白ゆき紅ばら

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刊行日 2023/02/22 | 掲載終了日 2023/02/22

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内容紹介

良い子は天国へ行く。悪い子はどこへでも行ける。

行き場のない母子を守る「のばらのいえ」は、大学のボランティア活動で知り合った志道さんと実奈子さんが、「かわいそうな子どもを救いたい」と理想を掲げ同志となって立ち上げ運営する家。そこに暮らす祐希は、束縛され未来のない現実から高校卒業と同時に逃げ出した。十年後のある日、志道さんが突然迎えに来る。しらゆきちゃん、べにばらちゃんと呼ばれ、幼少のころから一心同体だった紘果を置いてきたことをずっと後悔してきた祐希は、二度と帰らないと出てきた「のばらのいえ」に戻る決意をするがーー。


良い子は天国へ行く。悪い子はどこへでも行ける。

行き場のない母子を守る「のばらのいえ」は、大学のボランティア活動で知り合った志道さんと実奈子さんが、「かわいそうな子どもを救いたい」と理想を掲げ同志となって立ち上げ運営する家。そこに暮らす祐希は、束縛され未来のない現実から高校卒業と同時に逃げ出した。十年後のある日、志道さんが突然迎えに来る。しらゆきちゃん、べにばらちゃんと呼ばれ、幼少のころから一心...


おすすめコメント

歪んだ愛。

母子を守る「のばらのいえ」。

逃げようとした娘と逃げなかった娘。

愛と理想と正しさに縛られ、

彼女たちの人生はどこへ続くのか。

人生の不条理を問い続ける著者の最新作。

生きる希望に光があたる書き下ろし長編。


歪んだ愛。

母子を守る「のばらのいえ」。

逃げようとした娘と逃げなかった娘。

愛と理想と正しさに縛られ、

彼女たちの人生はどこへ続くのか。

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生きる希望に光があたる書き下ろし長編。



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初回指定のご希望がございましたら、

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出版情報

ISBN 9784334915155
本体価格 ¥0 (JPY)

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NetGalley会員レビュー

祐希の、紘果の、子供達の、そして実奈子さんの叫びが突き刺さって、私の心から離れません。こんなことがあっていいのだろうかという怒りや気持ち悪さに、目眩がしそうになりながらも、最後の最後まで目が離せませんでした。何も出来ない私が出来るのはこの物語を最後まで見届けることだけ。なぜかそんな使命感に駆られながら歯を食いしばって読ませていただきました。そして読み終えた今、この気持ちを表現する適切な言葉が見つかりません。
これから先なんだって出来るしどこへでも行ける子供達から搾取してはいけない。心も体も奪ってはいけない。そして誰もが自由なのだからと強く訴えてくる文章に、首がもげそうになるくらい頷きました。
「自分がものを知らないという劣等感」を与えた大人達が許せない。
「出来ないことを数える」ようにさせてしまった大人達が許せない。
そんな風に怒りを覚える場面も多々ありましたが、寺地さんの書かれる文章には眩しい程の救いもたくさんあって、読後感は悪くならない。むしろすっきりと前を向いて行けるような気持ちになれます。
「良い子は天国へ行く。悪い子はどこへでも行ける。」可能性と勇気を与えてくれる素敵な言葉です。
「痛みを抱えたまま幸せを手に入れることも可能なはずだ。」復讐は復讐で幸せは幸せ、痛みは痛み。この、ハッと気付かせてもらえるような文章を、たくさんの人に読んでもらいたい!!たくさんの人に届いて欲しい!!と願わずにはいられません。
私はこの作品に出会うことが出来て本当に本当に幸せです。この作品に救われる人がきっとたくさんいるはずです。
私の心に衝撃を与えた、忘れる事の出来ない作品になりました。
本当はもっともっと感想をぶちまけたいですし、誰かと語りたいです!
素晴らしい作品をありがとうございました。

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寺地さんの作品が出ると毎回読ませていただいています。
主人公の回りには、いつだって助けてくれる人がいて何気に幸せなんじゃないかと思ってしまいそうになった。
先生も自分の危険をおかしてまでも主人公のために手助けをしてくれて、それに応えるように「無事に生きてます」の葉書をだし続けているところに胸を打たれた。
紅バラちゃんは、自分だけが残ることで皆を守ってきたけど、最後は逃げ出せて良かった。主人公との見えない絆が強かった。
登場人物たち、全員の愛が歪んでしまった作品。それでもこれからに希望を感じさせるラストで読了感は良かったです。

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自由を求めて。
静かに、でも凛として。
私たちはどれだけ手を伸ばし続ければよいのだろうか。
正しい道ではなく、自分にとってその道が正しくあればよいのではないか。
自由に。
ただ、自由に。
生きてゆきたい。
彼女たちの道は前に進む限り、歩いてゆけるのだ。
そう思える。
彼女の凛とした生き方が、とても心地よい。

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心を細やかに紡ぐ寺地はるな氏の新作。
私設の保護施設で育った祐希と鉱果。
日々の生活に中で否応なしに大人であることを求められた祐希と、生きるために美しいだけの中身の無い器として生きてきた鉱果。
十年の時を経て再会した二人は、自分の足で生きていくための道を探し始める。
偽善と罪と、人間の醜さと強さを考えさせられた。

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行き場のない母子のための「のばらのいえ」。その成立に立ち会った1人目である祐希の過去編と、成人した現在編が交互に綴られていく。
成長していくにつれ耐えきれず、飛び出していった過去編の祐希。その心情が一人語り故に浮き彫りにされていく。ならなぜ、その10年後の現代編で「のばらのいえ」に戻って生活しているのか? その不整合に首を傾げながら読み続けた。
そして、祐希さえ知らなかった「のばらのいえ」の秘密に息を呑み、祐希と共にいた兄妹の、過去からずっと秘めた思い、それに気づきもしなかった彼女と自分に唖然とした。それが現代の祐希を救った時、逆の行動をあえてとりつづけた程の想いの深さに言葉もなかった。
ならば、最後には王子と結婚できたしらゆきは幸せなのか? べにばなは終末に(一言も語られなかった)王子の弟と結婚して幸せなのか? そして、祐希はどちらなのか?
この言葉を言い切れた祐希にはもうわかっているはず。「『育ちが悪い』で決めつけるのはひどい」と言えた彼女には。

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とても苦味のきいた現代のおとぎ話でした。思わず先が気になって一気読みしました。現代らしい不幸な環境の子どもたちの物語。賛否ありそうなラストも含めて私は好きです。とてもおもしろかったです、ありがとうございました。

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行き場のない母子のを守る「のばらのいえ」祐希は10年ぶりにそこに戻る決心をする。
そこは彼女が暮らした場所。感情のこもらない感謝を強要され、理不尽な扱いをされた場所だった。

良い子は天国にいく、悪い子はどこへでもいける。
「のばらのいえ」から逃げた祐希、逃げなかった紘果。
二人の生きてきた道のりを思い、何度も泣き、憤り、そして応援し、幸せを願った。
理想論でもいい。誰かが手を差し出したとき誰かが助けてくれる世界であることを私も信じていたい。

「小説は答えじゃなくて問い」という寺地さんの言葉を何度も思い出し、何を問われているのだろうかと考えながら読んだ。
何気なく使う“かわいそう”とか“育ちが良い・悪い”という言葉。私はその言葉をたいして気にせず上からの目線で使っていたのだろう。
こんなことを問われているのではないだろうが、祐希の言葉が心の深いところにいくつも刺さり自分の気持ちと向き合いながら読んだ。
二回読んだが感情が咀嚼しきれない。こんなに心を動かしてくれるこの作品が大好きだ。ぜひ手元に置いてまた読み返したい。
発売を楽しみにしています。

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ネグレクト、ヤングケアラー、虐待、搾取……今社会的にも問題になっていることが詰まっていた。
本書の主人公は親の事情で親戚に引き取られる。子どもながらに自分が疎まれていると感じ、息を潜めて暮らす毎日。
そのうち引取先の娘である実奈子さんと、そのパートナー志道さんが運営するシングルマザーと子どもをサポートする「のばらのいえ」で暮らし始める。雨風を凌げ食べることはできる、学校にも行けるが主人公を取り巻く状況は息苦しいままだ。
重い話になりそうだと予感させる書き出しで覚悟したが、ページをめくる度に、自分を縛る大人から逃れる決意する主人公と同じように息を潜めて応援していた。
ヤングケアラーや子ども食堂、シェルターなどのニュースに触れることが多くなってきたように思う。
子供や女性を取り巻く状況が変わったのではなく、昔からある事に名前がついて知られるようになったに過ぎない。
そんな社会の現状を静かに訴えている作品だった。
またおとぎ話を例に、女性の価値や価値観を問いかけている部分がまたよかった。
多くの方に一読してほしい。

