もぬけの考察

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刊行日 2023/07/27 | 掲載終了日 2023/07/31

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内容紹介

第66回群像新人文学賞受賞!

この部屋の住人は、みんないなくなる?

都市の片隅のマンションの一室、408号室に入れ替わる住人たち。

前の住人あてに届く郵便物と、部屋に残る不穏な痕跡……。

出社できなくなった会社員、夜ごと繁華街で女に声をかける大学生、住人に預けられた文鳥、部屋の壁に絵を描く貧しい画家。

平凡な男女の日常にひそむ不安と恐怖を、軽妙な連作形式で描く注目作です!

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同じ部屋で前の時間が見えないまま孤独と恐怖を積み重ねていく構成で細部まで考えられていた。理不尽さと暴力的な状況がスリリングで、多様な恐怖を描ける人だと思った。――柴崎友香

一連の奇想天外な考察は、インスタレーションと呼ばれる空間芸術の手法とも似ていて、日常性からの逸脱を効果的に演出するにはうってつけだ。――島田雅彦

ある〈部屋〉のみを舞台にすることで、作品の〈空間〉は限定されている。が、前の住人、その前の……と過去を連鎖的に想像可能で、今後の住人という未来も延々の想像が可で、その意味で〈時間〉が限定されない。そこに越境のポテンシャルが満ちている。――古川日出男
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著者/村雲菜月(むらくも・なつき)
1994年、北海道生まれ。金沢美術工芸大学デザイン科視覚デザイン専攻卒業。2023年、「もぬけの考察」で第66回群像新人文学賞を受賞。


第66回群像新人文学賞受賞!

この部屋の住人は、みんないなくなる?

都市の片隅のマンションの一室、408号室に入れ替わる住人たち。

前の住人あてに届く郵便物と、部屋に残る不穏な痕跡……。

出社できなくなった会社員、夜ごと繁華街で女に声をかける大学生、住人に預けられた文鳥、部屋の壁に絵を描く貧しい画家。

平凡な男女の日常にひそむ不安と恐怖を、軽妙な連作形式で描く注目作です!

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著者・担当編集ともに楽しみにお待ちしております。

発売前作品のため、ネタバレや、読書メーターやブクログなどNetGalley以外の外部書評サイトで発売前にレビューを投稿することはお控えください。

ご協力の程、何卒宜しくお願い致します。

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作品の拡材や指定配本をご希望の書店様は
恐れ入りますが<講談社 出版営業局>まで直接お問合せをお願い致します。

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出版情報

ISBN 9784065326855
本体価格 ¥1,400 (JPY)

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NetGalley会員レビュー

第66回群像新人文学賞受賞作
110ページという短めの作品なのだなと油断していた。
連作形式で一編ずつが濃厚なので、このボリュームで大満足な作品だ。

都会の片隅のマンションの「408号室」の住人が入れ替わる。
そしてなぜか前の住人あての郵便物が届く。住人の行動や出会う人が話が進むにつれ不穏さを増す。誰一人思い入れが出来ない住人だけれど、彼らの抱える孤独とやるせなさに共感もする。一編ごとのラストは因果応報だろうと心の底では思うけれど、その気持ち悪さすら感じる不穏さがクセになり次の話にまた没入していた。
視点が不安定になり、あれ?何か読み飛ばしていないか?そうやって何度もページを戻りながら読み進めた。
描写の細かさで脳内に不穏な情景がくっきり浮かんだ。まるで舞台鑑賞したような気持ちになった。
濃厚な不穏さが溢れる読後感をぜひ多くの人に味わってほしい。

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理由はそれぞれだが、この部屋の住人はいなくなってしまう。

郵便ポストにあふれている、前の住人宛ての手紙。
さびれている窓からの眺め。
隣りの407号室の住人は変わらないようだが、それすらも疑い出したくなる不穏な空気。
もっと読みたくなる、ひやりとくる小説。

