ゴリラ裁判の日

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刊行日 2023/03/13 | 掲載終了日 2023/09/27

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内容紹介

人間に支配されている正義を取り戻すために。
わたしは、戦う。最後まで。

カメルーンで生まれたニシ・ローランドゴリラ、名前はローズ。メス、というよりも女性といった方がいいだろう。ローズは人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解し、「会話」もできる。

彼女は運命に導かれ、アメリカの動物園で暮らすようになる。そこで出会ったゴリラと愛を育み、夫婦の関係となった。だが――。

その夫が、人間の子どもを助けるためという理由で、銃で殺されてしまう。どうしても許せない。そしてローズは、夫のために、自分のために、正義のために、人間に対して、裁判で闘いを挑む!

アメリカで実際に激しい議論をまきおこした「ハランベ事件」をモチーフとして生み出された感動巨編。第64回メフィスト賞受賞作。


著者・須藤古都離(すどう ことり)
2022年「ゴリラ裁判の日」で第64回メフィスト賞受賞。

人間に支配されている正義を取り戻すために。
わたしは、戦う。最後まで。

カメルーンで生まれたニシ・ローランドゴリラ、名前はローズ。メス、というよりも女性といった方がいいだろう。ローズは人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解し、「会話」もできる。

彼女は運命に導かれ、アメリカの動物園で暮らすようになる。そこで出会ったゴリラと愛を育み、夫婦の関係となった。だが――。

その夫が、人間の子どもを助けるためと...


出版社からの備考・コメント

★校了前の仮データを元に作成しています。刊行時には内容が若干異なる場合がありますがご了承ください。

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『ゴリラ裁判の日』
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【注...


出版情報

ISBN 9784065310090
本体価格 ¥1,750 (JPY)

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NetGalley会員レビュー

この小説の下地になったというハランベ事件の予備知識がなく読み始めたのだが、あっという間にゴリラ達のいる魅力的な世界に引き込まれてしまった。なんと言っても、主人公のローズが素晴らしいのだ。ゴリラの世界、そして学習によって学んだ人間の世界に対する思いと憧れ。彼女は、とても純粋で心温かく、かつ繊細であり、ウィットにとんでいる。そして賢いのだ。事件後の発言や、その後の暮らしぶり、人間の友達との真の交流や友への思いやりにも、随所にそれが現れている。そして何より自分の気持ちに正直であること。彼女のキャラクターこそが、この小説の一番の魅力となっていると言っても過言ではないだろう。2度目の裁判が、この小説の大きなクライマックスとなる。裁判は、一体どんな結末になるのか。癖のある陪審員や弁護士達を巻き込んで、息を呑む展開となる。そしてその裁判の後、ローズが選んだ人生。それがとても彼女らしいのが救いだ。
人間とは、動物とは、そして神とは…。簡単に結論を出すことが出来ない大きなテーマをはらんだ大作である。

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人間と動物のコミュニケーションや動物が何を考えてているのか想像した小説や映画は色々あると思うが、大抵は人間の視点から描いているのに対し、本作は,動物、ゴリラのローズの側から描いているという視点が斬新だった。しかもローズは手話や音声変換のグローブを使って言語を操り人間とコミュニケーションをとっているのが興味深い。話せるゴリラを利用しようとする人々に対して偏見を持たずに接するリリー、ユナ、ダニエル、ギャビンなどの登場人物を登場させてローズの心に人間に対する信頼感を失わせずに話を展開しているので嫌な気持ちにならずに読み通すことができた。捕鯨保護団体のような動物の権利(人権?)を主張する人たちからすると甘い作品ということになるのだろうが、動物の考えていることなど考えたこともなかったので動物の行動や主張も考えるきっかけとなったと思う。ストーリーはシンプルで文章も読みやすかった。
 ゴリラ同士のコミュニケーションの描き方が少ないこと、二度裁判ができた理由が説明されていないこと、せっかくの機会である陪審員の評議がほとんど書かれていなくて動物の権利に関する人間側の議論が書かれていないことは少し物足りない。ローズを利用しようとする悪い人の悪だくみをもう少し書いた方が面白くなっただろう。

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なんとも奇妙なタイトルで、「ゴリラの裁判?」という違和感を抱えて、読み始めた。主人公のゴリラが、アメリカ式手話を学習したことで、ゴリラとひとがコミュニケーションできる、その過程を通じて、人社会の文化を理解して、人間的な思考や感情の機微までも身に付けて行く、それらが自分でも不思議なくらい違和感なく理解できる。これまで経験したことのない「読み進み感」に包まれながら、それでいて、文章の各シーン(場面)は、自分がこれまで見てきた映像に裏付けされて、とてもリアルに感じられるという小気味よさがある。▼魅力ある登場人物や場面展開が、物語の伏線をある意味予定調和的につくりながら、読み手の興味をどんどん引き付けていく。裁判物は、大好きで、訴訟裁判における弁護士同士の対決や裁判官、陪審員とのやり取りや心理作用描写は、一番の魅力となるが、言葉で描き切れるものか、期待を裏切られないか、最後は祈るような気持ちで主人公たちを応援した。▼物語の中で物語に深みを与える関連する事象(キーワード)が、自分の引き出しの中に、偶然ながらすべて収納されていた記憶情報であったことも、自然に没入でき、途切れのない楽しいひと時でした。▼CRP気候リーダーとして、生物多様性を基本にした環境活動を世界の仲間と取り組んでいる自分にとって、物語の結語は、とても意味のある言葉でした。「全ての命は...そこに存在していた。」

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手話で会話でき、英語も解するスーパー雌ゴリラ・ローズがある悲劇を被り、訴訟を起こすーーそんな衝撃的なシーンから始まる「ゴリラ裁判の日」。高知能動物の存在からニンゲンの定義を浮き彫りにするSFにはオラフ・ステープルドン 「シリウス」、ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」、そしてズバリ人外の知性が原告となる法廷ものである、J・ディレーニイ &M・スティーグラー「ヴァレンティーナ コンピュータ・ネットワークの女王」があります。「ゴリラ裁判の日」もその流れを汲む、正統派SF。タイトルとメフィスト賞受賞作であることから想像するような、ビザールな作品ではありません。といっても決して堅苦しくなく、古参SFファンのみならず、若い小説の読み手もさくさく読めるドライブ感のある楽しい作品です。
とにかく主人公ローズがいい! 強く美しくエレガントでちょっと棘もある、まさに薔薇のような女。先行作の動物にありがちな「けなげ」なところがなく、自分のために生きていて痛快。弁護士のクソ野郎っぷりも楽しい。このクソ野郎の語る最終弁論をよく噛み締め、人間と人権について、思いを新たにしたい。

