オール・アメリカン・ボーイズ

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刊行日 2020/11/16 | 掲載終了日 2020/12/16

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内容紹介

ブラック・ライブズ・マター(BLM)の運動が大きなうねりとなっている全米で30万部を突破した感動の作品。

ウォルター・ディーン・マイヤーズ賞、アメリア・エリザベス・ウォールデン賞受賞作。

ニューヨークタイムズ・ベストセラー。


黒人の少年ラシャドはポテトチップスを買いにいった店で万引きを疑われ、白人の警官から激しい暴行を受け入院する。それを目撃した白人の少年クインは、その警官が友人の兄のポールだと気づき現場から逃げた。事件の動画がテレビやネットで拡散し、ラシャドとクインが通う高校では抗議のデモが計画され、2人はそれぞれの人間関係の中で、揺れ動く自分の心をみつめることになる。

事件の当日からデモが行われるまでの8日間を、黒人作家のレノルズが黒人の少年ラシャドの視点から、白人作家のカイリーが白人の少年クインの視点から交互に描き、まさにアメリカの今を映し出す話題作!

ブラック・ライブズ・マター(BLM)の運動が大きなうねりとなっている全米で30万部を突破した感動の作品。

ウォルター・ディーン・マイヤーズ賞、アメリア・エリザベス・ウォールデン賞受賞作。

ニューヨークタイムズ・ベストセラー。


黒人の少年ラシャドはポテトチップスを買いにいった店で万引きを疑われ、白人の警官から激しい暴行を受け入院する。それを目撃した白人の少年クインは、その警官が友人の兄のポールだと気づき現...


出版社からの備考・コメント

【ご注意下さい】
ここに掲載している作品データは校了前のものです。刊行までに内容の修正があり、仕様の変更がある場合もございますが、ご了承下さい。

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おすすめコメント

【著者紹介】

著/ジェイソン・レノルズ

1983年生まれ。“When I Was the Greatest” でジョン・ステップトゥ新人賞、 “As Brave As You” でカーカス賞、『エレベーター』でエドガー賞YA部門を受賞。その他に全米図書賞児童文学部門の最終候補に選ばれた『ゴースト』などがある。2020年、まだ30代でアメリカの児童文学大使に就任し、今最も注目されている若手作家の1人。


著/ブレンダン・カイリー

1977年生まれ。デビュー作 “The Gospel of Winter” がカーカス・レビューによる優れたYA作品に選定され、アメリカ図書館協会による年間YA小説10作品に選ばれるなど、新進作家として期待を寄せられている。


訳/中野怜奈

1983年東京生まれ。津田塾大学大学院イギリス文学専攻修士課程修了。学校司書として勤務しながら、ミュンヘン国際児童図書館の日本部門を担当。国立国会図書館国際子ども図書館では非常勤調査員として翻訳業務に携わる。翻訳作品に『さよなら、スパイダーマン』『ほんとうの願いがかなうとき』『おひめさまになったワニ』がある。

【著者紹介】

著/ジェイソン・レノルズ

1983年生まれ。“When I Was the Greatest” でジョン・ステップトゥ新人賞、 “As Brave As You” でカーカス賞、『エレベーター』でエドガー賞YA部門を受賞。その他に全米図書賞児童文学部門の最終候補に選ばれた『ゴースト』などがある。2020年、まだ30代でアメリカの児童文学大使に就任し、今最も注目されている若手作家の1人。 ...