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順に語られていく住民たちの物語を確かに読んでいるのに、私たちはここで何があったのかをその時々の主人公に伝える術がありません。
読者はその歯がゆさを感じながら、この小説を読み進めることになります。

私が何より面白いと思ったのはシナモン文鳥さんの章です。
鳥の行動心理をそのままに表現していて、とても可愛いと感じました。私の家にもインコがいます。
「こがね」の章を読んでいて想像するままに、うちの子も動いて感情表現をしています。
日ごろから鳥さんを間近で見ている人の理解深度だと感じました。

最後の章「もぬけの考察」は、それまでの章とは全く違ったテイストになっていると思います。
ここでは主人公の名前は明かされません。
そして語り手が書いているのは絵であって、自分はこの文章を書いているのは自分ではないと言うことを、繰り返し明言しています。

確かにこの章だけは改行や段落が極めて少なく、読んでいてもこれまでとは少し違ったテンポを感じさせます。

部屋の様子をそのまま壁に描いているうちに、どうしてか自分までもが部屋に昇華してしまったようです。
他にも数多く、この小説には詳細が見えないまま行方をくらましてしまった住人たちが登場します。

心理描写が色鮮やかで生き生きとしている小説『もぬけの考察』。
我々読者はすべての順を追って読んでいるにもかかわらず、あたかもたった今、もぬけの殻となったマンションの1室を発見したかのようにその有り様を考察するしかできないのです。

この歯がゆさを味わってみてください。

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『初音』
初音の趣味に違和感を感じたが、その後更なる異様な展開に飲み込まれ読み進めた。彼女の歪みが最高潮に達した時に起きたこの事態。それさえ受け入れてしまう初音に鳥肌がたった。そして結末。これは初音の趣味の裏返しなのか?説明さえ拒絶するこの不条理な急展開に言葉が出なかった。
『末吉』
怠惰な生活を続ける末吉の前に現れた女性。逢瀬を重ねる2人。そして彼女がこの結末を選ぶとは。初音が住んでいた、この一室で。この後に何が続くのだろうか、想像することさえ恐ろしかった。
『こがね』
文鳥の雄こがねの世話をすることになった、住人。住人とこがねのやり取りがだんだんヒートアップしていく。この、末吉が住んでいた部屋で。そして、急転直下。何が起こったのか?こがねにも読み手にもわからないまま、幕が閉じる。
『もぬけの考察』
画家の「私」は、栞という女性が住んでいたアパートに入居し、部屋に魅入られる。こんな不良物件なのに。そしてできた「お気に入りの場所」とは、部屋のここなのか?でも、物語は振り出しにもどる、はずが無い。だって部屋の様は既に……

あるアパートの一つの部屋を借りた人達の辿る、不条理な物語の連作。その心理描写に寒気を覚え、タイトル通り必ず「もぬけ」という終末に至る連作。しかしその思い込みさえも、最後の住人の「考察」により混乱の極みに達する。不条理達をさらに囲い込んだ不条理。表紙絵を見て戦慄をおぼえ、入れ子構造さえも超えたこの本に呆然とするしかなかった。

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私はハエトリグモが、どちらかというと好きなので、最初の章の主人公には、可愛そうだけど自業自得かなと思った。しかし読み進めていくと、なんとも落ち着かない気持ちになり、猛暑日のエアコンが心地良いはずなのに背筋が寒くなり、各々の主人公が自業自得とは言えない気持ちになった。ありえないと分かっていても、もしかしたら起こりうることなのかもしれない、というギリギリの恐怖が心の片隅にひっついてしまった。皆さん、心して読んでください。

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この話が不気味に感じられるのは、この部屋が薄気味悪いだけでなく、登場人物たちが奇行に走ったきっかけがさもないことで、誰にでも起こり得ることだということ。
もしそういう心理のもとに生み出された部屋なのであれば、このような部屋が実際に存在することもあり得るのかも…などと、どんどん想像力を掻き立てられる。
短いながらも、ずっしりと中身の濃い、読み応えのある話だった。