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まったくもって大した考えもなくただ、なんかちょっと抜けたタイトルだなぁと、興味を持ったのが、読んでみたいと思ったきっかけです。
 正真正銘、ニシローランドゴリラ/メスのローズが、夫(もちろんゴリラ)を殺されてしまったことで裁判が行われる、というのがあらすじ。だけれど別にどうぶつの国の寓話かなんかでもなく、ローズが訴えをおこすのは人間の社会、アメリカの裁判所なのだ。
 フィクションだから細かいことはすっ飛ばして喋ることができるゴリラがいることにしてもいいかもしれない。けれど本作は丁寧に、ローズが英語を理解し、アメリカ手話を覚え、テクノロジーの助けも借りて人間と円滑にコミュニケーションをとれるようになる様子を描いている。その過程を読んでいると、ローズが成長していく喜びを一緒に感じられてこちらも楽しくなる。
 そう、丁寧な描写が全編に行き渡っていることで主人公がゴリラであることとか、アメリカの裁判事情といった込み入った内容も無理なく読んでいくことができる。特に好きなのはローズが生まれ育ったカメルーンのジャングルのシーン。読んでいるだけでゴリラの生態やジャングルの気候も知ることができるし、何より湿った土の感触や年少のゴリラたちと遊ぶジャングルの生活を想像してワクワクする。
 一方でアメリカに渡ることになってからのローズと人間のやり取りは、ローズの無垢さもあいまって人間の打算的な一面や身勝手さが浮かび上がってくる。弁護士のダニエルなんて無茶苦茶で、はったりに揚げ足取りと自分が主導権を握るためならなんでもあり。とはいえ、こんぐらい生き馬の目を抜くかのような思考じゃないと人間界では突出できないのかもと思わされてしまう。
 プロレスのくだりについては、そっちの方向に行っちゃうのかと戸惑わずにいられなかったが、それもまぁさもありなんということかな、と。ローズがそうしたかったということでしょう。また、実際にゴリラが裁判をしてこのような展開になるかは読み終わった後でもなんとも言えないが、舞台がアメリカなだけに間違っていないような気がしてしまう。
 レビューを書きつつ、ローズみたいに純粋なキャラクターは、もう人間では描けないのかもと頭によぎる。ローズの素直な心の動きや疑問、戸惑いは翻って人間社会のややこしさを映す鏡のようだ。そういったややこしさも丹念に描写する文章のおかげでぐいぐいと読み進めていけることも本作の魅力だろう。

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しばらく、本から遠ざかっていました。
企画に乗ることで久しぶりに読むことにしました。

ゴリラが主役というだけでも画期的で著者のチャレンジ精神が感じられました。
実際にあった事件を題材にしており、命とどのように向き合うかを題材にしています。
人間と言葉を交わせるゴリラのローズは、ジャングルから人間世界に飛び出しました。
人間との意思疎通ができるようになったことで、ゴリラとして生きづらくもなる。
知能も高く、自己主張も積極的です。
人間に人権があるように、ゴリラにも同じものがあるのは当然と思います。
ゴリラでも人間でも同じ命だけど、どうしても人間の方が重きを置かれる。
習性の違いもあり、お互いに理解を得ることも難しい。
どちらかが合わせるしかない。
小説では、ゴリラの方が人間に歩み寄っています。
ヒロインのローズは、服を着て、言葉を交わして、二本足で立つ。
健気な姿で痛ましくもある。
純粋一途なヒロインは、女性としても共感できる部分が多くあります。
一人の女性としての人生の物語です。
最後は、帰るべきところへ帰り、どこかホッとさせられました。

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私はローズが好きだ。彼女は聡明で知的で、向上心があり、前向きで、純粋で、とても魅力的である。私はローズが好きだ。しかし、彼女はゴリラだ。それがなにか問題ある?知能や感情を持ち、人間とコミュニケートできるゴリラは人間と何が違うのか。命の尊さを描いた輝きを放つ物語だ。

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「ハランベ事件」については知らなかったが、「ゴリラ裁判の日」というタイトルに興味を持った。ゴリラ裁判については1章で少し触れられ、伏線となっている。ゴリラが主人公である一人称の書き方は興味深く、作者が動物学者であるかと見紛うようなゴリラの暮らしや内面の描写に引き込まれていった。特異な能力を持つ主人公ローザの生き様や心の葛藤を中心に、想定以上の人間とのやり取りが魅力的に描かれ、10章以降は特に胸に迫る展開となって、二度目の裁判ではゴリラを通して人間の有り様を見る思いがした。雄大な自然界に比して俗社会で繰り広げられてきた出来事により、種を超えて生きることの厳しさと価値が伝わり、作品の壮大なスペクタルに魅せられ続けた。最後、ローザがジャングルの暮らしに戻ってこの大作が完結したことに、どこか安堵感を覚える。自分が人間であることを自覚した読後だった。

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哺乳類や鳥類には、高い知能をもつものが知られていて、その行動の中には知性や倫理の存在まで伺わせるものがある。類人猿のチンパンジーのコミュニティの一部はジェスチャーを用いたコミュニケーションを行い、そこには初歩的な手話のように個体間で一貫した意味を持つ「単語」も存在することも明らかになりつつある。

 こうした研究と、2016年5月に米国シンシナティの動物園でゴリラが射殺されたハランベ事件を結び付け、「もし、手話を使えるゴリラがいて、その権利に基づいて裁判を起こしたらどうなるだろうか」を小説の形で考察したものが本作である。
 主人公が育ったアフリカの森林を舞台に描かれるゴリラの生活は臨場感があり、主観的に描かれるゴリラの内的世界も豊かだ。そこで育った「手話が使えるゴリラ」がアメリカの裁判制度を利用するに至る過程で描かれる人類社会の歪みにも説得力がある。

 ただ、読書中に「主人公であるゴリラは、この文化や社会についての知性と教養をどこで身につけたのだろうか」という疑問がたびたび湧き上がってきた。
 裁判などの社会制度を理解し、議員などの身分も理解して適切な行動をとれる、知識を超えた知性。その存在は作中のゴリラの一人称による言及が見える読者にはわかるものの、簡単に「教育を受けた」と描写されるだけでは追いつかないもので、ましてや作中の社会や裁判員に客観的に示されているとはいいがたい。そのため、裁判や信仰に関する描写が一部、理想主義的にみえてしまう点が残念だった。
 とはあれ、魂の本質はどこにあるのかという、ギリシャ哲学のプシュケーの議論を思いおこすほど深いテーマに挑んだ本作。動物の権利や知性に興味がある方には、ぜひご一読をお勧めしたい。

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須藤古都離氏「ゴリラ裁判の日」読了。出版前のゲラを読ませて頂く機会を頂き、タイトルのインパクトに惹かれて選んだ本書である。アメリカで実際に起きた「ゴリラのハランベ事件」を下敷きに書かれたそうだが、あえて事前に調べることはせずに読み始めることにした。ただ、須藤氏の動画コメントで、本書がゴリラについてではなく、「人間とは何か」について書いた、との話を伺い、それを念頭に読み始めた。■特筆すべきは、本作のヒロインであるメスゴリラのローズである。ローズは、母と人間の研究員たちにより、幼いころから人間とコミュニケーションを取る手段としての手話を教わり、人間の知識、思考、文化などをどんどん習得していく。優れた知性を持ち、知識欲も旺盛、優しく、他者への思いやりや共感を持ち、礼儀正しく、理性的。悪いことをしたと思えば、謝罪し、反省する素直さも持ち合わせている。しかし、時には人を揶揄ったり、皮肉や冗談を言うウィットも持ち合わせている。本書の大半はそんなローズの一人称で語られ、私たちはローズの「人」となりを知りながら、彼女が直面する状況や運命に共に導かれていく。ローズの「人間性」がとてもよく出来ているがゆえ、共感しやすく、読み進める上でのストレスが一切ない。ローズが嫉妬や羞恥、悩みや葛藤といった、人間固有のものだとばかり思っていた感情を知っていく過程は非常に興味深い。ローズを取り巻く多くの人間たちも描かれており、ローズに好意的な人間もいれば、利用しようとする者もいる。ローズの純粋さが際立つほど、人間の欲望や利己的な部分が垣間見え、「獣」とは何で、「人間」とは一体何なのか、人間と動物を隔てるものは何なのだろうか、と自問してしまう。■ジャングルとアメリカの対比も見事だ。ローズが生まれ育ったカメルーンの動物保護区では、ジャングルの大自然の中で悠々と生きるゴリラやさまざまな動物たちの日々の営みが描かれる。時には厳しい生存競争に晒されることもあるが、それこそが自然本来の姿なのだと再認識させられた。一方で、渡米してからのローズが直面する出来事は、私たちがよく知る文明社会での出来事である。政治家、マスコミ、学者、さまざまな人間たちがそれぞれの思惑で動く様は、現実に自分が生きている世界そのものでありながら、ローズの視点を通すと、どこか第三者的に、滑稽に見えてくることもあるから不思議だ。■タイトルの「ゴリラ裁判」のメインは後半に描かれる。ゴリラが原告となる前代未聞の裁判は、物語冒頭に描かれた一度目の敗訴から、ローズの驚くような転身を経て、ゴリラでありながら人間と同じように考え、コミュニケーションを取る自分は一体何者なのか、という葛藤をベースに、いよいよクライマックスへと進んでいく。裁判の骨子は一度目と同様、非のないローズの夫を、人間の子供を助けるために射殺した動物園を訴えるものではあるが、二度目の裁判では論点が微妙に変化している点が見ものである。また二度目の裁判は、ローズ側、動物園側双方の冒頭陳述から証人尋問、最終弁論までが子細に書かれており、法廷物としてもぐいぐい惹き付けられた。ローズ側の弁護士の最終弁論も非常に興味深かったが、圧巻は最後のローズ自身の言葉である。十二人の陪審員たちがどのような結論に至ったかは、実際に本書を読んで確かめてみてほしい。■本書で描かれるのは、ゴリラのローズの視点を通した人間たちである。「人間」を主として成り立つこの文明社会に、ある日、知能や知性を持ち、人間とのコミュニケーション能力を持つ、「人間とは異なる何か」が入ってきたとき、人間はそれとどのように向かい合い、どう振る舞うのだろうか。「人間とは異なる何か」に対峙したとき、私たちを「人間」たらしめる規範は何なのだろうか。本書でローズが純粋に問いかけるものを、正面から受け止めて読んでみてほしいと思う。

