旅する練習

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刊行日 2021/01/12 | 掲載終了日 2021/01/11

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内容紹介

「この旅のおかげでわかったの。
本当に大切なことを見つけて、 
それに自分を合わせて生きるのって、 
すっごく楽しい」 

中学入学を前にしたサッカー少女と小説家の叔父。 
2020年、コロナ禍で予定がなくなった春休み、 ふたりは利根川沿いに、徒歩で 鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出る。 
「歩く、書く、蹴る」の練習の旅。 
若手随一の実力派がはなつ感動作。 


乗代雄介(のりしろ・ゆうすけ)
 1986年生まれ。2015年「十七八より」で群像新人賞を受賞し、デビュー。『本物の読書家』で野間文芸新人賞受賞。「最高の任務」で芥川賞候補になる。若手著書に『十七八より』『本物の読書家』『最高の任務』(以上、講談社)、『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』(国書刊行会)がある。 

「この旅のおかげでわかったの。
本当に大切なことを見つけて、 
それに自分を合わせて生きるのって、 
すっごく楽しい」 

中学入学を前にしたサッカー少女と小説家の叔父。 
2020年、コロナ禍で予定がなくなった春休み、 ふたりは利根川沿いに、徒歩で 鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出る。 
「歩く、書く、蹴る」の練習の旅。 
若手随一の実力派がはなつ感動作。 


乗代雄介(のりしろ・ゆうすけ)
 1986...


出版社からの備考・コメント

校了前のデータを元に作成しています。刊行時には内容が若干異なる場合がありますがご了承ください。

※発売前作品のため、ネタバレや、読書メーターやブクログなど外部書評サイトで発売前にレビューを投稿することはお控えください。
※※リクエストの承認につきましては現在お時間をいただいております。

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※発売前作品のため、ネタバレや、読書メーターやブクログなど外部書評サイトで発売前にレビューを投稿することはお控えください。
※※リクエストの承認につきましては現在お時間をいただいております。


販促プラン

★★

作品の拡材や指定配本をご希望の書店様は
恐れ入りますが<講談社 第五事業販売部>まで直接お問合せをお願い致します。      

★★

★★

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恐れ入りますが<講談社 第五事業販売部>まで直接お問合せをお願い致します。      

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出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784065221631
本体価格 ¥1,550 (JPY)

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NetGalley会員レビュー

春の穏やかな日差しとコロナが落とす影、聡明な「私」と無邪気で無垢な亜美、そして二人の会話のひとつひとつ…うまく言葉に表せませんが、その均衡が、調和が素晴らしかったです。ずっとこの世界に留まっていたくなりました。
そして読み終えたあとは胸がいっぱいでしばらく眠れませんでした。

うまく言葉にできませんが、読んだ人だけがたどり着ける場所…この心震える作品を多くの人にすすめたいと思いました。

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小説家の叔父とサッカー少女の姪っ子亜美の二人旅。鹿島アントラーズの本拠地まで、利根川沿いを徒歩でゆく。亜美が女子サッカーの名門私学への合格を果たした春休み。この2020年の春のこと、世はコロナが蔓延し始め、学校は休校、サッカークラブの練習もできなくなるなど、自粛ムードの漂う中を、亜美が合宿所でやらかしたポカミスを補いに行く。
 旅の条件はお互いの目指すところの、「練習」だ。「歩く、書く、蹴る」の旅。歩く、話す、考える、練習する、そしてもう一度考える。
 度々挟まれる小説家の私の、ことばによる風景スケッチは、実に細やかな目と心で紡がれ、見たものを再現することの可能性を感じさせてくれる。
 中1に上がる前の亜美は元気一杯。自分の中のことばを手探りし、掘り下げ、確信を掴むまで考える。
 そして出会ったキーパーソン、みどりさん。行き先が同じということがわかってそこから先は3人旅。みどりさんの抱える内面の屈託は、彼女が初めて突き当たる問題だ。きっとずっと「いい子」で大人になってしまった人なんだ。亜美と私に出会うことでこじ開けられてしまった本当の自分に気づく、その衝撃が痛々しいが幾つになっても最初の一歩を踏み出せることを示してもくれる。
 作中に引かれたジーコのことばや多くの作家の残したことばに、小刻みに揺さぶられる私は、小説家としての自分を自ら試すかのような印象だ。
 滝前不動の真言を自分のお守りにした亜美。コロナ禍の先の見えない状況の中で見つけた目標。読み終えて改めてタイトルを見れば「旅」に含まれるあらゆる意味に思い至る。
 きっと叔父の私は亜美から「旅する練習」の課題を受け取ったに違いない。
 胸押す感動に浸される。

