水を縫う

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刊行日 2020/05/26 | 掲載終了日 2020/09/30

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内容紹介

松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。

学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、かわいいものや華やかな場が苦手な姉のため、ウェディングドレスを手作りすると宣言するが――「みなも」

いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。そんな時、母が教えてくれた、子育てに大切な「失敗する権利」とは――「愛の泉」ほか全六章。

世の中の〈普通〉を踏み越えていく、清々しい家族小説。


松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。

学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、かわいいものや華やかな場が苦手な姉のため、ウェディングドレスを手作りすると宣言するが――「みなも」

いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。そんな時、母が教えてくれた、子育てに...


出版情報

発行形態 ソフトカバー
ISBN 9784087717129
本体価格 ¥1,600 (JPY)

NetGalley会員レビュー

お姉ちゃんの結婚式
娘の結婚式
孫の結婚式
家族みんなが 長女の結婚式に向けて、
幸せを願い、
長女の幸せのためにと
良かれと思ってやり始めたことが
それは 自我の押し付けだったと
気付く。

わたしも分かるよ 母だもの。
子供に普通に幸せになって欲しい。
普通に… 普通って何が普通で
その子にとっての 何が正解の人生で、
何が 失敗の人生なのか。
そして、母親である自分は 失敗じゃなかったって言えるの?

自分の自我を家族に押し付けることは
その人の幸せとは違うんだって
気づいたとき、
バラバラだった家族が
長女の結婚式に向けて
足並みをそろえていく…。
泣けるだけじゃなく、テンポの良い言い回しや、
クスッと笑えるセリフ、
わかるわかる!って共感できる
母親の本音に、
スラスラと読めました。
楽しかったですし、
清々しい読後感です。

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『らしさ』とは何と窮屈でままならないものなんだろう。「男らしく」「女らしく」「父親らしく」「母親らしく」…。家族の中にあってもそこからはなかなか抜け出せず、家族だからこそ抜け出せず藻掻くもどかしさが、「自分も知っているもどかしさ」だと思いました。清澄の苛立ちと諦めが綯い交ぜになったイライラは知っている。
水青の、どうしようもない嫌悪が伝わらない苛立ち、伝えたいけど言えない苦しさも、やはりそう。
寺地先生は「あ、この感情は知っている」と思うような、誰もが心の片隅に持っているものを掬いとって見せてくれる。
そして、そのもどかしさや苛立ちが、ドレスの完成と刺繍の完成でスッキリと浄化され、清々しい読後となりました。

水青と清澄、同じように祈りを込められた名前は美しく、この『水を縫う』というタイトルはピッタリだと思います。

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個々の物語でありながら家族の物語でもある。
女や男、時代にかけられた呪いの話でありながら、祈りの話でもある。
他者を理解しがたいと思いながらも分かち合いたいと思う、人の内包する相反する感情を「個と家族」を通じて描いている作品。
登場人物たちは家族ではあるが、お互いのことを理解しているようで理解できないでいる。それが長女の結婚を機にそれぞれの中にあるわだかまりを解いてゆく。
1人称で綴られているのでその人物の視線でしか見ることができず、最初は物語のテーマがよくわからなかったが、読み進めていくうちに、それぞれの物語が重なり、大きな物語を作っていく。物語の構成自体がまた家族を作っている。いつの間にか登場人物にエールを送っている自分がいた。ぜひその感覚を味わって欲しい。

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まず、タイトルから素敵。本文中の川の水面の煌めきをとどめたい気持ちの現れか。
ここに描かれているのは、世の中の「普通」からちょっとだけ外れた家族プラスアルファ。
姉の結婚のためのドレスを巡って、それまで心の底に沈めていた気持ちが浮き上がり、それぞれの想いがはじけ飛ぶ。
でも、嫌な方向へは転がらない。綺麗に収まるというのではないけれど、うん、そういうのも有りだよね、と認め合える感じ。
ドレスに使われたガーゼの肌触りを思わせる柔らかい読み心地です。ぜひともゆっくり撫でるように読んでほしい。

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静かに流れる水のような物語でした。

好きなものを好きという
ただそれだけのこと。
難しく考える必要などない。
自分からがんじがらめになって
汚い水の中で溺れる必要などない。
いつでも息はできるのだと
キレイな水は、
すぐそこを流れているのだと
そう教えられた気がしました。

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男が裁縫や刺繍が好き、というと同級生からはコレなの?と顔の横に返した掌を添えた仕草をされる。…アホらし。僕に手芸の楽しさを教えてくれたのは祖母だ。そんな祖母は僕がドレスの作りや型紙に興味を示すと「お父さんに似たんやな」という。「父さんに似ている」はこの家では禁句だ。僕が小さな頃に出て行ってしまった父さん。今は殆ど会うことはない(とはいえ、お互いの近況は毎月養育費を持ってきてくれる黒田さん伝いに知っている)。
祖母と母と姉と僕の暮らし。その暮らしももうすぐ変わる、姉が嫁ぐのだ。
その姉が挙式で着るウエディングドレスを僕が作ることになった。祖母と…父の力を借りて。

うーん、やはり前評判や帯情報?は入れない方が良かったなーと思えた作品。人によって受け取り方は違うのだからとこれまでも学習してきたつもりだけど、期待してしまうよね。期待通りに読み終えられたのなら良いけれど、今自分が生きている現実と重ねてしまうからなのか、こんなに清らかな?というか、純粋だったり、他を思いやれる人達ばかりの集まりなんであるかね?と思ってしまう。それぞれ結構な心の傷を負っているのにだよ。ちょっとキレイすぎないかなーなどと。

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祖母と母と姉の水青と暮らす清澄は手芸、特に刺繍が好き。母は子供達に普通であることを求める。そもそも普通って?祖母は子供の頃から女だからと我慢させられたことに、姉は可愛いと言われることに疑問をもつ。清澄が姉のウエディングドレスを作ると宣言したことから家族のそれぞれの殻が破れ始める。不在の父が姉弟につけた名前の意味。「動き続けてほしい。流れる水であってほしい。」ドレスは父が仕上げたが清澄はそこに施した刺繍はまさに「水を縫う」。寺地さん初読みだったがすごく良かった。

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