎―『人生劇場』／小島政二郎―『人妻椿』／島木健作―『生活の探求』／火野葦平―「兵隊」三部作／大迫倫子―『娘時代』／石坂洋次郎―『青い山脈』／田村泰次郎―『肉体の門』／富島健夫―『おさな妻』／吉田絃二郎―『清作の妻』／原田康子―『挽歌』／源氏鶏太―『三等重役』………など

彼らはどうして人気作家となり、なぜ「忘れらて」しまったのか？なぜ文豪は売れなくても文豪になれたのか？

明治から昭和までの人気作家たちの悲哀に迫る、もう一つの文学史。

＜編集者コメント＞

“文豪”よりも愛されていた、流行作家たちの肖像

「文学は売れない」という話、よく聞きます。教科書に載っているような「文豪」たちも、何万部も売れるような人気作家だったわけではありません。

森鷗外、夏目漱石、島崎藤村、志賀直哉、芥川龍之介、川端康成、……。文学史を紐解けば、必ず目につく「文豪」たち。一方で、時代の寵児・出版社の救世主であったはずが、歴史に消えてしまった「人気作家」たち。この本で紹介する作家たちの本は、今ではほとんど書店に並ぶことはありません。

　文学史や全集からは外される作家にどんな人物がいたのか、なぜ文豪をしのぐ人気を得ていたのか、それなのに今やどうして忘れられた存在なのか。

　著者は、博覧強記で知られ、『久米正雄伝―微苦笑の人』、『里見弴伝―「馬鹿正直」の人』など日の当たらない作家の評伝もモノにしてきた小谷野敦さんです。小谷野敦さんが描く、「忘れられた作家」たちのもう一つの文学史。あなたの知らない文学の別側面が見つかります。