叔父は肩幅が1メートルあったらしい
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刊行日 2026/09/24 | 掲載終了日 2026/09/23
ハッシュタグ:#叔父は肩幅が1メートルあったらしい #NetGalleyJP
内容紹介
肩幅が1メートル近くあることに苦悩した男の人生を描いた表題作「叔父は肩幅が1メートルあったらしい」、
言葉をほとんど話さない幼馴染との友愛を描いた「しゃべるのがおそい」、
浴槽で暮らす鰐との交流を描いた「ともだち」、
スーパーのパートタイマーに応募してきた金星人との日常を描く「金子さん」、
予定よりも早く落ちてしまった流れ星が訪ねてくる「流星ピストル」など、
日常のなかにまぎれこむちょっと不思議な出来事をとらえた、切なくもあたたかい気持ちになる短編集。
出版情報
| 発行形態 | ソフトカバー |
| ISBN | 9784569861739 |
| 本体価格 | ¥1,900 (JPY) |
| ページ数 | 240 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
図書館関係者 1038994
どの作品も不思議なお話。しかし嫌な気分になる不思議さとは無縁の、温かいお話ばかり。
タイトルのお話も、嫌な想いをたくさんしてきただろうけど、とっても優しい叔父さん。鳥が止まる木も、あんなふうに考えられるなんて素敵。
教育関係者 645139
《奇想の向こうに、いつも人のぬくもりがある》
『金子さん』
金星人の金子が店に馴染めるか心配していた笹本店長。
一方、同僚のパートたちは肩ひじ張らずに付き合っている。多様性(ダイバーシティ)も、立場を背負うと難しくなるものなのか。
でも、暗黙の共通理解に疎いのは仕方がない。あれだけ明るく頑張っている金子さんだけど。
そんな金子さんが帰っていく後ろ姿を見ていた笹本店長。
その様子に、彼もようやく肩の力が抜けたのだろう。
共感し、そしてクスッと笑うことができた。
それがダイバーシティへの第一歩なのだろう、きっと。
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『みずうみ』
全てがゆっくりなみずうみ。でも真っ直ぐに進んでいく。目を閉じると広がる白い湖を見ながら。
せわしなく、でもあちこちに立ち寄りながら進んでいくめぐみ。
でも、戻る場所はいつも決まっている。
そして、長い時をへて2人の人生がまた交差するとは。
それが当たり前だと振る舞っているみずうみとめぐみの様子に、胸がぽっと温かくなった。
その時に空から降ってきたものが、みずうみのまぶたに宿るソルトレークシティと同じようになりますように。
そう祈っていた。
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『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』
人生がどんどんうまくいかなくなることを、「転がり落ちるようだ」と言ったっけ。
なら、真夜中の坂道を、自分から前回りで転がっていってみたら、どうなるだろう?
十鱒に誘われ、典介は転がっていく。必死に登っている影たちをすり抜けて。
気持ちよく、気持ちよく。
ただ気持ちよく。
そこまで読んで、やっと思い出した。
Rolling Stonesの名曲、“Jumpin’ Jack Flash”を。
自分には、あの〈辛さに惑い、そこから抜け出そうとする者への讃歌〉のように聞こえる曲を。
自分もある時から、人生の下り道をずっと歩いてきた。
下っているのに、足は重く、苦しくて。
ならば、自分もRolling Stoneとなって、転がり落ちていってみよう。
きっと朝日が迎えてくれるから。
きっと。
━━━━━
『流星ピストル』
冬の真夜中、不機嫌なオリヴィエの家を訪ねてきたのは、ミドリ色の流星・ティーミド。
オリヴィエが夜空に向けて撃った流星ピストル。
それから始まる流星群。
思わず声をあげてしまった。
願いが叶えられると分かったなら、願うことはもう目的ではなく、次へ進むための手段になる。
ならば、あとは実行するだけ。
内気なtimidだってできたんだ。
オリヴィエの願いも、そうなりますように。
付記
翌朝オリヴィエを訪ねてきた2人の男性。
ただ、この名刺に記された座標、逆になっている。
その理由を考えていたら、思わずクスリとしてしまった。
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『伊藤農園』
お笑いコンビ「伊藤農園」。
大学時代、コンビを組む前の初めての2人のやり取りを読んで、思わず爆笑。
そして、ポテのトメへのコンビ結成の誘い文句も最高。
「トマトは光を浴びないと、いい実を結ばない」とは。
だからこその、このコンビ名に思わず納得。
でも、ジャガイモとトマトは同じナス科。
だから一緒に植えたら、互いの生育を邪魔し合う。
ポテとトメだって同じだった。
やはり、ギクシャクしてしまうとは。
でも、2人して「日の当たる場所」に行けた。
それはどうして?
