茜唄 上下

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刊行日 2023/03/15 | 掲載終了日 2023/04/13

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内容紹介

これは、生命の唄。

これは、家族の唄。

これは、愛の唄。

直木賞作家・今村翔吾が描く、熱き血潮の流れる真「平家物語」!

歴史とは、勝者が紡ぐもの――

では、何故『平家物語』は「敗者」の名が冠されているのか? 『平家物語』が如何にして生まれ、何を託されたか。平清盛最愛の子・知盛の生涯を通じて、その謎を感動的に描き切る。平家全盛から滅亡まで、その最前線で戦い続けた知将が望んだ未来とは。平清盛、木曽義仲、源頼朝、源義経……。時代を創った綺羅星の如き者たち、良きも悪しきもそのままに――そのすべて。


これは、生命の唄。

これは、家族の唄。

これは、愛の唄。

直木賞作家・今村翔吾が描く、熱き血潮の流れる真「平家物語」!

歴史とは、勝者が紡ぐもの――

では、何故『平家物語』は「敗者」の名が冠されているのか? 『平家物語』が如何にして生まれ、何を託されたか。平清盛最愛の子・知盛の生涯を通じて、その謎を感動的に描き切る。平家全盛から滅亡まで、その最前線で戦い続けた知将が望んだ未来とは。平清盛...


出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784758414395
本体価格 ¥3,600 (JPY)
ページ数 709

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NetGalley会員レビュー

とにかく面白かったです。平家滅亡の時代を平家物語と絡め,源氏側から描くテレビの鎌倉殿に呼応する形で平家側から描くというアイデアが秀逸。連載中に作者の直木賞受賞も決まり、本作が連載された西日本の新聞読者は平家贔屓も多いかと思うので本作で平家の奮闘を読んで溜飲が下がったのではないでしょうか。
 個人的には,鎌倉殿で義経を演じた菅田将暉の演技が(その実力通り)とても下手糞で気に入らなかったのですが、本作の義経のイメージと重なっていて納得できました。
 最後の方まで平家物語の語り部が分からず、種明かしを読んでビックリしました。壇ノ浦合戦の場面などは文章のリズムもあたかも平家物語の語りのようにリズム感があり、作者の力量を感じます。2冊の分厚さですが、あっという間に読み切ってしまいました。
 平家というとお歯黒、公家というイメージが強く、武士という感じかせず,源氏にボコボコにされたというイメージしかないので本作で平知盛という知名度の低い主人公が持っていた戦国時代の先駆けというべき戦略や戦いの場面を読んで平家に対する印象が変わった気がします。
 平家物語の静謐なシーンと知盛の物語の活気とが対照的なのも変化があってよいところです。合戦シーンは作者の得意とするところでイメージ豊かかですが、地図と系図があると話を負いやすくなるのだろうと思いました。

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昨年、アニメ『平家物語』と大河ドラマにはまったので、今村先生の描く『平家物語』をとても楽しみにしていました。
先日大津市で行われた今村先生の講演会で、先生がよく行くと言っていた石山寺が冒頭に出てきて、もうそれだけで興奮しました。
あの景色を平知盛は見たのかなと思い描きながら読んでいると、登場人物たちの声が聞こえてきて躍動感を感じました。

知将・平知盛といえば水島の戦いをぼんやりイメージするくらいでしたが、冷静でいて熱いその人物像がどんどん肉付けされていくようで読んでいてとても楽しかったです。
知盛だけでなく歴史においては敗者となる人物たちに光が当てられているところも好きです。

そして『平家物語』がいかにして編まれ受け継がれてきたのか。
その謎が明かされたときはそう来るのかと驚きでしたが、全て読み終えると こんな歴史があっていい!きっとそうに違いない!そんな思いになりました。

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歴史は勝者が作る。
平家にあらずんば人にあらず。
日本史の教科書に出てくる平家は、奢れるものとして波間に散っていった。
本当に平家一族は、おごりのあまり滅んでいったのか。
見るものが違えば、見えてくる景色も変わる。
もう一度歴史を学んでみたくなった。

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今村翔吾版平家物語にして平家物語誕生秘話、ほとんどのキャストがいまだに「鎌倉殿の十三人」のそれで動いてしまうのはいかんともしがたいが、義経のキャラクターがTVと同じなことに、頼朝は微妙に違うことに感心してしまう(頼朝さんがどんな人だったか得心できない、この本のごとく目立ちがり一辺倒とも思えないし)。とはいえ、われらが平知盛、教経の活躍をたっぷり堪能させて貰いました(と、感情移入させられる見事な描き方)。これは今村翔吾さんらしさに溢れた良質なエンターテイメントでした。

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歴史は不変だが、視点が変われば捉え方も変わる。歴史、時代小説の妙味はそこにあると思うが、この作品もまさにそう。
終盤は驚愕の展開だけれど、さもありなんと思わせる筆力で思わず納得。
『平家物語』は平家一族の栄枯盛衰の物語。
この物語は、家族を、人を、平和を愛した一族の物語。
これはまさに今村版新・平家物語。

