桃花源の幻

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刊行日 2021/11/26 | 掲載終了日 2021/11/30

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内容紹介

「普済(プージー)にもうじき雨が降るぞ」

そう言い残して失踪した父。心をざわめかせる謎の男。琥珀の眼を持つ金の蝉……。       

外の世界には、自分の知らない無数の奥深い秘密があるが、みんな口を閉じて、自分には何ひとつ漏らそうとしない。                                  

――秀米(シュウミー)は世の中の全てにいらだっていた。

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新発見! ため息のように美しい 中国文学 珠玉の名作
理想の社会を夢見ながら、怒涛の現実に押し流され消えていった名もなき人々……。中国屈指の作家・格非は、彼らの物語をかくも美しく描きあげました。


いたいけな少女の成長譚・波乱の人生譚であり、絢爛たる江南の花々を背景にした絶望に寄り添う魂の物語であり、「個我の視線で歴史を綴る、迫力に満ちた長編叙述文学の誕生(訳者解説より)」であり……。


読み終えて残るのは、ため息のように儚い幻影の余韻。
中国発のSFが大人気のいま、「そろそろ本格中国文学の魅力を心ゆくまで味わう読書体験もしてみたい……」そう感じている読書家も少なくないことと思います。各界から「こんな翻訳小説を待っていた!」の声が続々届いています。


翻訳小説の愛好者はもちろんのこと、これまで中国文学に接したことのなかった方にも心から楽しんでいただける、珠玉の名作の誕生です。

【物語の概要】

●第一章:時は清朝末期。主人公秀米(シュウミー)は江南の裕福な地主のひとり娘。彼女の初潮を迎えるシーンから物語は始まる。父は発狂し行方知れずに。変わって、親戚だという謎の男性・張季元(ジャン・ジーユエン)を家に迎え入れる母。自分とは別のところで世界の秘密が動いていくと苛立ち焦れる秀米。やがて不思議な事件が次々と起き、張季元が死体で発見される。

●第二章:亡き張季元の日記を手に、希望のない婚礼の花駕籠に乗る秀米。途中、匪賊に襲われ、誘拐されてしまう。第二章はこの匪賊の隠れ家「花家舎(ホアジャーシャ)」で、拐(かどわ)かされた秀米の、先の見えない暮らしが描かれる。この地をユートピアにしようという匪賊の親方。その夢敗れた、激しい闘争の日々。見え隠れする革命への希望と挫折。そして、秀米は女性としての転機をこの地で受け入れることになる。

●第三章:この章は、秀米の実家の番頭の息子である、老虎(ラオフー)と呼ばれる思春期の青年の視点を通して描かれる。誘拐され死んだと思われていた秀米が、突然日本の東京から、江南のこの村へ戻ってきた。彼女は横浜や仙台でも活動していたらしい。ミステリアスで寡黙な「校長」と呼ばれる謎の女性として描かれる秀米は、普済(プージー)学堂に村人を集め、指導者として理想社会を作ろうと画策し、挫折を繰り返す。彼女が連れ帰ってきた名前のない「ちびっ子」と呼ばれる男の子と老虎の交流。そして、最大の悲劇が起きる。

●第四章:理想社会の夢敗れ、犯罪者として捉えられた秀米。獄中で出産し、生まれたばかりの我が子は獄吏に奪われる。死刑前夜に辛亥革命が起こり死を免れたが、そのまま獄中で忘れ去られ、やがて放擲されるように釈放される。乞食同然の姿で故郷の村に戻った彼女は、自分自身を罰するように、語ることを自らに禁じる。そんな彼女の最晩年の幸福は、身近な人との微かな精神的交流、芸術的な悦び、それらを紡ぐ静かな暮らしの中にあった。

【著者プロフィール】

格 非(Ge Fei/ゴオ・フェイ/かく・ひ)
本名・劉 勇(Liu Yong)。清華大学人文学部中国語学科特任教授。 同大学文学創作センター所長。1964年中国江蘇省鎮江市生まれ。85年上海・華東師範大学卒業。デビュー作は86年「追憶烏有先生( 烏有先生の追憶)」。87年「迷い舟」などの作品で、同世代の蘇童や余華らとともに「先鋒文学」の旗手とされる 。88年『時間を渡る鳥たち』(新潮社 1997年)はポストモダニズムの傑作として高く評価された。2 0 0 4 年、およそ十年の沈黙をへて本作『桃花源の幻』( 原作「人面桃花 )で中国読書界を騒然とさせる。この作品で第4回華語文学メディア大賞(年度傑出作家賞)、第2回鼎鈞双年文学賞を受賞(0 5 )。続く第二部「山河入夢」、第三部「春尽江南」と合わせた「江南 三部作」として、第九回茅盾文学賞受賞( 1 5 )。清華大学で文学理論などを講義する傍ら、精力的に執筆活動を続け、最新長編作品「望春風」( 未邦訳 )で 、第1回京東文学賞受賞( 1 7 )。

【翻訳者プロフィール】

関根 謙(せきね・けん)
1971年1951年福島県生まれ。慶應義塾大学名誉教授。専門は中国現代文学。慶應義塾大学大学院修士修了、博 士(文学)。慶應義塾大学文学部長をへて2017~21年雑誌『三田文学』編集長。主な著書に『近代中国 その表象と現実』(平凡社)、『抵抗の文学 国民革命軍将校阿壠の文学と生涯』(慶應義塾大学出版会)など。主な翻訳書に 『飢餓の娘』(虹影 集英社)、『時間を渡る鳥たち』(格非 新潮社)、『南京 抵抗と尊厳』(阿壠 五月書房新社)など多数。

「普済(プージー)にもうじき雨が降るぞ」

そう言い残して失踪した父。心をざわめかせる謎の男。琥珀の眼を持つ金の蝉……。       

外の世界には、自分の知らない無数の奥深い秘密があるが、みんな口を閉じて、自分には何ひとつ漏らそうとしない。                                  

――秀米(シュウミー)は世の中の全てにいらだっていた。

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新発見! ため息のように美...