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小説家である叔父とサッカー少女の徒歩旅行。
天真爛漫な少女と途中で出会う女子大生の未来に対する対照的なとらえ方が観察者である叔父の目で綴られる。コロナにより生活様式の変更を余儀なくされる不安の中で見出す希望はささやかながらも感動的だ。
明媚で静かな光景の中、嬌声やリフティング・ドリブルの音が印象的に響き渡り、折々に出る水鳥の自由に飛べる筈なのにその地に留まり生を営む姿は、未来は明るい筈なのに何かに引っ掛かり、変更を余儀なくされる不安が膨れ上がる今の世を象徴しているようだ。
結末に触れてもなお、明るさに希望を見出したくなる作品。

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亜美と叔父さんは鹿島まで徒歩で旅することに決めました。それぞれが目標を決めました。亜美はサッカーボールのリフティング300回達成と、毎日日記を書くこと。叔父さんは、目にした風景を文章にすること。

 亜美は男子に負けないくらいサッカーが上手い子です。リフティングも毎日練習して、どんどん上手くなってます。川で見かけた鳥や花の名前を聞いたり、川に落ちそうになったり、オムライスばっかり食べたがったり、面倒くさい奴だなぁっておもいながらも、そんな亜美が可愛くてしょうがない叔父さんです。

  こんな徒歩の旅って羨ましいなぁって思います。それぞれに違う目標を持って、でも同じ目的地へ進むっていいなぁ。

☆人生には絶対に忘れてはならない二つの大切な言葉がある。それは忍耐と記憶という言葉だ。忍耐という言葉を忘れない記憶が必要だということさ by ジーコ☆

 旅の途中で出会ったジーコさんが好きなのでアントラーズファンになったというみどりさんとの関わり方も面白かったなぁ。

 それだけにラストは衝撃でした。えっ!という言葉しか出ませんでした。明日は何が起きるかわからないって、こういうことなのかな?

 なんだかロードムービーみたいな感じで、さわやかさが残る作品でした。

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なんという読み心地のよさだろう。
サッカーに夢中な姪っ子と、小説家の叔父の徒歩の旅。
叔父が描写力する風景を読み、やんちゃな姪っ子の声を聞きながら、ふたりの旅に心地よくゆられ、ああ、ずっと一緒にいたい、読み終えたくないなあと、めくる手をつい惜しんでしまう。
結末に触れて、一気によみがえる風景の鮮烈さは言葉にできない。
色鮮やかで、温かくて、そんな余韻にずいぶんと長いあいだ包まれることとなった。

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コロナ渦の中、穏やかで優しい叔父と屈託のない姪の徒歩でのそれぞれの練習の旅が始まる。
2人の間に流れる時間はとても心地よい。
自然から学び、さまざまなメッセージを受け取りながら進んでいく旅。
叔父の景色を綴る文章の趣は、しっとりと心の中にしみ込んでくる。
旅の途中での1人の女性との出会いは少女の心を大きく揺さぶり、その人の人生にも大きな影響を与える。
無邪気でありながら、まるで大人のような言動で希望の光を与える少女に心惹かれていた私は、気持ちを落ち着かせるため、また読み返す。そして、胸がいっぱいになりながら希望を取り戻した。 魂が強く揺さぶられる作品。

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サッカー少女と小説家の叔父。
コロナ禍の春休みある目的を持って徒歩で旅に出る。
「歩く、書く、蹴る」練習の旅。
途中、出会いがあり、道連れは3人に。
それぞれに抱えた悩み、願い。
真言を唱えながら自分と向き合う。
自分に自信がないみどりも2人と旅するうちに自分の本当の気持ちに気づいて決断をし、前を向いて歩き出す。
「この旅のおかげでわかったの。本当に大切なことを見つけて、それに自分を合わせて生きるのって、すっごく楽しい。」この言葉が印象的。
タイトルの意味は、「人生を旅する練習」なのかもしれない。

