蹴爪(ボラン)

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刊行日 2018/07/24 | 掲載終了日 2018/09/04

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内容紹介

異国の少年の物語だけど、これは、“ぼくたち”の姿だ――。

デビュー作「甘露」がいきなり芥川賞候補になった新鋭が、想像力を飛翔させた待望の初小説集!

闘鶏場で胴元を務める父親が、悪魔から村を守る祠をつくる責任者となった日から、ベニグノの周囲は少しずつ変わり始めた。幼なじみのグレッツェンの大切な鶏が殺され、島で殺人事件が起こり、地震で祠が倒壊し――。東南アジアの島の少年を襲う熱くて不穏な暴力を描いた傑作。(「蹴爪(ボラン)」)

13歳で出会ったぼくたちは26年間、いつも地元のサッカーチームを応援するためにスタジアムに通ってきた。苦難を抱えた3人と一緒にいるため、ぼくは嘘をつき続けている――。甘酸っぱくてやるせなくて、でも忘れたくない、ヨーロッパの島で巻き起こる青春小説。(「クイーンズ・ロード・フィールド」)

異国の少年の物語だけど、これは、“ぼくたち”の姿だ――。

デビュー作「甘露」がいきなり芥川賞候補になった新鋭が、想像力を飛翔させた待望の初小説集!

闘鶏場で胴元を務める父親が、悪魔から村を守る祠をつくる責任者となった日から、ベニグノの周囲は少しずつ変わり始めた。幼なじみのグレッツェンの大切な鶏が殺され、島で殺人事件が起こり、地震で祠が倒壊し――。東南アジアの島の少年を襲う熱くて不穏な暴力を描いた傑作。...


おすすめコメント

文學界新人賞を受賞したデビュー作「甘露」が芥川賞候補となり、第2作の発表まで4年かかったものの、その後は意欲的に作品を発表し続けている期待の新鋭の初めての単行本です。

本書に収録されている2作は、ともにアジアとヨーロッパの島を舞台にしていて挑戦的です。異国を舞台にしているものの、そこに描かれているのは少年を取り巻く不穏な暴力や取り返しのつかない青春であり、普遍性があります。
今後ますます大きな作品を書いていく才能が、想像力を飛翔させた瑞々しい小説たちを、ぜひお読み下さい。

文學界新人賞を受賞したデビュー作「甘露」が芥川賞候補となり、第2作の発表まで4年かかったものの、その後は意欲的に作品を発表し続けている期待の新鋭の初めての単行本です。

本書に収録されている2作は、ともにアジアとヨーロッパの島を舞台にしていて挑戦的です。異国を舞台にしているものの、そこに描かれているのは少年を取り巻く不穏な暴力や取り返しのつかない青春であり、普遍性があります。
今後ますます大きな作品を書...

出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784065123065
本体価格 ¥1,600 (JPY)

NetGalley会員レビュー

生まれた国、家族、経済状態、襲いかかる不幸。自分で選べないものに翻弄されるしかない少年、あるいは少女。それは幼い頃の自分の姿なのかもしれない。南の島の闘鶏の蹴爪の画像を検索してみた。それは小振りのナイフにしか見えなかった。どちらかが死ぬまで戦うそうだ。主人公の選択肢が摘み取られ、逃げ場がなくなっていく閉塞感に、明るい未来が待っていないことはわかっていたはずなのに…。
主人公に暴力を振るう兄が不思議だったが、二羽の闘鶏だとすればあの未来しかないのだろう。やりきれない気持ちでラスト1行を読み終えた。

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羽根をむしり肉を抉る“蹴爪”の刃に断末の沈黙。闘鶏に魅せられしベニグノ少年が、血の匂いを嗅がしながら記憶を語りだす。靄の中を歩くベニグノの背中が時おり掻き消され、言葉足らずの語りがどこに向かっているのか見失ってしまいそうだった。ベニグノのポケットに潜ませた変哲のない赤いガラス玉は、元凶をもたらす魂を蓄積していった、ベニグノの化身だったのかもしれない。パナマの熱風がじっとりと嫌な不穏さを残していった。

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表題作「蹴爪」と「クイーンズ・ロード・フィールド」の2作品を収録。
同じ著者の描き出す世界が全く違うものにみえた。
両作品ともに異国を舞台としており、互いに異なる国ではるが、そこには出口のみえない葛藤を抱えた少年少女たちがいる。

「蹴爪」
東南アジアの貧しい村に住む少年・ベニグノ。
彼の周囲に在るもの、それは悪魔にまつわる迷信、殺人事件、熱帯の空気、貧困、血、地震、闘鶏、暴力、生臭さ。
そうした不穏は少しずつ、少しずつ島全体に伝播し、次第にベニグノは追い詰められていく。
限界点を越えたとき、少年は蹴爪を振るう。

「クイーンズ・ロード・フィールド」
4人の少年少女たちが出会ったのは13歳のときだった。
彼らをつなぐのは地元のサッカーチームだった。
それから26年間、いつも4人は一緒にいた。いつもサッカースタジアムがそこにあった。
大切なものを失ったとき、悲しみを乗り越えるとき、ただ、そこに在るだけで拠り所となるものがある。
移り変わるものがあるように、ずっと変わらずにそこに在り続けてくれるものがある。

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闘鶏の盛んな東南アジアの村で暮らす少年少女たちの日々を描いた表題作。
併録は、スコットランドの街で暮らす幼馴染みたちの友情の物語。

閉塞感と暴力に翻弄される少年を主人公として生々しくどこかエロティックな表題作が「影」だとすれば、併録作は青春の共犯者たちの思いやりと苦いユーモアに満ちた「光」だ。

どちらにもモチーフとして「実兄からの暴力」が出てくるのが印象的。東アジアでは暴力は生々しくも不気味な求心力をもった逃れられないものとして描写され、スコットランドでは主人公が幼馴染みたちと対等につきあうための方便として存在する。

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