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言語能力を獲得したメスのゴリラ「ローラ」が、夫ゴリラを銃殺した動物園を相手に裁判を起こす。
そこに至るまでのジャングルで群れで過ごした日々や、その後の話が主にローラの視点で描かれていて、言葉だけではなく感情ももはや人間と変わらないローラに感情移入しながら読む。
あれ、私ゴリラの話を読んでるんだよね??と時々確認しつつ。

その設定からしてぶっ飛んでいて面白いなと思ったけれど、読み進むうちにさらにぶっ飛んだ展開が待っていた。
えー!!どうなっちゃうの?と思いながら読んだ後半が特に面白い。
そして、圧倒的に不利に思える裁判をローラはひっくり返すことができるのか。

関わる人々の心情は様々で、友達としてローラに接する人もいれば、ローラを利用したり嫌悪したりする人もいて、人間の世界は複雑だなと思う。
はたして人間のような複雑な感情まで持ったローラは幸せなのか。
土や木があって、たくさんの動物たちがいるジャングルで、本能のままに暮らす方が幸せなようにも思える。

人間の作ってきた価値基準って何なのかな。
あくまで「人間」が作ったストーリーなので動物からの見方は想像でしかないけれど、あまりなかった視点で人間を見つめることができるユニークな作品でした。

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本作は主人公のローズという知性を発達させたゴリラと人間との交わりを描いた物語です。キングコングや猿の惑星はあくまでも人間サイドから描写した話でしたが、本作はローズの視点から描いているため、ゴリラの行動と心のすべてを理解できるところが魅力的です。カメルーン生まれのローズは知能を発達させ、人間と自由に会話ができるようなりました。ローズの希望でアメリカの動物園に移り、オスゴリラと結婚しましたが、夫のゴリラがトラブルに巻き込まれて殺されます。その時、ローズは夫の死を無駄にしないために、また、正義と命の尊厳をかけて人間たちに裁判で戦いを挑みました。舞台がジャングルと都会という対比的なシーンが面白いし、裁判の結果が次第に意外な展開になるところは読者の胸を高鳴らせるでしょう。地球上で人類に次いで知能の高いゴリラは、人類進化の研究対象でもあるので、ゴリラと人間の比較は人類が抱えている矛盾や不合理性を浮き出しにする好材料ともいえます。本作は、文明社会とは何か、さらに人間が求める正義や命の尊厳について考え直すよい機会になることでしょう。

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この作品を読ませていただき、アメリカでの「ハランベ事件」が下敷きの作品とは知りませんでした。
ゴリラが、手話を覚え、二度の裁判で人間として認められ、人間との関わりの中で、作者は、動物保護
を押し付けがましく表現するのでなく、また、ゴリラの主人公が「プロレス」に関わるユーモラスな展開
等がありながら、最後に母国に戻る表現は、シニアの私には、いい意味での一服感でした。

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軽い気持ちで、自然環境学や動物学的な作品だと思い読み始めた。ところがどっこい、これがまた、民俗学や司法ドラマのニュアンスもあり、人種問題の伏線も張られていたりして、色んな分野の作品を一挙に楽しんでいるかのようで、ページをめくる事を止めることができなかった。スピード感があり、自分もゴリラになった気持ちでドキドキハラハラ。ゴリラのローズ嬢のアメリカンドリームの実現を、心から応援したくなった。楽しくて爽やかで、暖かい読後感が心に残る、ナイスな作品でした!

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法は、あらゆる場面において、勝者と敗者、救われる者と救われない者とを線引きする。
そしてその「線」は、社会における多数派や(人種・性別等における)特権側の感覚によって設定されることが多い。それゆえ、社会的弱者・少数者は、往々にして敗者・救われない者の側に追いやられてしまう。
しかし、科学の発展が、これを救うことがある。
ハンセン病は、遺伝病であるとの誤解から様々な偏見や差別を招いていた。しかしながら、科学の発展による正確な知識の浸透により、徐々にこれらは克服されていった。
とはいえ、忘れてはならないのは、立ち上がった者の存在である。
科学の発展は必要条件ではあるが、そこに立ち上がる者がいて初めて、社会は変わっていくのである。
と、人はついつい、小難しく言語化したがるのだが、言葉には言い表せない、言語化することによってこぼれ落ちてしまう感性というべきものがこの世には存在する。
本作の主人公である、言語を使いこなすことができるゴリラが、大切にしているものは何か。
「日本で一番とがった文学賞」とも呼ばれるメフィスト賞を受賞した本作は、その賞にふさわしく、とがった、そして暖かい作品である。
(弁護士)

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話せるゴリラを通して、人が持つ偏見や「自分は何者なのか」と問いかけてくる作品でした。多くの人は自分と肌の色や話す言語が違うから、その相手を尊重しなくても良いかのような態度をとってしまうことがあります。そのような意図がなくても自身の中にあるステレオタイプ的な考え方で偏見を持ってしまうことがないように、作中で出てくる韓国系アメリカ人のリリーのような強くて優しい素敵な女性になりたいと思うようになりました。
また、自身の感情や考え方の細部まで表現することのできる「母国語」の重要性とそれを伝える相手(家族であったり友人であったり)がいることへ感謝の念を抱くようになりました。多言語を身につけることによって得られる新たな知見や文化の共有は素晴らしいことですが、そのレベルに至るまでの過程は苦しいこともあるだろうなというところまで本編では触れられていませんが思いが至りました。
「ゴリラ裁判の日」というタイトルですが、人が生きる中で突き当たる壁や大切にすべきことを教えてくれる素敵な作品であるため、多くの方がこの本を読み自身の生き方や考え方について改めて考えるきっかけとしてお薦めしたいです。

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著者の須藤古都離氏にはいい意味で裏切られました。タイトルや作品紹介からだけでは想像し得ない、壮大なエンターテインメントがあなたを待っています。波乱万丈のローズの半生を追いかけながら、読中、何度涙を流したことか。
 物語にはこれでもかという程いくつもの要素が詰め込まれ、それぞれが非常に丁寧に描かれているのですが、散漫な感じはせず、むしろそこに現実味を感じました。「人間」とは?「言葉」とは?など、哲学的な問いにハッとしたり、差別や教育格差、人権問題(ちなみに日本は人権後進国と言われている)などの現代社会の課題について思いを馳せたりと物語から大きな刺激を受けました。
 ローズの存在は現段階ではSFと言えますし、多様な要素が出てきますので、誰にでも何かしら心惹かれる要素がありそうという点で老若男女問わずおすすめします。
 読後は、いろいろ気になって、ググってしまうこと請け合いです。「ハランベ事件」に「手話 ウェアラブルツール」「カメルーン ジャングル 旅」などなど。感動を届け、興味関心を広げてくれた『ゴリラ裁判の日』にはただただ感謝です!