だって、植え合わせなど関係なく、いい芋といい実には光こそ必要だからだよね。
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『花を刺す』
ひたすら外出禁止令が続く。
僕の妻で、花屋をしているシルヴィは、手持ち無沙汰になり花の刺繍を始める。
ガーベラ、カーネーション、ユリ、バラ⋯⋯⋯。
果てしなく、果てしなく。
そして、開けた窓から風が吹き込んできた時、それが起きる。
それは、救いではないかもしれない。
奇跡でさえないかもしれない。
でも、人々の癒しになった。
歓声をあげさせてくれた。
それに感謝。
まだ、世界は人を見捨ててはいない。
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『或る男』
特徴がない、という特徴。
人は自分の持つ記憶を引き出し、彼に投影する。
だから彼は、自分を押し出さず、求められた役を完璧に演じる。
主人公を決して喰わない端役。
そんな、霞んだ自分を手放しかけたことは、何度もあるだろう。
でも、彼が自分を感じていられたのは、妻のエリザが傍らにいたからのはず。
でも、夫である必要がなくなったら、なぜかれはすんなり引き下がったのか。
正面から問い詰めたかった。
でも、それが彼なりの愛なのか?
自分であることを手放してまでの愛なのか?
その後の彼は、世界でひとりだけ、でも誰でもないという矛盾した孤独の中で生きるしかないはずだった。
それでも、その矛盾ゆえに生きていける。
そんな更なる矛盾の円環に閉じ込められた、残りの半生。
だから読みながら、彼のエピタフはタイトルの「或る男」となると確信していた。
ところが、彼の最期がこのような形で訪れるとは。
名前さえもない〝彼〟は、じつは何人分もの幸せに包まれていたなんて。
そう知り、目頭が熱くなった。
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『よっちゃんはいい子』
「よっちゃんのため」
わたしのその思いは、ときにはよっちゃんを悲しくさせる。
それを見たわたしは、加害者のような気分になる。
だから、感謝されても分からないふりをするのだろう。
そしてきっかけは、おばあちゃんの言い間違い。
そこから始まっていく迷宮に戸惑い、ただただ読み進める。
そして、やっと出口にたどり着いた時、世界の変容に思わずめまいを覚えた。
「よっちゃん」はいい子。
そして、わたしである「さちっちゃん」もいい子。
そう。同じいい子。
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『叔父は肩幅が1メートルあったらしい』
生まれた時から人の2倍の肩幅を持っていた叔父。
でも、それ以外は温和で、運動は苦手な叔父。
彼は常に目立たないように、そして世話になった人に迷惑をかけないように気をつかってきた。
それも常に。いつでも。
その様子に、読んでいていたたまれなくなった。
だから、最期の叔父の行動は夢のようだった。
彼の願望が叶ったようだった。
だからこそ、これが全て伝聞なのだと、やっと気づいた。
それが、叔父の願いだから。
でも、彼の優しさとその思いはいつまでも変わらない。
最後の一文を読んで、彼が微笑んでいる気がした。
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『ともだち』
ペット禁止のアパートなのに、「ともだち」だから大丈夫だと言う鰐と暮らす僕。
初代プリキュアが大好きで、涙もろい鰐。
ともだちだからこそ、失った寂しさを分かち合える。
ともだちだからこそ、心の隙間を埋めてくれる。
心が通い合う相手だからこそ、「ともだち」と言い合えるのだね。
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『たばこ屋のばばあ』
たばこ屋では少年誌を前日に、そして50円安く手に入れられる。
猫を絡めたそのカラクリに、思わず微笑む。
さらに、月人とばばあとの契約に、今度は口をあんぐり。
そんな契約になっていたとは。
こうして、無欲で親切なばばあは、今でも猫たちに慕われ、気遣われ、たばこ屋でこっくりこっくり。
どうかこの風景が、いつまでもいつまでも、続きますように。
━━━━━
『朝食みたいなメニューが好き』
「さようなら、とりあえず」
なんて素敵な言葉。
永劫の別れではなく、いつかの再会を約した言葉。
アステロイドベルトを巡回するバスの運転手は、エイト。
自分のものではないということが、愛へと結びつくエイト。
だから、エイトは妻と別れてからも、程よい関係を続けていられる。
「さようなら、とりあえず」で終わる元妻からのメールを、愛おしく読んでいくことができる。
始発と最終のバスに乗り、あとはずっとバス停のベンチに座っている男は、バンブルビー。
妻との叶わぬ約束を信じて、行動し続ける男。
エイトがバンブルビーの最期の姿に向かって小声で言ったのは、良い知らせをもたらして戻ることを願っていたからだと信じたい。
「さようなら、とりあえず」と。
━━━━━
『しゃべるのがおそい』
人が嘘をつくたびにある物質が生成され、そのためこの惑星がはじけそうになっている。
この書き出しに、胸がチクッと痛んだ。
それを知ってもなお、嘘が減らない。いや、増えていくヒトの様子に。
胸の痛みが続いた。
でも、クピルナは言葉を話すのが遅かった。
だからクピルナは嘘を言えない。
ヒトの中で一番安心で、ほっとした。
でも、クピルナが言葉を紡いだら?
