呼人は旅をする
長谷川まりる
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刊行日 2024/10/29 | 掲載終了日 2024/10/31
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内容紹介
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呼人は、なにかを寄せてしまう
動物や、虫や、植物、自然現象
だから、ひとつの場所にとどまらず、
旅をする
「呼人」とは、なにかを引き寄せる特殊体質。原因は不明でごく少数だが一定の割合で発現する。
政府機関によって認定され、生活に制限がある。5人の呼人と、呼人に関わる人たちの姿から、
社会の中で少数であること、そうした状況で生きるというのはどういうことか、を描く。
人とちがうこと、それでも隣りあって生きること
最注目の児童書作家の一人、長谷川まりるによる
痛みと希望の連作短編集。
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「……真帆ってすごいね」
「なにが?」
「あたしの目の前で、自分は恵まれてるって、はっきりいうなんて」
真帆は首をかしげた。
「だってそうじゃない? くいなは自分で選んでないのに旅をしなくちゃいけなくて、わたしは旅をするかしないか、好きに選べる。それってわたしが恵まれてるってことだよね?」
(本文より)
おすすめコメント
◆作者 長谷川まりるさん コメント
六つの短編のうち、最初に書いたお話は、実家に里帰りしているときに思いつきました。
「このへんのたんぽぽ、抜いといて」と言われた私は、がんばって裏庭の一帯を草むしりしました。たんぽぽの黄色をすべて拭い去り、
やったぜ、と満悦していた二日後。おなじ場所を通りかかると一帯がたんぽぽの黄色一色になっていて、恐怖したものです。
家の人には「まあね。たんぽぽは悪だから」と言われ、私はそれ以降、たんぽぽを見るとおそれをなしてしまいます。つづみと一緒です。たんぽぽはかわいくない。ぜんぜん。
願わくば、この物語を読んだ人が、呼人のような人たちの存在に少しでも気がつくきっかけになれば幸いです。
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本作では、「呼人」という架空の特性のある人たちのエピソードを通して、マイノリティであること、
社会にある障壁、周囲との齟齬とそれを乗り越える瞬間を描いていきます。
自分とは異なるだれかの存在に気づく、きっかけになるような物語です。
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【著者紹介】
作 長谷川まりる(はせがわまりる)
長野県生まれ東京都育ち。『お絵かき禁止の国』で講談社児童文学新人賞佳作、『かすみ川の人魚』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。作品に『満天inサマラファーム』『キノトリ/カナイ 流され者のラジオ』『杉森くんを殺すには』『砂漠の旅ガラス』などがある。
装画 mame(まめ)
インスタのフォロワー13万人の人気イラストレーター。近刊に『東京ひとり暮らし女子のお部屋図鑑』。
販促プラン
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【プレゼント要項】
●レビューをご投稿くださった方の中から抽選で5名様
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出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784037274801 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
ページ数 | 254 |
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自分の意思に関係なく、雨、タンポポなどを呼び寄せてしまう「呼人」は、一カ所に留まることができない。そんな彼らが悩み、偏見に晒され、でも巡り会う人と心が繋がる瞬間がある。そんな時の心の機微にはっとする短編集。
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「呼人」だって普通の人と変わりはない。皆と同じ心を持ち同じ様に感じる。子どもから大人まで、トランスジェンダーだっている。
ただ、「あるものを惹きつけてしまう」ことで人々の暮らしや自然に迷惑をかけてしまわないように、1箇所に留まるのを避けているだけ。そんな「呼人」たち、それも小学生でさえも自分の生き方に「諦観」している様に、同情もさることながらもその寂しさに寄り添いたいと感じた。
でも、そんな彼らの心中を察しない人。偏見に囚われた人。そんな人々の中にいたら、彼らだって心がぶれることもある。自分の思いをぶつけたくもある。弱さに挫けそうにもなる。
でも、そんな様々な人と関わる中で、相手と心が繋がることもある。「なんて素敵な雨の日日和」と笑い合えた時雨としぐれ。「いい経験をした」と受け入れるつつみの父。柚子への告白を未来に託すツトム。 更には自分から「呼人」を理解し手を差し伸べようとしている小林。
そんな相手と必ず出会えるから、「呼人」は旅を続けるのだろう。
そして、最終話でくいなが至った心境に言葉もなかった。くいな達にとても大切なことを教えてもらった気がした。私達は「定住」していると言ってはいるが、色々な人と会い対する。そんな時こそ、永遠の旅人たる「呼人」のスタンスが意味を持つのだと。
根無草ではなく、自ら旅を続けていく「呼人」達に、場所ではなく心の幸がどうか訪れますように。
呼人になった本人と支える人。
両者の視点を通して、私たちの受け入れる心が広がっていくことでしょう。
自分が呼人と認めたくないツトムがすでに呼人になった人と話をして、ハッとさせられる場面があります。
呼人になったのかを憶測で言うことは、呼人全員にも広がっていくことがあること。
そして、呼人に対して興味本位な人に対応するアドバイスは心強く
この出会いがこれからツトムの支えになっていくと感じました。
児童書ではなく、新しい哲学書です!
