鹿と蝶
お嬢様、なつかない護衛に出遭う
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刊行日 2026/08/12 | 掲載終了日 2026/08/12
ハッシュタグ:#鹿と蝶 #NetGalleyJP
内容紹介
「後宮の烏」「花菱夫妻の退魔帖」「烏衣の華」シリーズの白川紺子がおくる新シリーズ。
☆☆半人前スパイのお嬢×公安の無愛想な番犬!☆☆
資産家令嬢・早乙女蝶子の裏の顔は、政府直属の半人前諜報員。
5年前に父が自死し、以来さびしさを抱えたまま、父の腹心の部下だった東雲の下で働いている。
ある日彼女は、公安警察の青年・鹿野を運転手にと押しつけられる。
空襲で家族をなくし、天涯孤独の鹿野は、軍人の娘である蝶子の境遇に怨みを抱いていたが、
早乙女家を探る密命とお嬢の護衛を同時に果たすことになる。
互いに相性最悪と感じる孤独なふたりが、互いの目的のため、嫌々協力関係に──!?
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著者/白川紺子(しらかわ・こうこ)
三重県出身。同志社大学文学部卒。雑誌「Cobalt」短編新人賞に入選の後、2012年度ロマン大賞受賞。主な著書に「後宮の烏」シリーズ(集英社オレンジ文庫)『三日月邸花図鑑』『九重家献立暦』(講談社タイガ)「京都くれなゐ荘奇譚」シリーズ(PHP文芸文庫)「花菱夫妻の退魔帖」シリーズ(光文社キャラクター文庫)「烏衣の華」シリーズ(角川文庫)などがある。
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★★★
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出版情報
| ISBN | 9784065441299 |
| 本体価格 | ¥720 (JPY) |
| ページ数 | 243 |
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教育関係者 645139
《紅葉に鹿、牡丹に蝶
信じない二人が、昭和30年の裏札をめくる》
終戦から10年。
国内はようやく混乱期を脱し、安定への道を歩み始めていた。だが一方で、日本はアメリカから「反共の砦」と位置づけられている。
それは、息を潜めていた戦前からの勢力が、再び動き始めるには格好の時期でもあった。さらに、ソ連や中国の影も、これまで以上に手を伸ばしてくる。
その動きを見抜く側もまた、安定を守るために活動しなければならない。
しかも、東雲機関の出自もまた、自分たちが抑えようとする勢力と同じ戦前にあるという皮肉。さらに、目的を同じくするはずの東雲機関と公安も、スムーズに連携できずにいる。
そんな時代に即した背景があるからこそ、登場人物たちの考えや行動、関わり方に、暗い実在感が生まれているのだと感じた。
かつて軍の特務機関を率いていた早乙女は、部下たちを責任をもって帰国させ、その後死亡した。
東雲機関を率いる東雲は、その大恩に報いるため、早乙女の娘・蝶子を部下として迎え、庇護している。
一方、同じ目的を持ちながら、しばしば対立する東雲機関の内部情報を探るため、公安から鹿野が派遣されてくる。
表の安定と、その裏側の蠢き。
そこから始まる物語は、最初から緊張感をはらんでいる。
体よく蝶子の守り役兼監視役にされた鹿野。互いに相性が合わないことを隠そうともしない二人は、それでもそれぞれの目的を果たすため、協力することになる。
父の死の謎を解くため。
東雲機関の内部情報を知るため。
どちらも、一人では到底成し得ないことだろう。
でも、本当に相手を信じていいのか。
いや、そもそも信じているのか。
二人の腹の奥まで探るように読み進めた。
そして、二人が巻き込まれる殺人事件。
更に、蝶子の父が書き残したとされる、社会の裏側の構図を示す「S手帖」。その存在は本物なのか。
表では、令嬢とお付きの運転手。
裏では、半人前の諜報員と公安刑事。
加えて、一癖も二癖もある人々が、二人の周囲に絡んでくる。
その両面性と、重なり合っていく謎。
蝶子が次第に渦中へと引き込まれていく様が、物語の緊張をさらに深めていく。
「口うるさいな」
「飼い犬のつもりだから」
そんな言葉を交わしていた二人が、いつしか同じ言葉を、少し違うニュアンスで口にするようになる。
そして、軽口を叩き合える間柄へと変わっていく。
全てが一本の線でつながる時に現れる真相。
その真相を取り巻く諸々が、終戦から10年という時代そのものを象徴していたことに、息をのんだ。
得より縁で動く蝶子。
そして、いざという時には筋を通す〝漢〟たち――東雲、鹿野、槇。
サスペンスとしての読み味はややライトだが、蝶子と鹿野の掛け合いの軽やかさと、その背景に沈む戦後史の暗さとの落差が、この作品の持ち味なのだと思う。
そして読み終えてから、タイトルの「鹿と蝶」に立ち返った。
花札の「紅葉に鹿」と「牡丹に蝶」。
華やかな札の向こうに、二人が背負う影が重なる。
終戦から10年目を舞台にした、この二人の次の活躍も楽しみだ。
書店関係者 673506
父の死にどこか納得行かないものを感じて、なかなか消化しきれずにいた蝶子。そして空襲で家族をなくし天涯孤独ゆえに、軍人の娘である蝶子の境遇に内心思うところのある鹿野。お互いのことを相性最悪と感じながらも、戦前からの勢力やソ連や中国の影も蠢く状況で、お互いに知りたい情報を得るために一時的に協力関係を結ぶことになった孤独なふたり。舞踏会で起きた殺人事件と蝶子の父が書き遺したとされる手帖を軸に、様々な思惑が垣間見える中で、どこか危なっかしい蝶子らしさが出た展開でしたけど、いくつもの出来事が繋がっていった結末もなかなか印象的で、蝶子と鹿野の気になる距離感もこれからどうなるのか楽しみになりました。
図書館関係者 685436
スリリングでどきどきしながらも、ほろりとさせる展開は、さすが白川先生と思いました。
小物やその時代の地域の雰囲気まで丁寧に書き分けていらっしゃるので、目の前に映像が広がり、上質な映画を観ている気持ちになります。
次巻も絶対読みたくなる展開です。