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今村省吾版ドラマチックな平家物語。これは家族の唄、というキャッチフレーズがぴったりだった。出来たばかりの平家物語を伝えながら、過去の記憶を平智盛を中心に回想してゆく。源氏の方々は鎌倉殿のキャストで思い浮かべていたけど、平家方はアニメでごちゃまぜのイメージ。おごれるものはひさしからず。平家物語がどのように表現されているかは、実はよく知らないのだけど、読むほどに源氏とは対象的な平家の人々のまとまりが魅力的に見えてきた。こういう身内贔屓な雰囲気が、平家にあらずんば人にあらず、という意識になったのかもしれないけど。追い詰められて行く平氏だけど、皆が信頼しあってるのがわかる。平氏を未来へ繋ぐために、義経を救う道を選ぶ智盛。一見無茶な戦略に迷うことなくついていく平氏の面々。反面、バラバラになっていく源氏。どの物語で見ても、義経はお兄ちゃん大好き!なのにねぇ。切ない。そして、平家物語を編み、伝えたのは。今村さんの描く女性はいつも強くてうつくしいな。頼朝は今まで見た中で一番の小者だった。最高に面白かったです。

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非常に良いモノを読ませて頂きました。深く思案し、熱く猛り、未来へ紡ぐ物語が心に響きます。間違いなく名作です。
権力掌握後の平家といえば、傑物・平清盛に寄りかかり享楽を貪った結果、壇ノ浦に散っていく歴史の教科書の脇役程度の認知でした。しかし本作では当然そのようなことはなく、誰も彼もが一族のため、家族のため、そして己の願いのために、懸命に生きて、散っていきました。死に際の美学と言いますか、顔も知らない遥か昔の武士たちの散り様に何度も心を掻き乱されます。

本作の大筋は、平家の知将・知盛が闘い抜いた2つの戦いを描いたものとなっています。「塞王の楯」を読んだときにも感じましたが、やはり今村先生の小説はカッコいい。何がカッコいいのか?塞王を読み終えたときは上手く言語化できませんでした。しかし、本作にて自分なりの答えを見つけることができたと思います。“登場人物のセリフや仕草に想いをのせるのが上手い”ここに私はカッコ良さを感じている。キャラクター造形の底の底、その人の下地となる願いや想いを読者に伝える。何気ない一言や仕草だけで魅せる先生の技術力の高さを感じます。もちろん、戦闘描写や季節の移り変わりの描写なども非常に素敵でカッコいいのですが、この小説で一番の見所はと聞かれたら「登場人物の一挙一動から滲み出る強烈な“生命”」と答えます。カッコつけて小難しい言い回しをしましたが端的に言うと、先生の描く人々が私は大好きです。

長々と上記しましたが、キャラクターに魅力ある作品ですので、時代小説というジャンルの垣根を飛び越えてキャラクター小説であるライトノベルやライト文芸を好む方々にも是非とも薦めたい小説でした。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。時代は刻々と変わっていきますが、人を突き動かす原動力と、人の心を震わす音色は今も昔も変わらないのかもしれません。そうであることを願っています。

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昨年の大河ドラマから歴史が好きになり、歴史小説を読み始めていました。
今村さんの作品は読みやすく、歴史初心者もハマると友人から聞いていたので新しい今村さん作品読める事が楽しみでした。
上下の作品でしたが、土日で一気読み。
何が面白いって昨年の大河は源氏に焦点をあてた作品でしたので、源氏関係についての関心が強かったのですが、平家側に焦点をあてた作品を読むのが初めての私は平家の動きに興味津々でした。知っている名前も出てきたので脳内での人物イメージはドラマのキャストさんで動いていました。
平家側の話も躍動感あって良かったです。
今年の私は平家側を描かれた作品を読むことを今作を読み終わってから決めました。

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こんなにも歴史上の人物を身近に感じ、感情移入したのは初めてです。
歴史に疎くて、時代小説もほとんど読まない私ですが、この作品はめちゃくちゃおもしろかったです。そして下巻では自分でもびっくりするくらい泣きました。
最初は名前を知らない登場人物もたくさんいましたが、気が付けばみんな大好きになっていました。知盛はもちろん、特に教経
、清盛、知章。本当のところは誰にもわからないかもしれませんが、こんな人だったかもしれないんだ!なんて人間くさくて素敵なんだ!と、心を掴まれる人物ばかり。なのでどうしても下巻はつらくてつらくて、いろんな場面で涙が込み上げてきました。至る場面で愛が溢れていて、今までの私はなんとなく源氏派でしたが、一気に平氏派になってしまいました。
そして、源義経。すごく魅力的に描かれていて、もちろん大好きになってしまいました。この作品を読み終えて、もっともっとこの時代の事が知りたくなりました。
今までの意識がガラリと変わるような、素敵な作品でした!
ずっと心に残り続けると思います。
ありがとうございました!

