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タンゴ・イン・ザ・ダーク

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レビュアー 448904

自身が公務員やからということだけで選んだ一冊でしたが、本当に凄い小説を読んだという感じ。
とにかくページを進める手が止まらず一気に読み終えました。

地下室に妻が閉じこもってしまうけれども没交渉ではないという非現実的な状況から、次第に主人公が変わっていってしまう展開がとにかく興味深く、一人称の視点で描かれているのもあって地下室にいる妻がおかしいのか状態に困惑している夫がおかしいのか次第に分からなくなって作者の思う壺にはめられるという技巧的な小説でもあります。
序盤は展開が気になって、夫の生活が変わり始めるはちょっと怖くなってきて、地下室で音楽を合わせるようになると官能的な快感に襲われて、最後は茫然自失……物語を読んで受ける感情・感覚の振り幅がもの凄い小説でした。

……妻の顔見て、ちゃんと話しよう。

蛇足ですが、二つ。

書き下ろしの「火野の優雅なる一日」は、一冊の本として収録しているのは好きになれませんでした。

物語には関係ありませんが、元戸籍担当として。「恵」「惠」は異体字ですが、「同じ漢字」という扱いなので、双子の名前として出生届を出すのはギリギリアウトな気がします。受理伺いを法務局に出すことになりそうな気がします。

ぜひ本作品をお好きな書店で注文、または購入してください。