蜃気楼と恋人たち
水庭れん
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刊行日 2026/05/11 | 掲載終了日 2026/05/12
ハッシュタグ:#蜃気楼と恋人たち #NetGalleyJP
内容紹介
\\本書プレゼント企画!//
「この時間が永遠に続けばいいのに」もう会えないと思った日、気まぐれなまぼろしに願った。
大失恋をして東京から戻ってきた篠岡ひかるが働き始めた「魚津しんきろう博物館」には、有名な珍客がいた。
年間パスで通い詰め、蜃気楼が発生するたびに飛び出していくその人物は、なんと中学の同級生・松風春作だった。
再会をきっかけに春作に惹かれるひかるだったが、同時に彼の奇妙な行動を知ることになる。
とめどない時の流れにあらがう恋と、新たに生まれるしなやかな愛。
痛ましくて健気な2つの想いを描いた落涙必須の恋愛小説。
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著者/水庭れん(みずにわ・れん)
1995年青森県生まれ、大阪府育ち。早稲田大学文学部を卒業後、現在は出版社勤務。2022年、初めて執筆した小説『うるうの朝顔』で第17回小説現代長編新人賞を受賞した。2023年、同作でデビュー。他の著書に『今宵も猫は交信中』『右から二番目の星へ』がある。
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出版情報
| ISBN | 9784065429846 |
| 本体価格 | ¥2,200 (JPY) |
| ページ数 | 254 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
レビュアー 1469440
表紙絵、頁に沁み込ませてた章の現し。
余白と線と対比、目次の装丁に、絶対好きになるを確約した。
読了後、真っ先に富山の蜃気楼の動画を探した。
ことばがでなくて、ただただ見惚れた。
創れないものを見てしまった。
好き。境地に至るまでのじわじわクレッシェンド。
「東京は向いていない」
否定し続けていた思いに、あがらうことすらやめてしまった。
焦漠然とした不安、途方もなさ。
待つことのために生きている。
給食の食べっぷりの気持ちよさに、好きの押し寄せ。
大人の塗り絵で潰しているのは時間という女子高生に、
あなたの見えない声を聴きたいと。気分が沈まる。
映像化されても 結局ここに還って、蒼の表紙を手にするだろう。
結局そうなっちゃう。
原点回帰、大人のファンタジーとか言いたい奴には言わせておく。
今日は会えるのか見えるのか、確約できない発生確率に思いを託す。
~それでも富山に帰ってきてよかった。美化しながら生きてやる~
レビュアー 781279
東京で失恋して故郷の富山に帰ってきたひかるは「魚津しんきろう博物館」で働き始める。
彼女は、年パスで通い続ける中学校の同級生の春作と再会する。
「蜃気楼は、あくまで現実の光景に作用するものです」
春作の思い出に触れることで、切なく美しい彼の思い出が現れた。
蜃気楼を待ち続ける彼の思いや、彼の過ごした時間はどれだけの孤独を彼にもたらしたのだろう。
中学生の頃から、ひかると春作はお互いの距離感を心地よく感じていた。それでも再会するまでは全く違う場所で生きてきた。
第一部の光景から、第二部の風景へ。
蜃気楼が見せた幻想がやがて、現実の風景へと変化していく。
痛みを知るひかると春作。どれだけ悔やんでも、どれだけ抗っても、二人の時間は進んでいく。二人が行き着く先を知りたくて、彼らの物語に惹き込まれていった。