販促プラン

この本には二人の作者がいて、それぞれと同じ肌の色をした二人の主人公の立場から物語が語られています。黒人の少年ラシャドの周りのコミュニティー、白人の少年クインを取り巻く社会、双方の多様な人間関係の中で、ニュースの情報だけでは分からない、アメリカの現在のリアルな奥行きが伝わってきます。

この本には二人の作者がいて、それぞれと同じ肌の色をした二人の主人公の立場から物語が語られています。黒人の少年ラシャドの周りのコミュニティー、白人の少年クインを取り巻く社会、双方の多様な人間関係の中で、ニュースの情報だけでは分からない、アメリカの現在のリアルな奥行きが伝わってきます。


出版情報

発行形態 ソフトカバー
ISBN 9784037269807
本体価格 ¥1,500 (JPY)

NetGalley会員レビュー

例えばBlack Lives Matterのニュースを見ていても、アメリカ大変ねとしか思わなかった。それは身近じゃないからだ。アフリカ系の友人もいないし、親戚もいない。でも、これから多様性の中で生きていく今の子どもたちはそうも言っていられない。彼らが数年後留学して黒人の友人が出来るかもしれないし、就職したら上司になるかもしれない。そんな時、今このアメリカを分断している問題について考えたこともありませんでしたでは済まないから、この本を読んで欲しいと思った。歳が近いアメリカの若者たちが何度も悲しい目に遭って、解決したいと動き始めたホットな問題が、きっと身近に考えられる。

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BLMの運動がアメリカで若者中心に広がっている。
この作品には警官に不当な暴力をふるわれた黒人の高校生ラシャドと、それを目撃した白人の高校生クインの手記を一週間の流れで綴られている。決して豊かとはいえない二人の高校生が地域の人々のつながりの中で助けられ、(まだ社会人ではないけれど)アルバイトやプロへの足掛かりをつかもうとする部活などで社会を見つめる。そうしたふたりの日常がこの事件によって大きく揺らぐ。
黒人であるということがそれだけで特別視される社会で自分を守るためには無抵抗であることを示すこと、それをラシャドは小さな時から親から教え込まれた。しかし実際に自分が受けた暴力はあまりに不当なものであり、自分の存在を否定されていることに葛藤せざる得ない。一方、目撃したクインの方もそのことに触れるなと言う大人達の言葉とは裏腹に、自分の心の中の正義が自身を苦しめる。
彼等の周りには、穏便に今の関係を周囲と保ちたいという家族の思いがある。しかしそれではいけないんだと考える高校生の仲間や大人たちの存在があり、共にいるよと力強く支えてくれる。正義を貫こうとすれば大きな壁が立ちはだかるけれど、そこには必ず共感してくれる仲間がいる。一人一人がもう一歩の勇気を奮い起こすことが社会を変えていくのだという強いメッセージを感じさせてくれる。また二人の高校生の葛藤を前に、大人たちが奮い起こす勇気にも心打たれた。
Rashad is Absent Again Today.
今、全米で若者が立ち上がるBLM運動につながる作品である。人種問題の深い闇は決して簡単には解決できないが、私たち自身が、同じ人間としてできること、持たなければいけない勇気について考えさせられる作品である。

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11月16日発売予定 偕成社
ジェイソン・レノルズ、ブレンダン・カイリー著 訳:中野伶奈
『オール・アメリカン・ボーイズ』読み終わりましたので感想をお伝えします。

作者は黒人と白人の2人です。文中に出てくる黒人、白人の人物を黒人視点、白人視点でそれぞれの作家さんが書いています。

肌の色の違いから差別、偏見が悲しい事ですが現在もあります。この本は差別から生まれた悲しいある出来事の話が書かれています。
私自身、差別や偏見を持たれやすい障がい者の支援をしておりました。日本で障がい者の方々に対する差別は減ったとはいえ、実際に心ない言葉を言われる事も経験しました。なので人一倍、差別や偏見をする方に対して強い憤りを感じてしまうのです。
今回の本を読み、黒人、白人の方それぞれの考えをほんの少しかもしれませんが理解することができました。読みながら怒り、悲しみを感じながら読み進めました。同時にとても勉強になった本でもあります。

この一冊を読んで差別、偏見について考えてくれる方が一人でも増えることを願います。

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YAです。
かなり読書上級の若者向けかなあ、と思いつつ、大変良くできている。素晴らしかった。

