介護者D

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刊行日 2022/09/07 | 掲載終了日 2022/09/14

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内容紹介

三十歳の琴美は東京で派遣社員として働く地味な毎日。そんな日々に一筋の光が。それは偶然、路上ライブで出会ったアイドルグループ「アルティメットパレット」だった。

働いたお金を貯めグッズやライブへ行き、仲間もできつつあるなか、札幌に住む父が体調を崩したとのことで急遽、帰宅することに。

交通事故で五年前に母親は他界し、妹は結婚しアメリカへ。雪かきもままならない父親の様子を見て、

札幌に戻ることを決意した琴美だが、地元の同級生は結婚し子育て真っ最中、初めての父子生活にお互いぎこちない日々、そしてコロナ禍に突入する……。

閉鎖的な日々、明るい展望も見えない中、生き続けるためのよすがを求めて懸命に生きる姿を描き切った、著者の新境地。


三十歳の琴美は東京で派遣社員として働く地味な毎日。そんな日々に一筋の光が。それは偶然、路上ライブで出会ったアイドルグループ「アルティメットパレット」だった。

働いたお金を貯めグッズやライブへ行き、仲間もできつつあるなか、札幌に住む父が体調を崩したとのことで急遽、帰宅することに。

交通事故で五年前に母親は他界し、妹は結婚しアメリカへ。雪かきもままならない父親の様子を見て、

札幌に戻ることを決意...


出版社からの備考・コメント

★校了前の仮データを元に作成しています。刊行時には内容が若干異なる場合がありますがご了承ください。

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おすすめコメント

▽担当編集者より
『絞め殺しの樹』で第167回直木賞の候補作になるなど、さらに今後が期待される河﨑秋子さんの新刊です。 今までは自然と歴史的な物語を執筆し、その実力を評価されておりましたが、今回は30代の女性が父親の介護に直面する現代的な問題を軸に描いております。 主人公・琴美の唯一の救いは「アイドル」。推しへの思いの描写が大変リアルで、行き場のなさがコロナ禍での閉鎖的な毎日にも重なり、 今の日本でなんとか踏ん張って生きながらえている人々に響く小説になっています。

▽担当編集者より
『絞め殺しの樹』で第167回直木賞の候補作になるなど、さらに今後が期待される河﨑秋子さんの新刊です。 今までは自然と歴史的な物語を執筆し、その実力を評価されておりましたが、今回は30代の女性が父親の介護に直面する現代的な問題を軸に描いております。 主人公・琴美の唯一の救いは「アイドル」。推しへの思いの描写が大変リアルで、行き場のなさがコロナ禍での閉鎖的な毎日にも重なり、 ...

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出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784022518552
本体価格 ¥1,870 (JPY)

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NetGalley会員レビュー

浅学にして初めて読む作者だが、ものすごく引き込まれた。
東京でのどん詰まりの生活の中、30歳の派遣社員の女性は父親の介護のため田舎に帰る。生きがいは推しのB級アイドル。
田舎での毎日に希望はない。だが生きていかなければならない。
生きていれば人生は拓けていく。
ものすごく暖かな気持ちになれた一作。
旧作もゼヒ読まなければ。

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読んでいくうちに「介護者D」のタイトルの意味が重苦しくなる。なるほどDか。
子供時代に感じた妹に対する劣等感、父親や同世代の生き方や言動に読んでいる私まで傷つけられるよう。
大人になっても、ふとしたことがきっかけで沸き上がる感情にシンパシーを感じてしまった。
頭では介護の為に優先すべきことはわかっている。だけど!って叫びたくもなります。
いくつになっても親にとっては子供だし、違和感がありつつもそれを甘んじて受け入れる関係がどの家族でもあり得るのではないでしょうか。
推し活が重たくなりがちな物語のガス抜きをしてくれていて良かった。
推しはパワーの源ですもんね。
長期戦である介護は正解はないのかもしれません。
私自身が今まさに経験しているテーマだったのでネガティブな感情も否定せずにいようと思えました。

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『絞め殺しの樹』を読んだ時どうしようもないほどの苦しみを味わったのにまた苦しくなるだろうと思うのに、新作を楽しみにしているのでリクエストしました。