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言葉は呪いでもあるけれど、それだけではない。
願いでもあるなと感じる。
しらゆきちゃん、べにばらちゃん、どうか呪縛から逃れ自分たちらしく生きてほしいと願わずにはいられない。
自信は育まれていくもので、元からあるものではない。
大人たちにがんじがらめに搾取され否定され続けた物語の子供たちだけではなく、今いる場所で苦しんでいる私たちにも道はひとつではないと希望を与えてくれるようです。
生きていれば、きっときっとだ。
そして春日先生、実奈子さん、きみ香さんのことも、それぞれに語りたいことがいっぱいだ。
寺地さんの物語にはいつもハッとして、しばらく自分と向き合う時間をくれます。

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ざわざわと落ち着かない。気持ちを整理して、言葉にまとめる事に時間がかかった。今でもうまくこの気持ちが整理出来てない。
また寺地先生に「あなたは正しいのか?」と真正面から突きつけられた気がした。
『のばらのいえ』おかあさんと子どもを守るための家。慈善に隠れた利己主義に胸がムカムカした。人が、まして子供が搾取され続けることの悍ましさに耐えられない。
子供達にはどんな境遇であれ、どんな世の中であれ、もがいてでも幸せを見つけて生きていって欲しい。
「尊重がなきゃ愛じゃない」とても良い言葉だと思った。

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自分でも驚くほど涙が溢れてきて困惑した。
もどかしいし、腹立たしいし、苦しいし、ままならない現実を生きなければならない少女の苦悩と葛藤が胸に突き刺さる。
この二人の少女が、あの家で一時でも過ごした少女たちみんな、心に傷を抱えていてもなお、力強く生き抜いてくれることを心から願う。

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行き場を失った母子を保護するための施設「のばらのいえ」は終始不穏な空気が漂っていた。ありがとう、ごめんなさい、などのよく使われる数々の言葉。その言葉がずっしりとわたしの胸を締め付けてくる。同じ言葉なのに強制された瞬間に何かが壊れていく。
施設では何があったのか。祐希はどうして施設を出て行き、紘果はとどまったのか。あの出入りしていたひとたちは?読むうちに先が早く知りたいようなこのまま知らずにいたいような複雑な気持ちになっていった。見えない鎖でつながれているような彼女たちにこれ以上いったい何ができたのだろうか。どんな環境でも強く生きる彼女たちの幸せを願わずにはいられなかった。

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護られるはずの「のばらのいえ」で、自分らしくいることを許されず寄り添うように育った二人。
心無い言葉や仕打ちに読んでいて胸が苦しくなりました。
大人の都合のいいように扱われ、傷つきながらもお互いに相手を思う気持ちは離れていても変わることはなく、ずっと繋がっていたからこそ、また一緒に新しい未来に向かって歩み始めて行けたのだと思います。
優しい隣人に温かな眼差しで見守られ、明るい陽が光が射すようなラストに感無量になりました。

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寺地さんの作品を読むと私は私のままでいいんだって気にさせてくれる。だから大好きで私の人生の糧になるんじゃないかと文章を何度も読み返す。この作品もそうだ、私もずっとずーっとどこにでも行けるのにとどまる選択をし続けては何かのせいにしている。そして頭の中だけでいつも自由になりたがっている。主人公達も子供の頃からの環境や経験から私達には何もできないと思いこんでいる。だが心の隅に隠しておいた本当の自分の思いが溢れ出し前進する。何かを犠牲にしても自分の人生を手に入れたものは強い。今からでもいつからでも自分を取り戻せるんだと鼻息荒く読了しました。

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何故、人は、まだ幼いうちにその子の人格を決めてしまうのだろうか。
かわいそうな母と子を救うための「のばらのいえ」。
そこで暮らすことになってしまった祐希と紘果。祐希は言われたことは真面目にできる子、紘果は何もできない、やらない方がいい子。
そのレッテルの為に、祐希はいろんなことを背負わされ、紘果は表面上、大事に人形のように扱われる。
だが、彼女達には、れっきとした意思もあり、生きる力があるはずだ。そのあえぐような心情をリアルに伝える、寺地はるなの筆致に心をえぐられる。

若者の、生きよう、自由に生きたい、という気持ち。
大人は、それを歪めてはいけないし、自分たちの道具として扱ってはいけない。

グリム童話の「しらゆきべにばら」は王子様と結婚してめでたしめでたし。
本当にそうだろうか。
決めつけるということが、子どもたちの未来を奪うことになることにならないか。
憂いつつも、「どこへでもいける」希望を感じさせるラストでした。

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白ゆきは王子と、紅ばらは王子の弟と結婚し、幸せに暮らしましたとさ
こんな簡単に物語は終わらないよな
確かに

ずっしりくるお話でした
難しいお話だから、一言ではすまされない
親がいないため預けられたお家で、子供が故に選べない環境
親代わりの2人が開いたのばらの家
逃げられない中でヤングケアラーとなり、自分の人生を歩めない祐希
同じく預けられた紘果もまた惑い、そして諦める
実奈子と志道、自分勝手な大人
自分の欲望にだけは寛大で人のことを見れない大人
外からは見えない、見せないようにして子供たちの未来を奪う
こんなのがのさばってていいのかと悶々と
した思いで読んだ
祐希を助けた春日先生、ホープフーズの社長
全ての大人が嫌なやつばかりではない
全てがいい人ではないかもしれない
でも助けが必要な時、手を差し伸べてくれる人もいる
彼女たちが自由に生活し、生きて、また巡り巡って助けが必要な人たちに手を差し伸べられるような世の中になって欲しい、そうしないといけない
とても難しいことではあるが。
私自身が幸せに育ってきたんだと育ててもらったんだととても強く思いました

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寺地はるなさんの作品は、
未読本を見つけるとすべて
拝読させていただいております。

作品の中に何度も出てくる、
"Good girls go to heaven, bad girls go everywhere."
という英文。翻訳すると、
"良い子は天国へ行く。悪い子はどこへでも行ける。"
そして、お話の最後の一文が、
"どこへでも行けるわたしたちは、今日もおたがい、ここに帰ってきた。"
この繋がりがとても好きでした。

明るいお話ではありません。
誰かに気軽にすすめられる
お話でもないかもしれません。
でも、多くの方に届いてほしい。
こういう人も居るって知ってほしい。
胸が締め付けられますが
きっとまたいつか読み返す作品だと思います。

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家庭の主婦として夫の顔色を伺いながら生活している自分は、里親の顔色を伺いながら生きているこの子たちと同じだなぁと思いながら読みました。私は自分に引き寄せて読んでしまったので辛くなりましたが、そういう境遇にない読者にとっては明るいラストなので物語を楽しめるよい本だと思います。

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やっぱり寺地作品は凄い!今回も溢れ出る深い人間愛に心揺さぶられた。タイトルを一見したイメージとは異なる切実で重いストーリー、それがどんなふうに展開していくのか目が離せず、気づけば読み終え涙が頬を伝っていた。大人から理不尽を強要され健全な育ちを害する環境下でも、自活の術がなく命を繋ぐにはそこにいるしかなかった子どもたち。でも自分の人生を生きたいと願い、助けを求め外に出た祐希と、自らの心を殺して大人を欺きそこに留まった紘果。運命を乗り越え歩み出す2人の人生が、絆が、光放つ未来を映し出すラストは珠玉!

