七、八月のストローク
長嶋 有
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刊行日 2026/05/26 | 掲載終了日 2026/05/22
ハッシュタグ:#七八月のストローク #NetGalleyJP
内容紹介
ままならぬ現実を生きる彼らのしんどさを、私たちはよく知っている。
けれど、ほんの少しの希望があれば前に進めることにも、
私たちは気付いているのだ。
――恩田 陸
「新たな一歩」を踏み出す人々のひと夏を描いた感動作!
【長嶋有・デビュー25周年記念作品】
築50年の大規模マンションの子供用プールで、監視員のアルバイトをする高校生の少女二人、ある日漫画が描けなくなった元人気漫画家、万引き癖をもつシングルマザー、突然高校を自主退学した息子とその父、年下の友人を亡くしたBL漫画好きの老嬢……ささやかな悩みを抱えた老若男女が過ごす夏の日々。
老朽化し利用者も減る一方のプールに廃止の危機が迫り、少女二人が立ち上がる。大好きなプールを守るために。
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著/長嶋 有(ながしま・ゆう)
1972年生まれ。2001年「サイドカーに犬」で文學界新人賞を受賞しデビュー。02年「猛スピードで母は」で芥川賞、07年『夕子ちゃんの近道』で第一回大江健三郎賞、16年『三の隣は五号室』で谷崎潤一郎賞を受賞。他の著書に『佐渡の三人』『もう生まれたくない』『私に付け足されるもの』『今も未来も変わらない』『ルーティーンズ』『トゥデイズ』『僕たちの保存』など多数。
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★★★
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出版情報
| ISBN | 9784065435021 |
| 本体価格 | ¥1,600 (JPY) |
| ページ数 | 205 |
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NetGalley会員レビュー
夏にぴったりのプール物語。時に水がサラサラと流れるように、時に飛沫を上げながらバシャバシャと弾けるように打ち上げ花火のような夏。大人になって子供が生まれもう一度体験できたあの夏の子供時代の思い出。やっぱり夏はプールでしょう!
レビュアー 1661930
あっ!もうすぐ夏が来るのかと感じた。そして、自分が今まで通ったことのあるプールを思い出していた。小学、中学と学校にはプールがなく、夏になると海に行くか、県営プールに行った記憶がある。高校にはプールが有り、水泳の授業もあったが、夏休みには毎日のように出かけていった記憶がある。その後も何処かのプールには行ったのだろうが、記憶が曖昧だ。年月が過ぎたのもあるが、今の生活に結びつくものがないからだろう。
この小説を読んでいる間だけ、題名にある7月、8月の日差しを浴びて顔も身体も黒くなっていった夏の中にいるように思えた。でも、昨今のような35度を超える猛暑日、新しく出来た酷暑日のような暑さとは違う、熱くはないが懐かしい暑さの中にいる。そんな不思議な感覚に包まれて読んでいた。プールに浸かって、背泳ぎでゆっくり、ゆっくり泳いでいるように時間が過ぎていた。ありがとうございました。
レビュアー 1469440
「感動作!」帯の単語に、正直どこが?と一瞬思った。
本を閉じて納得。彼等と過ごした夏の呪縛から離れられない。
忍び込む、青春じゃん。
この流れで資本とは しかも紺さんから。
季乃の無力感に、あーあと声が漏れた。
かつみは言う「割と毒親」。そこ笑うとこ。
プール存続会議の「」のいくつかが、好きな言い回し過ぎて音読した。
女性の剪定業者がいた光景が、
選択を変える契機のひとつであったと思う。
縁があったのかなかったのか、たまたま同じマンション
たまたまそこにプールがあった。
彼等は交錯するのか、どこへ行くのか、
読み解けないところが私を本から離脱させない。
行け~と突進する夏ではなかった。
それぞれが営まれ集合体が形成される。
こうあるべき型はないことを体験する。
ここに居続けて、彼等の行方を見守っていたいと思っていた。
けれど、自由を獲得した。飛び方を会得した。
いま私は、知らないボタンを押してみたくなる衝動に駆られている。
「そうしたらどうなるかと思って」
絶推し。
レビュアー 1045834
かつて栄華を誇った大規模マンションにある
古びた共用プールをめぐる物語。
狭い世界を描くのかと思いきや、大誤算!