「雪かきに来てくれないか」
父親からのこのメールで東京から札幌に戻った琴美。このメールの一言だけでも胸が苦しくなった。タイトルの『介護者D』この意味がわかってくるとさらに苦しくなる。
介護が必要となっても威厳を保とうとする父親、姉に介護を頼む妹、郷里で久しぶりに会った友人の言葉、とてもリアルに描かれていた。
介護やコロナ禍での閉塞感の風穴となり心の支えとなる推し活。
家族が介護が必要になったときの心境が私自身とも重なり読んでいてとても苦しかった。コロナ禍も重なり誰しもなにかに夢中になり閉塞感から抜け出そうとしたのではないだろうか。琴美の姿と自分を重ねる人も多いだろう。

介護、コロナ禍、自分の生活の手の届く範囲での出来事の今作もとても苦しかった。
私は苦しくとも読んでしまう河﨑さんの作品に、答えを求めようとも救ってもらおうとも思って読んではいない。ただ自分と重ね追体験し感じたままの苦しさを心に留めるようにしている。それがいつか自分が苦しいときに少しでも救われる何かのヒントになるのではないかとも思っている。
ここまで心を追い込んでくれる河﨑さんの作品をこれからも読んでいきたいと思う。

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30歳独身で東京で派遣社員として働く琴美。
父が脳卒中で倒れ、
その後遺症で生活に不自由が出たことから、
実家のある北海道へ帰ることに。

母は5年前に事故で他界、
妹は海外在住、
父と暮らせるのは自分しかいない中で、
父と2人での生活が始まる。

当事者ではない周囲からの言葉に苛立ちを覚えたり、
逃げ場のない状況への不安や恐怖、
そんな自分に対して感じてしまう蔑み、
決して良くなることのない父の現状、
琴美の生活に介護はどんどん侵入していく。

そんな琴美の心の拠り所になっていたのは、
女性アイドルグループの推しの存在。
たまに会いに東京へ行くことでリフレッシュしていたが、
コロナ禍となりそれもままならない状況になっていく。
それでも続いていく日々。
自分を守りながら、父と娘はどう向き合っていくのか。


推しへの思い、周囲への苛立ち、
父への感情、自身のもどかしさ、
琴美のすべてにリアルを感じた。
タイトルの意味がラストに向け重みを増す感じがした。

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河崎秋子さんの作品、初めて読ませていただきました。
今まさに渦中のコロナ禍、東京から父のいる故郷へ戻り、父と愛犬トトの介護に足を踏み入れる状況。そんな重苦しくなっていく中での推し活。
友達の心無い一言や遠く離れた妹との会話など身近に起こりえそうなことも多く、考えさせられました。

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読んでいて辛かった。
だけどいつか自分もなりうるであろう介護する側、される側のリアルが描かれていて、
琴美に自分を重ねて読んだ。

30代独身、無職の琴美。
父親の介護と家事に追われる日々。
この先、何十年と続くであろう父親の介護。
どんなに頑張っても認めてもらえない理不尽さ。
先の見えない自分の未来への不安。
自分とは出来が違う優等生の妹。
そんな日々に苛立ち、いつも悪態をつく琴美。
唯一の心の拠り所がアイドルの押し活。
キラキラと輝くゆなを追いかけることで自分個人の時間を
大切にし、生きがいを求める。

今はまだ元気な両親でも他人事ではない現実に直面する時、
琴美のように私も何かに生きがいを求めるのだろう。

介護という重いテーマに、押し活というポップさで重すぎず前向きになれる作品でした。

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六月に刊行されたばかりの「鯨の岬」を読了した直後。
間違いなく北海道を代表する表現者だという思いをあたらにしたばかりだった。
「新境地」という言葉がしっくりくる。道東は根室の地に根差し、羊飼いとして生きた生活の中から生まれる文学が紡ぎ出される。安易な感傷を排したと感じられる厳しい筆致の背後には、生き物全てを圧倒する過酷な自然の中に生きる実感に根差す言葉がある。自然界の中で人間を特別視していない。