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読後、深いため息が出た。最終章は息を詰めて読んでいたのだと気がついた。壮大なファミリーヒストリーであり珠玉のラブストーリーである。
希子のもとを訪れた頼朝に、千年後の人々に向けた物語が「口から口へ、胸から胸へ」と伝わるための仕掛けを明かす。やがて日本中に時を越えて広まるだろう。夫、知盛との約束を守り、物語を伝えるために生き残った希子の強さが切なく胸を打つ。

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自分の中で源平合戦の時代はあまり馴染みがなかったので、読み始めの内は少々作品に没頭する事ができませんでした。
しかし読み進めている内に主人公である平知盛のキャラクターがしっくりくるようになると、ライバル源義経の台頭と戦いはまさに血沸き肉踊る場面の連続。
前半の木曾義仲が物足りなかった分、戦特化の変わった性格も含めて知盛を苦しめ、読む側は手に汗握りまくりでした。
今村翔吾版の平家物語では平知盛が亡霊となって義経を追い詰めるような恨みは抱かないであろう爽やかさと滅びの美学を感じました。

書籍版が発売されたらじっくり読み直す予定です。

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祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者も遂にはほろびぬ、偏ひとへに風の前の塵におなじ。

この冒頭はおそらくほとんどの人が、諳んじたことがあるのではないだろうか?
それほどに有名な一節で、読むと自然に”あはれ”な感情が沸き起こってくる。
社会の授業でも源氏と平氏、”源平合戦”のことは一通り学んだ。
だがそれは、年表の中の1つの出来事としてでしか、私は理解出来ていなかった。
「平氏が驕った故に滅びた。時代は常に移ろいゆくのだ」と、『平家物語』についてはそれぐらいの感想しか持っていなかった。
いや、平家に対しては寧ろ嫌悪すら感じていたかもしれない。それはおそらくドラマや漫画などの影響が大きい。
「平家にあらずんば人にあらず」という言葉も有名だが、私は勝手に、平家は人の皮を被った欲の塊、ぐらいの印象を持っていた。
何も自分から知ることもせず、ただ流れてきた圧倒的多数のイメージに、私の頭は凝り固まってしまっていた。

そんな”平家”に対して偏見の塊だった私は、『茜唄』を読み始めてからすぐに頭を殴られたような心地がした。
自分が偏見の塊であったことに、ここでようやく気付いたのだ。
平家はもちろん人間だ。時代を築き上げるという偉業を為した、その時代を必死に生き抜いてきた人達なのだ。
それはどんな身分や立場の人達だってそうだ。1人の武士だって、農民だって、商人だって、生まれたばかりの赤ん坊だってそう。
それなのに何故、”平家”に対して私は嫌悪を抱いていたのだ?
歴史は勝者が紡ぐものだが、『平家物語』は滅びゆく敗者の物語だ。
それなのに何故、それが千年後の今に至るまで残り、幅広く伝えられてきたのか。
それらの事を、私は今まで考えたことすらなかった。

『茜唄』はそれら思考のきっかけを与えてくれて、また最後にはその全てに対して答えを示してくれた。
そして私の中での『平家物語』を塗り替え、この物語に生きる人々を綺羅星の如く美しく輝かせ、琵琶の響きをより”あはれ”なものへと昇華してくれた。

贔屓目もあるのかもしれないが、今村翔吾という作家は圧倒的な知識量を持ち、その欠片を拾い集めて再構築させ、今までにない物語を生み出す天才なのだ。
今村翔吾という人の作品は須らくそうであるが、今回の『茜唄』はそれをより強く感じた。
『茜唄』は『新訳平家物語』と言っても過言ではない。
それは何故か。読んでみればすぐにわかる。
誰がこんな平清盛や木曽義仲を、源頼朝や源義経を生み出せるか?
作者未詳にも関わらず、誰がこれほどまでに美しい語り手と琵琶の音色を、読者に信じ込ませることができるのか?
この今村版平家物語が、真実であったと信じたい程だ。いや、そうであって欲しいと願ってやまない。


千年経った今もまだ、争いは無くなっていない。戦いはこの世界のどこかで、常に起こっている。
だが月の満ち欠けのように、少し見方を変えるだけで、物事はまた変わって見えてくるのではないだろうか?
敵だと思っていた相手と、共に並んで歩むことができるのではないだろうか?

