線は、僕を描く
砥上 裕將
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刊行日 2019/06/25 | 掲載終了日 2020/03/01
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内容紹介
本屋大賞2020ノミネート作品!
小説の向こうに絵が見える!
美しさに涙あふれる読書体験
(あらすじ)
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、 アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。 なぜか湖山に気にいられ、その場で内弟子にされてしまう霜介。
反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけての勝負を宣言する。 水墨画とは筆先から生み出される「線」の芸術。描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、 線を描くことで回復していく。
そして一年後、千瑛との勝負の行方は。
※今回は書店関係者様限定での公開とさせていただきます。
出版社からの備考・コメント
校了前のデータを元に作成しています。 刊行時には内容が異なる場合がありますが、ご了承ください。
おすすめコメント
第59回メフィスト賞受賞作! 絶賛の嵐!!
本当に新人?/王道かつ個性的/キャラクターが良い/一気に読んでしまった/傑作青春漫画のような清々しさ/文体そのものに惹かれる/描くシーンがスゴイ/絵が見える/墨の香りを感じた/傑出した才能/小説にしかできない凄みを感じる/読み終わるのが惜しい/水墨画をもっと知りたい/最高!/大傑作 and more and more!
【担当編集より】
読み終わると誰かと語り合いたくなる、やさしく温かく美しい物語です。
救われる、癒される、励まされる、言葉では伝えられない心を満たされる読後感。
「水墨画?」と思っている方も読み終わったら「水墨画!!!」となる芸術小説としての昂揚があります。
是非、ご一読ください。
そしてあなたのことばで、この作品の魅力を伝えてください!
販促プラン
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販売促進で使用させていただくことがあります。
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出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784065137598 |
本体価格 | ¥1,600 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
ちょうど鳥獣戯画展を見てきたところで、背景として書かれた草花にいたく感動していたのだが、その心持ちをどう表現するのか、その答えがこの小説にはいっぱい詰まっている気がした。
この小説は表現力が素晴らしい。線一本点一つを描くときの緊張感がとても良く伝わってくる。どうして水墨画?だったけれど、読んでみると水墨画でなきゃ、という気持ちになった。
話は親を亡くして引きこもってしまった主人公が、たまたま出会った絵師にきっかけをもらって再び外の世界に繋がり直した再生の物語だ。
哀しみを乗り越えて、自然を見、命を感じて描いた菊の絵の描写に、震えるほどの感動を覚えた。余計な言葉はいらない。「読めば分かる」である。
両親を事故で失った高校生が気持ちの整理がつかないで流されるまま大学生になり、ふとしたきっかけで水墨画の大家と出会い、水墨画を通して命と向き合っていく物語に、何度も涙した。今年になって水墨画を始めたのだが、これほどの練習量と思い入れをして初めて一つの線を引く勇気を持つことができるのだと、その覚悟のほどを思い知らされた。まずは墨汁を使わず墨をするところから始めようと思う。
水墨画の世界に引き込まれる。筆が走り、線が紡ぎ合うその豊かな世界に。1つの絵画の話の奥のヒトの話。森羅万象変わらずに繋がるヒトと自然の命の話。生きる力と世界の美しさを感じました。
本を開いたとたんに
墨の香りを感じる
植物。風景。描かれていく様が映像のようにみえる。
主人公の白い世界
墨の世界
鮮やかな対比と主人公の成長
けして優しいだけではない主人公を見守る周囲の人々
水墨画が観たい
墨の香が恋しい
あいにく絵心はないが
墨をすり文字でも書こうか。
《「おもしろくないわけがないよ。真っ白い紙を好きなだけ墨で汚していいんだよ。どんなに失敗してもいい。失敗することだって当たり前のように許されたら、おもしろいだろ」》
いささか安易な比喩表現にはなってしまうが、何かをきっかけに、止まったままの時計の針がふたたび動き出すような青春小説が好きだ。本書は心に深い傷を抱えた青年が、水墨画との出会いによって、ゆっくりと前へと歩き出す小説である。好きな青春小説は決してすくなくはないけれど、こんな素晴らしい青春の煌きを残りの人生で後何回読めるだろうか、と不安になるほどの青春小説と出会うのは本当に久し振りだ。
大口を叩いているように思うかもしれませんが、誇張無しの本音です。本当にこの作品は素晴らしい。すくなくとも私にとっては忘れられない大切な作品になりました。
『ハサミ男』『煙か土か食い物』『すべてがFになる』など、名作・怪作ミステリが多いメフィスト賞ですが、本書はジャンル的には広義のミステリにも当てはまらない、ストレートな青春エンターテイメントであり、メフィスト賞ではある意味、異色な作品と言えるかもしれません。(ミステリしか絶対に読まないという人以外の)物語好きなら、読んで損はしない傑作だと思いますが、そこは注意したほうがいいかもしれません。