ラムネを買うたびに、美しくて不思議なこの物語を思い出すでしょう。蜃気楼が見られそうな今の時期に出会えて良かったです。
レビュアー 946550
誰もが抱える後悔や、大切な誰かを想うことの痛みと喜びがとても繊細な筆致で表現されています。ちょっとした不思議な現象を通して描かれる、いつまでも「変わらないもの」と、生きていく限り「変わっていくもの」の対比が本当に見事で深く考えさせられました。
設定がとにかくみごとで、ぐいぐい引き込まれてしまいました。優しくて清々しい余韻に包まれる素敵な作品です。
出版事業関係者 1720651
十年ぶりに故郷富山で再会したふたりの現在と過去が交錯しながら進行していくストーリー。
この博物館は実在するんだろうかと調べてしまった。
蜃気楼出現予測情報が本当にあるのですね。行ってみたくなりました。
青春パートのひりつくような緊張感ともどかしさや、ラムネの使い方が非常にお上手でした。
爽やかな読後感に、ふたりの未来に幸あれと願わずにはいられません。
勝手なことを言いますが、これ映画化しそう!と思いました。
レビュアー 513020
婚約を破棄し郷里に戻ったひかる。「しんきろう博物館」で働く中で、中学からの同級生、松風春作と再会する・・・
想いを秘めながらも行動に移せない女性と、つかみどころがなくも謎めいた男性、そして明晰ながらも陰を抱えた女性の3人の模様が記されるがせつなさに溢れている。相手を思いやる優しさとままならないもどかしさがない交ぜとなり唯一無二の恋模様となるようだ。また中旬以降明かされる奇蹟は、厳しい冬を乗り越えた先に稀にある虚と実が織り交ざる蜃気楼の、内心虚と自覚しながら浮かび上がる幻想性と相まって切なさが増すようだ。
切なさが最高潮に高まる中で、傷つきながらも前を向き新たに踏み出す美しさに胸を打たれる恋物語。
デビュー作から追っている作家、水庭さんの最新作。途中までは普通の恋愛小説だと思っていたら、そこは水庭さん。まさかの展開に。私にとって蜃気楼はニュースで見るものだったのでこんなに身近に感じる場所があるんだなと新鮮でした。良くも悪くも時間の流れと共に人は変わっていく。いつまでも変わらない愛しい人とずっと一緒に居続けるのは辛いだろうな。人は過去には生きられないのだから。
レビュアー 588110
長年付き合った恋人に振られた挙句、その男は新しくできた好きな女性とすぐに結婚した。逃げるようにして東京から地元の富山に帰ってきたひかるは、新しい仕事先の魚津しんきろう博物館で中学時代の片想いの相手・松風くんに再会する。蜃気楼の季節になると博物館に現れ、蜃気楼が出るとどこかへ行ってしまう彼は、何を抱えているのか? ひかるの悩みはこの上なく現実的なのに、春作の存在や行いはまるで夢のよう。その二つがあいまいに溶け合う場所こそがこの小説なのだ。揺らぐ現実は蜃気楼というモチーフとも完璧に合っていて、振り返ったときとても美しい。失われた恋から、ひとはいかに解放されうるのか。本作は大人の恋愛小説であると同時に、大人の失恋小説でもある。読み終えた後、私も春の魚津まで蜃気楼を見に行きたくなった。
書店関係者 1907254
#蜃気楼と恋人たち #NetGalleyJP
恋がテーマでありながら、「見えるのに掴めないもの」を繊細に描いたラブロマンス。
物語は、魚津しんきろう博物館で働く篠岡ひかるの視点から始まる。そこで再会する中学の同級生・松風春作は、蜃気楼が発生するたびにどこかへ飛び出していく不思議な人物。その行動を追いかけるうちに、ひかるは彼の中にある“特別な存在”に気づいていく。
この作品の面白さは、最初に感じる“謎”の正体が、読み進めるごとに少しずつ姿を変えていくところにある。はじめは春作自身がどこか掴みどころのない存在に見え、やがて彼が見つめている対象の方が“蜃気楼のような存在”に感じられてくる。そして読み終えたときには、そのどちらでもなく、「恋という現象そのもの」が蜃気楼のようだと思えてくる構造がとても印象的だった。