年代も立場も様々な多数の視点で
進行するストーリーは壮大に広がり、
思わぬ形で絡まっていきます。
どんどん楽しくなりますね!
小さな子供向けのプールだけでなく、
市民プール、オリンピックプール、
さらには沖縄の海や外国まで舞台になって
次から次へと面白さが襲ってくるんだもの。
まるで関わらなそうな面々へと膨らむ物語が
どう閉じるのか想像もつかなかったのですが
そこは流石、鮮やか仕上げ。
若い面々が動き出し、大人達を動かすなかで
伏線の雨が収束してゆくさまに見とれ、
心地よい余韻とともに読み終えました。
ヤ・ラ・レ・タ。
自分なら真っ先に廃止提案すると感じていた
プールに不思議と愛着がわいていて
苦笑いしてしまいましたよ。
印象的だったのは八十代になる
古参入居者の心理を描いた部分ですね。
弱っているときの応援は心を守らないという
趣旨のくだりには私にも心当たりがあって
叫びそうになりましたよ。
「確かに!」と。
重大な進路の決断を親にプレゼンする
少年のふるまいには、親視点ならではの
感慨があり、とめどなく共感が溢れました。
魅力的なキャラクターが大勢出てきますが
イチ推しは元気で純真な高校二年生の季乃。
彼女に、もしも何度人生をやり直しても
このマンションのプールバイトをしたいと
思わせるほどの何がそこにあるのか?
どんな妙案で運命をひっくり返すのか?
ぜひ手に取って、この夏の清涼剤を
全身に浴びてみてください!
(対象年齢は13歳以上かな?)
レビュアー 781279
たったひと夏のプールで起きた出来事。
プールを中心として、様々な人たちの心の動きが見えてくる。
作品のなかの言葉に、何度はっとしたか分からない。
「誰かの応援って、元気な時のプラスの励みにはなるのだろうけど、弱っているときの人の心を少しも守らないんだ」
特にこの言葉を何度も読み返した。
自分が弱っている時の応援ほど、追い詰められるものはない。
そんな心に響く言葉が散りばめられていた。
決して大きな一歩ではなくても、行動を起こすことで、ほんの少しでも前に進むことができる。一人では動けなくても、誰かと一緒なら進むことはできる。
長嶋有さんの作品は、10年以上前に知人が勧めてくれて以来、時々手にとるが、今作が一番好きな作品になると思う。
落涙するという感動ではないけれど、この作品は私の心を動かしてくれた。それだけでもう胸がいっぱいだ。
レビュアー 814465
面白い小説でした。
やっぱり長嶋さんの書く文章はいいなぁ。
登場人物が多いのですが、それぞれ長々とあるわけではないパートできちんとその人達の人生を描くのはさすが。
ガツンと大きな出来事があるわけではないし、大きなストーリーの中では不要に思えるようなエピソードもあるのに、そういった細部のパーツがあることによって、絵がより立体的にビビッドになり、プールサイドにモザイクタイルで描かれた大きな一幅の絵のようになっている。
書店関係者 1869099
築50年、年季の入った大規模マンションにある子供用プールの周りの人たちのひと夏の話。
プール廃止の危機に少女二人が立ち上がる!!!という内容紹介を読み、熱い熱い青春の話を想像して読んだ人は、ちょっといい意味で裏切られるかもしれません。
私もこてこての青春を想像しつつも、「いや、でも、長嶋有さんてそんな感じの作家さんだったっけ???」と思いながら読んだら、やっぱり長嶋有さんでした。
一時期はまってがつがつ読んでいたのですが、最近ご無沙汰していました。
久しぶりに読んでみて、流れるようなきれいな文章やすべてを描かなくても伝わる登場人物たちの心情。
くすりと小さく笑ってしまいそうなシーンも多々あり、あー、やっぱり好きだわ!と思いました。
少し小さく感じるくらいの声で静かに語りかけてくる物語なのに、心は大きく揺さぶられる。
そんな良さがありました。
読んでいたら自然と物語の中に没入していて、自分もマンションの住人になったようでした。
夏の日差しは大嫌いだけど、プールでぷかぷか浮かぶのはさぞ気持ちいいだろうな・・・。