動き出した時計の針。その先の物語はきっと温かなものだろうと想像して、微笑ましくなりました。柔らかく美しく、そして自然な感動に、思わず涙がこぼれました。
「これがメフィスト賞?」と訝しみながら読み始め、「これぞメフィスト賞!」と感嘆とともに読み終えた。恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』に比肩するほどの極上のエンターテインメント作品。正直これがデビュー作とは思えないほどの巧みな筆力と、デビュー作の中でも飛びぬけた熱量とが見事に調和しており、今年一番の素晴らしい感動をいただけた作品でした。
水墨画に関する描写が圧倒的なリアリティを持っていることに驚きました。読み終えて著者が実際に水墨画家であることで半ば得心がいきましたが、この「美」を見事に描き切る筆力はとても新人作家のそれとは思えません。著者が自分自身の体験にとことん向き合って紡ぎだされた言葉の数々は、それだけで読んでいて魅了され美しいと感じられます。
描写力だけではなく、登場人物の台詞も魂がこもっており、深く胸に突き刺さってきます。「見れば分かる。言葉などいらない」「美の祖型を見なさい」「この世界にある本当にすばらしいものに気づいてくれれば、それだけでいい」「形ではなくて、命を見なさい」「墨で絵を描くことが、水墨画ではないんだ」などなど、今読み返しても目頭が熱くなります。
「真っ白になってしまった経験」というのは、少なからず誰しも覚えがあることかもしれませんが、そこから水墨をやることによって恢復していく主人公の姿には、おそらく自分を重ねて感情移入してしまうことと思います。タイトルの「線は、僕を描く」という言葉が読後、私たちをやさしく、深い感動の余韻でつつみこんでくれます。
水墨は線で命に触れること。黒と白の濃淡で森羅万象を描くもの。
描写力、観察力が突出した、素晴らしい小説でした。
作者のプロフィールを最後に見て、納得しました。
だから水墨画が描かれる時の緻密な筆さばきや、失敗の許されない緊張感が、
躍動感に溢れて描かれるんですね。
文章に漂う、ほのかなユーモアも良いです。
孤独に苛まれていた霜介くんが、世界的な芸術家、湖山先生と出会い、水墨画に出会います。
思いがけない己の才能に気づき、模索しつつ磨き、励まされ、人生に一本の線が生まれていきます。
湖山先生が折々に発する警句に、はっとしました。
「花に教えを請え」「絵は絵空事だよ」。
若者たちの瑞々しい群像劇としても非常に魅力的です。
麗しい絵師、自らも更に水墨の高みを目指す千瑛さんへの、霜介くんの憧れ。
飄々とした古前くん。しっかり者の川岸さん。学園祭で起こる、水墨の奇跡。
是非じっくりとご一読ください!
(余談ですが、早々と、この作品は映画化されると感じました)
突然の事故で両親を失くしてしまった青山くんは、何をする気力も失っていました。叔父夫婦のおかげで何とか大学へ進むことはできたけれど、これといった楽しみもなく淡々と日々を過ごしていたのです。
そんな彼が仕方なくやることになったバイトの現場で目にした水墨画に心を惹かれたのです。紙の上に墨の濃淡だけで表現した絵なのに、なぜか色が見えてくる、そんな不思議な気持ちになったのです。
水墨画の大家「篠田湖山」先生に何故か気に入られてしまい、内弟子にならないかと誘われたのです。悩んだけれど、青山くんは湖山先生のことをとてもステキな人だと思えたので、内弟子になったのでした。
水墨画は墨をするところから始まります。最初は墨なんて誰がどうすっても同じだなんて思っていた青山くんでしたが、墨のすり上がりにも差が出ること、それは技術というよりも気持ちのありようが出るのだと知って、驚いてしまうのです。
水墨画に出会ったことで、青山くんは心を整えることができていったのですね。打ち込むことができるものに出会えたという喜びが、彼を前向きな気持ちにしてくれたのでしょう。
静かな、でも熱い心が伝わってくる作品でした。
久々の大ヒット作品です。あらすじにしたら地味でそれほど惹かれないかも知れませんが、文章が非常に表現豊かで、魅力的でした。主人公の心の動きや水墨画の世界が丁寧かつ魅力的に描かれています。自分も水墨画を学んでみたくなりました。
ただ、タイトルが微妙な気がします。このタイトルだと何を期待して手に取るのかなという気がしました。
作品は本当に素晴らしいと思います。
墨だけで絵を描く水墨画。
絵から色彩を極限まで削った絵画はどこまで表現力を高める事ができるでしょうか。
最高峰の水墨画家に才能を見初められた青年が独特な指導を受けながらメキメキと実力を伸ばし、水墨画の深淵に触れたとたんにとんでもない苦しみと向き合う事になる話です。
全く知らなかった水墨画の知識が少しづつ物語に沿って入ってくる、知識欲も駆り立てる巧みなストーリー。
両親の突然の死。霜介は激しい喪失感から抜け出せず、周囲の人と距離を取り孤独のの中に生きていた。親戚の家を出て通い始めた大学でも目標は無かった。友人に頼まれて行った初めてのバイトで、霜介の運命が動き始める。
精神性を描いていく繊細な物語と水墨画のテーマが溶け合って面白く読めました。
水墨画は一発勝負の世界。下地となる勉強が想像力と技術を支えている。
水墨画のススメとも取れる小説でした。
読んでいると墨の香りや線が浮かんでくる。
水墨画の事をよく知らないのに、絵が浮かび描いてる姿まで想像できる。
主人公の心も。
すごい。
一気に読みました。