多分高校生くらいの若者が読んで、
SNSやフィクション、ニュースで触れているBLMに関する点のような情報が、線になって拡がって、自分のところに降りてくるような物語。

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突然、万引きの罪を着せられ、警官から暴行を受けたラシャド。友人の兄が警官の制服姿で過度な暴力を振るう場面を見てしまったクイン。
ふたりがそれぞれにショックから脱し、事実と向き合う決心をし、やがて次の一歩を踏み出すまでが日を追って描かれます。
一人称で書かれたふたりの迷いと恐れがダイレクトに読者に伝わってきます。また、人種差別がどのように影を落としているのかを具体的に知ることができる作品です。

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差別、ヘイトに関する肌感覚はアメリカと日本では大きく違うけれど、日本に住んでいようと知り、考えるべきことであるともう少し真剣に向き合うべき課題だと思う。
この作品の特長は主人公に、事件の被害者である黒人少年だけでなく目撃者としてクラスメイトの白人少年をおいたこと。おかれた環境をそれぞれの立場で知ることができるだけでなく、重なる人間関係の中だからこそより悩みに深みと奥行きが出て読み手の方もより多くのことを考えさせられると思う。
BLMは解決の難しい課題ではあるけれど、直接の利害関係から離れた人だからこそできることもあると思うので、まずは知ることからいまの日本の若い人たちに始めてほしいし、その入り口として共感に繋がりやすい1冊として薦めたい。

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黒人の高校生ラシャドは、ポテトチップスを買いに行った店で、万引きと間違えられ、店内にいた白人の警官に、無抵抗のまま、殴る蹴るの暴行を受け、逮捕され、大けがをして入院する。
 同じ高校の白人生徒のクインは、偶然その店の外にいて、それを目撃する。クインは驚いた。暴行を加えている恐ろしい警官は、自分が幼い頃から兄と慕ってきた、尊敬するポールで、親友グッゾの兄だったからだ。
 やがて、暴行の動画がテレビで流され、学校前の歩道に、RASHAD IS ABSENT AGAIN TODAY のグラフィック・アートが現れ、抗議運動へと続いていく。

 事件が起きた金曜日から、つぎの金曜日までに起きた出来事を、ラシャドとクイン、ふたりが交互に、自分とまわりの人たちの苦悩と背景をまじえて語る。

 まるで、実話のドキュメンタリーを見ているようだった。米国社会にある人種差別と偏見、警察による暴力の問題を糾弾しているだけではない。私たちの意識下にある差別を気づかせ、みんなの問題として立ち上がらせている。
 それは、もちろん、黒人のラシャドと白人のクイン、双方の視線から描かれていることが大きい。とくに、ポールの暴力を目の当たりにしたクインの苦悩と意識の変化が、私たちに、前向きな力を感じさせてくれる。

 さらに、巧みな舞台設定と多彩な人物設定が、米国をはじめ世界のあちこちで起きているBLACK LIVES MATTERの運動を、コンパクトにくっきりと浮き上がらせている。

 ラシャドの高校の生徒は、さまざまな人種が混ざり合っている。一見、差別など存在してないように見える。クインやグッゾが所属するバスケット部では白人5人に対して黒人が7人。チームのキャプテンで一番のスター選手は、黒人のイングリッシュ。ラシャドの親友だ。