本作は、徹底的に人間の心の動きに焦点をあてている点で、河崎秋子としては新鮮な感じがする。
時は平等に流れゆく。誰でも少しずつ歳をとる。自分の身の回りのことができなくなってきた時どうするか。その時誰かそばにいるのか。家族は寄り添えるのか。その時日常はどう変わるのか。誰の身にも起こりうること。
Dの意味がわかった時の切なさ。
家族それぞれの心のひだひだを描きながら、現実は進む。
でも。どこか全て危うくて、一歩間違えば悲劇だとも感じた。
足元のどこかにのぞく深淵。
それでもみんな生きてゆく。どうにかして生きてゆく。

本作が初めての一冊という方は、是非著者の他の作品も読んで見てほしい。

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脳卒中の後遺症で左足に麻痺が残った父親のため北海道の実家に戻った琴美。母親は5年前に他界している。出来の良い妹は海外在住で、自分が面倒を見るしかないという状況に追い込まれた琴美の唯一の楽しみは「アルティメットパレット」というアイドルグループ。推しは“ゆな”だ。機会があれば東京のライブに足を運んでいたが、コロナ禍がすべてを変えてしまう……。
介護と“推し活”という、まったく合致しない組み合わせの妙に唸った。悪化こそすれ、良くなることは決してない介護という闇に、“推し”がもたらす光は本当に救いだと思う。

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親の介護、自分にはまだまだ先のことだと思っているけれど、いつ琴美と同じ状況になるか分からない。
日々の介護にうんざりする気持ちも、介護施設に任せる罪悪感も、分かる気がする。そんな中でも、アイドルの推し活という気晴らしがあることで、琴美は毎日を乗り切っている。周りからどう思われようが自分の大事なものをしっかり持っていられる強さが、琴美にはある。
いずれ迎えるであろう未来を、少し早く予習しているような、そんな気分で読み終えた。綺麗事だけではなく、シビアな現実が描かれているけれど、希望の見えるラストで良かった。

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なぜDなの?と思いつつ読み進むうちにDの意味がわかり、切なくなりました。
とにかくさまざまなこと
父の介護
父の愛犬の介護
妹との乖離
推しの行末
同級生との違い
切ないことが多すぎて読むのがつらくなりましたが、これはフィクションであるけど、
実際には似たような現実の人がたくさん存在するのではと想像すると
現代社会への警告や問題提議を突きつけられているように感じてなりません。
介護とはまだ縁がない人にこそ薦めたい作品でした。

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タイトルである「介護者D」のDって何なんだろう?と思って読み始めたがDの意味を知った時にどうしようもないやるせなさに飲み込まれそうになった。
介護に関する描写もとてもリアルですごく考えさせられ読んでいて辛くなる場面もあったけれど推しとのエピソードに救われた。
私の周りの人もそうだけれど推しの存在は生きていく力になるんだととても眩しく羨ましく思った。

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「介護」と「推し」二つの観点からの感想。「介護」は、本当に深い。なんでもそうかしれないが、関わった人でなければ、わからない。本書は、まだ認知症でもなければ、一人で留守番も出来る父の介護を引き受けるところから始まるが、傍らで未来を見せられる様な飼い犬の現状も見る。読者である私も、これからの親の介護を想像させられ、自分がどの程度納得し、引き受けられるかを再確認させられた。片や、「推し」もこれまた他人にはわかってもらえない。自分を支えている大切なものを勝手に想像され、気をつかわれ、納得されるというもどかしさ。いずれも、そして本当に、なんでもそうなのかもしれないが、寄り添う事はできても、本人にしか分からない事がある。他人を理解しようと努力し、否定せず、自分の大切なものを温めながら、日々過ごしていきたい。そんな事を考えさせられた本でした。