私は自分自身が知らない世界、体験できない職業を描いたお話が好きだ。普段、知りえない世界を垣間見れる感じがしてワクワクする。そこに『水墨画』なんて未知なるものを出してこられたのだから、堪らず食い付いた。するとそこには、全く知らなかった水墨画家達の葛藤や苦しみ、喜びまでもが鮮やかに広がっていて一気に惹き付けられた。
まるで空っぽの器のような主人公が、ただただ描くことで外の世界と繋がり、過去と向き合い「生きる」ことを取り戻していく様と、水墨画の理解を深め技術を高めていく様がリンクして、最後には心の器が満ち満ちて幸せそうな姿に拍手を贈りたくなった。「僕が、線を描く」ではなく『線が、僕を描く』の意味がそこに込められているのだなと思います。
登場人物がみんな魅力的で、また読みながら目の前に絵が浮かんでくるくらい、あまりに水墨画家の世界が生き生きと描かれて驚いていたら、水墨画家さんが作者さんと知って2度驚かされました。さすがだなと脱帽です。
両親を亡くしてから真面目な廃人となってしまった青山くん。
ひょんなことから水墨画の巨匠に見出だされ、叡智なる世界に飛び込むことになった─。
描く“線”に生き方を見出だしていくまでの彼を、沈静な調墨で濃淡豊かに著者は表現する。
ひとたび墨を得た筆がどれほどの勢いで魂を放つのか、気圧されるほどの描写が魅力的。
しかし全う過ぎる点がいささか退屈なので、あえて“瑕”を負わせる親心があってもいい。
悪態ついても目端に捉えておきたい作家だということは記しておきたい。
両親を一度に亡くし、ただ生きているだけの大学生が、友達に誘われたアルバイトで水墨画と出会った。
彼の中に何かを見出した師匠によって、青山は水墨の才能を開花させていく。
著者の砥上氏は水墨画家なので、作画の情景が非常にリアルに描かれている。
青山くんが今まで触れたことのない未知の世界に触れていくように、私も本書を読みながら水墨画という未知の世界に触れられた。平成最後に素敵な作品に出会えました。
なんともみずみずししく、心地いい緊張感に満ちた作品でした。
とにかく文章が美しく、素直に世界に入り込めます。水墨画の世界を知らなくても大丈夫かという心配は全くあたらない。いや、知らないからこそ、素人の主人公に感情がのせられたかもしれません。
水墨画を描く過程の描写がとても丁寧で、制作現場のすぐ横で解説してもらっているような贅沢な気分が味わえましたた。なんだか自分も作者さんに水墨画を習う生徒のようです。
後半はもう、一気でした。
課題ができず引きこもって描き続ける彼に涙し、巨匠や先輩たちの優しい眼差しや言葉に感動し、どんどん成長する彼の感覚が色鮮やかに流れ込んで来るような、何とも言えない高揚感にまた涙。
日を開けず何度も読み返してしまいました。
ぜひ多くの方に紹介したいと思います。
とても良かったです!迷わずお勧めできる小説でした。
ストーリーはもちろん、水墨画という馴染みのない世界を描いていながら全く退屈する部分がなく、何にもに繋がる普遍的な深さや心が伝わってくるような筆致で素晴らしかったです。
その中には体得した者でなければわからないようなリアルさがあり、あとがきを読んだらご本人が水墨画を描かれると知り納得しました。
それにしても文章での表現力もなければここまで響かないと思うので、今後の作品も楽しみです。
この本の作者はとても心が繊細な人ではないだろうかと読んでいて感じました。
霜介の心の動きだけでなく、親友の古前の変化が丁寧に描写されている。
本の最後に水墨画で扱う道具とご本人が描かれた水墨画が載っています。
著者の砥上さんは水墨画家と知り納得。
霜介が水墨画を始めることによって自分自身と向き合うことができ、両親との別れを少しずつ受け止めていく様子に好感が持てました。
それは著者の砥上さん自身と重ね合わせているのではないか…そんなことを思いました。
とても静かな小説ですが、引き込まれて一気に読みました。
春蘭の画像も読み終わった後に調べ
「ああ、こんな絵なんだ」と確認までしてしまいました。
私は時折、筆ペンで文字を書くのですが、次は墨をすって筆で書いてみます。
読んでいて無性に墨がすりたくなりました。
両親の突然の事故死の後から自分の中に閉じこもってしまった主人公の青山くんが世界的にも有名な水墨画の先生と出会い、水墨画に魅せられながら生きる力を取り戻していくお話。
水墨画を描く方が書いている小説なので、水墨画についてもよくわかる。水墨画を見に行ってみたくなった。登場人物たちも、癖はあるが温かい人たちで読んでいて不快になることはまずない。とても気持ちの良いお話でした。
FAXでも感想を送ったのですが、何度も何度も感想書いちゃいます。
プルーフだったりゲラだったりを読み返すことって滅多にないのですが、この話だけは何度も繰り返し読み返しています。
そして何度読んでも泣いてしまうのです。
主人公が水墨画を学んでいく過程で四君子が課題になるのが、本当にすごくて、ラストに菊がくるのがもう、唸るしかないです。早く多くの人に読んで欲しい。
水墨画をあまり知らなくても読みやすく、夢中になって読んでしまいました。
虚無感しかなかった主人公が水墨画や沢山の絵師達との出会いで、変化していく様子も躍動感を感じました。絵に対する向き合い方はそれぞれまったく違うけど、どの絵師もひたむきに絵と自分と向き合っている。繊細で、それでいて力強い水墨画の世界。自分の中の水墨画のイメージも180度変わりました。自信を持って沢山の方々におすすめしたい。
美しい。とにかく美しいストーリーだった。文章でここまで絵を表現できる事に驚き!本を読んでいるのに、描いている姿を、筆の動きを感じ絵が見えてくる。そして心で見た絵に感動した。もう一度ゆっくりと読み返してまたその感動を味わいたい。そして本物の水墨画を見てみたいと思った。本屋大賞候補イチ押しです!