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カメルーンで生まれ、手話による会話能力と高い知性を身につけたゴリラのローズが、渡米し、動物園で射殺された夫であるゴリラの裁判を巡り、ローズ自身が人間であると認められるというストーリー。

ローズの母が近くの類人猿研究所で手話を教えられていた影響で、ローズは子どもの頃から、母と研究者から手話を学び、人間と自由に意思疎通ができるまでになっていた。
普段の生活はゴリラの群れの中で行う彼女たちを通じ、カメルーンでのゴリラの生態も描かれ、野生のゴリラの家族の絆を感じる一方で、言葉を身につけたローズとその母が他のゴリラであれば感じないであろう疑問や孤独感を感じる様子も描かれる。

ローズがアメリカを理解し、渡米したがるところは突飛な感じがしたし、最初の裁判で敗訴したローズがプロレスデビューをするというのも安直な印象だが、ゴリラが提訴し、勝訴するだけでなく人間として認められるというのはかなり衝撃的で、弁護士ダニエルの腕に感服せずにはいられない。

言葉というのは単にモノを指すだけでなく、それを伝えることでより深く考えたり感じたりする力を発展させるものであり、だからこそ、小説の中でも、「人間と動物の違いは主全体とて複雑な言語体系を持つか否かにある」とされているのだろうが、人間とゴリラの違い、知性とは何か、その発展に言葉がどのように関係しているのか、言葉と高い知性を身につけたローズは幸せだったのか、などいろいろ考えさせられた。

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「もしゴリラが人間と同じように感情を持ち、話すことができたら」。
この課題はかなり問題だと思う。
わたしたち人間が避けてきた、動物倫理ということにきちんとスポットをあてる作品。
どのように問題かというと、下手するとAIが同じポジションになったときにどうするのか、ということを思わず感じざるをえない。
動物の感情を把握する方法は昔から研究されてきたが、あまり進んでいないと思う。進まないうちにAIが感情を持つかもしれない時代が近づいてきている。
筆者のおかげで、私たち人間の倫理観を、どこまで高く、そして正しく持っておくべきか、考えざるをえなくなった。重要な指摘であり、遠くない将来のことなんだなと思った。

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カメルーン出身のローズ・ナックルウォーカーが、夫の殺害について原告となって動物園を訴える。なぜ動物園かというと殺害された夫がゴリラであったからで、彼女もゴリラであった。荒唐無稽に思えるかもしれないが、提示される世界は、ノンフィクションでもおかしくないようなリアリティを持っていた。彼女は手話を使って会話ができる。そして、自分の意志でカメルーンのジャングルからアメリカに行く。ヒトと対等に会話ができるが、アメリカでは我々が知っているゴリラと同じように動物園で展示される。そこからヒトに対してのいくつかの物語が紡がれていく。ジャック・ロンドンの動物を擬人化させる作品と似ている部分があるが、擬人化ではなくてリアリティを持った彼女の視点で物語が展開されていることが大きく異なり、多様性とマイノリティの問題、動物愛護の問題、命の重さの問題等々、様々な問題を考えさせてくれる。特異な視点を使ったことによって、普遍性を獲得する事に成功した作品である。

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動物虐待が法で規制されることは良いことである。本当にそう思っている。しかしながらいかにハトやコウモリが家を汚そうと、迂闊に駆除できないという日常に立ち返れば、現代は「お犬様時代」の再来かとも思えてしまう。ことほどかように現代は皮肉に満ちている。そのような中この小説に出会った。
 裁判に負けたゴリラがプロレスラーになるなど、荒唐無稽な展開はひょっとして著者の戦略だったのだろうか。読んでいる内私たちは否応なく、人間とは何であったか、他の動物と区別(レゲイン)できるものは、あるのだろうかという問いを突きつけられてしまう。ホモ・ロクエンスという言葉がある。人間を人間たらしめる条件として取り沙汰される。「(複雑な)言葉を使うことができる」ことで人間とそうでないものを区別するとしたら——
 知らず読者はローズの視点になり、味方になり、共感しつつ展開を見守ってしまう。「たとえ私が貧しくとも、私は人間である」以下の言説は、今なお差別と偏見に満ちた現代社会に痛烈なアイロニーとして響く。おそらく当分は実現しない世界、すなわち差別のない世界とは、人間にも動物にも、いや地球上のすべての生命にとって優しい時代なのだろう。いつか世の中がそんな風になってくれたらと願って已まない。

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『ゴリラ裁判の日』タイトルから内容が全く想像出来なかったが、メフィスト賞を受賞しSNSでも評判が高かったので読むのをとても楽しみにしていた。
読んでみて評判の高さに納得する。こんなに面白いのだから評判が高いはずだ。

カメルーン生まれのゴリラのローズ。彼女は言葉を理解し、手話で会話もできる。ローズは恋をし、子供をもつことを夢見て、夫を奪われたことに悲しむ。言葉を理解するだけでなく感情も豊かだ。
そして自分はいったい何者なのかとも悩む。ゴリラだよねと最初は突っ込んでしまったけれど、読み進めていくと人間とゴリラの違いとは、そもそも人間とはいったい...そんなことを考えていた。
ローズはローズのままでいいのだそう気付いたときには彼女が大好きになっていた。

こういう設定のものでは読んでいて置いてけぼりになることがあるが、この作品では最後まで楽しく読むことができた。きっと須藤先生が書いていて面白かっただろうなと素直に受け取れる。
「正義は人間に支配されている」印象的なこの言葉にあるように、動物にとっての正義についてまで考えさせられ、自分が動物側に視点を動かすことが出来る作品だった。

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今日は読後二日目だ。ずっと、考えてしまう。この本のテーマについて。
言葉を持つか否かは、人間か否かに通じることなのだろうか。
「ものごころがつく」と言われるのは、2~3歳、拙いながらも言葉で意思疎通できるようになるころだ。感情を態度だけではあらわしきれなくなるだけでなく、「共感してほしい相手」がいるからこそ伝えようとして言葉を獲得していくのだろう。言い換えれば、そんな相手がいることそのものが、言葉の獲得につながる。
ああ、そうか。
だから「人間」なんだ。
「間」ができるには、一方ともう一方が必要。人と人の「間」が生まれるようになって初めて「人間」になるのかもしれない。「その人らしさ」という言葉には「その人個人」のらしさを感じるけれども、「人間らしさ」には「個」ではなく、集団の中でのありかたまで含まれるように思う。
ゴリラのローズは、その意味で「人間」だ。見目形は関係ない。裏表の関係で、ヒトにもケダモノがいる。