それがもし嘘だったら?
15年分の重さだったら?
そのあどけなさに願いを込めた。
━━━━━
まとめ
奇想の現代から遠い未来まで、13の物語は軽やかに現実の外へ踏み出していく。
金星人も、月人も、鰐も、宇宙を走るバスもいる。
でも、その中心にあるのはいつも、誰かを思う気持ちだった。
不思議で、可笑しくて、ときに切ない。
一篇を読み終えるたびに小さな灯りが残り、13篇を読み終えた時には、その灯りに温かく包まれている。
そんな掌編集だった。
図書館関係者 685436
ひとつひとつのお話はとても短いのですが、ぎゅっと詰まっていて濃厚でした。
日常を入口にしていますが、ふわっと不思議な場所へ連れて行ってくれる温かな味わいの話ばかりで、和やかな気持ちになりました。
大木 芙沙子さんの話をもっとたくさん読みたいです。
レビュアー 946550
まさに珠玉の短編集!
日常のすぐ隣にこっそりと存在している不思議な出来事。優しくてどこか切ない世界観にすっかり魅了されました。
表題の主人公以外にも、個性的な登場人物が次々に登場。
それぞれが、不器用ながらも一生懸命に日々を生きている姿がとてもよかったです。生きづらさや寂しさを、奇妙で愛らしいユーモアで包みこみ、そっと寄り添ってくれるような展開でした。とても読みやすく、そして優しい気持ちになれる物語ばかりでした。
そうそう。このタイトルに決めた方に拍手を送りたいですね!
レビュアー 1469440
語り口調はゆるいのだけれど、傑作である。
酔狂で突拍子もないのだけれど、めちゃくちゃ刺さる。
短篇集の表題からぶっ飛ぶが、
第一作の「金子さん」を皮切りに
おおっ~ツコミどころの満載の冒頭に胸が湧く。
本物の金星人と話す物語なんだが、
異端設定を「これは小説の世界」と距離を置くことができない。
巧みにその手の乗っている。
そして手のひらで転がらせられている。私は上機嫌である。
もちろん、
<I'm fine,Thank you. 同じ言葉が同じ筆跡で続られている>
私はこれほどあたたかい「I」を聞いたことがない。
表題作は意を突いた。
だが、「或る男」の
好きなやつ、かくありたい、これでいいこれがいい感に
うごうごが止まらなかった。
そして、「流星ピストル」にやられた。
こころの尖りが削られた。星だけに。
だれかと居るけどひとり。
どんなに哀しくても大人なんだから泣かない
決めたな夜に読みきった。
書店関係者 681228
このタイトルから、こんなにも切ない気持ちにさせられるなんて思いもしませんでした。作者はどうしてこんな世界を創り出せるのでしょう。確かに不思議なことがあるのに、彼らはまるで近所にいるありふれた人たちのような親しみもある。日常にその不思議が溶け込み、私自身すらその一部なような気持ちになれてしまう。全ての物語がそうでした、ずっと口の中で転がしておきたくなる飴玉のような作品集。この不思議は、案外すぐ近くに存在しているのではないだろうか。そして今、どうしようもなくなんの変哲もない蒸しパンを食べたい。
書店関係者 940038
いや、設定が最高すぎる!