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強さで押しつけ、服従させる。
“かわいそうな”人に何かを“してあげる”立派な俺。
自己満足と押しつけがましさよりも気味の悪さを志道からは感じたが、
結婚して「幸せに」価値観は多くの人が持っているもので、
志道と実奈子さんだけを責めるわけではない。
どうすれば志道のような人間を罪に問えるのだろう。
〈シンプルで力強くて、そうしてなにひとつ意味がわからない〉言葉を声高に言う人にはなりたくない。
祐希が言葉の呪縛から解放される日が一日も早く来てほしい。

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ヤングケアラー、毒親など考えさせられるテーマでした。Goog girls go to heaven,bad girlsgo everywear.というフレーズが物語を通底していて、重みのある言葉です。寺地さんの作品らしく丁寧な描写が素敵でした。

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こんなにもひきこまれ、読むのが止まらない本は久しぶりでした。ネタバレ厳禁なので、言葉にするの難しいですが、今いる環境状況がどんなに最悪でも、その世界がすべてではなく、外にはまた知らない世界がたくさんあるのであきらめずに、外に羽ばたく勇気と実行を、そしてちゃんと幸せになってほしい。なれるよ。ということを、こういう状況にあるひとに伝えたくなるような本でした。そして手を差し伸べてくれるひとはちゃんといることも。

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生まれる場所も、育つ場所も、子どもは自分で選ぶことができない。自分の力で生きていくことができるまで、そこで生きていくしかない。環境が人を育てる、と思う。どんなにいいものを持っていても、伸ばしてくれる環境がなければ育つのは難しい。幼いころから押さえつけられ自由を奪われていると、自分で何かを考えることを止めてしまう。それでも祐希は『のばらのいえ』から出ることを選び、そしてまた戻って来た。
つらい記憶は消えないけれど彼女たちには「これから」がある。いつまでも弱い子どものままではない。何も持っていなければ、自分から取りに行けばいい。どこに行ってもいいし、何をしてもいい。失ったものはきっとこれから手に入れられる。

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『のばらのいえ』にどっぷりはまり、先が気になり本当に一気読みでした。

ヤングケアラー、依存、制圧、闇、犯罪、自己犠牲…いろんなものが、混ざりあい衝撃的でした。
せつなくつらいところが多かったけど、光もあり、言葉ではいい表せない余韻が残りました。
素晴らしい感動作品。

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「のばらの家」なるボランティアの家で育った祐希と紘果の物語。

今回はしんどかったー😭
逃げ出そうとした子と、逃げ出さなかった子。
それぞれの思いが、悲しすぎる。
読みながら、何度も一緒に吐きそうになった。

しかし、そこは寺地さん。
しんどい中にもちゃんと希望があって、
まともな大人もちゃんといて、救われた。
春日先生の理想論は、広めたい。

今回もたくさんのメッセージが込められていて、読んでいる間は苦しかったのに、読後感は悪くない。

大人が子供の自由を奪う権利はどこにもない。
すべての子供は生きているだけで褒められていい。

そう思えた作品でした。

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つらい
つらすぎた
とにかく子どもたちがどうにか助からないのかと祈る気持ちで読んでいた
藁にもすがる気持ちで助けを求めた母子に降りかかる出来事に、クズな大人たちに怒りしかなかった。
祐希たちに何ができたというのか、同じ子どもなのに背負うものが大きすぎる
最後に至るまで、何もできない悔しい気持ちでいっぱいだった

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みんな収まるところに収まったような綺麗な終わり方だと思います。個人的にはとても満足でとても好きな作品です。
良い悪いが判断できない子供時代の環境を「育ち」で括られて大人になってからそれを理由にして責められる、そんなのってひどいと直接伝えた主人公が強いなと思いました。自分が同じ立場にいたらそれを本人に意見する勇気は無いです。
楽しい話ではありませんでしたが、正しい大人になれているのか考えさせてくれる素晴らしい作品だと思います。
ヤングケアラーが問題になっているこの時代に、沢山の方に読んでほしい作品です。

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「川のほとりに立つものは」の中でも、助けてもらった方は感謝しなくちゃいけないということへの反発が出ていましたが、この作品はそれがより際立つ形で表現されていると思いました。のばらの家は悪なのか?そもそも手を差し伸べない人もいるのに、中途半端に手を差し伸べるくらいなら何もしない方が良いのか?難しい問題だと思いました。

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グリム童話に由来するタイトル、優しい色づかいの書影に、うっかりハートウォーミングな小説かと読み始めたら・・・主人公たちを取り巻くあまりにも過酷で劣悪な環境に、吐き気がするほど胸を締め付けられる。そう言えば、書影の王子と白ゆき、紅ばらは黒い仮面を着けているという不穏な事実に気づいても、今更もう遅い。

一気読みだった。
偽善者たちの、反吐の出るような醜さと、それを分かっていながらも従わざるを得ない弱者たちの愚かさ、したたかさ。
社会の歪み、愛情のひずみを容赦なく描きながらも、寺地はるなの筆は読者に救いを用意してくれている。
だからこそ、現実の絶望に打ちひしがれながらも、私たちはかすかな希望の光を頼りに「生きている」ことができる。

寺地はるなの作品に、間違いはない。今一番「信じられる」作家の、今一番「強い」メッセージを込めた作品だ。

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辛くて痛くて苦しかった。
何度も過去に囚われそうになりながら、ようやく抜け出したその未来を、『よかったね』で済ますことはできなかった。
彼女たちを苦しめた日々は決して消えないし、彼女たちを苦しめた罪は赦されることはない。
ただ、その中でも笑い合えた瞬間もあって、それは嘘ではなかった。ちゃんと本当もあった。
そう思うと、少しだけど心が軽くなる。
これからふたりが歩む道に、少しでも光がさしますように。誰も邪魔をしませんように。ただそんなことを願った。

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自分の意思を持って、どう生きたいか。童話のハッピーエンドはお決まりだけど、何が幸せかはひとそれぞれ違う。誰とどこで、どうやって生きるか。選べないなんておかしい。誰かに助けを求めれる社会、弱音をじゃんじゃん吐き出せる社会、困っている人をサポートできる社会にしたい。

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Goog girls go to heaven,bad girls go everywear

遠縁の実奈子と志道が運営する「のばらのいえ」で育った祐希は、子供の頃から、そこで暮らす行き場のない母子の世話をさせられていた。自由になりたいと高校卒業時に「のばらのいえ」を逃げ出した祐希。気がかりなのは一緒に育った保と紘果の兄妹。紘果は志道になぜか猫可愛がりされ自立を妨げられていたし、保は何か精神的な障害?があり援助が必要なのにかかわらず、放っておかれていたからだ。

「のばらのいえ」を出て10年ほど経ったころ、突然祐希を迎えに来た志道の意図は?
祐希は紘果と保を救うことができるのか。
「のばらのいえ」に関わる大人たちの偽善と秘密が明かされる。
#シスターフッド

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重苦しい雰囲気のなか物語がはじまり、虐待やネグレクト、ヤングケアラーなどがテーマで、読みながら苦しいやら悔しいやらでした。祐希と紘果の人生が希望に溢れていますようにと、祈るように応援しながら読み終わりました。

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志道と実奈子が運営するのは、行き場のない母子を守るはずの「のばらのいえ」。しかし、そこで実際に起こっていることは・・・読んで確かめて欲しいのですが、はっきり言うと読んでいて楽しい内容ではありません。気が付いたら心に小さなかすり傷が無数にできていて、ことあるごとにそれらが痛み、読了後も不快感が残ったままになるかもしれません。それでも、読了後に得られる「何か」のために読んで欲しいと思います。
「のばらのいえ」での生活に絶望を感じて逃げ出すことを決めた祐希、とある決意と意志の下に「のばらのいえ」に残ることを選択した紘果、心を病んで失意のまま亡くなった実奈子、誰に感情移入するかによって感じ方も変わると思いますが、最後の最後に祐希と紘果が決断して歩み始めた道が平坦ではなくとも希望を感じられるものであることが、著者からのメッセージなのではないでしょうか。中でも、祐希に手を差し伸べた高校教師・春日の言動は、自分がその立場や状況に遭遇した際に可能な限り実行できるような人間でいたいと思わされる内容でした。

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すべての困窮する母子を守ると謳う「のばらのいえ」。

そこには表向きの顔からは想像できないドス黒い秘密が隠されていました。

善意の皮をかぶった悪意に絡めとられる子どもたちを描いた衝撃作。

幼少から小間使いのように扱われ、当たり前の幸せすら望めなかった主人公や、歪んだ愛情を注がれ続けた少女の生き様が切ないです。

やはり子供が子供らしくいられるようにすることは、大人の責任であり義務なのだと痛感しました。

特に心に響いたのは「できないことばかり数えないで」という温かで安らぐメッセージですね。

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祐希は高校卒業と同時に、私設の母子保護施設「のばらのいえ」から逃げだした。
それから10年後の現在と、「のばらのいえ」で過ごしていた子供時代とが、交互に綴られていく。

「白ゆき紅ばら」というかわいらしいタイトルから軽い気持ちで読み始めたのだが、逃げ場のない子どもたちの絶望が克明に描き出された重い物語だった。
一章を読み終えては、息を整え、それからまた読もうとして、スマホを置いて、ということを繰り返しながら、作者が広げた風呂敷をどうたたむのか、それを知るために最後まで読んだ。
祐希はもちろん、紘果も保も、希望の光が見えるラストで救われた。