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とあるマンションの408号室で繰り返される、とある現象とは・・・。

「初音」
まず、書き出しの1行目から不穏です。当然その行為も不穏で、想像すると眉を顰めざるを得ないというか、そもそも想像したくありません。私を含めアレが苦手な読者は読み進めるのにちょっとした努力と勇気が必要かもしれません。彼女の身に起こる現象も不穏極まりなく、きっかけとなった出来事は理解できなくもありませんが、その後についてはなんとも言い難く、自業自得というか気の毒というか、受け取り方は読者次第ではないでしょうか。409号室に越してきた女性の正体はきっと・・・と想像するととても恐ろしいです。因みにフルネームは初音羽奈子だということが次の章で判明します。

「末吉」
大学生の末吉は街でナンパを繰り返しているが、そこで知り合ったひとりのが部屋に来るようになり、明確に付き合っているという感覚もないままにずるずると関係が進み、彼は辟易しているのに女性の方は執着し、もう来るなという彼の言葉に対し彼女は承諾するも最後に取った行動は・・・という内容ですが、想像通りでもあり想定外でもあり、いなくなる原因としては初音よりはあり得そうな気がしました。因みにフルネームは末吉孝輔だということが次の章で判明します。

「こがね」
この章は、シナモン文鳥の雌・こがねの視点で描かれます。友人から飼っている鳥を1週間ほど預かってほしいと頼まれた住人が、最初は新鮮さと珍しさで楽しかった世話も、すぐに面倒くささと煩わしさで辟易するようになり、最終的には全てを放り出して・・・という内容です。友人が迎えに来るタイミングがもう少し早ければ、と思うと残念で仕方ありません。住人の名前は若葉栞だということが次の章で判明します。

「もぬけの考察」
画家の「私」の視点で描かれるこの章が特に不気味で、この内容によって一気に不穏さを加速させています。何がどうなっているのかわからない、奇妙で恐怖感のあるこの章が最後ではなく、少なくともあとひとりは物語の主人公がいそうなところがなおさら怖いです。マンションの管理会社や営業はどこまで把握しているのか、または何も考えていないのか、どちらにしても怖いことに変わりはありませんが・・・。

初音羽奈子の前の住人・花房千紘はどうなったのか、さらにその前にも同じ現象があったのか、これからもまだ続くのか、気になって仕方ありません。

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連作との事なので、同じ理由や動機で火とが居なくなると思ったら、それぞれ違う理由で居なくなっていた。
しかも、そのそれぞれが本当の恐怖やえ?そんな事?と4者4様で驚きました。
それぞれの恐怖を後堪能あれ。

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様々な住民による物語。おもしろい!!まさかの展開にドキドキしました!誰もが感じる気持ちを文章に書きだす天才なのではないでしょうか。色んな視点から見える情景や、感情にうなずきながら楽しめるそんな作品です。

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1・2編と何やら穏やかじゃない。3編目になるともはや住人に名前はないし、3人称で書かれる話はともすれば部屋目線かとも思われる。部屋に人格があるのか、部屋に取り込まれるのか。取り込まれたら逃げ出せないのか。話からも逃れなくなっている。最終章では存在するって何か、さらにオカルトっぽく不穏で、哲学っぽく思惟的で空気がとても濃くなる。
 正直、第一章では文章がこなれてなく例え方にも違和感があったが、それが気にならなくなる構成とストーリーだった。次作が楽しみです。

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訳アリ物件の賃貸アパートの1つの部屋をめぐる4つの短編が、リレー的につながっていて、とても面白かったです。ホラー的な要素は薄いですが、何となくどこかの部屋でありそうなエピソードが、読んでいるうちにぞわぞわしてきました。

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とあるアパートの四〇八号室。住み変わる住人たちの、奇妙な顛末が謎を繋げる、連作短編集。

110ページとボリュームは少ないものの、連作短編による、それぞれで完結する物語と次に繋がる謎。そして、四〇八号室という一つ舞台がメインとなる、ワンシチュエーション的な設定が魅力的な作品でした。