次は何が出てくるんだ!? とワクワクしながらページをめくってしまいます。
とんでもなく不思議なのに、読み進めるほど、その世界が不思議ではなくなっていく。奇妙な存在を排除するのではなく、その隣に座り、ときには友だちになる。そんな物語たちを読んでいると、誰かに寄り添うことのあたたかさが、じんわりと心に満ちてきます。
奇想と人間味が見事に溶け合った愛おしい短編集。
レビュアー 781279
喜怒哀楽、そんな感情表現では足りないほど一編ずつ色んな感情が湧いてきました。
ちょっと不思議な日常に起きる出来事、SF的な世界観。
どの短編を読んでもこれ好き!となりました。今年読んだ短編集の中で一番好きです。
特に表題作にはやられました。
多様性なんて言葉で片付けられないし、他人の想いに寄り添うなんて高慢だとも感じました。
それでも小さな日常がどこかで続いていて、金子さんにも伊藤農園さん達ともすれ違っているのかもしれません。
読み終えて、自分の視界に見える世界が優しく感じるのは、この本が私の中の負の感情を洗い流してくれたからなのでしょう。
レビュアー 513020
スーパーのパート募集に応募してきた金星人の金子さん。外見は地球人とそうは変わらないものの・・・。
宇宙人が、星自体が、動物が喋るといった少し不思議な世界線で日常を描いている。侵攻や侵略といった大事ではなくあくまでも日常生活の一コマを切り取っている為か、そこがあくまでも想像上の世界ではなく、何千億年隔てた過去や未来で、何千兆光年離れた地球に似た星で起きる現実か、現世界の空間に手を突っ込み一枚空間をめくった隙間から覗ける世界での出来事のように見える。そこで感じる違和感は嫌悪感を伴うものではなく、純粋な驚きと好奇心、クスッとするような微笑みをもたらすのが秀逸。
「これぞSFの醍醐味」といえそうな不思議な不思議な世界線での日常短編集。
書店関係者 575593
星10個くらい付けたい!
どの話もちょっと不思議なのに破綻していないし、尚且つしっかり面白い!
短編だからこそ成立するこのアンバランスな完璧さ。
全てが絶妙なバランスで成り立っている!すごく好きかも!
書店関係者 1816442
もう、なんて不思議で、なんて優しくて愛おしい世界なんだろう!!
肩幅が1メートル近くある叔父さん、浴槽で暮らす鰐、スーパーで働く金星人、予定より早く落ちてきてしまった流れ星…。
設定だけ聞いたら「えっ!?どういうこと!?」の連続なのに、読み始めると不思議なくらい自然にこの世界を受け入れてしまいました。
そして一篇読み終わるたびに、「次は!?次はどんな不思議なことが起こるの!?」とワクワクして、どんどんページをめくりたくなります!
特に大好きなのが、奇妙な存在を「普通とは違うから」と排除しないところ。
その隣に座って、話をして、一緒に暮らして、ときには友だちになる。
そんな登場人物たちの姿が本当に優しくて、胸がいっぱいになりました。
表題作の叔父さんも大好きです!
肩幅が広いことで、きっとたくさん傷ついたり嫌な思いをしたりしてきたはずなのに、とっても優しい。
鳥が止まる木についての考え方も素敵で、「こんなふうに世界を見ることができる人っていいなぁ」と、叔父さんのことが一気に愛おしくなりました。
どのお話にも、不器用さや生きづらさ、寂しさがそっと隠れています。
でも、それを悲しいだけのものにせず、ちょっぴり奇妙で可愛らしいユーモアでふわっと包み込んでくれるのが本当に好き!
「変わっていること」も「うまくできないこと」も、その人を形作っている大切な一部分なんだと、そっと肯定してもらえたような気持ちになりました。
ひとつひとつは短いのに、どのお話もぎゅーーっと魅力が詰まっていて、読み終わったあとの余韻まで濃厚です!
とんでもなく不思議だったはずの世界が、読み進めるうちにどんどん居心地の良い場所になって、「もっとここにいたい!」と思ってしまいました。
日常のすぐ隣に、こんな不思議で愛おしい出来事がこっそり隠れていたら素敵だなぁ。
奇妙で、可愛くて、ちょっぴり切なくて、ものすごく優しい。
この世界観が本当に本当に大好きです!!
読み終わったあと、誰かに少し優しくしたくなるような、とっても素敵な短編集でした!