歴史は繰り返すというが、故に歴史を学ぶことで、同じ過ちを防ぐことが出来る。新たな道を模索していくことができる。
この『茜唄』は『平家物語』のイメージを覆し、未来への希望を唄っている人間賛歌だ。

その根底にあるのは何か?紛れもなく、”愛”である。
子を愛し、兄弟を愛し、家族を愛し、生き抜いてきた人達。
文中から言葉を借りると、その生き様を描き切ったこの『茜唄』は、”余計な虚飾などいらない。情けなくともよい。無謀でもよい。哀しくとも美しい人々の物語”である。

『茜唄』の物語が終わった後、再び『平家物語』の冒頭を読んでみて欲しい。
読む前に感じた”あはれ”な感情は、より渦をまくように心を捉えて離さないはずだ。
そして『茜唄』の中に飛び込んでしまった今、なかなかその世界から帰ってくることができない。同じ結末だとわかっていたとしても、また会いに行きたくて堪らなくなるのだ。
それほど魅力的で、泥臭くも人間らしい登場人物達が、ここに生きている。

千年後を生きる私も、彼ら彼女らのように生き抜くことはできるだろうか?
出来る事なら醜く足掻きつつも、”何か”を残すことができたらいい。
せめて今の世を共に喜び、共に泣き、共に怒り、共に生きる。
そんな風に愛する誰かと、唄いながら生きていきたい。

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時代小説はよく読むのですが、江戸時代が多いですし、歴史小説、それも、源氏と平家の時代はなかなか手が出ません。
今村さんの超大作は「平家物語」を語る体をとっていて読みやすかったです。
朝廷という仕組みの劣化、中央から離れた荘園では横領がはびこり、それが武士の勃興につながり…日本史で勉強したとおりの展開ですが、人の姿や思いが滲み出た、生きて存在する人々の体温を感じます。
裏切り、寝返り、日和見。それぞれ事情があってのこと。全てを悪と捉えるのではなく、ひとつの生き方として描かれているのもよかった。

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平家物語とは千年後を生きる人へ時代の勝者が自らの功績を書として編纂したもの。
そこでは善きことは誇張され、悪しきことは除かれる。そうして伝えられたものが歴史的となる。

滅ぶことへの平家の拒絶が平家物語という長大な物語を書かせたし、この物語もまたそうなのかもしれない。

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平家物語という、今でもその冒頭の名文は、すらすらと口をついて出てくる人も多い、有名な物語を描いた小説である。確かに勝者側からの歴史書は多いけれど、敗者の平家の物語を、琵琶の音色にのせて語る事の真の意味とは....。ということを全編通して考えさせられた。
平清盛の最愛の息子、知盛を主人公としながらも、この小説の現在は平家が滅び、義経も亡くなった後になる。西仏という僧が平家の生き残りの誰かから、琵琶にのせて語られる物語を伝授されている。その生き残りは一人称で常に語られ、それが一体誰なのか読み手にもわからないように巧妙に描かれている。あの惨劇を生き延び、その後琵琶を習って語っているのは誰なのだろうという、謎解きの要素もあり面白い。
日本史に出てくるよく知った人たちが、この小説では、勝者も敗者も生き生きと、そしてあっと驚くような策略を練り、大胆に行動していく面白さ。歴史上の結末は、小説でも私達のよく知っている通りなのだが、そこに行きつくまでの物語の展開が斬新で息もつかせず、さわやかな読後感だった。

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大河ドラマとアニメ平家物語を見た後、新聞連載でこの作品を知った時には既に連載終了間近になっていました。ネットギャリーで読めると知り歓喜し少しずつ読み進めましたが、読み終えたいま、胸の中に漂う風は複雑さと切なさを含んでいるにも関わらず、温かく優しい色味を帯びています。
平知盛(魅力的すぎます惚れずにはいられない)とその家族たちの物語、愛情深い、とにかく愛情深い描かれ方に、これまで平家に抱いていた印象が(アニメを見てかなり変わっていたにも関わらず)また少し変わりました。いえ、より身近に感じ深まったと言うべきでしょうか。特に、序盤のみの出番とはいえ、平清盛すら。
だからこそ、知盛の子である知章の最期には涙が溢れ、終盤の知盛の妻・希子の場面でもまた…もう涙は止まらず流れるままでした。
私たちと同じようにただ家族を愛した人たちだったんだ。これは真に家族の物語なんだ。だから語り継がれたのか、1000年後にまで、そしてこれからもきっと。

実は屋島の近くで暮らしています。子にも語れるように、読もうと思いました。平家物語を。

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穏やかな時間が流れているときは文章も柔らかく、合戦や政治の駆け引きの際は緊張し思わず居住まいを正してしまうような力強い文章で引き込まれました。
「平家物語」は何度も読んだ作品なので何が起こったかは知っているからこそ、平家の終わりに向かう、特に下巻に入ってからは息苦しくなり、時には涙ぐんでしまうほど没入してしまいました。
今村先生の作品は他にも拝読していますが、特にお気に入りの作品になりました。