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小説家の叔父「私」が姪の中学受験を終えたサッカー少女の亜美と
「サッカーの練習、宿題の日記も書く、鹿島を目指す」ため あるいて旅に出る。
そこで得たものは?
色々なことに制限があるコロナ禍でも発見できることはある…ことにきづける本。

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『旅する練習』

コロナ禍の中、作家の主人公は、サッカー少女の姪と歩きの旅に出る。
自身は書く練習、姪はサッカーの練習を続けながら…

旅の途中で出会う時々の美しい描写、姪の無邪気な様子と主人公のやりとり、そして、新たな出会い…
これらが心地よく混ざり合って引き込まれた。

この旅の時間、一瞬一瞬は、その時にしかないし戻れない。
もう一度、同じ旅をしようとしても違った風景が見えるだろう。
気持ちの中でも…

過ぎてしまうと戻らない自分の人生、大切に生きようと語りかけてくれるような物語だった。

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小説家の叔父とサッカーが大好きな姪っ子の二人旅。好きなものにまっすぐに取り組む亜美の言動は、読んでいて気持ち良い。旅の途中で出会うみどりも、亜美との関わりの中で自分のモヤモヤした気持ちに向き合い変化していく。
亜美は無事に旅の目的を果たし、叔父と姪の楽しい思い出になるはずだった。
主人公の私にとってこの旅がいかに大切なものなのか、物語に漂う静かな雰囲気の意味が結末であかされる。
共に旅を楽しんでいた読み手である私にも、忘れられない思い出となり、亜美のように大切なことに生きるのを合わせてみたいと思わされた。

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小説家である私が小学生の姪と鹿島スタジアムを目指して旅をする。サッカー選手を目指す姪はリフティングをしながら、私は情景を文にしながら。真言を唱えながら。コロナでの緊急事態宣言が出される直前で、コロナによる影が節々に現れる。さらにコロナが酷くなった今の状況も、少しずつ前に向かっていくしかないのだなと思わせる。文学とサッカーと宗教が絡み合い、さわやかな印象を残す。ただ、ラストで驚くべきことが待っていたのだが。

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コロナ禍の情勢で、中学入学を前にしたサッカー少女・亜美と小説家の叔父による徒歩でカシマスタジアムを目指すふたり旅。みどりさんと出会ってからのやりとりや複雑な思い、育まれてゆく絆にはじーんとくるものがありましたが、だからこそ淡々と綴られたその結末に何とも切なくなりました。

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読むことと書くこと。彼のテーマだ。いつも。常に。たゆまず。半端ない読書家だと想像できる。他の著書でも感じたが、一語も読み飛ばしてはならない、と思わせるため、読むのに時間をかける。
相性はあるだろう。並行して読んでいた内田某の本の中に「音読したときに、気持ちよく息継ぎできるところでいつも読点がうたれているのに気づいた」という文があったことも想起させる。
ロードムービーのよう、と評されていることは耳にしていた。コロナ禍にあたえる希望、もキーワードでもあるかもしらない。ジーコ、鹿島アントラーズ。
これも、たくさん出ているであろう、これからも数多くでるであろう、でるべき、なレビューや書評にゆずろう、とする類の本だ。
書けないのだ。おいそれとは。下手に書いてなにか美しいものをこわしてはならない、と思わせる。
ええ!それはないだろう!感も、しずかに気持ちをおちつかせると、はじめから、すべてを包含するように構築されてる。
傑作。

1986年、北海道生まれ!!若い!。。。どんどん書いてほしい。


読ませていただけてありがとうございました。

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おじさんの文章は文学的過ぎて、最初は重たい気がしたが、口語調全盛の今にあって、言葉で何かを残すというのは、こういうことなんだなと改めて思えた。
強さ弱さ、静と動、幼さと成熟、いろんな対立がそれぞれを支え合っていて、いい物語だった。

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二回目の緊急事態宣言が発令された今、静かで、でも確かな作品と出会えて良かったです。
小説家の主人公とサッカー少女の姪との旅。変わった設定はありません。2020年のコロナ禍であるということ以外。「歩く、書く、蹴る」の毎日。普通のこと、当たり前のことを繰り返すことが大切なのだと静かに伝えてくれます。旅の途中で出会ったみどりさんはそのことに気づいたのですね。