 事件後、バスケット部では、コーチが練習に集中するよう指導する。もうじきはじまる大会では有名大学からスカウトマンがくる。未来をつかむ大事な試合だ。だが、クインも、イングリッシュも、グッゾも、他の選手も、それまで通りではいられない。
 クインの父親は、アフガニスタンの戦争で亡くなり、町の人から英雄とあがめられている。その息子であるクインは英雄の息子で、アメリカ人らしい若者と人から言われる。けれどそれは、「白い」アメリカ人らしいということだ。タイトルの「オール・アメリカン・ボーイズ」は、人種に関係なくみな、アメリカ人の若者ということなのだと思う。
 クインを理解し、励ますのは、白人警官ポールのいとこジルだ。社交的で学内で人気のある彼女は、公正な目を持ち、差別への認識が高く、勇敢に抗議運動を率先していく。彼女の言葉から、私も多くを教えられた。
 口うるさいラシャドの父親には、驚くような過去があった。彼は、黒人への偏見が、白人だけでなく自分自身にもあることを身にしみて知っていたのだ。だから、チャンスをつかむには軍に入るしかないと、ラシャドを予備将校訓練課程をさせ、息子たちの素行をうざいほど心配する。
 また、やり過ごさず授業で問題をとりあげる教師たちは、私たちに読者に歴史と背景を教えてくれる。数学教師があげた、事実と数字には説得力があった。

 とても学びの多い本だった。その中で最も強く思ったのは、自分のなかにある差別を認めようすることだ。社会の差別に気づいても見ないふりをして、なにもしないのは、差別に加担しているのと同じだ。これは、よその国の黒人・白人の問題ではない。わたしは、在日外国人や自分と違う人たちに、無意識に差別していることはないだろうか? まずは相手をよく理解すること、そこから始めたい。

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大坂なおみさんのマスクに書かれた名前。テレビのニュースで見て、今読んでいるこの本のことだと思いつつ、いやそうじゃない今まさに起きている問題だからこそリンクしているのだと気づく。

主人公ラシャドは、万引きを疑われ白人警官に暴行される。その様子を目撃する同級生。録画した誰かによってその様子は拡散され....私たちが日本でニュースで見る「いつもの」流れだ。
いや、いつものなんかじゃない。対岸の出来事捉えてはいけない。何もしないことが私は、差別を容認する側に立ってしまっているのだ。
そして、当たり前だと疑うこともなかった日常が、いわれなき暴力によってねじ曲げられることさえ、常にその立場が口を開けて待っているのだ。

今住む社会ではマイノリティーではないかもしれない。でも一歩海を渡ると、違う。それなのに私たちは、国内でもヘイトを平気で容認している。そこまで自意識の領域が、鉄壁なのか。

クィンの葛藤と、開いた目はその後どうなるのだろうか。ダイイングのその後が、理解と真実の究明と、差別の無い社会へのうねりとなって欲しいと願う。

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多分、当事者たちにも分からないことがたくさんあるのだと思います。警官だって怖いから暴力をふるってしまうのかもしれないし、人種差別の意識が心のどこかにあるから、黒人少年を見ただけで悪者だと判断してしまっているのかもしれないし。

 黒人少年たちが子供の頃から親に「周りから怪しまれないようにしなさい」と教わってきているという事実は、人種差別問題の根深いものを感じます。ギャングや不良と思われないようにきれいな服を着て、手はポケットから出して、何かあったら口答えせずに手を上げる。そういう教育をしていても、勘違いで撃たれたり殴られたりする子が後を絶たないのです。

 こういう感覚って、昔の日本にもありました。「不良と間違われないように服をきちんと着て外出しなさい。」「女の子は痴漢に遭わないように露出度の高い服を着て出歩いちゃいけません。」こういうことだって、根っこのところはアメリカの状況と同じです。

 本当は強盗や痴漢の方が悪いけど、そういう目に遭わないように目立たないようにしてなさいという教えを親はするのです。子供の方はあまり真剣に聞いてませんけどね。でも、外の世界には何を考えているのか分からない人が大勢いるから、そうやって自分で自分を守るしかないんだってことなんです。

 日本にいると人種問題ってピンとこない人が多いけど、日本人だってアメリカへ行ったらマイノリティですから、人種差別を受ける方なんだってことを知っていないと!

 そして、日本人の中にある「ガイジン」という感覚。これも人種差別なんだよってことに気付かないと!

