うるさいこの音の全部

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刊行日 2023/10/05 | 掲載終了日 2023/11/02

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内容紹介

芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』が「共感度100%」「心がざわつく職場小説」と話題の高瀬隼子が次に紡いだのは、さらにスリリングな「お仕事小説」。主人公はある会社の正社員。デビュー作が某文学賞にノミネートされ新人兼業作家となりメディアの取り上げで職場に知られることとなり、平穏な日々が失われ……。

表題作「うるさいこの音の全部」に加えて表題作の作中作を軸にした続編「明日、ここは静か(仮)」も併録し2作が共鳴し合うことで深みが一層増すこと請け合い。

芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』が「共感度100%」「心がざわつく職場小説」と話題の高瀬隼子が次に紡いだのは、さらにスリリングな「お仕事小説」。主人公はある会社の正社員。デビュー作が某文学賞にノミネートされ新人兼業作家となりメディアの取り上げで職場に知られることとなり、平穏な日々が失われ……。

表題作「うるさいこの音の全部」に加えて表題作の作中作を軸にした続編「明日、ここは静か(仮...


出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784163917610
本体価格 ¥0 (JPY)
ページ数 264

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NetGalley会員レビュー

安定のざわつき。思い当たる感情がありすぎて、胸の内を掻き乱されました。
今私が読んでいるここは、主人公が書いた小説の中なのか、主人公のリアルなのか境目が曖昧すぎて…!気付いたらそこにいて、ゾワッとしました。
中国人の息子の人、アドさんは結局どっちだったのだろう。そんなところを存分に楽しみました。
主人公の境遇や心情にしんどくなりながらも、ここからどうなる?と、目が離せませんでした。
そして、最後の「…言いたくないです」だけが本当のことだったのがずしりと刺さりました…!
おもしろかったです。ありがとうございました。

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まずは女性作家の心理をこのようにあぶり出したことに賛辞をおくりたい。

主人公の「人に嫌われたくないけど、人に嫌われるようなことを書くのは平気だから不思議だ」という想いは様々な場面で散りばめられている。

そして、続編である二作目の「明日、ここは静か」では、一番傍にいた編集者の瓜原さんの言葉がズシリと重いのだが、主人公を見抜いているひと言だった。まさに、2作が一体となっている話である。

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これは現実か、幻か。どこまでが事実で、どこからが創作なのか。見事なまでに、作者の思惑に翻弄される。

歯を噛みしめるように読み進めると、ざらりと砂の味がした。

芥川賞作家が描く、「芥川賞作家となった女性会社員」の物語。

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どこまでが虚構なのか。
翻弄されながら読む。
物語というものは、どこか作家が体験したものが反映されるものではないかと一方的に読み手に捉えられることへのジレンマにも感じる。
誰だって小さな嘘はつく。
やめようとしても、やめられない自分への脚色。
放った言葉があらゆる人のフィルターを通して歪曲して思わぬカタチとなって戻ってきた私自身の体験を思い出し、じわりと汗を掻くよう。
正直に、素直に言えることなんて誰に対してだろうか。
見抜かれたような作品。穏やかではいられない。凄い。

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初めて高瀬さんを読みましたが癖になりそうです。
常にどこか不穏な雰囲気を纏っていて不思議な世界観があるのに、すぐそこにいそうな登場人物たちにリアルさも感じられました。
はじめははっきりと区別されていた2つの話の境界が徐々になくなってくるのが、「本来の自分」を侵食される気持ち悪さを明確に表していました。
有名になる人はこんな感じなのかな…と遠い存在に思いつつも、自分も「本来の自分」と違う部分が一人歩きしていく不安感を感じたことがあるので少し共感もありました。

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『おいしいごはんが食べられますように』で芥川賞を受賞された高瀬隼子さんの新作。

いやー、心の迷路に迷い込んでしまったようなざわざわ感のある作品でした。

長井朝陽は大学時代から投稿を続けていた小説が新人賞を受賞し単行本化された。本名も職場も明かしていないのに、TVに取り上げられた事で周囲が騒ぎ出す。
次第に、小説家としての自分と、現実の自分の境界が分からなくなり、理想と乖離した現実に巻き込まれていく。

誰だって人に嫌われたくない。
何かを話す時、自然と話を盛ったり、
相手に合わせ相手が望む答えを意識して話す、
というのは、意識的にも、無意識でも行っていると思います。

長井朝陽は
「人に嫌われたくないけど、人に嫌われるようなことを書くのは平気だから不思議だ。」
と、作家としての自分・早見有日とは別人格を感じていますが、
うるさい周囲に振り回されて、
読んでいる私も、
今、この場面は朝陽なのか有日なのか…

『おいしい〜』でも感じたけれど、
高瀬さんは心の葛藤を描き出すのが本当に上手で、
自分が見ないようにしてきた部分に
焦点を当て、
共感した瞬間に、
そんな自分にゾッとする…

知ってしまった自分の本心。
どうすれば良いの…

最後に語られた本音の一言が、
"答え"なのだとしたら…

どこまでが本当で
どこまでが仮想世界?