テーマである水墨のように穏やかなモノトーンの印象でありながら、これ以上ないほどに色鮮やかで、あたたかな春を思わせる物語でした。
どこか共感の難しい、主人公の深い孤独や絵師たちの生き方や葛藤、そしてやはりどこか日常からは縁遠い水墨画というものが、合わさるとこんなにも彼らを身近に感じられるのかと不思議な気持ちです。実際に作品を見て、そこから込められた心を感じ取っている、じんわりと染み入る読書体験でした。
一度すべてを失い、空っぽな世界を知っている青山は、墨が一滴も付いていない真っ白な紙に挑むことで、自らの過去を向き合っていく。
読んでいるうちにどんどん視界が狭まって、気づけば青山と一緒になってその世界へと没入している。
静かだけど、とてつもないエネルギーに満ちあふれている、不思議な世界観。
暗闇の中にポッと光が灯り、徐々にひろがる再生・連綿の物語。
大学生・青山霜介は事情を抱え空虚な日々を過ごしていた。ある日霜介は水墨画と出会い、その世界に引き込まれていく・・
白黒の濃淡だけで表現されている筈の世界が、これほど色鮮やかで鼓動に溢れ、匂いたち躍動感あふれる世界であることがわかり新鮮だった。
また技術の習得と共に主人公の心情が内から外へ向けられていく様子が、種子が発芽し地面から育ち伸びていくような生命の再生を感じさせる。
静謐な水面にぽつりと落とされた墨の一滴がどのような模様を描き、また鏡として水面を見た時に自分のどのような顔を写しているのだろう・・・
心にガラスの壁を隔てて世界に触れていた孤独な青年が、水墨と出会い、師と出会い、様々な人と出会い、その関わりの中で少しずつ変わってゆく。水墨を描くということは、自分と向き合う一人の作業のようでいて、しかし孤独ではない。心の内側を形にし、命そのものに触れようとする想いを感じて心を動かしてゆく。
音楽や絵画のような芸術に触れて、「美しい」「上手い」という一言の感想から抜け出すことは難しい。その絵を見て何を感じるのか、それは、その絵の作者が何を見て何を感じてその絵を描いたのか知ることに深い繋がりがあると知りました。
一本の線が真っ白な紙に描かれていくように、青年の心がゆっくりと線を描く。線が青年を描く。何を美しいと思い、何に心を動かされるのか、水墨の世界の奥深さをしっかりと感じつつも、その世界を知らずに読む私を拒絶しない大きな包容力のある物語でした。
両親に先立たれた主人公が水墨画と出会い生きることを見つめ直すヒューマンドラマ
物語序盤、青山が展覧会場で千瑛の作品の良さ悪さを的確に表現するその言葉のセンスが歴代の本屋大賞受賞作を思い出させた。
筆を硯に置く時のコトっとした音や、紙の上を筆がシャっと滑る音が聞こえてきそうなくらい静かな描写が続くが、半紙の上に描かれた色を持たないはずの絵には鮮やかな色がはっきりと見え、その爆発的な熱量は読む人の心にダイレクトに訴えかけてくる。
この物語を読むまで水墨画がこんな気迫に満ちた世界だとは知らなかった。
作品のタイトルである「線は、僕を描く」がなぜ僕は線を描くではないのだろうかと思ったが終盤でその意味がわかった。
自分の在り方、芸術を通して自分と向き合い止まっていた時間が動き出す様子はとても感動的。水墨家ならではの細密な筆致で描かれた芸術の世界を堪能出来る作品。
そして私は今年の本屋大賞はこの作品で決まったと確信している。
白と黒から出来ている水墨画に、色鮮やかな世界が感じられました。水墨画の美しさや、その世界の奥深さを表す言葉の数々には脱帽です。キャラクターも魅力的で、主人公の成長を見守るような気持ちで読みました。一見すると不思議なタイトルも、読めば納得です。
読んでいるうちに
水墨画のことなど全く分からない私でも
読みやすく、あっと言う間に
読み終えてしまいました。
読み終えた後は、なんだか
清々しい気持ちになります。
水墨画を見る目が変わりますね。
とても興味が湧きました。
物語としては、なんとなく
予想した通りではありましたが
それでも、とても綺麗なお話で好きです。
若い人にぜひ読んでいただきたいです。
そして、ひとつひとつの言葉を
胸に刻んで欲しいです。
久し振りに最初から最後まで一気に読んだ作品です。とても丁寧に描かれた本当に素敵な話でした。
主人公の心の移り変わりを繊細に表現されていて、読んでいてとても穏やかな気持ちになれます。
これから主人公がどういう人生を送っていくのか、想いを馳せる余韻に暫く浸りたいと思います。
17歳のとき両親を亡くし、無気力に過ごしていた大学生が、水墨画と出会いのめり込んでいく。水墨画の描写がすごくリアルで、細かい動作まで描写されている。水墨画は墨のみで描き、書き直しの出来ないという制約の多い絵画だが、その魅力が伝わってくる一冊。
ひょんなことから水墨の世界に踏み込んだ主人公の成長が書かれているお話です.小説という形式の文章表現で水墨の世界を描く,という困難に思えることをさらりと成し,読み進むうちに主人公を通して水墨の心が伝わってきます.あえていうなら,余白が少ないかな,というところがあるように思いますが,それは好みの問題かもしれませんし,この作品の世界を損なっているわけでもありません.水墨を描いている方だからこそ書くことができた物語です.