タイトルからは全く想像できないお話だった。(あらすじを読んでいなかったので)
不思議と、もしかしたらそういうこともあるかもしれないと思えるお話で、読んでいてとても気持ちが良い文章だった。
本人や周りの葛藤、(この場合は独自のものがあるけど)誰でも何かのきっかけで自分が全く別のものになってしまったと感じることはあるから、それぞれの気持ちに思い当たる節はあるのではないかと感じた。
これからも折に触れて「呼人」のことを思い出しそうな気がする。
呼人とは何かを呼び寄せる人のことだ。それは雨だったり、タンポポだったり、鹿だったり、男だったり、鳥だったりと人によると何を対象になるかは違う。原因は不明。だが呼人になると、まともな生活はできない。場合によっては、各地を転々としなくてはならない。人は自分たちと違う者を差別しがちなものだ。例え肉親だったとしても、そう言う人はいる。この物語はちょっと極端だが、ほんの少しの違いをみつけて差別をしたがる人もいる。「みんな違ってみんないい」の心境にはなれないのだろうか。
ガツンときました。最高です。児童書として子ども達に読んでもらい、沢山考えてもらいたいのは勿論ですが、是非大人読者にも大勢読んでもらい、色々考えてほしい。いや読みましょうよ大人こそ。だって、子どもから見た大人への意見も沢山書かれていて、子を持つ読者の1人としてめちゃくちゃ考えさせられました。
呼人、という存在にファンタジー好きとして、ついついワクワクしてしまう気持ちがあったのですが、いざ読み出すと頭に浮かぶのは様々な差別や偏見のリアルさでした。部落差別問題で、いわれなき差別を受けていた人達の中に、興行で渡り歩いていた人達もいること。視力障害を持つ人達が昔、按摩として渡り歩いていたこと…そう言った定住出来ないさせてもらえない人達と重なるところがあり、この作品はものすごく考えさせられ、読み返し甲斐がある作品だと唸りました。正直、娘が大きくなったら読んでほしい。
呼人である彼らが様々な人と出会い、互いに何かに気づいたり考えたり、一歩踏み出せたりする姿が美しかったです。はやくハードカバーを手に取りたい。
雨女、雨男。
何気なく口にしている言葉。
その時の状況を思い出してみて、何も考えていない自分。
現実の世界では、タイミングの問題で誰しも言われるかもしれない言葉。
マイノリティとしての呼人を表現する最初に、この言葉を選んだ作者の意図。私なりによく理解できました。
本当に自分ではどうしようもできないことで、周りから特別な扱いをされる理不尽さ。疎まれる寂しさ。同情される惨めさ。ずっと旅を続けないといけない辛さ。
色々な状況の呼人たちの話だけではなく、その世話をする側の話が間にあって、現実味を加えているストーリーとしての面白さ。
今までに余り体験したことがないお話で実質二晩で読んでしまいました。
感想を書くまでに1日近く時間が経ってしまいましたが、見返すことなく書くことができたことで印象の深さを感じています。
楽しくて考えさせられる物語でした。ありがとうございました。
今年初めてビブリオバトルの観覧に行ったのですが、そのチャンプ本が長谷川まりる先生の『杉森くんを殺すには』でした。
タイトルの衝撃と紹介がとても素晴らしくてすぐに作品を読みましたが、児童書とは思えないほどの衝撃を受けました。
それは今作も同じで、大人にこそ読んでほしい物語だと思います。
