漂流都市

「ギキョウダイ」という作品をたまたま読んでいた作家。確か家電販売店での勤務があると何かにあり、それで興味を持って前作「裏家電」を読んだ。
大型家電販売店は、多くがメーカーからの派遣社員で構成されているが、全員社員を売りにしているところもある。いずれにせよ、価格以外のアピールポイントがないと生き残れない。
そこを書いたのがこの作品。
職業小説は仕事柄興味があるが、ちょっと違ったファンタジーなので、もっとお仕事の裏側を突き詰めて欲しかった。

前作の裏家電より私は今作の方が好み。得体の知れないK市の不気味さが読む者を惹きつける。そのトップ層に位置する轟家電が高齢者たちを飲み込んでいく様に圧倒され、内部の秘密をもっともっと知りたくなる、、それは、この街に売られてきた人々も謎めいたK市の秘部を覗きたくなるのと同様だ。そして最後の赤い冷蔵庫まで行き着いた時に、、いつの間にかあちら側の人間となってしまう不条理！面白かった。

漂流都市/嶋戸悠祐 講談社

ー　これは日本の将来を写したディストピア　ー

東北にあるＫ市。その五十万人の巨大都市には家電量販店は｢轟電器｣のただ1店舗のみ。
有名家電チェーンが進出しても軒並み撤退を余儀なくされる裏に何が隠されているのか？

東北にあるＫ市。身寄りのない貧困な高齢者たちを全国から受け入れ、最高の福祉環境を
整えている全国でも類を見ない都市の裏に何が隠されているのか？

東北にあるＫ市。闇金などの借金で首が回らなくなった債務者が、真面目に働ければ
高額の借金も数年で返済できるという話がある。その裏に何が隠されているのか？

同じ事象を表と裏から描くところや、人の裏面のどす黒さを描いたホラー寄りのサスペンス。
鳴戸先生の魅力が抜群に発揮され、前作「裏家電」をはるかに超える面白い作品だったと思います。
近未来SFのディストピアを感じさせるスケールの大きな結末に驚愕し感動しました。
素敵な物語をありがとうございます。

#フタバ図書 #読了 #NetGalleyJP

K市に移住してきた老人たちとそこに流れ着いた多重債務者たち、
K市に潜む事実が見えてくるに従って、極端ではあるが、
この先、ひょっとすると起こりうるかもしれないと思うようになりました。
超高齢社会をターゲットにした闇のビジネスに手を貸す人たちの姿がリアル。

なぜ驚異の高齢者率85%を誇るK市で轟家電一強の状態が続いているのか、その謎に迫るミステリで、明らかにされてゆく巧妙に仕込まれたロジック、そこに絡め取られてゆく先に待っていた結末には慄きましたけど、知ってはいけない、関わってはいけない、気づかれてしまったらもう逃れられませんね…。

一見、どこにもありそうな地方都市であるK市。
しかしそこには全国チェーンの家電量販店は出店ができない。
轟電器というローカルな店が異様な販売方法でK市の市民を囲い込んでいるからだ。
その異様な販売方法とは？

グイグイ惹かれます。
K市に何が起きているのか、轟電器の最終的な狙いはどこにあるのか、悪夢の中に迷い込んだような五里霧中、思いもよらぬ方向からジャブが飛んできて目が離せない休む間も与えてくれない一気読み必至のサスペンス小説。