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素晴らしいに一言に尽きる。平家物語やその時代に疎い自分でも楽しめた。
正直、似たような名前の連続で最初はどうなることかと不安になったが、いつの間にかしっかり個々を思い浮かべながら読めていて、読ませる力のある作家だと改めて感じた。初の上下巻作品とのことだが、全く苦にならず、終わるのが勿体なくて最後の数ページは何回も読み返していたほど、終わり方も良かった。
一族、家族、戦など様々な考え方の違いを登場人物と上手く調和させていて、読んでいて辛くなる場面も少なくない中、それでもページをめくる手が止まることがなかった。
歴史の授業で表面だけしかさらっていなかったため、平家は権力をわがものにして贅沢気ままな生活で庶民に苦しい生活を強いさせていた極悪人というイメージだった。
しかし、今作を読んでいるといつの間にか平家をずっと応援していた。
名前さえ知らなかった知盛、教経が好きでしょうがなくなっていた。どこまでも二人共に歩んでいってほしいのに時代の波に抗えず散っていくその姿が、儚く美しい。
敗者の側が記した平家物語が遺されて本当に良かったと思うし、このような作品に巡り合えたことに感謝したい。
正直、単行本で上下巻となるとかなりの出費だし、ネットギャラリイで読んで良ければ文庫で買おうと思っていたが、この出来に感服し、結局発売日に買うという、自分としては暴挙に出てしまった。担当編集者の方がおっしゃっていた面陳の依頼を見てますます欲しくなったので。でも後悔はしない。これは著者への課金である。更に知らない世界へ連れ出していってほしいという願望と、それを叶えてくれるはずという確信があるからこそ、応援しがいのある作家さんと感じる。
いつも素晴らしい作品をありがとうございます。これからも期待しています。

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平清盛最愛の子・知盛視点で紡がれる、戦がもたらす景色が導く未来を示した、強くて脆い『平家物語』今村版。

平家滅亡後の『平家物語』誕生秘話という体の、ミステリアスな語りにすぐに心を持っていかれた。優しい調べで溢れる慈愛に包まれた日常は、傍若無人な平家の悪役イメージを一変させ、「人は皆同じ」という当たり前な事を再認識させてくれた。ご時世も相俟って、戦の中での不条理や葛藤がより痛切に響いて、ページを繰る手が震えた。穏やかで策士な知盛と武骨な教経、一見対照的な二人に通じる実直さが結ぶ深い絆に、平家を応援せずにはいられなくなりました。平家側から描かれた物語だけど、格好良いだけじゃない「生」への泥臭さなど、飾り気のなさに好感をもてた。

人気武将・源義経との「源平合戦」は、入り乱れてわかり難くなる斬り合いもリズミカルで、気象を使った緻密な作戦と、心情描写が加わり一層惹き付けられた。現代から見ると原始的に見えるけど、この時代では抜きん出ていて、ある種のハイブリッド戦争だったんだろうなと偶感した。
歴史は勝者が作る――『平家物語』が遺してくれた想いを受け取れていない今の世界へ、改めて突き付けられた生命の唄。

知章と敦盛のエピソードもあって、平家オタの方は必見です!
他の方も書かれてましたが、地図と系図があると尚わかり易くて良かったかと思います。

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平知盛を主人公にした平家物語。

#鎌倉殿の13人 を昨年観ていたので誰が誰なのかイメージしやすく一気に読了。
平家の印象がガラッと変わる新しい解釈だなと。

物語もドラマティックで感動しました。知盛と教経、とてもかっこいい。

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平清盛利の最愛の子と言われた知盛目線で綴られる、今村流新解釈「平家物語」。折り紙付きの歴史オンチ故、本来なら敬遠したい1冊なのだが、あの『ぼろ鳶』の今村さんというだけで、飛びついてしまった。が、まずは「〇盛」くんが多すぎて誰が誰やら訳がわからず大パニック!一の谷の合戦では、その布陣の様子もよく呑み込めず、ひとしきりネットのお世話になった。木曽義仲と後白河上皇の不仲という史実に辿り着き、作者の目論見に漸くニヤリとできた次第。平氏の系図とか一の谷の簡単な略図とかがあれば、私のような者にももう少しわかりやすかったのでは?と思う。苦言ついでにもう一つ。作中にやたら「はき」って表現が多く(特に上巻)読んでて煩く感じてしまった事も、生意気に書き添えておく。それにしても、前作の真田幸村といい、今作の平家物語といい、今村さんはNHK大河ドラマの勢いを利用するのが上手な事(笑)

「憐れだとしても愚かしくとも、この時代を懸命に生き抜こうとした」こう言われてしまうと、争いの歴史も一方的に片方が悪いと言決めつける訳にはいかない。「平家物語」は生きた記録を語り継ぐための敗者の物語。その言葉が妙にしっくりと自分の気持ちの中に納まる。千年後に生きる人に託す平氏の生きた証でもある平家物語を残したその深い意味…悲しいけれど人類は過去の歴史から争う事の不幸を学ぶことはなかった。その後も長い戦乱の時代が続き、2度の世界大戦が繰り返され、今尚ウクライナでは多くの血が流されている。争いを選んだのも人、平和を願うのも人、何と愚かしい輪廻なのだろう。知盛の編んだ平家物語に託された様々な思いの裏にチラ見えする今村さんの熱い願いがジンと胸を突く。滅びゆく平氏の姿に、最後は涙でグチョグチョになりながらも、清々しさが残る。新たな目線で源平の合戦を眺められるとてもいい作品だった。