とても、おもしろかった。次作も期待。

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元になっているのは実際の事件。
そこから発想を広げて、ゴリラが手話を扱えるようになり、さらに装置を通じて発声もできるようになり、そして人間社会で活躍するようになったとき、人間とゴリラのすれ違い、ふれあいを描く。
ちょっと前に新川帆立の「令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法」を読んだが、法曹界と動物を組み合わせるというスタート地点は一緒だが、向かう方向は全く別。こちらはSFではなく、ヒューマンドラマというのが意外。
ゴリラの一人称語りもさほど違和感なく読めてしまうのは、物語の推進力のおかげ。
それにしても、こんな奇抜な設定で作品にしてしまうとは、感心しかない。

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手話を音訳する機械の助けにより、人とのコミュニケーションが可能なゴリラのローズ。
タイトルどおり裁判から始まる物語は、ローズの視点で裁判に至るまでの経緯が描かれ、6割ほど読み進めたところで冒頭の場面に戻ります。この裁判がラストシーンになるのだろうと予想して読み始めたので、その続きがあることに驚くとともに、予想外の展開に胸が高鳴りました。
荒唐無稽と思われた裁判が、弁護士の巧みな話術で形勢逆転するところが痛快でした。「弁護士とプロレスラーは一緒」というダニエルの言葉もアメリカの裁判らしさがあり面白かったです。ローズの「自分は何者なのか」という自問に思いを寄せることで、読後も人間の定義や人権の在り方について考えさせられる印象深い作品でした。

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出だし数ページでドキドキ、ワクワク。期待感マックスです。ごめんなさい。これはスマホの画面で読むのはもったいなさすぎます。発売を待ちます。これだけ変わった設定なのに、ページレイアウトも文体もとても読みやすく、トンデモっぽいのに実際の事件をベースにしているというスゴさ。図書館では、モデルありの小説の特集とかの目玉にしたいです。

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コミュニケーションがとれるゴリラ
という目新しさで気楽に読み始めたが…。
想像よりはるかに深くて色々な事を考えさせられるキッカケになる作品だった。
コミュニケーションがとれるゴリラのローズから語られる紆余曲折の日々が興味深く、その先にある終盤の法廷シーンは読みごたえがあった。
さすがメフィスト賞。またオススメしたい作品が増えました。

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手話ができた米のKokoや近年の米動物園ゴリラ射殺事件を下敷にした
虚実皮膜のバランスが絶妙な小説で、
実際に開発された手話を音声化するハイテクグローブも気の利いた小道具となり、
射殺事件の動物園側の責任を追求する法廷ものとしても成立している。
その科学的で哲学的な筆の運びは単なるフィクションに終わっていない。
ただ一点、プロレスラー転向は飛躍しすぎのように思うが、
これもプロレス同様エンタメと割りきれば一興なのか。
Kokoは2018年に亡くなっているが、
このような魅力のある「人たち」の子孫が秘かに自然に繁殖していていたらいいと祈った。

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人間性とはいかなるものか、を考えさせる作品。ゴリラとの会話手段を手話とすることで「有り得るかもしれない」世界として成立させているのがうまいと思う。会話の通じる相手と通じない相手とで人の対応がどう変わるかも読みどころの一つ。
表題にもなっている裁判、読み進めると2回行われることがわかるが、2度目の裁判で戦う弁護士の論法が、だいぶ前のアメリカ映画『評決のとき(原題:A time to kill)』のマシュー・マコノヒーの最終弁論を思い出しました。そして裁判員と陪審員の大きな違いにも思いを至らせずにはいられなくなります。ほかにも、愛玩動物といわれるペットを、会話が成立してもペットとして飼うことができるかというようなことや、常識と思っているものが単なる思い込みに過ぎない可能性など、いろいろなことを考えさせられます。

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遺伝子工学や情報技術の加速度的発達を踏まえた未来に向けての課題。人の為に作られた司法制度を、意思を持つ存在全てを対象とした拡大化と最適化。その必要性を訴える、近未来シュミレーション小説。実はそうだと思って読み始めた。
人と対等にコミュニケーションする情緒豊かで知的なローランド・ゴリラのローズは、読んでいて魅力適応な存在だった。「彼女」の視点から語られる、野生での彼らの暮らしの様子やその思索。人工音声を得てより人間的になる彼女の様子が丹念に描かれてきただけに、ローズの眼前に突然立ちはだかった「人間」の司法の壁が、余りにも厚く感じられた。そう、全ては人のため。だからこそ、負けるのは必然。
ところが、そこからの物語の急カーブに唖然とした。そしてやっと気づいた。
これは、あえてローズと言う人ではない存在を主人公にすることで初めて語ることができた、「前へと進もうとする意思=人間性」を持つ全ての『存在』への讃歌、なのだと。

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読後に「ハランベ事件」について調べてみた。もしもゴリラに人間と同じように心や感情があるとしたらとても悲しい事件だと思う。手話を教わり会話ができるゴリラのローズが、その気持ちを訴えて裁判になる。人間とゴリラについて考える事で人種や性差など様々な多様性について考えさせられる。法も倫理観も全て人間の立場で考えられている事にも改めて気付かされた。ゴリラ目線で読むという初めての経験で面白かった。

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タイトルに引かれて読みはじめましたが、ノンストップで読了しました。途中のプロレスの場面は少し違和感がありましたが、裁判シーンは駆け引きが面白かったです。「正義は人間に支配されている」というフレーズが心にしみました。

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タイトルからは全く想像もつかないストーリーでした。夫を殺されたから犯人を訴える。確かに当たり前のこと。ただし、それがゴリラにも適応されるのか、"人間"とは何か?という壮大なテーマ。時にはコメディのような展開も、ローズの半生を語る上では必要なこと。ダニエルはなかなか面白いキャラでした。

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この発想はどこから来るのかと驚きながらも、芯が強く、聡明で心根も優しいゴリラ、ローズの魅力にどんどん惹かれていきました。人間が作り出した社会の中に飛び込んでしまったローズ。人と同じ思考を持ち、意思疎通ができるゆえにその苦悩は計り知れない。長い闘いが終わる評決の結果にはどきどきしてページを捲る手が震えました。枠を超えたローズの物語は人間とは動物とは何かと深く考える機会を与えてくれました。

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ハランベ事件。2016年アメリカ、オハイオ州の動物園。誤ってゴリラの飼育エリアに転落してしまった三歳の男の子を保護するために射殺されたオスのゴリラの名がハランベ。この処置をめぐって大論争が起きた。(絶滅寸前に指定された貴重な種だった)
この本はこの事件から題材を得ているが、設定をきっかけとしているだけで、着想は非常に独創的。人間とは?動物とは?コミュニケーションとは?いつかこんな世界が身近になる日が来るかもしれない、と思わせる展開だった。読者に感情移入させる筆の冴えはお見事。

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恋をして嫉妬もするし、仲間の死を悼み、完璧な手話で人間と会話をする。そして、裁判に負けたら憤る彼女は、ゴリラの姿をした人間なのか。彼女自身悩む。人間と動物の違いは何なのか、自分は一体何者なのか。ゴリラの自由と尊厳を人間に求めるのは間違いなのか。目の前に広がる世界の常識に真っ向から斬り込んだ問題作。ぜひ映画化してほしい。

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手話を解するニシローランドゴリラのローズは故郷のジャングルから離れてアメリカへとやってきた。
そこで出会った夫が銃殺された。

正義を求めて裁判を起こす。
その過程で知ったのは自分という存在の意義。

かつて実際に起こった裁判から着想を得た作品。

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「ゴリラが裁判をおこす」
何じゃそりゃ!? と思いながら読み始めてみれば、気づいた時には通勤電車がジャングルの中でした。
やばい。これは引き込まれる。
特に後半はローズが完全に人間に思えてくる不思議。
おもしろかったです!!