蜃気楼とは、光と空気の条件が重なったときにだけ現れる、一瞬の現象。確かにそこに見えるのに、触れることはできず、やがて消えてしまう。けれど“見えた”という事実は、確かに心に残る。
この作品の恋も、それとよく似ている。
好きだとわかる瞬間はたしかにあって、誰の目にも明らかに映るのに、その感情は形がなく、曖昧で、時間や状況によって揺らいでいく。
「好き」と感じるときのまなざしもまた、蜃気楼のようだ。
たしかにそこにあるとわかるのに、決して固定することはできない。
だからこそ少し怖くて、でも同時に、とても美しい。
また、この物語にはいくつかの人間関係や背景が複雑に絡み合っていて、それぞれの登場人物が抱える事情や過去が、物語に奥行きを与えている。友情や家族関係、社会的な立場などが織り込まれていて、単なる恋愛小説にとどまらない厚みがあるのも魅力のひとつ。
読み終えたあとに残るのは、はっきりした答えではなく、やわらかい余韻。
恋とは何か、なぜ人は誰かを想うのか――そんな問いが、静かに心に浮かび続ける。
この作品は、恋の確かさではなく、その“揺らぎ”を描いている。
だからこそ、読み手それぞれの中にある記憶や感情と重なり、深く残る物語になっていると感じた。
図書館関係者 603863
初読みの作家さんでした。
凪良ゆうさん、一穂ミチさんあたりを目指しておられるような印象。
私は喪の作業がテーマのように受け取りましたが、恋愛ものとして読む読者が多いかもしれません。
さまざまな要素を入れ込んで、納得のいくラストへ持って行った力量はなかなか素晴らしいと感じました。
ただ、描写力では一穂さんに及ばず、ストーリーの情感で凪良さんに及ばず、という、もどかしい印象。
(比較対象が超一流で妥当ではないかも・・・)
今後のご活躍に期待します。
出版事業関係者 869218
誰しもが過去の愛に焦がれ、忘れられない。
それは特に男に多いのかもしれないけれど、そんな男に焦がれてしまうのは彼女なのかもしれない。
追い求めるが故に見えなくなってくる自分の本当の思い。
難しいよねぇ〜きっと心のどこかではわかっているはずなのに、なぜか追い求めてしまう。人はどうしたって醜いような希う優しさがあるような。そんな悩みをタイムリーに考えるからこそ沁みる一作でした。
レビュアー 1045834
感じたのは孤独という病の底知れぬ闇。
手段を問わず現実逃避にすがることの
怖ろしさがありえないほど身に染みました。
これは社会への注意喚起にも役立つ
重要テーマを兼ね備えた作品ですね。
描かれているのは同級生の男女
それぞれが味わった悲恋とその先。
驚きの出来事が歪めてしまった
彼らの人生にハートを鷲掴みにされましたよ。
主要人物は三人いて、個性はバラバラながら
みんな根はいい子たちなんです。
それなのに、運命に翻弄され
寂しさに染まってしまうのが
もう切なくて切なくて。
とくに、不器用で心優しい少年の
助けてばかりの生き様に惹きつけられ
むせび泣きそうでしたよ。
彼は驚くほど見せ場が多かったから
いっそう心を動かされたんだと思います。
だから、止まっていた時間の動きを
予感させるあたりでは逆の意味で落涙。
きっかけとして登場する作品への
思い入れを含めて共感たっぷりでした!
やはり私は甘口よりも
こういうビター風味が好き。
愛も恋も、ままならなさを乗り越えてこそ
美味しくなるもの、でしょう?
ラストでボッと心に着火させられ
うんうん頷きながら余韻モードに移りました。
しばらくこのまま浸っていたいです。
(対象年齢は13歳以上かな?)