両親を交通事故で失い、心をほとんど閉ざしてしまった青年 青山霜介。叔父夫婦の配慮でなんとか大学へ通い、ある日友人に頼まれた展覧会設営の手伝いをしていたところ、有名水墨画家 篠田湖山に出会い、水墨画未経験のまま、なぜか弟子入りすることになる。
水墨画の世界に、青山をスカウトしてしまう湖山先生には驚きですが、それゆえ青山はどうなってしまうの...?という心配をしながら読むことに。
しかし読み進むと、こちらも何も知らないので、本当にすべてを初めて知る水墨画の世界を青山と一緒にひとつひとつ、つぶさに体験、体感することの出来るものすごい世界でした。
引き込まれ、最後までページをめくる手が止まりませんでした。
静かなのに熱い...おすすめしたい一冊です。
かつて、野沢尚の『龍時』シリーズを読んだとき、
「文章でこんなにサッカーを、視覚的に表現できるのか」と驚いた。
恩田陸の『蜜蜂と遠雷』を読んだとき、
ピアノ演奏シーンを、ここまで多彩に、豊かに書き綴れるのか、と感動した。
宮下奈都の『羊と鋼の森』や小川洋子の『博士を愛した数式』を読んだときには、
この人の描く美しい日本語をいつまでも読んでいたい、と感じた。
これらの作品と同種の感動を、この作品からも与えてもらった。
墨を摺り、筆をとり、画仙紙に描くという動作と、心の動き。
言葉にできなさそうなことを、ここまで流麗に、言葉で表現できる。
言葉ってすごい。この作者の言葉はすごい。
これまで漫然と眺めるだけだった水墨画を、今すぐ観に行きたくなった。
今年の忘れられない一冊になることは確定。
すぐに映画化されそうな予感。
読みながらぼたぼたと涙をこぼしていました。
なんでだろう、悲しいのでもなく、嬉し涙でもなく、
青山の水墨に、彼が触れる命の描写に、ただただ圧倒されていたのかもしれない。
両親を事故で失ったショックから〝生きる〟ことをやめてしまった青山が
水墨画の巨匠である篠田湖山と出会い、なんの躊躇いもなくあっという間に
水墨の魅力に惹きこまれ、没頭してゆく姿は彼が水墨と出会うべくして
出会ったのだと感じさせられました。
全てを失い、まっさらだった青山の世界は墨色に染まってゆく。急速に。
あとがきから著者が水墨家であることを知りました。
青山が線を描く姿はまるで著者が乗り移ったかのように
水墨に懸ける熱量とひたむきさが込められていました。
そして、文字で描写されるだけのそれをこんなにも切なく、美しいと感じとれてしまうのは
著者が水墨の線の美しさを誰よりも知っていて、伝えたいと願い、それを表す術に優れているからなのでしょう。
本書は水墨との出会いをきっかけに青年が人と、外の世界と、もう一度繋がり、
もう一度〝生きる〟物語であると同時に、青山という青年を通じて、著者が感じている
水墨で描かれる世界の美しさや歓び、熱い想いが込められた1冊でした。
読み終えた今も青山が描いた、菊の描写が心に残ります。
事故で両親を亡くして以来自分の殻に閉じこもってしまった霜介がひょんなことから水墨画を知り、その世界に足を踏み入れ師匠やライバルといった存在に出会い再生していく物語。水墨画はさほど詳しくない私でも美しい絵を想像できる鮮やかな表現、半分壊れているような青年の心の中を繊細に描く筆致が素晴らしかった。霜介を導く湖山先生の言葉が深く哲学的で、ジェダイを育てるマスターヨーダみたいだった。この作品を読んで興味を持ったので、いくつか水墨画を検索して観てみました。今までは美術館でさ~っと流す程度に観ていたけれど、今度からはもっと線に着目したいと思った。
静かな感動。この作品の読後感はまさにそれ。
出会いや人間関係の展開が自然な流れで、導入部分から引き込まれた。
大学生の青山が水墨画の本質に気づくまでの成長物語。
画家ではなく“絵師” 技の世界に生きている人たち。
西濱の放つ言葉がいい。「何かになるんじゃなくて、何かに変わっていく」
「描いてみせた、ということは、この世界では『教えた』ということなんだよ」
青山の才能を見出したときの「目が届くところにしか、手の技は届かない」。
芸術全般に共通する考えだと思う。
生きることに無気力になっていた主人公が、水墨画と出会い、没頭し、また、周りの人たちとの関わりを通して、前を向いていく物語。
水墨画の知識はなくても全然大丈夫。それどころか、知らない私でもすごく興味がわきました。
水墨画のことも、主人公の心の変化も、とても丁寧に描かれていて、いい意味で引っかかるところがなく、自然に小説の世界に入っていくことができました。
登場人物たちの言葉に、背筋が伸びることもしばしば。
読後は清々しく、満足感でいっぱいです。
文芸担当におすすめしておきます。
悲しみから抜け出せず、笑うことすら忘れ、心を閉ざしてしまった青年の再生の物語。