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茜唄/今村翔吾 角川春樹事務所

ー 沈みゆく茜の姿に、家族や仲間の想いを継いで唄われる物語 ー

平清盛が全盛を振るった時代から一転、源氏が台頭し都落ちしていく平家
それを支える平知盛と、平宗盛・平敦教ら平家一党の若者たちの物語
一癖二癖ある後白河法皇に、木曽義仲、源頼朝ら源氏が攻め寄せる中
再興のために、一ノ谷、屋島、そして壇ノ浦と戦っていく・・・。

歴史物だけに結末は分かっているが故に、読み進める度に切なくなりました。

平清盛の考える武家の行くべき壮大な絵図を引き継いだ知盛と源義経との邂逅。
そして壇ノ浦の合戦とラストシーンには胸が熱くなりました。
さらに、琵琶法師によって広められていったという説のある平家物語の誕生秘話に感動です。
最後の啖呵を切るところは最高でした。またもや今村翔吾先生の傑作を読んでしまいました。

素敵な物語をありがとうございます。

#フタバ図書 #読了 #NetGalleyJP

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平家物語を今村流にアレンジした話し、史実を踏まえながら、想像もぶち込み、ラストまで一気に・・・。
主人公の平知盛の目を通した平家物語は印象が今までと違い、平家寄り目線で見ると、この政権交代はとても複雑な感情が入り乱れます。
戦闘シーンの描写が秀逸で楽しい。人物の描写も魅力的でした。
壇ノ浦の合戦の前に、知盛と義経が会うというシーンはしびれます。そして、最後の壇ノ浦の合戦の新解釈。そこにはまったく違う形の平家滅亡が見えてきて、平家物語を編んだ本当の意味が頼朝を卑劣な男に見せることで際立っていました。エンタメとしても一流でした。面白かった。
この作品は、平家がどのように生き残るかを模索した物語で、最終的には物語として後の人々の記憶の中に生き残ることを選んだという点が面白かった。

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今村将吾版「平家物語」。平知盛が主人公だ。平知盛って、実はよく知らなかった。平清盛の息子であるが、今村将吾描くところの平知盛は、先を見通し、戦略家でもあり、愛妻家で家族思いで、カッコいいのだ。
そして、「平家物語」が何故生まれたのか、誰が作ったのか、を驚きの発想で語る。歴史書は、勝者が作るが、「平家物語」は、そこに生きた人間たちを千年後の後世まで残すため。知盛と義経のやりとりも、歴史を超えて惹きつける。分かっているはずの歴史を大胆にも今村流に解釈し、エンタテインメントとしても読ませてくれる。感動的でもある。魅力的な「平家物語」だった。

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平知盛の目を通して描かれる平家物語。それは平和を願い、一族をを思い、家族愛を描いた物語だった。
数々の行き違いや疑心暗鬼ですれ違っていた一族が、源氏との戦で平家を守るために一つになってゆく・・・。
その物語に胸が熱くなった。
さらに、己以外信じることが出来ない源頼朝。その対比がとても巧く、開幕当初から鎌倉幕府の脆さ、
危うさが伺えた。そして、ひたすら兄・頼朝を信じる義経の一途な面が切なさを誘う。
今まで、平家の何を見ていたのか?平家の見る目が変わった作品。

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今村翔吾の平家物語!?これまで楽しんできたぼろ鳶やくらまし屋より随分と時代が上り、エンターテイメントとして自分が楽しめるのか自信がないまま読み始めました。…流石、今村先生です。ラストの爽やかな薫風、滂沱の涙と共に私の鼻にも香りました。
この時代の戦国ものを、こんなに楽しめるとは思いませんでした。語り手の正体にもびっくりしました。読ませていただき、ありがとうございました。

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大好きな今村翔吾さんの新作は『平家物語』。戦に次ぐ戦の場面はドキドキが止まらず、知盛の戦略があまりにも見事。息子として、兄弟として、夫、父親としての人柄も素晴らしい。涙溢れる場面もあり感動が湧き出る。長引く戦で失われる命や、疲弊し困窮する民、一門の今後を憂う姿に、これぞ真の武士と言わずにいられない。下巻に入りいよいよ義経の登場!源平ともに一門を守ろうと必死の戦いが繰り広げられる。どちらに軍配が上がるかは既に知っているにも関わらず力が入ってしまう。知盛の、教経の、希子の想いに涙が止まらず、息をするのも忘れて読んだ合戦後には怒涛の一時代を生き抜いた人達への想いで一杯になった。『歴史とは勝者が紡ぐもの』。歴史好きの私は常々同じ様に感じていた。『本当は…』と空想すると眠れなくなる。まさに歴史=浪漫。今村先生の時代小説も大好きだが、歴史小説も素晴らしい。今後の作品も楽しみだ。