共感を抱くことも、好きになることも難しい、各話の登場人物たちは、それぞれが、わずかに人道へと背を向けていて、為すことの多くに顰蹙してしまうほど。それなのに、自分にもそんな側面がありそうだと思わせる現実味が、終始厭な空気感を肌にまとわりつかせてきます。

ある意味で因果応報にも見える顛末は、登場人物の一部でも自分に重ねてしまうと、一層気味の悪いものに感じるに違いありません。

ホラーにも、サスペンスにも、ファンタジーにも読める四者四様の物語は、それでも一言で表せばとにかく奇妙です。四〇八号室を観察しているみたいな、読者としての傍観者的立ち位置はもちろん、部屋自体が住人を観察しているような、外部情報が「おそらく」という描かれ方をする無機質さ、生物はもちろん無機物へも優しくなれない者たちが狙って集められたような共通点、そして四〇八号室での出来事が仕方のない現象だと諦めたように対応を手放した管理者たち。それら要素が無意識のうち読み取られていくなかで、謎が謎のまま終わり、もぬけの末路を繰り返す構造に薄寒ささえ覚えます。

想像の余地を多分に残した、明確な答え合わせがない終わりでも、その先がどうなっていくのかが十分に分かってしまう構成は、あらゆる想像を掻き立たせてくれるためボリューム以上の満足感があります。

少し内容に踏み込んでいえば、お話のなかでの四人目のように、大量の郵便物に謎を抱いて熱心に考察する住人が現れたらどうなるのかが気になるところです。

謎だけを残して、真実が住人ごともぬけになってしまう四〇八号室。事故物件にもあたらない、いわくつきなこの部屋を引き当てるのは、静かに消えてなくなりたいときだけでお願いしたいものだなと思いました。

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その部屋について、住人について誰も真実を知り得ない。その一つの事実がものすごく恐ろしく感じる一冊でした。住んでいる人たちの身におこったことを、まるで自分だけがその真実を知っているように錯覚してしまう。現実離れしているはずなのに、どこか身に覚えのある薄寒い感覚。文章のみでこんなに言葉にできない感情を表せるのはすごいの一言に尽きます。

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物語の視点さえあやふや。さっきまでの視点と確実に違う瞬間が不意に訪れる。まるで語り手は部屋そのもののような‥。不穏な空気、不安定で落ち着かない。そしてそれぞれが迎える結末は、果たして本当にそんなことが起きたのか?どういうことなのか?と想像を巡らせるしかない。
ゾッとさせられました

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あまり治安の良くない、景色も悪い408号室。家賃が安いため、この部屋に越してきたであろう人々が、皆、何故かこの部屋を去っていく。そしてある程度の時を経て、また新しい住人が越して来る。同じなのは、ある時から突然部屋から消えた住人宛の郵便が、気づけば郵便受けに溜まっていって、新しい住人は、それをなんとかしようと思うこと。勝手に処分するのは違法なので、管理会社に連絡しても、返答はいい加減なもの。そういう短編が連作で成り立っている小説である。最初の2話位は非常に怖いと思って読み、それ以降は、この主人公もいなくなるんだと思って読み、前の住人について考察する箇所では、読み手は読んで既に知っているのであるが、郵便物によってまた知らなかった一面を見たりと、好奇心はマックスに。そして最終章で、予想外の展開に、開いた口が塞がらない感覚。そもそもこの管理会社は、怪しげな408号室をなんでまた貸し出すんだろう。住人は消えてしまうのに。コロナ禍であろう時も読み取れて、意味があるようで全くないような、密室での理不尽かつ、説明出来ないことがらの連続で成り立つこの小説世界にすっぽりはまってしまった。あぁ、でも私は絶対にこの部屋だけは借りたくない。でもきっと何かに引き寄せられるかのように、契約してしまうのかもしれない。