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中学校受験を終えた、サッカー命の少女、亜美。
その叔父にあたる小説家の私。
合宿先から無断拝借した本を返しに行くという徒歩の旅で出会った、みどりさん。
目的地が鹿島アントラーズのホームということで一緒に行動することになる。
道中、小説家の私は亜美に様々な事を伝える。
亜美は私やみどりさん、道中で触れる事から何かを感じ、吸収してゆく。
同時に、まだ未熟な少女から生きるという事、自分や社会に向きあう事を学んでいく。
物語の始まり。物怖じせず、エネルギーの塊のような亜美が苦手だった。
しかし亜美を通して誰しもまだ未熟で生きるためには日々練習が必要だという事を知った。
ところどころに織り込まれた、サッカーの神様、努力の人ジーコのエピソードが物語に深みを加えている。
コロナ禍で自身の来し方行く末を考える。その中で一つの視座を示してくれた。

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コロナの影響で春休みの予定がなくなってしまった亜美と作家の叔父は千葉県我孫子から茨城県の鹿島まで徒歩で旅をする事に。サッカー少女の亜美はリフティングやドリブルをしながら、叔父は紀行文を書きながらの旅。知識の豊富な叔父と天真爛漫な亜美の旅は読んでいるこちら側も楽しくなってくる。前向きで一途な亜美の言動は大人の私の心にも響いてきて勇気を貰えた。旅の途中での出会いや別れもあり叔父や亜美もそれぞれ成長したのでは。そして読者である私も成長させてもらえた気がする。風景や野鳥の描写も素敵な物語でもある。

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コロナ禍にいる私たちと、
同じ時代を生きているふたりの旅の記録。

トイレットペーパーがなくなったよなとか
1回目の緊急事態宣言のときはこんな感じだったよなとか、少しだけ過去を思い出すことができました。

印象的だったのは、途中で一緒に旅をするみどりさんという女子大生の、"「誰かを応援するだけじゃなくて、誰かが応援せずにいられないような、そんなかっこいい生き方ができたら、もう少し自分を好きになれたかもしれない」"という言葉。

頑張っている人は無意識に応援したくなるし、私もそういう人になれたらなとも思う。

ラストは衝撃的でありながら、
淡々とした語り口調で、感情移入する隙もないくらいあっという間に終わってしまいました。

芥川賞、受賞できることを願っています。

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サッカー大好きな姪の亜美と小説家の叔父が千葉から鹿島まで徒歩で旅をする。書くことと蹴ることの練習をしながらの旅。鳥を観察したり真言を唱えたり、旅程でどんどん成長していく亜美。とても素敵で有意義な旅だったと思う。ラストまで読んで胸が締め付けられた。

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予備知識を入れないで歩き始めた旅を、今さっき終えた。舞台は私の住む街から、わりと近しい辺りが出てくる。
我孫子から鹿島までを歩くという、中学に上がる直前の亜美と叔父さんである『私』。サッカーの強豪校を中学受験した亜美は、コロナ禍の春休み、私と一緒にサッカーの練習を兼ね、旅に出る。実際に女子サッカーの強豪校が千葉の都堺あたりにはあるので、あそこを受けたのかな、など思いながら読む。偶然にも友人が過ごしたと思われる高校らしき学校が出てきたり、その町並みを想って、楽しく読み始めた。

常磐線から北総のあたり、こんなに自然が豊かだったかと思うほど、地の文の自然描写が、まず美しい。うるさいくらいの女の子と大人の二人連れか、と思って読んでいると、気がつけば一緒に歩くこちらの眼にも、光や水や、鳥の声が届いて、引き込まれていることに気がつくのだ。二人がコロナ禍といえども、旅に洗われるように、一緒に私も解き放たれてゆく。のどかで、明るくて、瑞々しい感じの、その旅。自粛やステイホームで、文字通り家にい続けなければならない昨今、文章を通しての旅は、外の光や清涼な空気や、自由を求める気持ちを、十分に充たしてくれる。ああ、きっと今だから出てきた作品なんだな、と、『コロナ』『緊急事態宣言』の影をみるたび思った。世界はここ以前とここ以降で別れる。その惜別の旅でもあるように思う。