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歴史は勝者によって語られ、敗者にこそ真のドラマがあると言うのを感じさせてくれる作品。
平家にもこんなに魅力的な人物が居たんだと言う事を今村先生のこの作品を読まなければ、知り得なかったかもしれない。
もし、平家が勝っていれば、源氏の源義経ではなく、世に平知盛が広まっていた気がする。

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面白かったです!「平家物語」をベースに平家の滅亡までのストーリー。今まであまり詳しく知らなかったけれど、勝者よりもむしろ敗者の方にこそ様々なドラマがあるのかもしれない。平家は武士道よりも公家の生活に傾いていて、驕っていたから滅びたのだと思っていたけれど、最期まで戦う姿に胸が熱くなりました。大河ドラマを観た後だったため更に楽しめました。こちらも是非映像化して欲しいです。

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なんてすごい小説なんだろう。
平清盛最愛の子と言われた知盛が主人公。自分の知識不足の中、上下巻で700ページを超える小説を読めるのか不安だったけど心配無用だった。
平家の最期はわかっているはずなのに思わず手に汗握る。そして泣けて泣けて泣ける。平家物語ってこんなにも感動する?
実際の平家物語は作者不詳だけど今村版では語り部と誕生秘話も明らかになる。
もしかして私の今年のベストワンがもう出たかもしれない…。
『千年後を生きる人に』書かれた敗者平家の物語。平家の印象が大きく変わったのは間違いない。

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承認ありがとうございます。読むのが辛そう、読んで悲しくなりそうなので、なかなか読む勇気が出ず、実は刊行前から開いたり閉じたりを繰り返してしまいました。

いざ読みはじめてみると、やはり悲しい予感に足がすくみ、またところどころ、どの盛さんが何をした人なのかわからなくなる人名の罠に足を取られましたが、引き込まれていきました。

作中に
「この物語は平家だけのものにあらず」
とある通り、敵、味方、どちらの登場人物たちも魅力的に描かれていたと思います。

苦しみ、悲しみ、悦びなどの心情や人柄についても詳細に、また戦場の場面は躍動感や臨場感をもって描写され、物語のテンポも良く文章もとても読みやすかったです。

どうしても視点が多く取られている側に感情移入してしまい、読み終えてからもしばらく悲しい余韻の中で呆然としてしまいました。

長く愛され語り継がれながらも作者不詳の平家物語、その成立の裏側は本当にこうであったのではないか、このようなことがあったのではないかと思わせるような、ドラマチックな場面も魅力的な作品だと思います。

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今村版「平家物語」。今までいかに勝者である源氏側から見ていたかに気付かされた。平清盛が愛した息子、知盛の生涯を描く。ここまで魅力的な人物とは露知らず。視点を変えると新たな物語が幾つも生まれることが歴史小説の面白さと痛感する。ただ、どちら側から見ても後白河法皇は嫌な奴。世の泰平を願い闘う武士達のそれぞれの思いが叶わないことを知りつつも、先を読まずにいられない。そして、西仏に「平家物語」を語っているのは誰か。そして義経が登場、一の谷、そして壇ノ浦の闘いへ。知盛と嫡男知章との別れの場面には思わず涙。追い詰められていく平家が家族を思い、結束していく姿は源氏の肉親をも殺める姿と対照的。人物像を丁寧に描いているから知盛が義経を救おうとしたのもあり得ると思わせる。語り手の正体も判明し、頼朝と対峙した希子の強さと愛がこの物語の核となる。これほどまで平家物語が面白いとは。さすが今村作品、ハズレなし。

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歴史は勝者が描くもの。知ってはいたし、気を付けてもいたつもりだけれど、足りていなかったと痛感させられました。…なんてことも浮かんでは来るけれど、とにかくおもしろい。上下巻で結構なボリュームがあるけれど、続きが気になって止まらなくなりました。最初の方昼休みに食事しながらちまちま読んでいたら現実に帰りたくなくなるくらい。
個人的にはこの時代の伝記は義経を最初に読んだのでどうしても判官びいきになりがちで(この後の時代は秀吉から読んだので、秀吉びいきにはならなかったものの家康嫌いにはなった)平家のことなどほぼ考えたこともなかったけれど、本当に知盛が魅力的。1000年後を見すえた目、という意味で語り継ぐことの大事さと、口伝・伝承であることの強さをまざまざと見せつけられました。まぁこの作品は書物であり、時代が時代だったら焚書対象かもしれませんが。
未読だった若木未生さんの『戦をせんとや生まれけむ』をとりあえず読んで、冲方丁さんの『月と日の后』(この作品もNetGalleyで読みました)『はなとゆめ』等と合わせて、館内にテーマ展示を作って生徒に薦めたいなと思います。年号とともに覚えさせられた歴史も、どちらの面から見るかで印象が全く変わること、歴史人物事典に載る人も、当時は息をし、血が流れていて、生まれて生きて死んでいったこと、歴史は人が作ったもの、ということを現在進行形で歴史を学んでいるときに実感して、「いま」に連なるものとして捉えられたら、暗記科目としての苦手意識の払しょくなどにも役立つのでは、と期待します。