彼は運命に導かれるような出会いと水墨画の世界との出合いにより、徐々に自分と向き合い、心の中の呪縛から解き放たれていく。その過程で描かれている水墨画に関する表現力がとにかく素晴らしい。奥深さ、伝統文化の持つ力強さや安らぎを感じ、水墨画の美しい世界に私も一緒に触れている気分にさせられ、心ひかれてしまう。
そして、ラストは光に溢れた感動が巻き起こり、さわやかで、満ち足りた思いをもたらしてくれた。
巻末に描かれている著者の作品が素敵。絵は言葉にならない心を表す。うちひしがれて心を閉ざし、外の世界に目を向けていなかった主人公が、名匠に見出され、素晴らしい師や理解ある友人に導かれ、命の輝きに気づくようになる。もともとなにかの才能がある人が、偶然にもその道に進む機会を得、卓越した指導者に恵まれる僥倖。実際にも良く目にします。神さまの導きとしか思えない運命的な出会い。それを同時代で目にする幸運。芸術はいつでも深く人の心を打つ。
美しい一本の線を描く。
この線と向き合うことで少しずつ自分を取り戻していく主人公。
描かれた水墨画に命が吹き込まれていくのとともに、彼の心が潤っていく。
見てもいない水墨画が目の前に広がる。
それはとても美しく、瑞々しい。
そもそもとても涙もろいんだけど、最近拍車がかかってる。でも、涙は心のデトックスと言われてることだし、構わず流せばいいか。 この本を読んだ時もいくつかのシーンで、目頭が熱くなり、涙がこぼれた。 言葉だけでこんなにも水墨画の世界が伝わってくるなんて、言葉の力のすごさを感じた。 青山君が、ガラスの部屋から出てこられたところまで見届けられ、心地よかった。 最後の菊の画を、私も見たい。 たくさんの人に読まれるといいなと思う。
主人公は、事故で両親を失い、心のうちの白いガラスの部屋から出られなくなってしまった青年。
彼が、著名な水墨画家・篠田湖山に見出され、水墨の世界に触れるうちに、世界との接し方を思い出していく。
……なんていうあらすじだけでは計り知れない、力に満ちた作品です。
水墨画。
まったくなじみのない題材に、読む前には戸惑いました。が、大丈夫。
個性際立つ登場人物たちを追っているうちに、自然と、その世界を案内してもらえました。
ひとが持つ心や思考などの、抽象的な世界のひろさに触れられる序盤から終盤まで。
そして最終盤、なぜ湖山先生が主人公に声を掛けたのか、その理由について語られたとき、
物語は現実の過去、歴史とも結びついて、この作品が個人のものにはとどまらない時間的なひろがりまで内包していたことに気づかされ、息を呑みました。
湖山先生以外にも、たくさんの水墨画家たちが出てきます。
絵が見える小説、音が聞こえる小説。
作品の魅力を伝える言葉として、時折使われる文言です。
ですがこの小説は、文章を通して様々な絵を見せ、その絵を通して水墨画家たちそれぞれの生きざま、命のありようまでをも見せつけてきます。
(いちばん躊躇なく命をぶつけてくる水墨画家、西濱さんが絵を描くシーンでは、気がつくと涙がこぼれていました。緊迫した場面ではあれど、劇的なわけではないのに。
でも、生の命をぶつけられて平静でいられるわけがありません)
読みはじめるのに、特別な知識も覚悟もいりません。
ただ、描かれているものを受けとめてほしい。
そう願わずにはいられない作品です。
水墨画という普段あまり目にしないものがテーマで、なかなか面白かった。
水墨画というと掛け軸に書いてあるイメージで、中国の山とか、そんなイメージでした。
実際に調べてどんな感じなのか見てみたら思ったよりも写実的ですごかったです。
家族を亡くして引きこもっていた主人公が水墨画を通して前向きになっていく様は「静」かでと「清」らかという感じでした。読んでいて墨汁のにおいがしてくるようでした。
テーマは水墨画。著者自身、水墨画家らしい。
水墨画家だからこそ描ける、世界の奥深さや広さを堪能させてくれた。
自分にとっては、未知の世界。そういう世界に興味あり、味わいたいという方にはオススメ。
新鮮な世界と共に、静かな感動が胸に広がった。
タイトルに物語が収束する流れが美しい。
とはいえ、この著者は本職のテーマ以外で作品を書き続けられるか気になるところ。ここまで巧く表現できるなら他のテーマでも読んでみたいものだ。
日本人の心に響く作品です。
瑞々しくて芳ばしい。派手さはないけれどじわりじわりと訴えてくるものがあります。終盤は通勤電車の車内で不覚にも何度も涙ぐんでしまいました。
芸術家の心のありようを垣間見たような、そんな感覚もあります。昔観た水墨画「枯木鳴鵙図」がなぜあれほどに私の心を捉えたのか、その記憶とも結びつきました。水墨画家の紡ぐ言葉に奥深さを感じます。
世代を問わず、ぜひいろいろな方に読んで欲しい、オススメしたい作品です。
水墨画なんて全く縁もゆかりもない世界。でも読み終えると芸術オンチのわたしにも水墨画の面白さが少しだけ理解できる。
白黒世界の水墨画が色づいて見えるものだなんて知らなかった。水墨画は年配の人がやってるただの薄い線画じゃなかった!