図書館関係者 1366886
蜃気楼という現象があるのは知っていましたが、実際どういったものか見たことがなく、作中で初めて知ることができました。富山県が蜃気楼で有名なのも初めて知りました。
主に学生時代に悪友と過ごすことが多かった松風春作と孤独な遠見三雲の物語は恋愛というよりも、お互いの存在を確かめる関係。明確に言葉で伝え合っていないのが歯がゆい。
蜃気楼が2人の関係に重要な役割を果たすのですが、春作の同級生篠岡ひかるがが関わることで変化が起こります。
個人的にはHUNTERXHUNTERの話題が多く、作家さんの趣味かしら?と親近感が沸きました。
ただただ春作くんが幸せになってほしいと願うばかりでした。
レビュアー 1114213
「自分の心の内側に誰かを招き入れると、自らの心の配置を動かすことになる」
7年付き合った恋人に振られ、故郷である富山に戻った27歳のひかりは魚津しんきろう博物館で働くことに。
毎日のように来館する青年がかつての同級生であることに気づいたひかり。
彼は10年前に亡くなった女性の幻影に惹かれ続けている。
そんな彼を想うひかり。
虚像である蜃気楼は光と風と海が描く印象派絵画。
レビュアー 1246685
蜃気楼と恋人たち 富山の蜃気楼をモチーフにしたファンタジー要素のある物語でした
4年も同棲して結婚間近とおもっていた彼に振られ、実家のある富山に戻ってきたひかるは「魚津しんきろう博物館」で働き始めた。博物館の常連・春作は中学時代の同級生だった 彼の頬にある傷跡 不良になったと噂を聞くがあの優しかった彼が?とひかるには信じられない。
春作のひととなりを表す、窓辺の白いポピーのエピソードがとてもよかったです。
蜃気楼が発生すると飛び出していく春作、その先で待つ人は… 蜃気楼が見える間だけ会える今は亡き・遠海
なんとも切ない 遠海と春作の居場所のなさ、二人だけの居場所の関係性 お互いを無くしてはいけなかった
遠海を守るために彼女の父を殴り、拘置されてしまった春作 彼が戻った時には遠見はオーバードーズで帰らぬ人に
遠海を思う春作、彼のことが好きなひかる ひかるが彼の大切な場所をまもろうとした行動も切ない
手元におきたくない手切金の使い道でも切なかったです 元カレの「愛されたいだけで愛することに無頓着」なんて酷い言葉、本当に目腐ってます!
せつない想いと蜃気楼の存在がリンクする素敵なお話でした
姪の紬ちゃんの名言「すきってね、おめめだよ」「わかんなくなったらおめめをみたらいい」がささりました
水庭さんの既作品も読もうと思います。
蜃気楼見たくなったー!純愛、真っ直ぐに誰かを好きになる胸がキュンキュンです。故郷はやっぱり温かい。でもそれに気づけたのも東京暮らしを経てこそ。人生に無駄なんてないんだ。振り出しに戻っても進めばいいんだ。あ〜前向きな気持ちで完読
レビュアー 503042
近年読んだ恋愛小説の中で一番美しい作品
感情の機微が繊細なところ
現実と幻が混在するところ
人と夢がまさに儚いところ
まるで蜃気楼のように美しく揺蕩っていて
風景描写も美麗で目も心も癒される
あの日からずっと時間は止まったまま
あの日からひそかに動きはじめていた
二つの恋模様が儚げに揺らめいていく
手を伸ばしたとしても掴めない
愛しさと切なさに心が掴まれた
永遠の残酷さは夢であればいいのに
そう思わずにいられなかった
書店関係者 571250
あの頃抱いていた淡い想いがひかるの前へすすむエネルギーにもなったことを考えると“思い出”ってとらえどころがなくて形がないみたいだけど、ちゃんと自分の血肉になっているんだなぁ。
富山に住んでいる人にとってもぽんぽん出会えるわけではない現象である蜃気楼がポイントになっていて、あぁ、ここも蜃気楼繋がりだったのか、と。いや、厳密には蜃気楼ではないって言ってたけど、存在していた過去との交流が幻影って点で近いような気が。
過去に囚われているのも、時の流れのなかで変化していくのも、生きていればこそ、という気持ちになった作品でした。
レビュアー 1123234
蜃気楼のような儚い想いと青春時代の後悔が切ない話だった。
長年付き合った恋人に振られ、失意の中故郷の富山に戻り「魚津しんきろう博物館」で働き始めたひかるは、中学時代に好きだった春作と再会する。
年間パスポートで春になると毎日現れる彼の目的は?