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脳梗塞後遺症のある父を手伝うために東京から実家の北海道へ戻った琴美。
琴美の唯一の楽しみはアイドルの推し活。
東京にいた頃は参加の出来たイベントも北海道から、ましてや介護をしながら、コロナ禍だとままならない。
コロナ禍での介護生活は孤独が多いと思う。
どんなに仲の良い家族でも介護が関わると綻びが生じたり、見たくないものが見えてきたりもする。
琴美には出来の良い妹がいる。一緒に暮らしていた頃の父は妹の方を評価していて琴美にはそれがずっと心のしこりのようになっている。
近くで見ている介護者より遠方に住んでいて時々顔を出して優しい言葉を吐いていく人の方が喜ばれる現象は現実でもよくあることだ。帰ったら愚痴をこぼすが来ている時は最大限に気を遣う本人。
単身赴任のお父さんが帰ってきたとき子どもがちやほやするのを見ている
普段ワンオペで頑張っているお母さんの感情のそれと似ている気がする。
私自身は推し活をしたことがないけれど、アイドルを追いかけたり自分のことのように応援したくなる気持ちが本を通じて伝わってきた。ライブ会場で推しと出会えた場面には私も泣いてしまった。
題名にあるDの意味を知ったときは苦しくなった。
父と娘が近づいたり離れたりする場面がなんだかリアルだった。
光のあるラストの描かれ方でホッとした。
琴美なら大丈夫。

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著者のこれまでの作品はちょっと重すぎて手が出なかったが、今回は「介護」とゆうあまりにも身近なテーマに惹かれて手にしました。 東京で一人暮らしの姉の唯一の楽しみはアイドルの推し活、しかし北海道の一人暮らしの父が介護が必要になり実家に戻ることに。一方妹は、結婚出産離婚して今は子供とアメリカ暮らし。重い負担が姉一人に。しかしも愛犬までもが認知症に。タイトルの「D」が姉に重くのしかかる。帰省した妹や孫に対する父の態度、再会した旧友との距離感、これから先の事を考える姉の思考の数々はまさにリアルそのもの。終盤に展開される推し活エピソードに救いと安堵され思わず涙してしまった。

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どことなく歪な装丁と、無機質なタイトルが印象的だったのでぜひ読んでみたいと思った一冊。飛び込んできた世界は、想像通り終わりのない陰鬱とした介護の日々と、絶望の世界で唯一の救いの光である推し活の対極だった。「介護者D」のDランクは、物心ついた頃から消えない焼印のようで、本人も周りも自覚しているだけに残酷だったが、最後は明るいDランクとして覚醒し、自分の人生に向かって歩き出す主人公の姿に一読者として爽快だった。

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介護者”D”の”D”はDランクのD。
出来のいい妹に比べて勉強の出来なかった主人公。父母が教える塾ではいつもランクDの生徒だった。期待されていない娘として育ち、反対もされずに親元を離れて東京へ出た。
それなのに、いざ介護が必要となったら、娘だからという理由で気軽に呼び戻されるのだ。
なんたる理不尽。
しかも介護の対象には、妻に先立たれ独り暮らしになって体も不自由になった父だけではなく、認知症を発症した実家の飼い犬まで加わるようになる。
唯一の愉しみだった推し活さえ出来なくなり、介護するだけの生活。
絶望。絶望しかない。
しかし世の中にはこういう娘たちが少なくないし、こういう息子たちもいるだろう。
誰がいつこういう状態におちいるかわからないのが現代。
このまま老々介護になる可能性も!
身につまされながら読んだ。
ラストにいくらかの光明が見えるのが救い。

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東京で派遣として働き、大好きなアイドルの『推活』に生きがいを見出す主人公が父親の介護のために北海道へと戻るのだが…。この主人公、私は個人的にとても好きだ。心の内で思っただけの事で罪悪感を感じたり、そうかと思うと上っ面だけのLINEを返信したり、劣等感を感じ『へっ』と笑ってみたり彼女の人間臭さは非常に好感を持てる。タイトルの『D』の意味が分かると切ない気持ちにもなるが介護者としても本当に『D』なのかは疑問。家族全員が少しずつ歩み寄り1番良い形の介護は決して『D』ではないと思う。思わず応援してしまう主人公だ。