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手話で言葉のコミュニケーションが出来るゴリラのローズ。このローズがとてもチャーミングで可愛い。ローズがアメリカに渡る事になり、そこで悲しい事件に巻き込まれ裁判に。手話が出来るからかローズの感情はゴリラのそれとはかなり違っている。むしろ人間に近いものを感じる。『自分は何者なのか』と苦悩するローズが仲間の居ない孤独な感じがして胸が痛む。『人間』の定義とは?ローズは手話が出来て幸せなのか?と考えてしまう。物語自体はとても面白く、興味深い。自分とは違うものを異質とみなし排除しようとする人間の愚かさも垣間見れた。

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保護区のジャングルで生まれ、研究者から学んだ「手話」で人とコミュニケーションをとる、ゴリラのローズ。アメリカの動物園で起きた実際の事件から着想を得た、「人間の定義」と「命の選択」を、豊かな感受性を持つゴリラの視点から描いた至高のエンターテインメント。

手話を駆使して夫の仇を討つべく裁判に挑むゴリラを描いた、コミカルなSF作品。ナックルウォーカーという名前など、細やかなユーモアに図らずも何度も笑わされた。そんな序盤の印象から、ジャングルでの開放的なゴリラの群れでの暮らしへと移ると、文字通り景色が一変した。無邪気なローズのゴリラ本来の気質と、人間から多くを吸収した事で生じた違和感とのジレンマを、目映いばかりの美しさで表していて、青春物語のような魅力も詰まっていた。
手話をするゴリラをも凌ぐ個性的なキャラ達は、作品の舞台でもあるアメリカ的な独特なセンスが反映されていて、とてもしっくりハマって心地好かった。
物語が進むにつれて、人かゴリラかの単純な問題ではなく、各々が持つメンタリティへと踏み込んでいく奥の深さには驚きの連続。人種や銃などの問題を違和感なく組み込んでいるのも巧いと思った。
ローズが人間らしい感情を見せる度に作中でも驚かれていたけれど、果たして思い遣りなどの感情は「人間らしい」のか。動物は伝える手段が少なく、私達人間が理解出来ていないだけで、感情だけで言ったら彼らの方が豊かなのではないか、と人間の傲りを痛感させられた。
アメリカの柔軟な考えが導く先の「線引き」を考えると、もし三回目の裁判があったら、また覆るのかもしれないと漠然と考えた。沢山笑えて温かい気持ちになる作品だったけど、後味はいい意味で苦いものも残りました。

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ゴリラは生物学の分類上霊長目ヒト科ゴリラ属、そしてヒトは、霊長目ヒト科ヒト属に分類されている。ゴリラもヒトも同じヒト科の動物だ。なのにヒトは文明社会を作り自然界から隔絶した営みの中で暮らしている。我々とゴリラを、隔てているものは何なのだろう。ヒトは、ほかの動物と違う点として優れた知能で文明を作り自然界から脱却して自ら動物からアップデートしたいわゆる知的生命体の存在だと自負しているが、果たして、それは本当にそうなのだろうか。
この物語は、前代未聞の裁判のシーンから始まる。冒頭から、意外な展開に驚かされた。手話という言語を操るゴリラ、ローズ。彼女は、動物園を相手に裁判を起こしたのだ。ヒトは声を出して言葉を発し、言語を操ることで知能を獲得した。ゴリラはヒトのように多彩な発声ができないため、言葉を体得できないとされている。だが手話は声を発しない言語だ。彼女はこの言語を手に入れたことでヒトだけのものとされている知識を手に入れ、それを武器に彼女たちゴリラとヒトを隔てているものの根幹に迫っていく。息もつかせぬ展開で、一気に読んでしまった。我々人類は、自然界の中で「神」の存在という仮説を立てた時から文明社会で生きる道を歩んだ。ローズや他の動物たちも、これまでにない生き方を歩む時が来るかもしれない。新たな視点をもたらしてくれる物語だ。

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奇想天外なストーリーで面白く読める一方で、「人間」について深く考えさせられました。

ローズの内面から世界を見ることで、言葉と思考を得て、人間が失ってしまったもの、人間が手に入れたものが浮き彫りになっていく。
そしてそれは本来の動物の姿からは程遠いことも。
ジャングルからアメリカに行くことになるローズには、思いもしないできごとや障壁が待ち受けていて、人間たちの言うことや態度にはリアリティがあってドキッとしました。
読みながら、ローズに向かって「ゴリラ」と言う場面が出てくるたび、なんだか差別的なような、いたたまれない気持ちになって、どんどんローズを人間扱いせずにはいられなくなったけれど、人間とは全く違う見た目と生態をもったローズを実際に前にすれば、私もきっと自分と同質の存在とは見なせないでしょう。
基本的人権について、私自身の生活においてあまり意識していませんでしたが、読み終えて考えてみれば、社会的弱者を責める思想は普通に存在しています。
ローズが人間社会に合わせようとする様子から、弱者は初めから弱者なのではなく、人間が作り上げた現代社会の枠組みに収まれない特徴を持った人を弱者にしてしまっていることがみえてきました。

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面白かった!
最後のローズのスピーチは感動した。
言葉を話すゴリラは人間なのか、ゴリラなのか。それともどちらでもなく、どちらでもある存在なのか。
そんな問いは、そのまま人間とは何かに返ってくる。
もし、近所に言葉を話すゴリラが引っ越して来たら、その時私はどう接するだろうか。

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第64回メフィスト賞受賞作。メフィスト賞受賞作品はレベルが高く面白いです。本書の主人公は雌ゴリラ。ただし、高校生レベルの知識があります。機械を使うと普通に意思疎通も可能である。だから、博士たちはアメリカに彼女を連れてきた。そこで事件が起こる。彼女の交尾相手の雄が殺害された。子供がゴリラゾーンの中に落ちてしまいということ。このゴリラ裁判が本書のメイン。人間の定義とは?。雄ゴリラは殺害されるべきだったのか。問いかけはたくさんありました。裁判シーンが面白かった。こういうテーマも珍しいんじゃないかな。

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犬だって「ごはん!」くらいは言う。でもゴリラのローズは手話を通じて言葉を理解し会話する。バウリンガルもミャウリンガルも要らない。アフリカで生まれ育ったゴリラの生態というかこれはもうローズの生きざまの物語。意思疎通ができれば彼らの世界が見え、それだけでもわくわくするのに、後半は法廷サスペンス。法廷の最後ではローズの言葉に魂が揺さぶられ、不意に涙が流れた。エンタメとしても引き込まれるけど一貫して差別をテーマに取り上げている。自分の正義だけを振りかざす人間。そして無意識にヘイト発言をしてしまう。我が身を振り返っても、コロナ禍でのさまざまな事、日韓問題、ロシアに対してでも。相手の事をもっと知らなくちゃとローズに教えられた。

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翻訳小説のような味わいで、読んだことのない切り口が斬新な印象。
ハランベ事件を下敷きに、これまでの常識的な考え方が全て覆されていく。
それというのも、完璧に手話を操り、人の心を理解し、感情もあれば思考もあるニシローランドゴリラのローズの造形がなんとも魅力的だからだ。読むうち、どうしてもゴリラのイメージから乖離して、ひとりの若い女性の言としか思えない語りに魅せられていく。ローズのローズとしての正義と主張をわたしたち人間はどこまで真に理解できるのか。また、どこまで同等の立場でそれを判断できるのか。
人間の傲慢を突きつけられる思いがした。