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黒寺地さんだ、と思った。
今までの作品は、白い光が作品をうっすらと覆っていて、
作品の中の人たちが困難な中にいても、
どこか安心して読むことができた。
白寺地さんだった。
でも、この作品はちがった。
白い光がさしていない。
苦しかった。読んでいて、どんどん暗い方へと流れていく気がした。
影の中で息をひそめて、じわじわと傷つき壊れながら、それでも誰かを思って
人は生きていくのだろうか。

これからの寺地さんは、どう進むのだろう。
黒寺地さん、白寺地さん、どちらも楽しみでならない。

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なぜ人は人を支配しようとするのだろう。教育やしつけという名で、あるいは愛情という名で。まして生活の基盤を握られていたら取り込まれてしまうだろう。そこから抜け出すにはそれが支配だと気づかせてくれる他人と実際に暮らせる別の居場所が必要。勇気を出して支配から抜け出したあとに「道が少しずつ見えてくる」というところで涙が出た。どこへでも行けるんだ、と思わせてくれるお守りのような一冊。

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強く見える人ほど弱く、
一見弱く見える人ほどつよい。
人の真の強さは生きる力に
直結するものなのかもしれません。
自分の足で生きていく勇気、
誰かを守ろうとする強さ、
そういった大切なことを教えてくれる
大切な一冊だと思います。

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ずっしりとくる作品を読むのは久しぶりでどんどん読んでいる手が重く感じましたが(笑)、それでも読む手は止まらず先を求めていました。
海の真ん中を必死にもがいて進んでいるような、足もつかなくて先も見えない、でも生きるためにとりあえず前に泳いでいる。
そんな気持ちで読み進めていました。
だから私も息が苦しくて(笑)

最初から一貫して続く不穏な空気に、「どうか、このまま終わらないで…」と願いながら一気に読み終えました。
(いつも日を跨ぐ前に寝るのに、気がついたら0時を過ぎていてびっくりしました)

寺地さんは、この作品にでてくる のばらのいえ を
"社会のミニチュア"とおっしゃっていて。
私は周りや家族に恵まれて、幼少期から当たり前のように自分の幸せを一番に考えてのほほんと生きてきたんだなあと改めて実感しました。
この のばらのいえ で生活する人たちはいろんな悩みを抱えていて。とくに主人公たちは、考える隙もなく当たり前にその問題が日常にあって。でも私にはどうすることもできなくて。
実際にこのような問題は、見えないだけで至る所にあるのだろうと感じました。
.
この作品はとある子の視点で読み進めていくので、一見この子だけがよく考えていて先に進む力がある、強い子のように見えて実はそうではなくて。
それが分かった時、お互いのやり方で思っていたことを知った時、私の気持ちも一緒に救われました。
重く、とても考えさせられる作品だけどそれだけでなく希望もある。
この作品を読めてよかったです。(このnetgalleyを通じていなかったら、あらすじを読んでなかなか近づかなかったかもしれません)

ちなみに装丁はやはり鈴木久美さん。
本当に、私はこの方のファンです。

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グリム童話にある白ゆき紅ばら。
かわいそうな子どもたちが暮らす施設で育った主人公。
物語のために取って付けられたような王子との結婚。
女性は結婚したらそれで幸せ、それで良いんだろうか。
彼女たちはあくまでも自らの力で運命を切り開く。
その力強さをあなたも見守ってください。

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行き場のない母子のための施設「のばらのいえ」で出会った祐希と紘果。しらゆきちゃん、べにばらちゃんと呼ばれた2人だが、祐希は口だけの運営者実奈子さんのかわりに家事をし、紘果はお金は出すだけの運営者志道さんの愛を受ける。

やった気になって満足する大人と、差別をうけるヤングケアラー。つらい話だが、春日先生に出会えたのがよかった。2人には何処にでも行ってほしい

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子どもたちや行き場のなくなった母親を
保護するための施設「のばらのいえ」。
だけど、中身はそんな優しい世界ではなかった…。

「守ってあげる」
そんな甘い言葉で、未来ある子どもを縛り付ける大人たち。
そんな人が憎くて仕方なかった。

どうにか逃げ出してほしい。
希望ある世界を見てほしい。
そう願わずにはいられませんでした…。

大人は、子どもをいいようにも悪いようにもできる。
可能性ある子どもを、大人の好きにするなんて
絶対にあってはならない。
だからこそ、少しの変化にも気づいてあげたい。
地域や身近な大人が動いてあげないといけない。

きっと現実でもこれに近しいことが
あるんだろうと思うと、胸が痛かった。

読めば読むほど、いい作品だと感じることができた。
子どもたちの未来に、少しでも輝きがあってほしい。
今作もとっても素敵でした♪

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行き場のない母子を守るためにつくられた「のばらのいえ」
そこから逃げ出した者と残ることを選んだ者。
ふたりの少女の過去をベースに、物語は展開していく。
目を覆いたくなるような場面も多々あるけれど、悲しい、苦しい、という言葉で終わらせてしまうのではなく、その先にあるものを考えなくてはならないのだと思う。癒えることのない痛みを抱える子どもたちに、わたしたちを含めた社会全体がどうしていかなければならないのか。たくさんの問いを投げかけてくれる作品です。

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グリム童話の「しらゆきべにばら」のようだと言われた祐希と紘香。事情のある母親と子を住まわせる「のばらのいえ」の夫婦(同志)の志道と実奈子。この「いえ」には何があるのか?隠されているのは何か?ここは歪んだ愛の「いえ」。ここから逃げるべきか、とどまるべきか。これが2人の分かれ道、しかし…。10年間離れて暮らしていた祐希と紘香はお互いを…そしてこの最後の結末へとー。あの時、彼女を助けてくれた春日先生の言葉は、今はまだできなくても祐希のこれからになるだろう。表紙の真ん中は男の子?

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今まで読んだ寺地作品とは、一味も二味も違う作品だった。作者を知らずに読んだら、絶対寺地作品とは思わなかったと思う。でも、テイストの違うこの作品も嫌いではない。「のばらのいえ」に住むようになった事情がある人達‥。残念ながら、この世の中ある一定数いるのだろうなと思う。だからこそ、のばらのいえの経営者である志道さんや、実奈子さんの様な人は、絶対善人でなければならない。辛い境遇にあった子どもたちは、これ以上何の糧にもならない辛い思いをしてはならない。そして、どこにでも羽ばたいていけると良いなと、そんな事を思いながら読んだ。

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読むのがつらくなるような場面やそうでなければいいと思うシーンが続き、苦しくなるものの、周りで助けてくれる人の優しさ、恩送りで心があたたかくなったり、気持ちが乱高下しました。
ラストは希望が見え、読み終えたあとはホッとしました。
考えさせられる場面も多くあり、それぞれの立場からの見方、是非多くの人に読んでみてもらいたいです。

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寺地先生の作品は12作品目です。
『川のほとりに立つ者は』で、自分に問われた衝撃を、別の角度からもう一度問われた気がしました。
行き場のない母子を守る「のばらのいえ」は愛と理想を掲げた夫婦が営む。
しかし、そこにあったのは、
偽善、強者の理論、助ける側の傲慢…
「自分で判断しなかった、行動しなかった。
とても卑怯なこと。」
この一言が胸に突き刺さりました。
理想論を語るのは気持ちが良い。
でも、大切な事は現実から目を逸らさず、
問題から逃げないこと。
言うは易く行うは難し。
肝に銘じていきたい、と、再度思いました。
人として大切な生き方を教えてくれる、
何度も再読したい作品です。

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この寺地はるなはヤバい!!
私がこれまで読ませていただいた寺地さんの作品は、読書感想文コンクールの課題図書にもなった「水を縫う」など、どちらかといえば穏やかで、丁寧に登場人物の気持ちを掬い取るような作品でした。
が、そのイメージが本作では崩壊。「細やかに書ける作家さんが、人間の弱さや狡さ、恐ろしさを描くと、こんなにも怖い話ができあがるのか…」と慄きました(本作は怖いだけでは終わりませんが)。
寺地さんの引き出しの多さに驚かされました。

強い印象を受けるセリフ、エピソードが多く、読み終えた後、作品について誰かと語り合いたくなりました。
この作品の核となっている「Good girls go to Heaven ,bad girls go everywhere」はもちろん、私は以下のセリフがとても印象に残りました。
「もし、わたしの娘が将来なんらかの理由でわたしたちと離れ、ひとりで生きていかなければならないとしたら、その時は誰かに頼ってほしい」(p188)