今年の夏は、思い切ってプールに行ってみようかな、そんな気持ちにさせられる一冊でした。
図書館関係者 1038994
夏が始まる。
さまざまな場所のプール、そして人々のエピソード。そこに自分の思い出もまぜながら読んでしまった。
こんなにもそれぞれの生活が違って、プールに対しての想いも違って…
淡々と語られる文章は熱いわけではないが胸にそっと熱さが届く。
自分が育った場所のプールを大切に次世代にも守り抜く。若いのによくやった。
古参の人々も受け入れてくれた。
強い議論はなくても心を通わすことができる。
万引きの母を持つ少女はかわいそうだったけど自分の夢に向かって羽ばたけたようで安心した。
レビュアー 588110
七、八月の光がプールサイドに眩しく反射する。現代の話なのにどこか懐かしい気持ちにもさせられる。新築の時分は目玉だったマンションのプールも、50年経てば老朽化が進み廃止の声が出てくる。それでも子どものころや子どもと一緒に遊んだ入居者は多く、住民それぞれがプールに愛着を抱いている。舞台設定がとてもリアルで惹き込まれた。マンションの住人が中心となって話はゆるやかに進んでいくが、近所の市民プールやオリンピックの水球で使われたプールが出てきたり、与那国島でダイビングするエピソードが挿入されていたりする。プールや泳ぐことそのものがハブとなり、物語世界を押し広げている。老若男女さまざまな人が登場するため、誰しも一人は自分と似ていると感じる登場人物がいるのではないだろうか。こういった誰にでも開かれた小説をとても素敵だと感じる。大人から若者への期待を込めたまなざしが印象深かった。
書店関係者 681228
かつて子どもだった私が知っている、あの懐かしい“プールの匂い”がしてくる小説でした。出てくる人それぞれが、あなたのご近所に住んでいますけど?と言わんばかりの存在感を放っています。さすが長嶋有作品。私たちの頃は小学校のプール開放日とかがあって、当たり前のように入りにいったりしていたものだけど…昨今はこのひどい暑さですものね。そういう現実問題を考えながら読むと、少女たちが守ろうとしているこのプールが愛おしくなってくる。ひとそれぞれに色々な気持ちや事情を抱えている本作、物語はどう着地していくのだろうと頁を捲り続け、その期待を裏切らない爽やかな心地よいラストに繋がりました。あー気持ちよかった、とまるでプール上がりみたいな感想が出ること間違いありませんね。
レビュアー 513020
マンション内プールの存続を軸に、さまざまな人の夏のかかわり方が描かれる。
年代も性別も考え方もさまざまで、昔を見つめ、今を眺め、先を見据えて、家族や自身の将来を思い悩み行動に移す様子は、何故かノスタルジーが漂う。それは、かつて夏の風物詩であったプールや盆踊りといったことが、形を変えるか失われていくかの分岐点を目の当たりにしているかのように感じるからであろう。
水面に浮かび赴くまま漂うか、自身で流れを造り動き出すかの選択を光景として捉えた夏の一幕。
レビュアー 746064
タイトルや表紙から刊行日がまさにぴったりである。古いマンションにある住民共同のこどもプール。まったく私の頭では想像がつかない。住民や監視アルバイトたちとの様子と他の市民プールや沖縄の海やらしばらく作品を出してない漫画家とか登場人物が様々。頭をフル回転して読んだ。なつかしくもあり現代風でもある。最近の小説にはない感覚。うまく表現出来ないが。あえて言えば「オシャレ」かな。楽しく読ませていただいた。ありがとうございました✨
レビュアー 1666318
「猛スピードで母は」を読んでから、長嶋有さんのファンです。この作品も、とても楽しく読ませていただきました。
築年数がたったマンションや団地は、もうそれだけで独特の世界観を持っています。一戸建てとは違う、縦横斜めに広がる多種多様な人間模様。キーアイテムは、プール。泳いでいる人も泳がない人も、はたまた直接プールとは無関係と思われる人も。みんなまとめて、光の反射にきらめく物語でした。
マンションのプールの再生にカンパイ!