水墨画のただの線に、こんなにも深い意味があって生命を感じるなんて、想像すらしていなかった。
水墨画展が見たい。水墨画を穴のあくほど眺めて作者さんの生き方を感じてみたい。
水墨画に何の興味もない私ですら
展覧会に行ってみたいと思わせるほど、
水墨画の世界に引き込まれた。
主人公の青山は水墨画を、色が見え、風を感じ、生命力があると表現しているが、私もまさに文章を読んでいるのに、絵が見え、香りを感じ、絵師になったような気持ちになる、素晴らしい描写力のある作品。
タイトルもまた良い。「僕は、線を描く」ではなく、「線は、僕を描く」。
一筋の線に自分自身の心、生き方、生命力、命そのものが現れる、だから「線は、僕を描く」なのだと、読み終わるとすとんと心に落ちる。
ぜひ1人でも多くの方にこの作品を
読んで欲しいと願う、売りたくてたまらない本です。発売が待ち遠しい!
両親を交通事故で失い、自分を真っ白な箱の中に閉じ込めてしまった青山霜介。展覧会の搬入のアルバイトで彼は水墨画の巨匠篠田湖山と出会います。何を見出されたのか、彼はその場で内弟子になり…。水墨画家の作品ということで、その描写の素晴らしさに息を飲みます。春蘭の一本の葉が細やかな筆運びで目の前にシュッと現れ、気づけは二本目の葉をどう配置するか考えている自分がいます。墨をすればその音、匂い、粘度の感触まで手に伝わります。霜介と一緒に先生方の揮毫に息を止め、霜介と一緒に筆を運びました。彼が線を描くことで恢復していく心理描写もとても良かった。久々に中断できないほど没頭する本に出会いました。堪能しました。
初めは、「水墨画?つまらなそう」と思ったのですが、読んでみたら、あっという間に水墨画の世界に引き込まれていました。そして水墨画に対するイメージそのものがずいぶんと変わりました。
墨の黒の濃淡だけで現される世界の瑞々しさ。主人公の閉ざされた心が、その線によって開かれていく様が、素晴らしかったです。
普通の人は触れる機会も少ない水墨画という芸術を文章に置き換えたような表現力豊かな作品でした。著者が水墨画家ということもあり、水墨画の描写はこの著者にしか書けないオリジナリティです。専門的なことを扱っていますが、誰にでも読み易いと思います。
一人の青年が水墨画に、絵師に出会い生きる事に向き合い成長していく物語。未知の世界の水墨画でしたが作者が水墨画家というだけあり繊細な描写で青山君と同じ様にその奥深さに少しだけ触れる事が出来ました。墨だけで魔法の様に描く姿を一度生で見てみたいです。「できる事が目的じゃないよ。やってみる事が目的なんだ。」
墨と紙の2色で下書きもなく一気に描きあげる水墨画は油絵と対照的でモデルを前にして絵を描くというよりも心の中で対象を投影し描くということが禅問答みたいで今まで水墨画は難しそうで何を描いてるのかよく分からなかったけど興味がわいてきました。
揮毫会という水墨画を実演で描くのは見てみたいです。
水墨画を通して、ある青年の生き方、生命力を取り戻していく瑞々しい作品だなと思いました。
何かを通して自分を表現する技法を身につけるということは、大なり小なり人生において大きな力になるのだと強く感じました。表現することは、生きることだからだです。
また、水墨画について何一つ知識がなかった自分ですが、気がつけばその魅力に魅せられ、無心でどんどんページを捲っていました。そして彼らの描くものを心に抱いて読み終わった時に泣きたいような切なくけれど温かく優しい気持ちでいっぱいになりました。
命のバトンのように、こうやって人から人へと受け渡されていくものが、この世の芸術の中には確かにあって、主人公が自ら新しい扉を開き進んでいく姿に勇気付けられたのは、きっと多くの登場人物だけではなく、この作品に触れた人達全てではないかと思います。
多感な年頃の中高生にも、読んでほしい。そう思える作品でした。
私たちはきっと、からっぽで生まれてくる。
この世界で起きることを吸収し、自分の中に取り込むため。
けれど、彼の中を埋めてきたものは否応なく奪われた。
遺されたのは、彼の輪郭だけ。
たった一つの出来事が人生を狂わすこともある。
けれど、たった一人との出会いで人生が輝きだすこともある。
からっぽの私たちは、どんな形にもなれる。
このことは希望であり、光だ。
この物語は読む人のこころを照らす。
まるで、いちばんうつくしい場所を指し示すように。
静かで繊細でストイック。でもその中に作者の水墨がへの熱い思いが感じられる小説だった。
深く傷つき、自分の殻の中にいた主人公青山くんが、水墨画との出会いをきっかけに成長していく。
孤独だった青山くんが描くことによって少しずつ癒されていく姿が、内面からしっかりと表現されている。何と繊細で美しい世界。
線を描き続けることで、自分を取り戻し、生きる意味や幸せに気付いていく青山くんの姿は本当にまぶしい。
この本の中では、何度も 言葉ではなく、ただ感じ、描くことでしか現せないという表現が出てくる。私は何でも言葉で表現したいと思ってしまうが、もっと感じることを大切にしたい。
『出来ることが目的なんじゃないよ。やってみることが目的なんだ』
青山くんを見守る湖山先生のまなざしの、何とあたたかいこと。
周りの人は信じて見守るしかないのだ。結局は自分で一歩を踏み出すしか、進むべき道はない。