寺地さんが次はどんな作品を書かれるのか、今から楽しみです。

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行き場のない母子のために作った「のばらのいえ」。可哀想な子どもを保護するという立派な名目を掲げて、自分たちは立派な人間だと思っている志道と実奈子。実際は束縛や支配による虐待で、そこで育ってきた祐希と紘果が自分たちを守るためにとった行動は静と動だった。10年後、再会した彼女たちが行動を起こせたのは、自分のためではなくてお互いがお互いの幸せを願ったからだと思う。大人が子どもに与える影響はとても大きくて罪深い。とても重く、考えさせられるストーリーでした。

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偽善と自己満足が人をがんじがらめにすることもある。そしてその渦中にいる人は、自分の不幸を誰かのせいにすることでしか自分の人生を肯定することができない。それでも生きることに価値を見出そうとする鳥籠の中の鳥達の、心の内に広がる世界は果てしなく広い。自由だって気付けない飛びたてない鳥。遠くを見つめて逃げ出す鳥。ただひたすらに、自分のままで生きていくことの尊さを教えてくれる一冊。

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大好きな寺地はるなさんの新しい小説ということで喜んで読み始めたとたんに、不穏な空気を感じて、しばらく読み進めるのを躊躇していました。
辛い内容だったらどうしよう.、と。
でも、寺地さんの作品だから、辛いままで終わるわけがないと気を取り直して読み進め、
読み終わった時には感動の涙でした。
お前は何もできないと劣等感を植え付けられて支配された経験は私にもあり、また、ヤングケアラーも児童への搾取も、身近に多くある問題です。
登場人物が全員、実在する人物のように感じられるその筆力には、改めて驚かされました。
時にはグロテスクにも感じられる展開の最後に希望がありました。
期待が裏切られないどころか、深い感動を覚えた作品です。

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仲の良い姉妹を描いたグリム童話「しらゆき べにばら」になぞらえた長編小説。ただし、本作の白ゆきと紅ばらは本当の姉妹ではない。白ゆきはしっかり者の主人公・祐希。紅ばらはおしとやかな紘果。行き場のない母子を守る福祉施設である「のばらのいえ」で共に育ち、一心同体であった二人の少女である。

しかし、母子を守るとは名ばかりで、のばらのいえの実態は慈善ごっこと揶揄されるほど酷い状況だ。祐希は幼いころから召し使い同様に束縛され、自分の人生を歩めない。そんな未来のない現実から逃避するために、白ゆきと紅ばらは別々の人生を歩むことに…。物語はその10年後。ひょんなことから祐希がのばらのいえに戻るところから始まる。

読み終えたとき、いち大人としての「責任」を問われている気がした。作中で「良い子は天国にいく、悪い子はどこへでもいける」という格言が出てくるが、悪い子はどこへでも行ける反面、どこにたどり着こうと自己責任だ。恩師である春日先生の言動は教師としては褒められたものではないが、責任は自分でとっている。

祐希がのばらのいえから逃げたことは立派である。自分の道を切り開くのは自分しかいない。逃げてもいいのだ。大人はヤングケアラーを生み出してはいけない。力のあるものが搾取するのではなく、困ったときに手を差し伸べることができる社会であってほしい。著者の寺地はるなさんより、そんなメッセージを受け取ったような読後感を味わった。

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寺地さんがシスターフッドを描くとこんなふうになるんだな、と。
読んでいて苦しい描写もあった。

身寄りの無い祐希は引き取り先の両親が亡くなり、その子どもである美奈子さんとその夫である志道さんが運営する「かわいそうな子どもたち」を救う「のばらのいえ」を手伝っている。
勉強が出来ても進学先は決められない。面倒を見てもらっているのだから手伝うのは当たり前、我儘は言えない。バイトはもってのほか。自分がどうやって動くのが正しいか(円滑に行くか)常に動向を見て行動していた。限界が来たときすべてを投げ捨て逃げ出すことを決意する。
一方で同じ施設で育った紘果は志道に依存することで自分を守るようになっていた。一緒に逃げることを提案するが、紘果は残ることを選択する。
そんな中、行き先も告げず音信不通にしていたのに美奈子が亡くなったと志道が祐希を訪ねてくる。

「良い子は天国へ行く。悪い子はどこへでも行ける。」このフレーズが最後まで突き刺さる。
良い子は誰にとっての良い子なんだろう。自由ってなんだろう。
親が子の権利を搾取してはいけない。大人が子どもの未来を摘み取ってはならない。そんな当たり前のことを知っているはずなのになんでなんだろう。
愛情のベクトルの方向性の違いが辛くなる。
現実にも公になっていないだけで露呈されるべき事柄は沢山あると思う。そういえば元々あったものなのに「ヤングケアラー」という単語が認識されたのも最近だった気がする。
愛されるべき子どもたちが自分の人生を生きられることを願う。

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息が詰まるような、モラハラ満載の一冊で、今までの寺地さんの作風とは違う感じを受けた。
不遇な母子を保護する活動をしている夫婦と、彼らにこき使われている女の子と、甘やかされている女の子の話。ヤングケアラーにモラハラ、色んな問題を抱えた主人公が、必死に生きていこうとする姿と、それを見守り、支えようとする人たちの優しさが、胸に沁みる。
2人の少女がそれぞれ歩んできた人生と、その裏にある想いが後半に溢れ出して、その必死な温かさに泣きそうになる。どうか、2人のこれからの人生が幸せになりますようにと願わずにはいられない。

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『のばらのいえ』で、搾取され、尊厳を奪われ過ごした子どもたちが、呪いや束縛を振り切って生きていく。これは、かわいそうな子どもたちの話ではなく、命がけで生き延びてきた子どもたちの話だと思う。

"自分の生きる道はいくつも枝分かれしている"…今、どれほどの子どもがその可能性に気づき、自分の力を信じることができているのだろうか。

子どもが自分の進む道を選びとって生きていけるよう育てることは親だけの責任ではなく、社会の責任でもある。この物語は、どこか遠い町で起こった悲しい話ではなく、私たちのすぐ近くでも起こっている話。親だけが悪いのではない、養育者だけが悪いのでもない、誰もが決して他人事ではないこと、誰もが誰かにとっての、春日先生にも、きみ香さんにも、藤枝さんにもなり得ることを、この物語は教えてくれていると感じた。

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タイトルのグリム童話、どんな話だったかと„Schneeweißchen und Rosenrot“ で検索して出てくる一時間ほどのお話(ドイツ語)を見た。伝承には細部の違うバリエーションが色々ありそうだ。二人の娘の育った森の小屋のような家の前には白と赤の二本のバラの木が立ち、悪しき心の者が訪れると門のように閉じるという演出だった。グリム童話では娘たちの快活さ、勇気、自由を求める心が印象的だった。
この小説のもう一つの象徴的な言葉は
Good girls go to Heaven, bad girls go everywhere
歌詞の一部のようだが本編を貫く重要なメッセージとなっている。

自由を求める心。勇気。

この小説の世界はもっともっと重苦しく残酷。
不条理とはなんだろう。道理が立たないこと?
少女たちの置かれた状況は、凄まじい勇気と力をふりしぼって、時には助けてと声をあげて周りの手を借りて、打開していかなければならないもの。不条理という言葉でなんとなく片付けていいものではない。
・・・感想を書くのが難しい本です。子供がつらいめにあう、虐待を受ける、という描写がある作品に、自分は、感動したり心打たれる、ということがほとんどないので。


„Schneeweißchen und Rosenrot“
https://www.daserste.de/checkeins-kinder/maerchenfilm/videosextern/schneeweisschen-und-rosenrot-130.html

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グリムの「白ゆき紅ばら」を下敷きにした、祐希と紘果の10数年。「のばらのいえ」という民間の母子保護施設で起きた目を覆いたくなるような現実。志道と実奈子の偽善がのさばる場所で、搾取され続けてきた祐希の逃亡と、紘果の内なる思いが徐々に明らかになっていく。
自由、自立、愛、友情を求めながら決して手に入れることのできず、圧力をかけられ続けた祐希たち。もつれ、絡まり、追い込まれていく姿に言いようのない苦しさを覚えた。登場するどの大人も身勝手で自堕落。子どもから大人へと普通の道を歩けなかった彼らは、手探りすることさえ命がけだ。
「良い子は天国へ行く。悪い子はどこへでも行ける。」生きる勇気をつかんだ祐希と紘果に光あれ。