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街の片隅にあるマンションの一室408号室に入居した人々に起こる不可解な現象。4編からなる連作短編集。
一見有り得ないような話だけれど、万一自分の身に起こったらと思うとゾッとする。住人たちの孤独と恐怖の連鎖がのしかかって来るような何とも例えようのない感じを持ちながらも、最後まで読む手を止めることはできなかった。

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不気味で、怖い、ホラーと純文学を混ぜたような短編集。大満足です。

すべてのお話が同じ部屋で起こる連作短編でした。島田雅彦先生の「一連の奇想天外な考察は、インスタレーションと呼ばれる空間芸術の手法とも似ていて」の言葉に、確かに!と頷きました。

同じ部屋で起こった連作短編とはいえ、各話に繋がりがあるわけではありません。でも、ラストまで読むと、一気に物語が厚みを増しました。なにか重大な伏線が隠されていたというわけでもないのに、とにかく最後の賞が衝撃的です。この物語を描いているのが誰かわからなくなる感覚に頭がくらくらしました。

各話もそれぞれ興味深く、とくに1話目は書き出しから不穏で引き込まれました。
お隣の部屋は、もしかして主人公がクモを閉じ込めた瓶の亜空間なのかもとも想像しています。

また、タイトルもすごくいいなと思いました。お話に合っているし、印象的です。
それほど長くないのですが、とても読み応えがありました。

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次作がとても楽しみな作家さんになりました。
ホラーというわけでもなくサスペンスでもなく、
でもどこか悍ましい雰囲気を漂わせる唯一無二を秘めた作品です。
音が聴こえるほど、なにしてるのかなとか想像を膨らませてその人に耳をすませるようなことも
なんとなく罪悪感があったり、
でも癖があってやめられないようなそんな誰しもが一度は陥る誘惑をとても巧く言語化されています。

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なぜか住人が次々と入れ替わっていく、都会のマンションの一室を舞台にした連作短編集。
住人は様々な事情を抱えながら、ある時に突然姿を消す。その様は現代の都会を象徴している。
郵便受けには前の住人宛の郵便物やチラシがいっぱいに詰まっていて、鍵が壊れてしまうほどになっている。それもまた現代の都会の象徴だ。住人がいなくとも、その住人宛の郵便物は次々と届く。部屋に住人がいようがいまいが、時間と生活は続いていくということだ。
奇妙な味の連作だが、心穏やかに読み進められるのは、もしかするとこの世界ならばこんなことがあっても不思議ではないと感じられるからなのだろうか。

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408号室で起きるサスペンス要素のある奇妙な物語。住人がいなくなる。なのにどこかユーモアもある不思議。
そんな消え方かぁと納得したりしなかったり。でも面白かったし嫌いじゃない。
考えてみれば、引っ越し先が新築でない限りそれまで誰かの生活がその部屋にあった訳で、
おまけにお隣の住人はこちらの希望とは関係ない、要は得体の知れない人物かもしれない。
引越しって一か八かの大ばくちに近いものかもなぁと思った。

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408号室に住む住人が皆いなくなってしまうという舞台固定の物語。
最終話は部屋と同化した元住人の視点で描かれる。
1話目を読んだ時はハエトリグモが…と一体なんの話なんだろう??と思うも読みやすく次々と読み進めていきました。

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とあるマンションの408号室に越して来たら、そして誰もいなくなった。群像新人賞受賞作で著者のデビュー作となる全4話の連作短編集です。男も女も鳥もそれぞれに事情は異なれど最後には無慈悲な運命を迎えていなくなります。この部屋に入る事で消えてしまう運命になってしまうのか、この部屋が不幸な人々を引き寄せるのか、どちらかはさだかではありませんが、派手さはないけど静かで不気味なホラー作品集ですね。著者は不運な人々に肩入れせずに同情や感情を完全に排して淡々と災厄の物語を描く名手だと思いますね。

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群像新人文学賞受賞作とのことで気になって読んでみました。
とあるマンションの408号室。
この部屋での連作短編で、住人はみな別の理由でいなくなる。