 世界にはいろんな人がいて、いろんな姿をしていて、それぞれの生活を送っているんです。自分の基準だけでは理解できない人が大勢いる。でも、それは決して悪いことじゃないんです。多様性があるからこそ世界は面白いのであって、すべてを1つにしてしまおうなんて考え方は危険だってことを知らないと!排他的な考えは、最後には破滅するものなんだってことを、今こそ真剣に考えなければならないと思うのです。

 Black Lives Matter という言葉が大きく取り上げられています。USオープンに出場していた大坂なおみ選手のマスクには被害者たちの名が書かれていました。これを発端に、彼らがどういう状況で亡くなったのかを知る人が増えました。

 人種差別はあってはならないことです。でも、世界中に蔓延しているウィルスのような思想なのです。これを無くしていくには、まず事実を知ること。そしてそれが他人事ではないと知ること。そこからすべてが始まるのだと思います。

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まさに今、世界中で議論されているテーマ「差別」について取り上げた小説。
絵が好き、バスケットが好きな黒人の少年ラシャド。
弟の世話にうんざりしつつもバスケットに打ち込む白人の少年クイン。
思春期の2人は毎日、家族のこと、仲間のこと、自分のこと、そして好きな女の子のことでいっぱい。
成長するに従って、家族として、仲間として、地域の一員として求められる役割に時に反発し、戸惑いながら過ごしている。
しかし、黒人少年ラシャドが万引きをしたと誤解され、警官に暴行されたことをきっかけに、「差別」について考えることになる。
物語が進行するに従って、差別する方も差別を受け、差別される方もまた差別をしているということに、少年たちも読者も気づき始める。
黒人作家のジェイソン・レノルズが黒人少年ラシャドの視点で、白人作家のブレンダン・カイリーが白人少年クインの視点で書いていることが大変価値あることで、多重的になってたポイントだと思う。
タイトルは「すべてのアメリカの少年たち」となっているが、日本も例外ではない。
己の中にある差別を認識することからしか解消できないのだと強く感じた。
300ページ余と、読み始める前は少し怯んでしまったが、読み始めるとページをめくる手が止まらなかった。
子供だけでなく……大人にこそ読んでもらいたい。

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「人種差別は過去のもの」だと言われて育ってきた白人の若者たち、「人は見た目で判断する」と口酸っぱく言われて育つ黒人の若者たち。

黒人の高校生を黒人作家が、白人の高校生を白人作家が描くその姿は、若者らしい言葉で、「今」を生きる若者として捉えられている。

YA世代はもちろん、大人の方にもぜひ勧めたい。

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私は昔からアメリカ映画を観ている。世界中でBLM運動が激しくなってからは、特に人種差別をテーマとした映画を選んで観るようになっていた。
そんな時にこの作品を読んだ。

当然だけれど、映画は先ず映像が先に飛び込んでくる表現方法なので、肌の色も真っ先に目に入る。
しかし、本は違う。表現の手段が文字であり言葉であり文章である為、肌の色を直接目にせず、先入観無しで物語に入って行ける。本の世界は白いページと黒い文字だけの、人種も性別も年齢も関係無くなる稀な世界だ。
黒人少年の視点も、白人少年の視点にも、日本人の私個人を忘れて、寄り添うことが出来る。これが、本の力。特性だ。主人公がどんな人種であろうと、読者は内面からパーソナルな事としてストーリーを読み進め感じ取る。
この作品は、その本の特性を最大限有効に使っている手法が素晴らしいと、一番最初に感じた。
黒人少年と白人少年、それぞれの立場のリアルが両方から描かれているので、人種差別が黒人だけの問題でも白人だけの問題でも無く「社会全体の問題なのだ」と、はっきりと立ち上がる構成になっている。それは新しいアプローチで、自然と内側から肌感覚として、両者に共鳴してしまうのだ。