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「のばらのいえ」に住む人たち。
のばらのいえには
さまざまな問題をかかえている
生きづらい人たちが集まってくる。

そのなかで、どう前を向くのか
どう生き抜くのか。

主人公の進む道を見ていると
生きるということは
理由なんてなくて
「生きる」ということが
全てなんだと、感じた。

私も自分自身の人生を
理由付けなんてせずに
精一杯生きていきたい。

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何もかもを放り出して読みたい‼︎って久しぶりになりました。
人の善意という形を借りた、薄気味悪い傲慢さに心がヒリヒリしながら、ぐっと引き込まれてました。
前を見据えて歩き出した二人に背筋がすっと伸びるような、力を貰える物語。
最高でした!
全力で応援します。

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「誰かを守る」「誰かを助ける」ことに潜む自己満足感や優越感について、直視せざるを得なくなるような作品だった。

「のばらのいえ」やきみ香さんとの間で起こったことを通して、「守る」「守られる」、「助ける」「助けられる」関係では、どうしても「守る」側「助ける」側が優位に立ちやすく、物理的には与えていても、その人の大切な尊厳を奪う支配的な関係が生じる可能性があることが描かれている。
そして、何より恐ろしいのは、そのことに対して、支配する側も支配される側も無自覚になりやすいこと。

恥ずかしながら、私はこの作品を読むまでは、庇護することと支配することが表裏一体である危険性について、ここまで真剣に考えてこなかった。
また、私の中にも「かわいそう」を餌にして自分の存在に意義を見出そうとするような自分が確かにいる、志道や実奈子さんだって、決して自分と遠くかけ離れた怪物なんかではないと感じた。

私にとっても大切な本であり、たくさんの人に読んでほしいと思いました。

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なんとなく何が起こっているのか分かるんだけど、はっきりとは触れられていない、ベールがかかったよう感じで話が始まり、進んでいきます。
気まぐれのように好意を示し、養ってやっていると恩着せがましく、あなたのためと言いながら家事を押し付け…ひどい大人です。腹が立ちます。
彼らにも酌量すべき過去があるのかもしれないけど、でも言い訳にしてはいけないと思います。
反対に、怯えや怖れを感じながらも、何とか抜け出そうとする強さ、仲間を切り捨てられない優しさを持った祐希の真っ直ぐさが心に残りました。
一見冷たく思えても、力になってくれた先生はほんとよかった。なぜ助けるのか、その理由が偽善的でもなく、自分の正義に酔っている感じもなく、正直な思いからきていて、ストンと胸に落ちました。
ほっこりする話でも感動で泣けちゃう話でもなかったけれど、じわじわと迫ってくる話です。

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なんだか引き込まれるはなしでした。
のばらの家は駆け込み寺みたいな感じだけど実際にはあってはならない不思議な世界観。出てくる登場人物がなんかみんな歪んでる。初めましての作家さんでしたが、なかなか読者を引き込んでいく世界観を作ってるなと感じました。

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大人から守ってもらえず、ひどい仕打ちをうけながらも自分が決めた道を貫こうとする2人がたくましかったことに救われた。

「いろんな人たちの手を借りて生きてきた私は、まだ誰にも手を貸せていない」
作中のこの言葉が胸に突き刺さった。自分は誰かに救いの手を差し伸べる勇気があるだろうかと。

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おとぎ話のような表紙と、その内容の残酷さに驚きました。きれいなものに隠された汚さに、現実にも起こりうる、いやもう起こっているに違いない恐ろしさがありました。弱気ものが虐げられる社会、そして、弱気ものが作られていく社会の中で、主人公が出会った先生のように、大人が手をさしのべていかないといけないと、強く感じました。自分には何ができるのかと、考えさせられます。

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主人公の祐希は、行き場のない母子を守るための私設の保護施設である「のばらのいえ」で育った。この保護施設を運営する志道と実奈子夫婦、祐希と幼い頃から一緒に育った紘果。一度、バラバラになった祐希と紘果。10年経ち、また再会した2人の話がもう…。後半にかけて色々な出来事の真相が分かり、最後は2人に希望が見える展開で良かったと思う。いまの2人ならこれからもどこにでも行ける、と信じるしかない。
それにしても、パフォーマンスのための保護施設、モラハラやネグレクト、ヤングケアラーといった内容がこれでもか!ってくらい、てんこ盛りに詰め込まれていて、読んでいてツラすぎた…

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サイン本もゲットしてしまいました……。
内容に寄り添う装丁も素敵で、飾っておきたい。
もう最初から実奈子と志道が気持ち悪すぎて、絶対何かある、この家……。1人ずつ呼び出したり、紘果だけ隠したり不穏不穏。

私も料理や洗濯のこと無知すぎて「出来ない出来ない」とやらないでいたけど(甘えて生きてきてすみません)、「できないことと、知らないことは違う」と言葉を貰って、とりあえず知ろうとすることから始めようと思いました。

二人には、これからは自由に生きて欲しいな。

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かつて育った場所に久しぶりに帰ってきたことで分かる、変わったこと変わらないことがあって、当時は仕方のない側面もあった過去の状況を踏まえてこれからどう生きるべきか、それらも踏まえてしっかりと向き合い、新たな一歩を踏み出すことを決めた彼女たちのこれからを応援したくなりました。

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行き場のない女性と子供を受け入れる「のばらのいえ」、そこで起きていることは一見遠くの誰かの話のようだけれど、決してそうではないと感じました。

同様のことは、世界じゅうの至る所で起きていて、いつ我が身に降りかかるかわからないと思います。

志道さんは序盤からずっと嫌い、美奈子さんも同じくらい嫌い。きみ香さんのことも「嫌だな」と思ったけれど、自分の中にも3人と同じようなところはたしかにあって、そのことに愕然とさせられました。

「わたしにはなにも返さなくていい」

と言った春日先生の行動と信念に胸が射抜かれました。

寺地先生の文章はいつもとても読みやすく、この作品も読みやすく、わかりやすく書かれていますが、読み進むのがとにかく辛くて何度も休憩(逃避)してしまいました。

読んでいる間じゅう、大人としての私、親としての私、女性としての私、そして子供の頃の私、色々な私の心が悲鳴を上げ続けていたのだと読み終えてから気が付きました。

自分が志道さん、美奈子さん、きみ香さんにならないために、必要な作品でした。リクエスト承認ありがとうございました。辛いけれど、読むことができてよかったと思います。

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今回の寺地さんもなかなかベビーな内容でした。

志道と実奈子の、偽善と自己満足による表面だけの慈善事業に吐きそうなくらいの気持ち悪さを覚えながら読みました。

行き場のない母子のための施設「のばらの家」に暮らす祐希と紘果。

日々奴隷のように働かされ、搾取され続けてきた祐希、何もできない子と言われ続けた紘果。

逃げ出す選択をした者と残る選択をした者。

まさに動と静だな。
形は違えどそれぞれ自分を守るための選択をする。

10年ぶりに再会して過去の真実が明らかになっていくのだけれど、本当に読んでいて辛かった…。

でも最後には、自分たちの足でしっかり歩く2人の未来に希望が見えて安心しました。

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「これ、映像で見たい」って思いました。
主人公に惹き寄せられて、私の知らない世界に入り込んだ感じです。
世の中の明暗の境目のような…。
善も悪も、両方の面を持って世の中は成り立っている…そんなことが読後に頭にふと浮かびました。

幸せなラスト。
この先もきっと前を向いて生きていく。
とても印象深い物語でした。

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今までの寺地さんの世界とは一風変わったある意味新境地になる作品だと思う。白ゆき、紅ばら、のばらのいえ。女の子が惹かれそうなワード、愛らしい装丁。しかし中身は決してスイートではなく、血反吐を吐くような思いで生きてきた、人間を信じない者たちばかりが出てくるビターな人間模様が余すことなく描写されている。対のような祐希と紘果は定めのように再び強固に繋がれて、やはりそれは運命なのだと感じた。過去の暗から未来への明へと希望を感じるラストには心から安堵して読破。

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素晴らしかった。
ただただ素晴らしかった。

先に読み終えた周りの人達から「辛い」「しんどい」とやたらと聞くのでドキドキ読み進めていたのだが、個人的にはとても良い読後感だった。

大人達の子供への愛は、時に残酷だ。
そして大人達の「愛ゆえの助言」は呪いだ。

呪いの言葉でがんじがらめにされて言いなりの人形になることしかできなくて、それがおかしい事だと教えてくれる人がいなければ気付けない事もある。下手したら一生そのまま自分自身では何も決められず行動できずどうやって生きていけばいいのかわからなくなる。