1編目からずっと不穏な空気が流れている。
110ページという少ないページ数と思えないほど、
読み応えがあった。

書かれている話の前にも、その後もずっと続いていくような恐怖。

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とあるマンションの一室で、前の住人が何故か失踪してそしてまた⋯。
理由は様々だけど、その部屋の住人に起こる奇妙な現象。
最後には部屋からいなくなる⋯。
だんだんとヒヤリとする世界へ迷い込んでいきます。
最初の話とは徐々に変わっていく2話、3話、そしての最後の話への流れがすごかったです。

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あるマンションの一室、408号室に入居してはいなくなっていく住人の連作短編。112頁という長さなのに、その濃さにぐっとつかまれ驚いた。それぞれの短編の中で必ず描写されるのが、ポストにいっぱいになっている前住人の郵便物、検針票、あるいは督促状。そしてベランダを通して見える向かいの廃屋の屋上に、退色した二足のスニーカーと丸々太った野良猫達。表紙絵さながらのブルーグレーの世界が不穏だ。人のいつかない部屋というのは本当にあるのだろう。想像と着地の違う最終話も不気味さを煽る。それにしても…管理会社すごいな。一人暮らしでアパートを借りてた頃この本を読んでたら、疑心暗鬼で大変だったかも。

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408号室の入居者を主人公にした短編連作集。
前の入居者の情報は郵便物などで推測される。色んな理由で次の入居者へバトンが渡されるのだけれど、1話目から衝撃を受け気付けば夢中になって全部読んでいました。びっくりする展開に置いてけぼりにならないように必死に物語に着いていきました。
入居するときのワクワク感は感じられず、ずっと不穏。けどそれもまた心地良く感じてしまうくらいにハマってしまい、2周しました。

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もぬけ(の殻)。人の抜け出したあとの寝床や住居などのたとえ、らしい(コトバンクより)。一話ごとにひとりの人物の行動とその顛末が記されるのだが、どの登場人物もどこかズレている。どうしてこのタイトルになるのかは、ラストで必ず…。ぞわぞわとうすら寒い怖さ。薄気味悪さ。このうっすらさ、癖になるし、私は大好き。最終話まで読んで、この短編の巧みな構成にぜひ唸ってほしい。

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とあるマンションの408号室の住人は次から次へといなくなる。まるで408号室を舞台とした劇を観ているような読み心地。1,2話はちょっと嫌な感じ。409号室の彼女は〇〇なのかな。3話のラストは「えっ?」となる。文鳥のこがねの最後の願いはきっと叶ったのだろう。だからラストで咥えられたのはこがねではなく…。そして最終話。貧しい画家が入居する。前入居者の考察をするが、これからは観察が続くだろう。きっとまた408号室に新たな入居者が入り…。不条理なホラーだった。

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とあるマンションの408号室を舞台にした連作短編集。
いや、不気味すぎんか。こういう話だと思ってなかったから驚いた。この部屋の住人はみんないなくなるけど、わたしはこの世界観に引き込まれて逃れられなくなった。語り口調とかゾワゾワじゃん。最後の話とか、はーーーーーーーーんってなった…そういうこと?!なの?!みたいな。
ちょっとこれは次作も気になるやつだぞ…

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人は、ふとしたきっかけでもぬけの殻となる。
骨抜きにされた動物みたいに、ふにゃふにゃとしていて、生命力を喪失する。
それはある意味では、防衛本能だとも言える。これ以上頑張ったら生命の危機だからこそ、もぬけの殻になる。
弱者の味方となる文学もあれば、あえて弱者を突き放す文学もある。本書について言えば、その二項対立から脱した内容を含んでおり、見事だと言える

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とある賃貸アパートの一室をめぐる連作短編集。
どこにでもいそうでありながら、ゾッとするところもあり、
怖いもの見たさのような、住人それぞれのその後を想像し始めると止まらない。
ユーモアも盛り込まれていて、読み応えがあった。

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