呼人はなにかを寄せてしまう。人によってなにを寄せてしまうかは違います。
だから一つの場所には留まれず、ひとりひとり滞在期間も異なるがそれぞれ旅をしながら暮らしていています。
なんの原因があって呼人になるのかは分からず、未成年であっても旅をしなければならないのです。
もし呼人が訪れたら、もし家族が呼人になったら、もし自分が呼人になったら。いったいどう受け入れたらいいのか、どう声をかけたら良いのかとずっと考えながら読んでいました。
第一話の「スケッチブックと雨女」で「人とちがうということと、たくさん我慢をしても仕方ないということは、ぜんぜんべつの話だと、先生は思います」この言葉がとても印象に残りました。圧倒的多数の呼人でない人の声に流されずに、少数派の声を受け入れ人と違っても誰もが我慢しなくてもいいという社会のほうが生きやすいのではないではないかと思います。
なにかを寄せて旅をする呼人たちの物語のなかには素敵な出会いもあります。
旅をする呼人たちの物語を読み今の自分が根を張る場所に感謝する人もいるでしょう。もし自分が今いる場所で苦しい思いをしているなら、違う場所へ行き新しい環境を選んでもまた新たな出会いがあり誰かと支え合えるのだという気持ちにもなりました。
本人にその気がなくても、ある日突然、何かを引き寄せてしまう体質になってしまう呼人たち。
人によって呼人になる年齢は様々だし、引き寄せるものも様々だ。
理解のない人たちには忌み嫌われ、理解のある人たちにも、実はあまり理解されていなかったり、マイノリティーの生活はとても大変。
現実の世界に呼人はいないが、マイノリティーの人々はいるわけで、そういう人たちの気持ちや置かれた状況が、とてもリアルに描かれていた。
マイノリティーを理解するためにも多くの人に読んでもらいたい話だが、そういったことを抜きにしても、ただ単純に話がとても面白かった。
長谷川まりるさんは、物語のどれだけ引き出しを持ってるんだろう。
それらの引き出しから、次にどんな話が出てくるのか、楽しみで仕方がない。
ほんわかした物語かと思いきや、人権にかかわるたいへん切実な物語でした。
でありながら、各話の適度な長さと扉にあるやわらかい絵で、重い気持ちになりすぎずに読むことができます。
わたしは鹿のおはなしが一番気に入りました。
<呼人>に限らず困難なことを抱えた誰かに、周囲は同情や否定、羨望など、いろいろな思いを抱きます。
けれど、この作品を読んで、当事者になってみなければ、ほんとうに大変なことはわからない、と、つくづく思いました。
そして、この本をどんなふうに子どもたちに紹介しようかと考えています。
【何か】を引き寄せてしまう呼人と、その周囲とのかかわりについて書かれた小説ですが、作者さんもコメントされていたように、マイノリティや社会的な障壁について考えさせられました。
設定はファンタジーなのに、現代社会を描いているように感じました。
呼人に対して迷惑だと言っていた男の子が呼人になってしまうお話は、障がい者と健常者との対比に思えて、特にそう感じました。
私自身、変に気遣われたり、差別されたりした経験があり、その時のモヤモヤした気持ちを、この作品が言葉にしてくれました。おかげであの時の気持ちを消化することができました。
この作品は児童書ですが、大人が読んでも読み応えがありそうです。むしろ大人が読むべき本のようにも感じました。