きちんと子供と向き合って話を聞いて支えてくれる大人と出会えるかどうかが、大きな分かれ道なのだろうと感じる。
私自身、(現在進行形で)紘果の気持ちも祐希の思いも共感できる部分がとても多くて二人のことを考えれば考えるほど本当によく頑張ったと心から尊敬する。
二人はきっとこれからも、ずっと一緒にいるわけではないだろうし様々な経験をそれぞれがしていくことにより別々の道を歩くこともあるだろう。それでも。それでも多感な年頃を精一杯生き抜いた彼女たちに、どうか少しでも力強く歩める未来を選択できるよう心から願うし応援したい。そして、私も彼女たちに負けず色々なことをふっきれる力を持ちたいと思えた。

挫けそうなときに、何度でも読み返したい。
親や保護者、パートナーからの愛が呪いに変わりつつある全ての人達に届け。生きることを恐れるな。

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冒頭から絶え間なく不穏な空気のなかで物語が続き、中断するのが難しかった。春日先生の在り方が素敵だ。熱心でグイグイ来るタイプの教員だったら無理だったと思う。読み手には心情を伺えない紘果のモノローグ挿入に、グッと惹きつけられた。細かい気になる箇所があっても(行政は介入しないのかとか、祐希は本当に気づいてなかったのかとか)ラストは2人の幸せを願わずにはいられない。

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肉親と縁の薄かった二人の少女が出会ったのは、行き場のない母子を守るという名目で運営される「のばらの家」だった。
運営者の志道と実奈子夫婦に引き取られる形で「のばらの家」を手伝っていた祐希の生活はまるでヤングケアラー。親に見放され「のばらの家」に辿り着いた紘果と兄の保の面倒を見ながら次第に祐希は追い詰められていく。
全体的に重い話が続くけれど、中盤から祐希を取り囲む人々の感情が露わになり読むスピードも上がった。面白かった。

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「のばらのいえ」そこは行き場のない母子を救う場であり、問題を抱えた人々の拠り所のはずだった。人の人生はあっという間に狂わされてしまう。精神的に追い詰めることも簡単にできてしまう。それなのに、狂わされた自分の人生を取り戻し、大切な人を救いだすのは容易なことではない。自分の心をだまし、自由を得た事に満足しているふりをしながらも、心の奧に突き刺さり続けていた後悔。世間の思い込みにより傷つけられた心。かけがえのない人を守るための嘘と犠牲。2人の少女の生きる人生が辛すぎて鋭い痛みとなり胸が苦しくなった。あの人はいったい何人の人生を壊し続けたのか。許せない気持ちでいっぱいになった。それでも、互いを思いやる強い思いに勝るものはなく、光が見えたラストに2人の幸せが永遠に続きますようにと願わずにはいられなかった。

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"可哀想な母子"に手を差し伸べる「のばらのいえ」

故あって代表夫妻に引き取られ、"中の子"として育てられた祐希は、円滑な運営のためにずっと自己犠牲を強いられてきた。
高校卒業とともにやっと逃げ出した「のばらのいえ」に、10年ぶりに戻った祐希は、当時見えていなかった事柄に気付かされる。
そこで大人たちが軽々しく犯していた、子供に対する許されざる罪にも。

可哀想は主観なのか。
救いの手は正義なのか。
力がないのは刷り込みなのか。

痛みを感じながらでも、助け助けられつつ道を切り拓いていく彼女たちに、胸が熱くなる。安易な同情なんて出来ないから、固唾を飲んで見守る。

子を守っているつもりの自分にも、何も出来ないという押し付けの気持ちはないか?してやってるという自己満足ではないか?
他者に向ける目に傲慢はないか?表面だけをみて可哀想だと決めつけてないか?
数々の自問が、読中読後の課題だ。

『悪い子はどこへでも行ける』
声にならない叫びを、聞き取ってくれたあの人が教えてくれた言葉が、最後まで祐希を照らすのが嬉しい。

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祐希が育った“のばらのいえ”は行き場のない母子を守るための施設だった。ただし、祐希は出自のせいなのか、守る価値がないのか、その保護の対象には含まれない。他者から気にかけてもらうことなく、ひたすら自分以外の人の世話をし続ける、流されるような日々。
そんな中、同じように親から見捨てられのばらのいえに来た紘果と保。意思の疎通が難しい兄の保。いつも出来ない事を指摘され、無能な人形のような扱いを受け入れる妹の紘果。
手段も力もないけど姉妹のように育った紘果を守りたい祐希。ある教師との出会いにより、のばらのいえから脱出し、2人で自らの人生を手に入れ直すための賭けにでる…。

執拗に『ありがとう』と『ごめんなさい』を強要する場所がまともなわけないけど、想定以上に醜悪で、何度も息が浅くなるのを感じました。
誰にも愛されなかった祐希を、紘果も保も実はとてもとても深く慈しんでいたのが判明する後半。過去に囚われモノクロだった世界にも彩りがあったことに気づかせてくれました。
ただ“生きる”だけでも苦しいのに、否定され搾取され、自分の頑張りだけではどうにもならない事で感じる悲しさと空しさ。決して、優しいだけの物語ではないけど、それでも、暗闇のなかの一筋の光を見失わず、自分の足で歩いていく祐希の揺るぎない強さと優しさがきらめいていました。

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行き場のない母子を受け入れる『のばらのいえ』。主人公・祐希がその家で暮らした日々と現在を読んでいく。最低最悪な生活の中でも大切な存在が紘果だった。祐希が紘果を想う気持ち、紘果が祐希を想う気持ちのどちらも2人自身を薔薇の荊で締めつけたかのように傷付けていく。『愛』は尊いというけれど『真っ当な愛』なんて存在するのだろうかと思わずにいられない。歪んだ愛ほど危険でおぞましいものはない。本来保護されるべき子供、希望に満ちた未来、当たり前に注がれる親の愛情、全てを受けれない子供が世の中にはいるんだと思うと胸が痛む。

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母子のシェルターを舞台にした物語。

2人の少女の施設での暮らしがあまりに不幸でしんどい話だった。
偽善と自己満足で、力ある大人が弱い子供を支配するのは心が痛い。

ラストに希望が見えたのが救いでした。

自分の発言がエゴや感謝の押し付けになっていないか気をつけたい。

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行き場のない母子を救いたいと、資産家の志道と実奈子夫婦が開いた「のばらのいえ」で育った祐希と紘果。グリム童話の白ゆきと紅ばらに例えられるほど、いつも行動を共にしていたが、祐希は高校の頃から、のばらのいえでの自由のない束縛された毎日に疑問を持つようになり、卒業と同時に逃げ出す。それから10年後、住まいのアパートが火事になった祐希を志道が迎えにくる。再びのばらのいえに戻ってきた祐希は、すべてが様変わりしていることに驚く。祐希を嫌っているかのような態度をとっていた紘果の内心は真逆のものだった。修羅場をくぐり抜け、ようやく2人は「のばらのいえ」から、志道から解放される。結局志道の善意は自分の欲望のための手段となり、子どもたちの心に大きな傷を残すことになった。見返りを求めない善意を成立させることの難しさを思い、祐希と紘果の未来が明るいものとなることを願って読了した。

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寺地先生の作品にはいつもハッとするようなことばがあり考えさせられるが、この作品は特に深く心に刺さった。
自分の意見を持ち人生を歩むことの難しさ。
こどもが未来を信じて生きられるようわたしは今なにが出来るだろうか。
お互いの幸せを願い合ったふたりのこれからの幸せをただ願ってしまう。

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美しいものと醜いものを併せ持った作品です。下手したらごちゃごちゃになりそうなのに、寺地さんによってキチンと二層ゼリーのように仕上がっています。あ、醜いものの方が多いのですが。

 行き場のない母子を守る「のばらのいえ」で育った同い年の祐希と絋果。二人のお気に入りの絵本はグリム童話『しらゆきベにばら』でした。彼女たちを預かった実奈子と志道は彼女たちの心を自由を奪って支配していきます‥

 何もかも値上がっていくので安い買い物ができれば嬉しいけれど、いつも無料で与えられたならばそれは違う、と思ってしまいます。では対価に、と勝手に決められ搾取されるのも違う。
 この本を読んでいくうえでのキーワードになる言葉が久しぶりに志道と会った祐希の心の声として書かれています。