前半は時代や場面が目まぐるしく切り替わりかなり混乱してしまったが、最後に「え!?」となって、後半で悲しい真実が明かされてゆく。
構成も良かったし、蜃気楼の使い方が美しかった。
でも、夜の蜃気楼は辛すぎる。みんな幸せになって欲しい。
教育関係者 645139
《蜃気楼のようにはかなく、けれど消えない。三人の想いがたどり着く、痛ましくも美しい風景》
『蜃気楼と恋人たち』。儚しげなタイトル。
そして、波一つない水面と、雲一つない空の狭間に立つ、傘をさした女性。
写真だとは信じられないその姿は、逆光によって輪郭だけを浮き彫りにされ、水面にそっくりの影を映し出している。
彼方まで広がる二つの世界。その両方に輪郭だけを刻み込む彼女の姿に、やはり儚さを感じた。
だから、普段よりゆっくり読み進めた。
影となっている彼女の内面を知りたくて。
⸻
『第一部 光景』
傷心を抱いたまま里帰りし、派遣社員として〈魚津しんきろう博物館〉の受付をする篠岡ひかる。
蜃気楼の発生確率がわずかでもあると姿を見せる、ひかるの中学校時代の同級生・松風。
高校時代から、時に松風を一人暮らしの自分の家に招いて過ごす三雲。
この三人の生き様と、互いに関わっていく様子が断片的に語られていく。
それも、中学校時代から現在までの時間を行き来しながら。
それぞれの時の、それぞれの心情に、喜び、同情し、首を振り、さらに悲しみを覚えながら読み進めた。
その中で、ひかるの言葉が心に残った。
「自分の内側に相手を招き入れるのは、自分の心の配列を動かすこと。それは痛みを伴い、その跡は残る」
最初は、今回の里帰りのきっかけである、同棲していた航についてのことだと思っていた。
でも、時を行きつ戻りつ読み進める中で、ひかるの心が最初に招き入れたのは松風だったことがわかった。
あの、白いポピーを見た時に。
それからずっと、忘れてしまっていても、ひかるは自分の心の部屋にその跡を残して生きてきたのか。
だからこそ、松風と三雲の関係が深まっていく様に喜びを感じながらも、それがひかるのいない、ひかるの知らない場所で進んでいく物語であることに、同情を禁じ得なかった。
現在において、松風への想いを改めて自覚していくひかるを目の当たりにすれば、なおさらのこと。
でも、読みながら膨らんでいく違和感。
なぜ、三人の人生は交差することがないのか。
そして、破局を目の当たりにした時、やっと自分の勘違いに気づいた。
そう、時の断片に、その流れに、ずっと惑わされていたのだということに。
なぜ現在の松風があのような眼差しなのかを、やっと納得した。
でも、ひかるはそのことを知らない。
そんな三人のすれ違いに、胸が苦しくなった。
そして、松風と三雲の物語が現在にたどり着く。
松風が蜃気楼にこだわる理由。
三雲が蜃気楼を待ちわびる理由。
それは、眩しいくらいに純粋すぎた。
それは、蜃気楼のようにはかなすぎた。
何という光景。
⸻
『第二部 風景』
二口の語りにより、松風と三雲の長い長い物語が、やっとひかるに伝えられる。
二口から出た二人への思いを読み、今まで非情だと軽蔑していた彼女に対して申し訳なく思った。
二人の物語を見ていることしかできなかった彼女は、何という思いを積もらせてきたのか。
現在のあの眼差しの松風は、その抜け殻なのか。
それとも彼の心の部屋は、ひかるが知る中学校時代と変わっていないのか。
二口の言葉は慰めのつもりかもしれない。
でも、それが逆に心に突き刺さってくる。
「望まなくとも、移ろいゆくもの」
ならば、〈望む〉としたら?
ひかるも同じ思いを抱いたから、動き始めたのかもしれない。
だから、狭い世界で眠るように暮らしてきたと信じている松風に、気持ちの強さでは肩を並べる者がいないと、ひかるは言い切ったのだろう。心の部屋は変わっていない、と。
そして、自分の想いを正直に口に出しても、それでもひかるは松風の心を大切にするとは。
それも、思いもしなかった方法で。
「それこそが、気持ちの強さじゃないのかい?」
読みながら、ひかるにそう告げたくなった。
ないものは、消えることも、形を変えることもない。
一方、存在しているものは、変わっていく。移ろいゆく。
歪めながらもそれを映しだす蜃気楼も、また同じ。
ならば、変わることのない三雲は?
「それを認めてはいけないんだ」
三雲の生き様をずっと追ってきたからこそ、そう叫びたかった。
でも、三雲は松風のために。
彼の未来のために。
最初にじっくりと眺めた、装画と見紛うような写真。
何という風景。
それを見返しながら、ただただ泣いてしまっていた。