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今村翔吾作品なので、
読みやすくて面白いのは当然として、
源平の物語にどのような新解釈を加えるのか、期待していました。

結果は期待以上。
視点人物の平知盛を、人間味あふれる知将として描きつつ、

・だれが平家物語を紡ぎ、だれが託されたのか。その狙いは
・そもそも清盛は、なぜ頼朝を生かしたのか

という謎に大胆なアプローチをしている。
特に後者については、思わずうならされた。

欲を言えば、一の谷のあたりなどは、
地図を付けてほしかったです。
ネットで検索して、照合しながら読みましたが。

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祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。

本書の冒頭。
・・・・ついにこの物語が編み上がった、という場面からはじまる、今村翔吾版平家物語。
各章のはじめに、すべて自分の目で見てきたものを語る者と、その物語を琵琶とともに語り継ぐ役割の僧西仏の対話が導入としておかれ、直後戦場の場面、と移り変わる構成で、長編であるが読者を惹きつける。登場人物が非常に多くまた名前も似ているのは歴史物だから仕方ない。特に細かく覚えていなくても人物描写が巧みなのでそのまま流して読み進めても問題ないかと。。。

平清盛の四男。平知盛。知性あふれ、思慮深く、一門のみなに心をくばる実に魅了的な武将として描かれる。

歴史とは勝者の側から描かれるもの。たしかにそうだ。滅亡が史実としてしれている平家の戦いとその終わりを、平家の側から描くということは、勝者にとっては忌々しいことだっただろう。その観点からの合戦の緊迫感、躍動感、人物の心理描写、人気作家の筆者得意の生き生きとした筆。新聞連載として書き継がれた長い物語、歴史ファンはもちろん、そうでなくても人間ドラマとして楽しめる長編。

見るべき程のものは見つ。

数多の命が散る。
こんなに落ち着いて美しく逝く、あとを託すということがどんなものなのか、平和な世の自分には想像すらできない。。

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今村先生のファンで好きな平家のお話なので、どのように描かれるのかとても楽しみにしていました。さすが今村先生、今作品も読みすすめるうちにどんどん物語に引き込まれました。登場人物も魅力的で面白く読むことができました。とても良い作品を読ませていただいて感謝です。

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1000年後に平家があったこと、いつの日か戦がなくなる世の中になる事を願った知盛が伝えたかった思いを、愛するあの人へ託した。10年以上の時は経ったけれど、知盛の思いを西仏に伝承した。たとえ焼かれようとも死のうとも、「平家物語」として未来へ語り継がれる。物語とともに、子を愛する親の心も知る事ができるだろう。今村翔吾さんの茜唄を読むと、『平家物語』の読み方が変わる。

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最高の平家物語でした。今村翔吾さんは、厚さがある作品でもすぐペロッと読めてしまう。
なんだか、今まで自分が思っていた平家側の人たちのことをまるっと覆してくれて、新たな視点で楽しめて良かったです。
他の平家物語を取り扱っている作品にも興味が出てきました。

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平家物語といえば、耳なし芳一に出てくる一節の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」や弁慶と牛若丸とか源氏と平氏が戦ったことしか知りませんでした。最近見たアニメの「平家物語」と「鎌倉殿の13人」で少し興味がでてきたところでの読むタイミングでした。今村さんの小説は登場物が生き生きと力強く物語に誘ってくれるので時間を忘れます。上巻から下巻へ移っても読むスピードを落とせないまま物語は結末に向かっていく。物語の結末がどうなるかは知っているはずだけど、自分には知識がないから最後のページまではどうなるかまだ判らないと読み進めた。タイトルの「茜唄」や色んな戦いでのお互いの戦略の読みあいやぶつかり合いもグッときたけど、一番印象的だったのは教経が全員を逃がそうと扇を掲げた場面、「平成狸合戦ぽんぽこ」で和尚が化けてたのはこれだったのかと一瞬意識が戻ってしまうくらい感慨深かったです。

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面白かったです。あの物語を敗者側から描いた作品。必死に平家を守ろうとし歩み寄り落としどころを探ろうとする知盛。けれどふるい因習に凝り固まった頭の固い年長者たちは思う様に動いてくれず、徐々にズレが生じて行って、追い込まれて行ってしまう平家。結末を知っているだけに、とても悔しく悲しい思いを抱きながら読み終えました。ずっと語っているのは誰なのだろうと思っていたのですが、ラストでそれが分かった時、知盛の想いに胸が震えました。歴史ものはあまり読みませんが、これは本当に読んで良かったと思わされる作品でした。

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