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会員のレビュー

カバー画像: ふしぎ駄菓子屋銭天堂14

ふしぎ駄菓子屋銭天堂14

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レビュアー 592770

子どもたちの大人気シリーズと聞いて読んでみた。
 銭天堂というふしぎな駄菓子屋では、ある硬貨を持ってきたものに、望みをかなえる駄菓子を売ってくれる。その硬貨は「本日のお宝」と称され、ある決まった年のある決まった金額で毎日種類が変る。駄菓子屋は普段みかけないのに、なぜかお宝の硬貨を持ったものだけがみつけ、引き寄せられる。そして紅子という和服の大きな女の人に、駄菓子を売ってもらう。すると望みはかなう。ただし説明書きをきちんと読まないと、大変な目にあうこともある。

 銭天堂で駄菓子を買った人の独立した物語が6話。短編の裏では、どうやら陰謀のにおいのするサイドストーリーが、シリーズを通して動いているらしく、プロローグとエピローグ、それに6話の真ん中にはさまれた1話に描かれる。このサイドストーリーを通して、銭天堂の謎が、少しずつ解き明かされてしくみになっているようだ。もう14巻だから、この巻だけ読むと、意味がよくわからない。これでは、1巻から読まなければならないではないか!
 だが、14巻だけでも十分楽しめる。一話一話が非常によくできているからだ。それぞれの主人公(駄菓子屋に訪れる人)は、7歳の男の子から66歳の退職後おじいちゃんまで、幅広く、ごくありふれた、でも本人には切実な望みをもっている。その望みが叶って喜ぶが、たいていは調子にのりすぎ、あるいは、たよりすぎてしくじる。
 人間的な弱みが描かれて、読者が容易に共感できて、笑ったり怖がったりできて、オチがある、小気味よい、魅力的なストーリー展開になっている。その章のタイトルにもなっている駄菓子のネーミングがユーモラスだ。掛詞になっていて実に巧い。
 子どもたちに人気なのは大いにうなずけるし、大人も気楽に読めて楽しめる。

 おばさん読者である私が、最も興味深かったのは、最後の「みせびら菓子と……」。テーマは虚栄心と嫉妬心。幼稚園で送り迎えをするママたちの表面的な仲の良さのうらに潜むもやもやした黒い気持ちが、外から見える。自分にも少なからず心あたりがあり、ぞくっとした。
「もてもてもち」の小学生には、当たり前の報いと思う一方で、「レアレアチーズケーキ」のおじいちゃんには、お気の毒すぎると思った。

 それにしても、驚くのは現在14巻でさらにシリーズが続くこと。これほど巧くできたストーリーを、こんなにも量産できるとは、作者の想像力の力量に感嘆するばかりだ。

ぜひ本作品をお好きな書店で注文、または購入してください。