亜美の明るさ、はつらつとした言葉。何か特別なものを見つけた人の持つ輝き。思わぬ同行者、みどりの清冽さが、とても気持ちいい。出会いも別れも。人と関わるっていいなあ、と思わせてくれる。だけど。終わりの終わりに、私を待っていた衝撃は、予想もしないものだった。ぱちんと頬を打たれたように。声も出なくなる。簡単に気持ちいい旅をして、すっきりした私を、引き戻すのだ。

ひとは、生きて、死ぬ。そこまでの道のりも、旅だ。結末は、歩き終わるまで解らない。いつも初めてを歩いて。
きらきらしたものを探し続ける。「練習だ」といいながら。一度きりの本番を、歩いている。まだ明日にも、きらきらした、書き置きたい何かが、待っていると信じるための。『旅の練習』。

私達は歩いている。その道は、どこかであなたと、交差するのだろうか。
自由にもう一度、次の約束を出来るだろうか。「今はね」って、言えるだろうか。
この作品に流れる、透明な希望。それがきっと、答えを連れてくる。ずっと先の未来で。きっと。

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小学校6年生の亜美と、小説家の叔父は、コロナ禍での休校を利用して、亜美が借りっぱなしになっていた本を返すために、練習の旅に出た。彼らが歩む道は、知らないところだが、叔父の書くまるで画家が風景を描くような文章で、その景色が目の奥に浮かんできた。そして、みるみる成長していく亜美の姿を微笑ましく読み進めた。しかし、どうしてそうなってしまったのか、結末には納得がいかない。

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芥川賞候補作品。コロナで休校のサッカー少女の姪と作家のおじさんの歩き旅。合宿中に借りたままの本を返しに行くのが目的だが、風景や鳥の話し。そして、合流する女子大生の語るジーコの話しに惹きつけられる。就活生の不採用のメールは当時話題になった社会問題。これは人生という旅の練習の旅であるということなのかな。万人向けではないが楽し。ジーコの話しがいい。

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物語は、サッカー少女がコッソリ持って帰ってしまった本を返しに、作家の叔父とそれぞれ蹴ると書くを練習しながら鹿島アントラーズのホームスタジアムを歩いて目指す、という何の変哲もないもの。
 だが博学の叔父と少女の間に流れるゆったりとしながらも刺激的な時間は、読み手までもリラックスさせてしまう。それは歩く旅ということに起因しているのだろう。周りの風景を愛で、自然を感じながら、気の向いたところで心地良い時間を過ごす。「陽が昇れば仕事を始め、陽が沈めば家に帰る」というような自然な時間の流れ、当たり前のことが大切なのだと教えてくれる。
 スケジュール帳に隙間なく予定が記され、時間を急ぐ現代で時間を気にせず生活することは難しいが、コロナウィルスは今までの常識を覆そうとしているのではないだろうか。
 「旅する練習」―タイトルは暗喩的だ。コロナ禍の今、新しい生活様式を練習しながら日々過ごすことが求められている。それは長い旅になるのかもしれない。
 まさに練習の旅でもあり旅の練習でもあるのだ。
#旅する練習 #NetGalleyJP
[NetGalley URL]

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「私」と姪の亜美、それぞれ「歩く、書く、蹴る」の練習を重ねながら、
回り道をしたり、新たな出会いを経て、のんびりと進む旅に安らぎを感じました。
その旅の中の一瞬一瞬が眩しく、宝物のようでした。

「私」によって語られる亜美の存在はいつも瑞々しく、
彼女の目を通すと、新しい発見があったり、世界が色づいて見えました。
亜美の「本当に大切なことを見つけて、 それに自分を合わせて生きるのって、 すっごく楽しい」という台詞がとても好きでした。
それは当たり前のことだけれど、大人になるにつれて、
都合よく忘れかけていた自分の中の熱を思い出させてくれる素敵な言葉でした。

この旅は亜美が大人になってもずっと忘れられない思い出になるんだろうな、
と微笑ましく思う反面で、時折漂うこの喪失感が胸をざわつかせました。

そして、迎えた結末が衝撃的でした。
そういうことだったんだな、とそれまでの亜美との
旅の記憶を思い返せば返すほど泣けてきてしまいました。
そして、この旅がこんなにも優しく、切なく感じられたのは
「私」の姪への愛情と埋めようのない寂しさのせいだったのかな。

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