お前たちと自分は育ちが違うのだ
自分は施す側でお前たちは施される側

 良い人とは、悪い人とは。人には両面あります、私にも。矛盾、不条理‥でもしてはいけないこともあります。人を物として扱うのは大切に扱ったとしてもしてはいけないこと。綺麗事と言われても、助けを求められた時には助けられる人であるように。読んでいて辛かったけれど良い本に出会いました。
最後に、私の大好きなシーンは「足元の虹」です。きっと今後の人生で何回も思い出します。

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『のばらのいえ』は行き場のない親子のための家。
そこに祐希は住んでいた。
お手伝いのように。
不幸を絵に描いたような話に、最初は正直読んでいて気分が悪かった。
でもみんな誰かを想っていてみんな誰かの為に行動している。
それが正解だったかどうかわからないけれど。
2人がこの先幸せになってくれたらいいなと思う。

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可愛らしいタイトル、美しい表紙。グリム童話「白ゆきと紅ばら」から連想される童話的モチーフ。意地悪な小人がかけた王子さまの魔法は解けるのか?
冒頭からなぞだらけの「のばらのいえ」。
読み進むにつれて露になる「まとも」な家に育っていない子どもたちを搾取する異常な大人。なにもわからない子と思っていた彼女が大切なものを守るために秘めていた真実とは?いい子でなんかいなくてもいい。私たちはどこへだって行ける。だって生きているんだから。

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怖い。人を支配しようと思えば、どこまでも出来る。特に大人と子どもという関係性ならば。両親のいない貴方を育ててあげてるという強迫でもって、施設の為に働かされている主人公。経営者(?)夫婦がどちらも怖くて気持ち悪い。ただ、寺地さんなので、どんどん読める。重い話だけど、読後感は悪くない。「育ちが良い、悪い」をあまり使った記憶はないけど、絶対に使わないようにしようと思った。

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人間の持つ欲について、考えながら読み進む作品だ。

自己満足したい、またそこから承認欲求を満たしたい欲を満足させるために始めた「のばらのいえ」。始めた2人の気持ちのうわべは純粋な気持ちも少しあったかもしれない。いやしかし、それも寺地氏はその底の欲までえぐりだしている。

そこで育った子どもたち。大人たちの良いようにコントロールされながら成長していく。まるで子どもたちには感情や選択権などないかのような大人たちの発言や振る舞いには嫌悪感しかない。

物語後半は、それまでの違和感がその理由などが読む側にピタッとわかるように書き込まれていて、主人公たちの行動がどの方向に進むのか、そしてその行動がどのような気持ちから湧き出てきているのか、想像しながら読み進む。そこで更に重層的に人の持つ欲のさまざまな面を考えさせられるのだ。

だがしかし、読後は清涼な風が吹く。

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読み終わってしばらく経ちますが、なかなかレビューを書けずにいました。
考えさせられることが多すぎて。

大人として切に思うのは
こどもは宝であり希望であり、未来は自分で選びとれるものだと。
それを歪んだ愛をもつ大人が妨げることは決して許されないはず。
そう深く思わせてくれた作品でした。

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行き場のない母子を一時的に保護するはずの施設「のばらのいえ」。
自分らしく生きることを許されない状況で日々をこなして生きていく祐希と鉱果。
高校卒業後ひとりは逃げひとりは"いえ"に残った。
子供は親や生まれてくる環境を選べない。そこから抜け出すにも勇気がいる。
物語前半は読んでいて苦しくなった。
逃げた祐希が再び"いえ"に戻った時から変化が訪れ真相が明らかになっていく。
今まで読んでいた寺地さんとは違い苦しい読書だった。
でもただ苦しいだけじゃない。
彼女たちの未来が明るいものであることを願いたい。

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行き場のない母子のエデン「のばらのいえ」で強い結びつきを感じ育った祐希と紘果。幼稚な承認欲求を棄てられない最低夫婦の元から、自立する道と寄生する道にわかれた二人の少女の絶望と希望を描いた物語。
児童を使い「良い庇護者」だと顕示し満たされる歪んだ欲、児童を餌に金を稼ぐ腐った欲、その欲を満たすための商品である児童の世話をも押し付ける「ヤングケアラー」問題。ひたすら搾取する社会の闇と、道を逸れていく大人の苦悩も描かれていて、ほんの少しだけ最低夫婦の気持ちも理解出来て、両面から考えられる構成がとても良かった。何か欲しくてやっているわけじゃない慈善活動でも、お礼の一つももらえないと黒いものがわいてくる。悪いヤツが私利私欲のために悪い事をした、という単純な話とは違う問題がたくさん詰まっているヘビーさに抉られた。

「できないことばかり数えないで」という言葉が凄く印象的で、こういう風に人は蝕まれていくんだな、と改めて言葉が持つ力を見せられた。

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行き場のない母子を守る「のばらのいえ」で暮らし、束縛され未来のない現実から高校卒業と同時に逃げ出した祐希とそこに留まった紘果の物語。帯に『人生の不条理を問い続ける著者の最新作』とあったが、確かに色々と考えさせられる作品が多い寺地さん。今作はそれが最大級で、現在社会に蔓延る色んな問題がごった煮のようになっていて、読んでいて何度も息がつまりそうになった。お互いを思いやる2人だったから、なんとか諦めずに未来に光を感じられたけれど、ひとりぼっちでも同じ様に出来るだろうか?他人事と見過ごせない問題が多過ぎる…

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読んでいる間じゅうなんだか落ち着かないというか不安な気分でした。
このお話に出てくる志道と実奈子がすごく嫌で。特に志道がすごく嫌で。
行き場のない子供達を預かったり、シングルマザーの受け入れとかやってることは一見いいことなのに、
志道と実奈子は偉そうというか、感謝しなさいという感じで、でも子供達の世話をしているのは3歳から実奈子に育てられた祐希。子供を搾取すりのばらの家から祐希を逃がしてくれた春日先生の言葉がすごく沁みた。

後から保と紘果兄妹の思惑がすごくジーンと来た。
なんだか複雑な感情が色々詰まった本でした。

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寺地はるなさんの小説はたくさん読んできましたが、特別思い入れあるのが『ガラスの海を渡る舟』です。
そこと共通するようなテーマを今作にも感じました。

何もわかっていないとばかにしている対象が、ほんとうは何を見つめているとお思いですか?

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途中誰の作品を読んでいるのかわからなくなるほどいつもの寺地作品とは毛色が違う。行き場のない母子のシェルターを作る志道と実奈子。祐希は奴隷のようにこき使われ希望のない中でも懸命に生きるが、この家からの脱出を試みる。10年後、残してきた紘果を救い出すために戻り、新たな事実を知る。子供への様々な虐待。幼少時の心の傷が人生を大きく変えてしまう。歪んだ愛情、偽善の愛情、どれも子供たちには必要ない。子供たちを育む環境がいかに大切かを突きつけられる物語だった。

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家族を暖かいタオルだと思うか触れられたら痛い茨だと思うかは人によって違うし、親は自分で選べないからしんどい。子どもの頃は歳をとった分だけ大人になっていくって信じていたけど、自分もいつまでも子どもっぽさが抜けきれないし年上だからって自分よりも大人げないなって思ったりするから一体大人になるってどんなことなんだろうって思う。

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寺地はるなさんの作品、出る度に楽しみに読んでいます。行き場を無くした母子のために作られた‘’ばらの家‘’。でも読んでいくほどその内情は(汗)歪んだ愛情が目に見えてきてとても気持ち悪くなりました。明るい行く末が思い描ける結末で良かった。

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「のばらのいえ」と呼ばれる、助けを求める母子が身を寄せることのできる施設は、おそらく無関心な近隣住民ばかりの中で、少しずつ破綻していったのだろう。

両親、祖父母を失った祐希は、まだ若かった親戚の実奈子とその夫の志道の元に引き取られる。
祐希を引き取ってから、二人は母子シェルターのような施設を運営し始めた。
ネグレクトされた紘果と保という兄妹が引き取られ、祐希の人生も大きく動き出す。

理想とは裏腹に闇のある実奈子と志道の関係、そして「のばらのいえ」の実態。
聡い祐希は早くから自分への差別的扱いと、その不穏さに気づき、高校卒業直前に信頼する教師の助けをかりて「のばらのいえ」を逃げ出す。
紘果も共に逃げる約束をしたが、土壇場で志道の元から離れられない、という。しかし、それは必死に祐希を守ろうとする紘果の精一杯の行動だったのだ。

二人の少女の心の絆と、大人の世界から見捨てられたような境遇が読む者の胸に迫る。

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