ただ、決して忘れてはいけないと思うのは、アメリカの黒人にとって「古き良き時代」などというものは、今現在に至るまで存在しないということ。

アメリカのベストセラーが、今、せっかく翻訳されたのだから、この作品の対象年齢以上のすべての方に、広く読んでもらいたいと強く願っている。

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『人種差別』と聞いても私の身近では日常で見聞きする事と考えるとTVでの報道が一番最初に頭に浮かぶ。日本でも『差別』が全く無い訳ではない。今回の物語の様に大怪我を負うとか、命を失う事は無いにしても。自分自身も『差別』なんてしない、してないと思っていたが果たして本当にそうだろうか自問した。見ないようにしているのでは?見ても気付かない程、無関心なのでは?深く考えさせられる内容だった。

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読み進めながら、これが現実なのか…と、心がちぎれそうな程のやるせなさに溺れる寸前でした。
理解することと受け入れることは違う事なんだけど、どちらも“壁”をなくすためには必要な心の在り方で、意図的でなくても結果的に差別していた、そんな悲しい現実を少しでも減らしていくにはどうしたら良いのか、考えてもらうきっかけになる1冊だと感じました。
誰もが自分で考え判断し、強く柔らかい心のままに決断していける、そんな世の中にしていく為に、まずは現実から目を逸らさないで受け止めたいです。

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人種差別は「アメリカの正義」の敵です。『アラバマ物語』のスピリットは、今も多くのアメリカの児童文学作品に息づいており、人々が公正であることを求めていることを強く意識させられます。警察官の強権で理不尽に暴行され大怪我を負った黒人少年と、その光景を傍観していた白人少年。大きな社会問題へと発展していくこの事件が、二人の少年の交互の独白によって語られていく物語です。これは、差別される側と差別する側の対立が両者の視点から描かれる物語、ではないと思います。二人の少年は同じ高校に通っているものの、直接の知り合いではありません。ただ、無関係ではありません。友だちの友だちだからということだけではなく、同じ時代を生きているアメリカの少年として、同じ問題意識を共有している同士だからです。

 二人は対立している存在ではなく、同じ方向を向いています。公正であろうとすること。正義を貫くこと。その信念は一緒です。ただ立っている場所が違うと、その見え方や感じ方が違ってしまう。警察もまた正義を執行しようとしています。人種差別はアメリカの正義の敵です。差別を憎む気持ちは一緒です。ただ、正義の「角度」や差別意識の「感度」は違います。白人だからといって、あからさまに黒人を差別しているわけではない。しかし、差別される側が感じているようには、誰もが感じているわけではない。ここに無意識の偏見が働いていることが問題なのです。

 公正であることを訴えるアメリカの少年たちと、少女たちの物語。BLM問題を描き、暴力を行使した警察側の心情にも踏み込みながらアメリカ社会の実相を描く、新しい扉を開いた作品です。差別主義者の悪漢警官が、横暴な態度で無抵抗の黒人少年を抹殺してきたわけではないとすれば、闘うべき敵はどこにいるのか。社会の歪みを糺す闘いは、「差別する側」が存在しないまま、少なからず誰かを仮想敵にしなければならず、そこに苦い対立が生じます。無意識の偏見が人の命をも奪うのだということを肝に銘じなければならないのだと考えさせられます。複雑なアメリカ社会の中で、若者たちが悩みながらも、より良い社会を生み出そうともがいている姿に感銘を受ける作品です。

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黒人の少年ラシャドが、万引きをしたとして店の主人にとがめられる。近くに居合わせた白人警察官がすぐさま少年を確保したが、その際に極めて過剰な暴力があった。しかも、万引きは冤罪であったのだ。この事件をきっかけに、街に大きな人種差別反対のムーブメントがまき起こる。

私は、人種差別主義者ではないし、人を見た目で判断することは間違ったことだと知っている。
さらに言えば、国内において人種差別問題は顕著ではなく、さほど関わりのないことだとも思っていた。