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30歳。派遣社員。偶然出会って、のめりこんだアイドルグループのひとりに生きる悦びを見出した琴美。折も折、札幌の父が体調を崩し家事全般を担うために東京から帰郷する。
私塾といえど教育者として人生の長きを過ごした父の型に嵌った言動に縛られることになった。出来のいい妹とずっと比べられてきた琴美。かつては外側から付けられたランクを自らに貼り付ける琴美の自虐と虚しさはいかばかりか。父の認知症の気配、あろうことかペットの犬まで認知症を発症する。介護、介護、介護。コロナ禍の渦中で先の見えない閉塞状況に疲弊していく。発することのできないことばを飲み込んで、溺れそうな琴美の心情に慄然とする。
人は誰でも老いる。それでも、日常は続き、生きることを強いる。推し活に生きるよすがを見出すことになんの遠慮がいろうか。正解はない。終わりを目指して新しい日をまた繋ぐ。それでいい。

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先日河崎秋子氏の『絞め殺しの樹』を読んで衝撃を受け、同氏の作品がもっと読みたいと思っていたところ、こちらで見つけ、すぐに承認をいただきありがとうございます。
両親と妹に対する屈託や劣等感、介護に対する葛藤や迷い、恐れなどの心理がとても詳細に丁寧に描かれていて、それでいてとても読みやすい文章なので、読み始めると止まりませんでした。
私にも教える仕事に就いていた両親がいて、才色兼備の妹がいる(今は海外にいる)こともあり、共感してしまうところ、身につまされるところが多かったです。
Aランクの身内の存在は、なかなかに辛いものがあります。
自分がAランクだと認識している人の中には、こちらを下のランクとみなしているのか、こちらのやっていることに無邪気に口を出したがる人がいて、その発言は的を射ていても、外していても、不快な気持ちになるものです。
推しを失う主人公でしたが、父親の介護から学びを得て、新しい道を見つけたこと、そして、父親も自分の置かれた状況を受け入れられた様子に安心でき、満足して読み終えることができました。
このような機会を与えてくださりありがとうございました。

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いつもとはひと味違う河﨑作品。どこまでも生々しいリアルな中年女性の日々が描かれている。推し活、親の介護、ペットの看取り、家族間の問題。北海道の土地と方言で、そのリアルさが増している。姉にランクDと言う劣等感を抱かせる親の無神経さや妹の軽やかに生きる姿に、苛立ちと悲しさを感じながら読み進んだ。しかし、終盤に向けて、希望や救いが感じられる展開に。人生悪いことばかりじゃない。

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東京で一人暮らしをしつつ、少女6人グループ「アルティメットパレット」の「ゆな」の推し活が生き甲斐だった琴美、30歳。
札幌で一人暮らしをする父の介護のため、帰省。

教師から塾講師となった父は先生だったというプライドもあり、介護される側になっても感謝や遠慮はない。
母は既に亡く、ランクAの優秀な妹はアメリカで暮らしていて頼れない。
父が可愛がっていた飼い犬のトトも年老いて病気を発症し介護が必要に。
生き甲斐だった推し活も、今は遠く札幌へ来てしまい、ままならない。
圧倒的孤独。

リアルすぎて、共感を恐れて、頭が考える事を放棄してしまいました。

考えたくないけれど…でも、これは、誰にでもあり得る、目を背けてはならない問題だと思います。

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「雪かきに来てくれないか」脳卒中で倒れリハビリをしている父からのメールが届く。東京で派遣として働いている琴美はひと冬のつもりで実家の札幌に帰ることに。
 川﨑秋子さんの作品、初めましてでした。三十路女性の徹底的な閉塞感が描かれています。個人塾を経営して厳格だった父の介護。独身、定職なし、田舎の暮らし。妹は海外でシングルマザーとして働いているので全てが琴美にのしかかります。そんな彼女の息抜きは推し。今流行りの「推し」に対する心情がよくわかります。そしてどうやって救ってくれていたのかも。
 琴美は父との日々に行き詰まると、男性の平均寿命から父の年齢を引き、その時の自分の年齢を計算します。ゴールを定めないと日常をやり過ごせない感じ。くーっと私まで息もつけない思いになりますが、琴美が推しの歌を聴いている時は深く息が吸えました。介護する側される側。東京の暮らしと地方の暮らし。どちらも苦しく、どちらも人には吐露できない想いが静かに描かれ、意外にも読み終わると心が温かくなりました。