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ローズはカメルーン出身のゴリラ。
単にゴリラと言っても手話が出来てコミュニケーションが取れるし
判断力を持ち合わせた心も持っている。
物語はアメリカの動物園で子どもがゴリラ舎に入ってしまい、ローズの夫であるオマリに安全のため麻酔銃ではなく実弾を放ち彼が亡くなったことに関しての裁判の判決の場面から始まる。
初めはローズに対しての認識は能力の高いゴリラの括りから逸脱することは無かった。
けれども読み進めていくうちにローズへ感情移入し周りを囲む環境としての人間に対して怒りや悲しみの感情が湧いてくる。ローズの味方に対してはその逆の感情もあるけれど。
カメルーンで過ごした日々や渡米してからの日々。裁判の後のこと。
読みやすく描かれている。
作品の中でローズの人生を一緒に歩んでいくうちにゴリラを主人公にした物語ではなくそれを超えて
フェミニズムや人権問題、教育環境にまで考える機会を得た。
ローズの性格はパワフルでキュートで魅力的。大好きになった。きっとみんなもローズのことを好きになるはず。
読み終えたばかりだけどまたローズに会いたくて再読したくなりました。

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こんなに無駄を感じない本は久しぶりでした。1ページ、1行、1文字が全て読んでいて興味深く見逃せませんでした。
どこまでが現実でどこからが創作なのかと思うくらい、当たり前のようにローズの生活や葛藤が理解できたのは、作者の文章力の高さのお陰でしょうか。ローズはゴリラという人間とは区別されている生き物として描かれていますが、人間の多種多様性にも繋がるような気がしました。
強いて言えば、プロレスがちょっと違和感でしたが、弁護士との繋がりなどで必要だったのかな。
命あるかぎり、ローズがローズらしく生きられることを祈ります。
素敵な作品でした。

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ネタとしては完全に出落ちにも関わらず、それを真摯に取り扱った結果、「人間とは何か」という難しい問題に進んでいく。思った以上に過程が面白く、ゴリラの生態も含め飽きずに読むことができた。理系チックな解決策と、文系ちっくなそれでも解決しなかったことがうまく落とし込まれたラストはとても良かった。

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まさか人間並みの知能を持ったゴリラを巡るリーガルミステリだったとは…さらにプロレスまで出てくるとは思いませんでしたが、裁判を通じて垣間見える何とも皮肉な構図の変化、そして視点や立場が変わればまたいろいろと見えるものも変わってゆく展開とその結末には、いろいろと考えさせられるものがありました。

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この作品を通して、
何故、ローズが手話を覚え
人間とコミュニケーションが
取れるようになったのか。
ジャングルから出てアメリカに渡ったのか。
彼女の半生を振り返りながら、
「人間」が「人間」とされる定義や
愛情や友情というものが
どう成り立っているのかなどを
問われてるような感覚でした。

私はゴリラでも、人間でもない。
そう悩むローズの姿は
どちら側にも振り切れない苦しさを
含んでいて切なかった🥲
でもきっと聡明なローズは
彼女が最後に選んだ、彼女自身の人生を
しっかりと進んでいくのだと思います。
ローズの物事から逃げない、
常に学び、前に歩んでいく姿に
たくさん勇気をもらいました💐
最初から最後まで大好きな主人公
でした☺️

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ゴリラが言葉を理解できて裁判する…最初は戸惑いましたが、読んでいるうちに引き込まれて、ローラの気持ちになり、感情をもったら、ゴリラの人権はどうなるのか、人権とは何か…を考えされられました。
いままで読んだ事のない作品で、新鮮でした!

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私の夫は殺された。なぜ夫は射殺されなければならなかったのか、私は裁判を起こします。

カメルーンで育ったゴリラのローズ。母から言葉を教えられ、研究所のチェルシーからアメリカ式手話を習い、会話ができるようになる。憧れのアメリカに行く事になったローズ。それは思い描いていたのとは違うものだった。

ゆっくり丁寧に読んだ1冊でした。ゴリラの美しさ賢さ、森での生活の豊かさに惹かれました。一方でテクノロジーの可能性と人権には驚きました。
学生に読んでもらいたいです。国語のテストや読書感想文向きですね。

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ゴリラに謝る、本当にその通りだと思いました。相手と明確に意思の疎通が出来ないから、相手は劣っているとのバイアスが多くの人にあったのではないでしょうか?人とは?ゴリラとは?動物とは?考えさせる作品です。

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この物語の書き手は本当はゴリラなんじゃないかな?と思ってしまった。ローズの魅力的なこと!その聡明さ、素直さ、理性的なところ、人間とは何か、自分は何者かと悩む姿に読む手を止められなかった。プロレスラーになる場面は痛々しくて辛かったけれど、その後の展開には必要だったのかと納得。不遜で不敵なダニエル弁護士が実は最も、ローズを最初から人間として見ていたのかも。ドハーティ園長との関係がその後どうなったのか読みたかった。

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落ち着いた知的な語り出しに始まる本作品。ほどなくして感じ始める語り手に対する違和感。それはすぐに驚愕に変わる。あたかも人間の女性のようなゴリラの語り口。そしてまるで上質な海外文学を読んでいるかのような感覚。知性を持ったゴリラの人生は波乱万丈。まさかの職業に就いたり、恋に破れたり…。主軸の裁判については、我々がグローバルな視点で多種多様な人同士を認め合うことについて、問題提起している。私たちの住まう星地球は我々人間だけのものではないのだ。この作品がデビュー作だなんて、驚き。

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第64回メフィスト賞受賞作。
タイトルや表紙からコメディタッチな話かと思っていたが全く違った。
手話で人間とコミュニケーションがとれるゴリラのローズ。
ただ話せるだけじゃなく知性があり冗談も言えるし感情のコントロールもできる。
そんなローズが夫のゴリラが射殺されたことは不当だと裁判をおこす。それはゴリラ世界の話ではなくアメリカの裁判所でだ。
実際の事件をモチーフにしているようだが、命の選択、人間の定義について考えさせられた。
ゴリラの一人称目線なのに違和感なくむしろローズの真っ直ぐな気持ちに清々しさを感じとても良かった。

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アフリカのカメルーンで生まれた雌ゴリラのローズは手話が出来て知性を持ち機械を使えば人と会話もできる稀有な存在で全世界の注目の的となりアメリカの動物園に移されますが、そこでボスゴリラの夫が不幸なアクシデントにより射殺されてしまいます。彼女は怒り動物園を相手に裁判を起こすのですが…。ローズは素直な優しい人柄で誰も好きにならずにおられず彼女に共感し同情して涙が溢れる場面も多々あります。途中では脱糞ネタやプロレスラーのエピソード等で笑える場面もありますが、基本は生真面目なヒューマニズム(人間愛)に満ちた小説です。人間とゴリラが一足飛びに対等な関係になるのは困難だろうとは思いますが、少しずつでも互いに友情を深められたらいいなと願いますね。本書では大っぴらに描かれていませんが人間の中には嫌な奴もいますから銃社会のアメリカよりは今はアフリカのジャングルで暮らす方が彼女にとって幸せでしょうね。そして例えば彼女が産んだ娘マリーが母から知性を得てアメリカで活躍する続編が書かれて読めたらいいなと期待しますね。

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今年1番の作品に出会ってしまったかもしれない。想像していたのは、難しい動物学の専門知識が飛び交う裁判ルポルタージュだったので読み切れるか心配だったが、内容はまるで違っていた。アフリカのカメルーンの研究所で人間と同じ知能を開拓したローラは、普通の人間以上に世界が広がっていくが、夫を失った悲劇に見舞われた時、自分が人間と同等ではないと悟り、協力者を得て再度裁判で闘うことを決意する。人間の知能を与えられたローラの紡ぐ言葉全てが、穏やかな低めの上品な婦人の声色になって私を包み、母の胎動を聞いてるかのように心地いい読書時間だった。