おすすめコメント

【松浦寿輝氏による推薦文】


歴史と虚構、事実とイメージが溶け合う広大な文学空間を、現代中国屈指の作家・格非の想像力は勇壮に飛翔し、滔々と流れる大河のような物語を紡ぎ出してゆく。
桃花の咲き馨るユートピアを希求し、波乱の生涯をおくる個性豊かな人々の群像が、中国古来の豊饒な詩歌文芸の記憶の想起とともに活写される。
その中で、数奇な運命に翻弄され、革命を企て、獄につながれ、言葉を失い、またそれを取り戻して死んでゆく主人公・秀米の人物像はひときわ哀れで美しい。


推薦  松浦寿輝(詩人・作家・評論家)


【松浦寿輝氏による推薦文】


歴史と虚構、事実とイメージが溶け合う広大な文学空間を、現代中国屈指の作家・格非の想像力は勇壮に飛翔し、滔々と流れる大河のような物語を紡ぎ出してゆく。
桃花の咲き馨るユートピアを希求し、波乱の生涯をおくる個性豊かな人々の群像が、中国古来の豊饒な詩歌文芸の記憶の想起とともに活写される。
その中で、数奇な運命に翻弄され、革命を企て、獄につながれ、言葉を失い、またそれを取り戻して死ん...


販促プラン

【受賞情報】
第4回華語文学メディア大賞(2005)年度傑出作家賞

第2回鼎鈞双年文学賞(2005)


第9回茅盾文学賞受賞(2015)(原作『人面桃花』を含む「江南三部作」に対して)
※茅盾文学賞:偉大な作家茅盾を記念して1981年に中国作家協会によって設立された中国で最も権威のある文学賞。長編小説の振興を目指す。対象となるのは13万字以上の長編作品で、選考は4年に一度。賞金は50万元(約900万円)。『江南三部曲』は第9回(2011〜2014の作品対象)の受賞作。「中国で最も権威ある文学賞」「中国長編小説の最高賞」「中国国内のノーベル文学賞」と称される。

【受賞情報】
第4回華語文学メディア大賞(2005)年度傑出作家賞

第2回鼎鈞双年文学賞(2005)


第9回茅盾文学賞受賞(2015)(原作『人面桃花』を含む「江南三部作」に対して)
※茅盾文学賞:偉大な作家茅盾を記念して1981年に中国作家協会によって設立された中国で最も権威のある文学賞。長編小説の振興を目指す。対象となるのは13万字以上の長編作品で、選考は4年に一度。賞金は50万元(約900万円)。『...


出版情報

発行形態 ソフトカバー
ISBN 9784908184321
本体価格 ¥3,000 (JPY)

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NetGalley会員レビュー

主人公の少女秀米が、不可解に思っている周りの事件にいつの間にか巻き込まれて翻弄されていく。残酷な描写もあるなか、差し挟まれた漢詩や初恋の相手の日記が、表紙のように美しく、まさに幻のような不思議な物語。巻頭の人物紹介、巻末の注記が物語の理解に役立った。

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中国文学に接したことがなかったのですが、美しい表紙に惹かれ読んでみました。
主人公秀米の波乱に満ちた人生が、美しく切なく描かれていました。
秀米を取り巻く人々も、個性豊かでまるで声が聞こえて来るような、賑やかさを持ちとても魅力的です。
所々に漢詩が用いられていて、その意味を追いながら、この作品がさらに彩られていくようでした。
心をえぐられるような残酷な箇所もあります。読むのを躊躇う箇所でも、秀米には一緒に乗り越えたいと思える魅力があり、読み進めることが出来ました。
「読み終えて残るのは、ため息のように儚い幻影の余韻」とこの本の紹介にありますが、これ以上にこの作品の余韻を表現する言葉が見つかりませんでした。解説により、謎のある場面も理解することができ、余韻に浸ることが出来ました。
中国文学に馴染みがない方にもおすすめです。

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はじめて中国の小説を読みました。すこし難しいように感じるところもありました。ただ、せりふ、地の文、加えて途中で出てくる登場人物たちの文章がとても温度があるもので感じやすかったです。主人公の少女が異国の知らない女の子には思えなくて、その当時の自分を重ねながら読みました。

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桃源郷を求めて奮闘する人々の群像劇。ユートピアは絵に描いた餅のような理想を掲げただけでは血肉は通わない絵空事になるけれど、生々しい欲望が理想の名を借りて暴走が空回って自滅していくのがなんか人間らしく感じてしまった。

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秀米。きっとこの少女は自分がいつか大人になることさえ知らなかったに違いない。
誰もが皆平等に生きる理想郷。その実現を目指す情熱の目覚め。けれど拙い革命は、やがてもっと大きな革命(辛亥革命)の渦に飲み込まれていく。
「普済にもうじき雨が降る」
そう、ふりだす雨の気配は否応ない変化の予兆。
中国が近代に目覚める前夜。農村に生きる人々が求めた革命と桃源郷の幻は、残酷で美しくてまるで夢のようです。

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