でもそんな時、ひとりではないと
優しく、力強く背中を押してくれる一冊だと思う。
美術、芸術の中でも、基本的に黒一色で描かれる水墨画は、かなり地味という印象が強い。
しかし、本作で描かれる水墨画を読んで、地味と思う人はいないだろう。
水墨画とは、描くとは、その本質は何か、という事にひたすら真摯に向き合う青山くんの物語。
何かに向き合う事は、自分に向き合う事に繋がるというのは、水墨画に限らず。この作品はその中で、自分以外の周りの人とのつながりまで書き上げたことが素晴らしいと思った。
著者の砥上先生は、水墨画家でいらっしゃるので、技術もわかりやすくて面白かった。
水墨画に出会うことで主人公が生きる意味を見出す話。
大学生の主人公霜助の孤独に気がついた水墨画の大家・篠田湖山は、彼に水墨画を描くことを勧める。
拙い筆の動きに不安を抱く霜助だったが湖山は「できることが目的ではない、やってみることが目的なんだ」と説く。
心を自然にして描く。自分の心が、生き方が、描かれ、それは宇宙と繋がり、自分の内面の広がりに気づく。
私も含めて多くの読者が初めて「水墨画」に向かい合う経験を与えてくれる珠玉の一冊。最後まで読んで、題名の奥深さに唸る。
何もない白い透明な空間に次々と浮かび上がる水墨の色々な花々が胸の中に咲く
何度も心に震える言葉が出てくる
こんなふうに感じたい、何も考えず目の前にあるものをじっと見て感じることは自分にはできるのだろうか
湖山先生の
花に教えをこいなさい
美の祖型を見なさい
絵は絵空事だよ
言葉は深く心に響く
落ち着いて、とどまって、本質をみる
いまこの時と同じ時間はない
だから私たちは今を精一杯生きていく
そんなふうに生きていきたい
この作品は小説なのに、作中で描かれた「絵」が見えるようだ。
素晴らしい文章力。その文章力は、青年の心の変化を見事な筆致で描き出す。
そして、水墨画を通して心の中に巣くう悲しみと絶望に真摯に向き合い、自分自身を取り戻してゆく。
まさに、青年は線を描くことによって自立することができたのだ。
読み進めるうちに、タイトルに込められた思いがじわじわと沁みこんでくる。
簡単に言うと、
心に傷を負った大学生が、高名な水墨画の先生に声を掛けられ
水墨画を通して再生していく話。
なのだが、とにかくなかなか読みやめられなくて困った。
明日も仕事だしこの辺でと思いながら、夜が更けてゆく。
水墨画の技法が細かく書かれているなと思ったら、作者は水墨画家だったんですね。
主人公が成長していくさまが面白かった。
さらっとした肌触りの本です。
『線は、僕は描く』不思議な題だと思った。読み終わった後、なんとも言えないような不思議な感覚に陥った。心から滲み出るというか…
事故で両親を失い生きる希望を失っていた主人公が、水墨画や関わる人たちに出会い、立ち直り成長していく物語。
こういうとありそうとか思われそうだが、そうではない、良い目を持っている主人公は、決して話すのは上手くないと感じたけど、心の内側を見る目は確かで、それを表現してくれている。
それが水墨画と重なって、ぐっとくるものがあった。
現代社会は忙しく、なかなか自分の心に向き合う時間がないかもしれない、向き合うことを避けていることもあると感じる。
水墨画で心と向き合った主人公、人との関わりが人を変える…
素晴らしい物語だった。
スポ根ばかりが青春じゃない!←ちょっと古い・・・。
きっかけは辛い出来事でしたが、ひとつの事に打ち込んでいく、のめり込んでいける
ものがあるっていうのは本当に「救い」なんだなと。
いい友達もできました。いいライバル、いい師匠に出会えました。
きっともう大丈夫!!
一気読みの後、ほっとして物語の緊迫感にえらい勢いで囚われていたことに気づきました。
そして何より、水墨画、やってみたーい!!
感想遅くてすみません。
処女作とは思えない程の完成度でした。
読み終えた瞬間、もっとこの著者さんの本を読みたい!と強く思いました。それくらい、印象が鮮やかでとても魅力的でした。次作がいまからとても楽しみです。
両親をいっぺんに亡くした主人公は、
日々色のない日常をただただ過ごすように生きていました。
でもひょんなことから水墨画の巨匠に弟子入りすることに。
白黒のような日々を生きていたのに、
水墨画という白黒の絵にかかわっているうちに
とてもあざやかな日々を送るようになっていきます。
悲しみの描写と次第に生きる力を得ていく主人公の様子がとても印象的です。
私は知らなかった。
こんなにも色鮮やかに描かれる
水墨画という芸術の世界の物語をー。
両親を失い、喪失感に駆られる日々を過ごす主人公、霜介はある日、
水墨画界の巨匠、篠田湖山と出会う。
湖山は霜介を気に入り、その場で強引にも内弟子に。
そこから織りなされる人間模様と、霜介の心境の緩やかな変化を
物語が続く限り見守っていたくなる一作です。
絵がひどく苦手な私でも、青山くんと一緒に水墨画が描けるような気持ちになる1冊でした。白と墨の微妙な色合いだけの水墨画。読んでいるうちに描かれる線が見えるようでした。水墨画と出会う事で、自分の心を取り戻し、引きつっていたかも知れないけれど笑顔になれて良かった。湖山先生にも感謝♪古前くんと川岸さんのその後はいかに?