ここはこどものいない国
武田綾乃
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刊行日 2026/05/25 | 掲載終了日 2026/05/26
ハッシュタグ:#ここはこどものいない国 #NetGalleyJP
内容紹介
泣かない、かわいい、産む必要もない。赤ちゃんは、十年だけのペットになった。
武田綾乃が放つ、ディストピア×シスターフッド!
家族を捨てた「集落育ち」×家族に憧れる「工場育ち」
常識も愛し方も全く違う。それでも、そばにいたい。
2226年、人間は工場生産され、人口を完璧に管理できるようになった日本。
愛玩赤ちゃんPB生産工場で働く美奈子は、家族育ちという出生の秘密を抱えていた。
母親から生まれ、手作りの料理を食べ、集落で育った美奈子は、世間からは「自然派」と忌避される存在だった。
「お母さんはどうして私を産んだの。私、生まれたくなんかなかったのに」
そんな美奈子の職場に、新たに後輩がやってくる。彼女は言った。
「私、妊娠してるんです」その出会いが、美奈子の人生を一変させる!
♢♢♢
もしも工場で子どもが生産されたなら、もしも成長しないペットベイビーが存在したなら、出産という行為は他社からどう見られるのだろう?そんなふとした疑問から書き始めた小説です。(著者)
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著/武田綾乃(たけだ・あやの)
1992年京都府生まれ。第8回日本ラブストーリー大賞最終候補作に選ばれた『今日、きみと息をする。』が2013年に出版されデビュー。『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』がテレビアニメ化され話題に。同シリーズは映画化、コミカライズなどもされ人気を博している。’20年に『愛されなくても別に』で第37回織田作之助賞の候補、’21年に同作で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。漫画『花は咲く、修羅の如く』の原作を担当。その他の著作に、「君と漕ぐ」シリーズ、『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『どうぞ愛をお叫びください』『世界が青くなったら』『嘘つきなふたり』『なんやかんや日記:京都と猫と本のこと』などがある。
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★★★
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出版情報
| ISBN | 9784065432686 |
| 本体価格 | ¥2,250 (JPY) |
| ページ数 | 286 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
書店関係者 907063
これは、未来のない、未来の話。
どんな感情を抱くのが正解なのだろう。無駄のない完璧な社会のようで、なにかが足りない。そんな風に感じながら、でもいつかはこんな社会になるのではないかと、ぞわぞわしてしまいます。
まさか赤ちゃんをペットにしてしまうなんて!!!
とんでもない発想のように思える世界観も、読んでいるとめちゃくちゃリアルで、すごいとこわいに溢れていました。
また、主人公、美奈子の幼少期の思い出は、たくさんの光や色、温度に溢れているのに対して、現在の美奈子の世界は、色も温度も感じられないのも印象的で、愛は温度だというセリフがじわじわと沁みました。
そして、子どもは、未来そのものなんだという言葉も、熱く心に残っています…!
いろんな感情が溢れまくる物語。おもしろかったです…!
図書館関係者 1038994
結末が気になる
最初と最後のシーンが一緒なのに、物語を読んでから読むとまた違ってくる
化石化した思想だと思われる時代が来るのだろうか。
コスパ、タイパ重視の世の中になってきたからあり得そうな気もする。全くの想像の世界とは言いがたい
出産は命をかけて行うもの。しかも産んで終わりじゃなく育てていかないといけない。生理もあるし、自分ならどちらを選ぶだろう
出版事業関係者 869218
青春小説の印象が強い武田綾乃によるディストピア小説。
現実と離れすぎず、近づきすぎず絶妙な世界観がとても魅力的だった。主人公は28歳。自分も同い年。となると、胸がキュッと熱くなった。こんなディストピア世界でも子どものことは考えていて、今自分はまだそのフィールドにはいなくて、もしかしたら自分はすこしゆっくりしているのかなーなんて思ったり。でもこれからものすごいスピードで時間は流れていく分、すくいあげられることはしっかり掬っておかないといけないなとこの物語の結末を読み考えました。一緒にいたいと思うことがあるならば、一緒にいられるようにお互いに譲歩できるように仲を育めるような人でありたい。
教育関係者 645139
《産まれたことを否定することと、産むことを願うこと。相反する願いの果てに、人は何を愛と呼ぶのか》
この「夜のあいまい」というタイトルの装画を、しばらく見つめていた。
どこまでが陸で、どこからが水面なのかわからない。
その境をかろうじて示してくれるのは、花たちのゆらめきだけ。
そんな、あいまいな夜の世界を眺めてから、『ここはこどものいない国』を読み始めた。
⸻
ちょうど200年後。
子どもの工場出産率が99.9%となってから、何世代もたった未来。
18歳になるまで社会に出ないため、子どもの姿が見えない未来。
親や先祖、愛情や性が死語になり、手料理さえ忌避されている未来。
それはもう、人間というより、「社会性生物」が暮らす未来なのだろうか。
けれど、そうだとしたら、なぜ人々は愛情を注ぐ対象を求めるのだろう。
なぜ、ひとりで生きる寂しさを恐れるのだろう。
なぜ、誰かと生涯を共にすることを選ぶのだろう。
歪んでいるように見える。
でも、不完全なもの、無駄なもの、意味が定まらないものを避けることで成立している社会で、人間が人間としての欲求を満たそうとするなら、きっとその形もまた歪まざるを得なかったのだ。
では、そんな200年後の人間が、今の私たちを見たらどう思うだろう。
愛情によって結婚し、子どもをもうける。
眠ることもままならず育て、手作りの料理をふるまう。
その、当たり前のようでいて、ひどく非効率で、危うくて、取り返しのつかない営みを見たら。
この物語は、200年後を舞台にした、今と未来の「とりかへばや物語」なのかもしれない。
⸻
自然出産で生まれた美奈子は、それを正しいと信じる母に反発し、家を飛び出した。
そして、工場出産の人々と同じように、完全栄養食に頼りながら生きている。
コンプレックスと希死念慮、そして幼児退行を隠しながら。
一方、工場出産で生まれた伊藤は、赤ちゃんを産むことに憧れ続けていた。
生活力がないまま、それでも自然回帰派の暮らしを真似しようとし、生きることのすべてをその願いに費やしてきた。
契約社員とエリート正社員。
自然出産と工場出産。
過去と同じように生まれながら未来に紛れようとする美奈子と、未来に生きながら過去に憧れる伊藤。
ふたりの出会いは、幸運だったのだろうか。
それとも、不運だったのだろうか。
母への反発以外はどこか消極的な美奈子は、積極的な伊藤のペースに巻き込まれていく。
その関係がどこへ向かうのか。
光へ向かうのか、暗雲へ向かうのか。
息を潜めるように読み進めていった。
終盤で、自分がある前提から読んでいたことにやっと気づいた。
その瞬間、物語の見え方が静かに反転した。
最後に届くのは、光なのか。暗雲なのか。
読み手として何を願ってしまうのかは、もう言うまでもなかった。
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失われてから、やっとその大切さに気づくものがある。
母の強さ。
血が通っていても、分かり合えないことがあるという事実。
それでも、希望を捨ててはいけないということ。
一緒に生きたいと思うなら、信じること。大事にすること。
現実を直視するのは、いつだって苦しい。
でも、そこからしか気付けないものがある。
美奈子と伊藤、ふたりの生き様から、200年という時と、装画「夜のあいまい」の境界を超えて、静かに静かに伝わってくるものがあった。