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『ゴリラ裁判の日』

カメルーンのジャングルに暮らす手話で会話を出来るゴリラのローズは仲間達と暮らしていたが、アメリカに行けるという話しに興味を持ち行くことになる。渡ったアメリカの動物園で夫となるゴリラのオマリと出会うが、柵の下に落ちた男の子を助けるためという理由でオマリが射殺されてしまう。オマリのため、自身は何かと確かめるためローズは裁判を起こす。

この物語は、いろいろなことを突き付けてくる。人間とな何なのか?人間の言語を理解して会話できるゴリラは人間ではないのか?では会話できない人間は?人生って何なのか?本当の幸せはどこにあるのか?
ゴリラにはゴリラの人間には人間の生き方、考え方があって、それを繋ぐ会話が出来るは素晴らしい。ゴリラであり人間であるローズの人生から、人間社会に投げ込まれたものは大きい。あなたは人として扱われていますか?と…
ジャングルの一部であるゴリラ、社会の一部である人間…でも、地球外の宇宙人からみたら、どちらもただの生命体でしかなく他の動物や虫と変わらないのかもしれない。
『ゴリラ裁判の日』もう一度、繰り返し言いたくなるような心に残る作品だった。

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手話を覚えたゴリラのローズがアフリカの森からアメリカの動物園へやってくる。
というと児童小説や絵本にありそうなシチュエーションだけど、本書では知的で無垢なゴリラの目から見た人間社会の建前や矛盾が描かれていて、文明批判小説として読める作品。
ローズは動物園でゴリラのリーダーの3匹目の妻となるが、痛ましい事故により夫が動物園のスタッフの手で射殺されてしまう。動物園を訴えてローズは裁判をおこす。ゴリラ裁判、裁かれるのはゴリラではなく訴えるのがゴリラなのだ。
ローズは手話を音声化する特注グローヴを使いこなして会話する。これは実際に実用化されているらしい。
本作で最もSFっぽいガジェットがすでに現実社会に存在している商品だなんて何だかすごいなー。
野生と知性を兼ね備えた主人公のローズも魅力的だが、ローズの親友となる韓国系ラッパーのリリーがイイ。ゴリラとか人間とかいう種の垣根なんかまったく気にしないで、気に入った相手にはぐんぐん近づいて友達になっていくバイタリティがすてき。

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ゴリラパークの動物園。ゴリラの檻に4歳の男の子が落ち、雄ゴリラは男の子を引きずり回した。その結果、雄ゴリラは射殺。雄ゴリラのパートナー、雌のローズがとった行動とは⁉️手話ができる事で人間と意志疎通ができる動物が身近にいたら?人間とは何か?会話が出来たらAIも人間か?ではローズは?このゴリラを巡った裁判の行方は…。「言葉を使える自分は何者か」と悩むローズ。彼女は特別であるが故の孤独にあった。裁判の行方と彼女が出した答えは…。命とは。人権とは。アメリカに渡った所から一気読み✨

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これは想像を超えた展開でした!
手話を憶えたゴリラが人間的な思考に至るまでを描くシュミレーション小説とも読めます。
類人猿が知性を得る様子はディヴィッド・ブリンの「知性化シリーズ」を彷彿とさせます。
そして法廷シーンはロバート・J・ソウヤーの「イリーガル・エイリアン」を思わせてくれました。
しかし、そのどちらとも違う「ゴリラ裁判の日」らしいストーリーと結末に著者独自の視点とアイデアの良さを感じます。
SFとミステリーが好きで、どちらのジャンルも楽しめ、入門としてもおススメです。
次はどんな作品を書かれるのか、楽しみにしてます。

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チンパンジーは頭がいいというのは知っているけれど、ゴリラの知能はどれくらいなのだろう。
この本はゴリラのローズ目線で描かれていて、とても面白い試みだと思った。
しかし、本当にゴリラにここまでの感情があるのかどうかはわからない。しかしローズは特別なゴリラで、手話も理解して人間とアメリカ式手話で話ができる。
ゴリラに言葉を教えるのもそうだけど、悲しいとか楽しいとか感情というものはどのくらいあるのだろうと読みながら考えた。
この物語のベースになっている事件は本当にあったことで、その事件をもとにゴリラ目線からの感情を書いている。
展開としては非常にアメリカで起きそう!と思った。

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まず題名が気になってあらすじを読んでみたら動物園のゴリラが園長を訴えた!?何がどうなってるのと読んでみました。主人公のローズのゴリラとしての生活と人間との会話のギャップが面白い。人間が動物を無意識的にどう扱っているかを突き付けられるサスペンス。この人権だけではなく動物にも権利があるんじゃないのかなとモヤモヤする心の痛みはどうやったら解消されるのかな。

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このタイトルにある「ゴリラ裁判」から何を想像するだろうか?
―ゴリラが何か事件にまきこまれ、裁判で人から訴えられる―
…というのが一番考えられそうなストーリーだろうか? 
しかし、それはすぐに覆された。
訴えられたのは人間の方だったのだから…!
 主人公は、雌ゴリラのローズ。ローズは、カメルーンのジャングルにあるゴリラの研究所に幼い頃から母ゴリラのヨランダとともに通い、手話で人間と会話することを覚える。
やがて大人となったローズは、アメリカの動物園へ移り、雄ゴリラのオマリとつがいになるが、
ある不幸な出来事が起こりオマリが死んでしまう。
手話を音声に換えるグローブを持つローズは、人間と同じようにすれば勝てるはず、と動物園を裁判で訴える。
読みながら、途中で何度も「いくら何でもゴリラがそこまで?」と思うのだが、ストーリーの力でぐいぐい
読まされる。
光村の中学3年国語には、山極寿一氏の著書による単元があるので、ぜひ中三生に読んでもらいたい。

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えっ❓ゴリラが裁判❓
タイトルに惹かれて読み始めた。
手話で話せるゴリラ。
前代未聞のことに戸惑う人類。
正義とは何か。
存在そのものが何者なのか。
奇想天外の展開だったが引き込まれた。
改めて考えさせられた。🤔

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ジャングルで暮らしながら類人猿研究所に通い、研究者を友達にしている、ニシ・ローランドゴリラのローズ。彼女は母と研究者からアメリカ手話を習い、完璧に使いこなしていた。この、手話を使うゴリラが、飼われているのではなくジャングルのゴリラ社会で生まれ育ち暮らしてきた、という設定が実にいい。彼女の権利意識は、ジャングルの群れという自立した社会に思春期までを過ごし、同時にアメリカ文化の教育を研究者から受けたという背景があってのものだと思われる。
 彼女はアメリカに渡り、動物園でゴリラの群れに加わりながら、人間とも面会をする生活となる。が、偶然の悲劇が起きる。彼女が友達との面会で留守をしている間に、ゴリラのスペースに人間の男の子が入り込んで落ちた。男の子をつかまえた群れのリーダーであり彼女のオスであるオマリが、危険だとして撃ち殺されてしまったのだ。彼女は「私の夫が殺されました」と警察に通報するが、駆けつけた警官は、彼女がゴリラなのをみると、横にいた動物園長からしか話を聞いてくれない。
 そして、彼女は実弾でオマリが撃ち殺されたのは、動物園側の処置が不適切だったとして裁判をおこす。人間性とは、正義とは、優先すべき命とは、人権とは。
 ローズのキャラクターが茶目っ気があり公正で魅力的。それを育てたのはチェルシーとサムの二人の研究者の人柄だろう。彼らはローズを単なる研究対象とせず友人として扱った。裁判で争うことになる動物園長も、誠実な人柄で、話に膨らみを出している。

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