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親の介護。他人事ではない現実が自分にも遠くない将来とリンクした。他人ではないからこそ尚更向き合い方や距離は難しいと思う。主人公はアイドルの推しが拠り所になって前向きに考えられたのがかなり救いだったと思う。

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介護の話…って思って読み始めたら、頑固な父の介護のために都落ちしてきた琴美の愚痴から始まり、ちょっと目がテン。頑固な父に閉口し、介護に手を貸さず自分の時間を優先する妹に腹を立て、お腹の底で悪態をつきながら、彼女自身も推しのアイドルグループの追っかけに忙しい。コロナ禍の閉塞感、ギクシャクする家族・友人との関係…暗闇の中を堂々巡りしているようにも思われたどんよりとした思うに任せぬ日々。推しのアイドルだけが唯一の希望って言うのは、今風だけど、あまりにも幼稚で抵抗はあるが、彼女なりの向き合い方で黒い思いと戦いながら乗り切る姿は現実味がある。確かに介護者のランクで言うなら琴美の介護は確かに「D」なのかもしれない。が、「A」なんて評価される介護があったとしたら、私はそこに大きな偽善しか感じられない。介護される方もする方も、家族の介護ってそんな綺麗ごとで済むもんじゃない。互いに不満も嫌悪も山ほどある。そんな気持ちにどっかで折り合いをつけて飲み込んでしまうしかないのだから。そんなことを思いながら読み進み、琴美の気持ちはなんとも自然に自分の気持ちと同化していった。そう、私も要介護の家族を抱える一人、そして私も、介護者Dの一人だから。

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ちゃんとした家があって、父の資産によって食うに困らない、父から暴力を受けるわけでもない琴美の実家暮らしは決して過酷なものではないかもしれません。ただ、生活のさまざまな場面で琴美に口出しをするのに、琴美からの要望や助言にはあまり耳を貸さない父の姿勢、できの良い妹と比べて琴美を軽んじるような父の言葉を読むなかで、琴美と同様、心はすり減り、ストレスが溜まっていきます。
しかし、それでも父を見捨てない琴美の心情に、「家族」というものの簡単に割り切れない関係性を感じ取りました。ストレスを中途半端に爆発させることはあれど、目をむいて父と大喧嘩をしたり、いっそ見捨てることはない。父の老い、愛犬の老い、コロナ禍で追い詰められながらも、琴美は幼い頃の家族の郷愁に駆られたり、父の美点を見つけたりする。とくに父の美点を見つける(不意に思い至ってしまう)部分などは、相手の顔色を窺い、言葉を吞み込むことの多い琴美の性格と裏表なのだろうと思いました。そして、それゆえに父を嫌悪しきれなかったのかもしれない。
最終章を読んで、父娘の歩みに胸がいっぱいになりました。いろいろな読み方ができる、非常に奥深い作品でした。

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ごく平均的な「父と娘」の距離は、近くもなく遠くもなく。その感覚で、介護生活に突入した猿渡家。互いの思いやりも苛立ちも読者にリアルに迫ってきて、身につまされながら読む人が多いのでは。
ふたりの間で緩衝材となるのが、長女の推し活と、父が可愛がっていた愛犬。そうした存在の貴重さも交えて、介護の理想形が描かれていたように思う。
タイトルにある「D」は、主人公で語り手の長女が、自己評価が低すぎてそう自分を呼ぶのだが、客観的に見て、十分いい娘さん。

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現実的でとても冷たく嘘のない主人公、琴美さんと自分の心がぴたりと重なるのを感じました。
彼女はほんとうにDランクの人間でしょうか。

前半は自分までどす黒いものに巻き込まれていくようで読んでいて気分がとても厳しかったです。この恐ろしい日常が自分のものだったらと想像してしまいます。
後半から主人公が自分の人生をたのしむようになってくれ、ほっとしたと同時に、何が主人公の背中を押したのかと考えます。

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