しかし実際には、路上ですれ違う際に、黒人若者グループから距離をあけたことがある。
外国人買い物客の万引きを警戒したこともある。
無意識でも差別に加担していながら「差別は私の問題ではない」と思っていたのだ。そして、その考えこそが差別の一番の問題なのだと、この本を読んで知ることとなった。それはちょっとヘビーな体験だったけれど。

文中で若者が言う。『今回のことでわかったのは、おれっていう人間は、こんなに強烈に揺さぶられないと、自分の中のまっとうさを取りもどせないっていうことだ』と。

この本の読者は、現実に親しい人の血が流れたような『強烈にゆさぶられ』る体験をする。
そして自分も被害者になり、加害者になり、彼らの家族の立場になり、彼らの友人になる体験をする。
そこで初めて、この差別問題の解消を望むならば、人種差別者を糾弾することではなく自分の中にある差別に気付き向き合うことから始めなければならないことを知る。

人種差別の問題に、部外者など存在しないない。
それはつまり「この本を読む必要がない人は、この世のどこにも居ない」ということでもあるだろう。

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とても良かった。ブラックライブズマターについて、物語という形式を通したからこそ理解が深まった。たくさんの人に読んでもらって、考えてもらいたい。BLMについて何か読みたいと思った時にまず入り口としておすすめするべき書籍。大人が読んでも十分に満足できる内容。

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#NetGalleyJP スマホにずっと入っていたものだが、なかなか手を出せずやっと読み終えた。物語の形で描き出したことにより、YAとしてのみでなく、全ての人に訴えかける作品となっていると感じる。読みやすい、というか、読むべき本。読ませていただけてたいへんありがたかったです。涙。


訳者あとがきより:
この小説には二人の著者がいます。ラシャドのパートを書いたのは黒人の作家ジェイソン・レノルズ、クインのパートを書いたのは白人の作家ブレンダン・カイリーです。二人が出会ったのは二〇一三年のことでした。十七歳の黒人の少年を射殺した白人の自警団員に無罪評決が出て、全米で黒人の命は大切だ。という「ブラック・ライブズ・マター (BLM)」の運動が立ちあがったころです。翌年、今度は十八歳の黒人の少年が無防備なまま射殺され、度重なる痛ましい事件に二人は衝撃を受けて、この本の企画に取り組みました。二人をつき動かしたのは、今この小説を書かなければいけないという切迫した思いだったのでしょう。二〇一五年に完成した本書は、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーになり、多様性の価値を表現したYA小説・児童書を対象とするウォルター・ディーン・マイヤーズ賞と、優れたYA小説に贈られるアメリア・エリザベス・ウォールデン賞を受賞しました。

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多様な国家アメリカについて、日本でも黒人差別が話題になることはしばしばあるが、身近な事として捉えることが出来ない人が大半ではないだろうか。日本においても差別というものは存在していると思うが、この本に書かれている通り、何もしない事も差別の一端を担っているかもしれないという事を理解すべき。
一人一人がなせる事は小さな事かもしれないが、小さな事の積み重ねが大きなうねりとなり、世の中を変えるなんてことはざらにある。
この世に生を受けたからには、何かを成す事を求められていると思う。歴史に名を残すほどの偉業を成し遂げるというのとは違っても、家族、友人、仲間に支えられ、時には支え、お互いに力を合わせてよりよい人生を送る事が出来ると幸せだ。
異国の物語としてではなく、日本も人口減少社会を迎える中、コロナにより少し沈静化しているが多様な人々が一緒の空間で過ごすことが増えるだろう。また働き方改革という名の下、ワーケーションという言葉も浸透しつつある中、異国で暮らすというスタイルを選ぶ人も増えるだろう。そんな方々は差別を受ける側に回るかもしれない。受容性の高い、相手を受け入れる度量のある人間に少しでも近付けるように心掛けることで、世の中の前向きな変化に貢献できるといいな。
より良い世の中への一歩としてこの本を紹介したいですり

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