教育関係者 565489
屋内の市民プールに行く気になった若干引きこもり気味の元漫画家(67歳)、大規模マンションの子ども用プールの監視バイトをするマンション住人の3人の高校生、総合体育館のプールで「大人のための水泳教室」のレッスンを受ける27歳の新米ママほか、泳ぎや水に関係する各所での登場人物たちが断片的に現れては流れてゆく。
それぞれが何らかの形でゆるやかに出会っているが、大事件は起きない。メインはマンションのプール利用者減で封鎖の意見が出たのを機に、季乃とかつみを中心にナイトプールを発案して開催したこと。
それとは別の場所での水難事故を未然に防いだママ須藤好未の場面が印象に残った。子どもは「静かにおぼれる」の言葉が衝撃的。バシャバシャと暴れないので気づかれないまま、静かに水中にいる。衝撃を受けました。
プールの描写がたびたび出てきて、塩素の独特の香りや揺れる水面、屋内プール独特の音の聞こえ方、読みながら「プールで泳ぎたい!」と強く思った。
レビュアー 946550
プールや海などの「水辺」を舞台に、様々な事情を抱える人々のひと夏を描いた群像劇。
とってもよかったです。
様々な悩みを抱えた人々が、水辺の風景を通して少しずつ前を向いていく姿がとても心地いい。
大事件が起きたり、抱えている問題がすべて綺麗に解決したりするわけではないのがいい。ままならない現実の中でも、ほんの少し視点を変えたり、誰かと協力したりすることで、世界はこんなにも鮮やかに色づくのだと教えてくれました。
夏の終わりの切なさと、新しい一歩を踏み出す清々しさが入り混じったような心に残る素晴らしい作品でした。
図書館関係者 601014
泳ぐのは好きではないのですが、独特のメロさがありますよね、プール。
それもマンションについた、そして古びたプールだなんて…。
連作なんだけれど、短編としては独立しておらず、
登場人物の物語の中での重みという形一も様々で、
織り込まれる際の模様の出方が一様ではなく、
さりげなく繋がったり、うっすらしか絡んで見えなかったり、
なんだか夏の午後の終わらなさのような気配漂うお話でした。
出版事業関係者 869218
日常をそのまま。
まるで隣にいるような、優しくも激しくもない
そこにある。ありのままの日々を投影したような
小説でした。もはや小説というよりもドキュメントのような部分もあってなんだかそれが心地が良くて、
日常ってこんな時間の流れ方をしてるんだなと
落ち着くような読書時間でした。
レビュアー 1114213
「『ストレス解消』って言葉は嘘で、ストレスはその元を正さなければダメだって」
老朽化したマンションのプールをめぐる人たちの群像劇。
群像掲載の中編。
文章にひそむそこはかとない諦念とそこに射す一筋の光としての希望。
レビュアー 752611
長嶋有デビュー25周年記念作品。大方は築50年の古い大きマンションのプールを巡る、そこに住まう人々の群像劇。付随して市民プールなどいくつかのプールに纏わる、いろいろな人の困惑や停滞が描かれる。マンションのプールの老朽化と利用者減の事実の前で、存続を願う高校生の、大人を交えてのがんばりが眩しい。夏のプールの光や熱や歓声や熱気を帯びた風が、読みながら湧き起こり懐かしい感情に囚われた。会話のリアルと心象の重なり具合が、絶妙に長嶋有。ストロークは人により異なっても、夏の遮熱の中でそれぞれのひと掻きが目を射る。