小説家さんって、こんな事を考えて日々を送っていらっしゃるのだろうか…?
という一面も見られる作品でした。

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新人作家の朝陽が葛藤する作家としての自分と本当の自分の垣根。
作家としては早見夕日というペンネームを使うが朝陽を知ってる人は同一視してくるし…作家として出す話は読書の期待に応えれるようにしないと…と本当の事は話さないと。どの作家さん(に限らず公の場に見られる人として出る👦)にら大なり小なりこういう感じあるのかもと。

小説としては冒頭の話が作中作の話と途中まで思っておらず平行した話なのかと思ってました。はっちゃけた女子大生と小説家になったゲームセンターの社員みたいな。

この先、朝陽はどうなるんだろう…と気になりますね。ここからは想像してみてよという事かもですが。

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ゲームセンターの社員として働く朝陽は学生時代から投稿していた小説が当選し、小説家との二足のわらじを履くことに。
やがて小説が芥川賞を受賞し、世間の注目を浴びる。

書くことはすなわち嘘を重ねることで、朝陽は周囲との齟齬を生んで行く。

きっちりしたい朝陽のストイックさに胸がきりきりする一冊だがおすすめしたい一冊でもある。

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相変わらず「イヤーッ」と叫びたくなるほど揺さぶられる。それも勿論筆力あっての事なんだろうな。作者?作中の作者?や登場人物の心情がリアルさを持って迫ってきたうえに物語の構造上小説内の虚構と現実の境目がわからなくなっていく。気持ち悪いが心地よい、不思議な感覚で読む手を止められない。
作品に対する評価と作家個人の乖離に関しての記述がリアルだった。こうして感想を書くことも躊躇してしまうほど真に迫っていた。

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ゲームセンターで働きながら小説を書いている長井朝陽が主人公。実は彼女は早見有日のペンネームで作家デビューしている。彼女の書いている小説が作中作として提示され、現実と虚構が曖昧になっていく。さらに高瀬さん自身が反映されているようにも読めて、実にスリリングである。
朝陽は相当面倒くさい性格で読んでいてイライラするが、有日の書く小説にはそんな朝陽の性格が裏返しに反映されている。現実で溜め込んだ負の感情をエネルギーに文章を紡いでいるのだろうか。現実での出来事のあとに作中作が変わっていくのもおもしろい。
さらっと読めて後味が悪いのはいつもの高瀬さんと同じだが、本作でまた一段高みに上ったように思えた。

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表題作の長編では、兼業作家がデビューしてからのことを自ら語っていく。まさに私小説、と思った。
新人賞を受賞してデビューした主人公「朝陽」、そのペンネーム「早見有日」の〈2人〉の関係が、ある時には曖昧になり、時には別人のようにもなる。加えて受賞作「配達会議」の主人公とも重なってもいく。更には、「朝陽」の職場に来る客の生と死さえもが曖昧になっていく。読み手は翻弄されていくだけ。でもその体験の中、「朝陽」であり「早見有日」でもある彼女は作家として前向きになっていく。
ただ、その中で示される、この物語は嘘でも嘘でなく、事実でも事実ではないとは? 語り手の「朝陽」にとっても曖昧模糊であるとのこの告白に、読みながら更なる混沌に叩き落とされた。
でもこのタイトル「うるさいこの音の全部」だけは、著者と「朝陽」にとって「真実」なのだろう。繊細過ぎる感性は、私たちが聞き落としてさまたう音を全て拾い上げてしまう。その全部が重なり合い、共鳴し、ハーモニーを奏で、不協和音ともなる。これは、作品が完成するまでの、著者のそんな心の有様を綴った半自伝的小説だからこそ、足元が定まらない幻惑的な魅了を持つ作品となったのだろう。

続く中編は、「朝陽」の第2作が芥川賞を受賞した後の話。芥川賞作家自らが綴る、「芥川賞作家となった女性会社員」の一人語り。私小説の後編。しかし雰囲気は一変して、現実と内面の相剋を綴ったものへと様変わりする。作家と認知された「朝陽」に関わってくる、「作品を自負なりに捉える」様々なスタンスの人々。ワンテンポ置いた中に彼女の心情が挟まり、本音とは異なる「朝陽」の言動が語られていく。人の内面と対外面が浮き彫りになっていく。この遊離が大きくなってしまったからこそ、「朝陽」=著者は虚構しか語れなくなってしまったのだろう。
でも、「言いたくない」と「本当の事」を口にできた。それはやっと訪れた救いであり、次の作品へと進むスタートラインに著者がついたことを示しているのだろう。だからこそ、タイトルが「明日、ここは静か」なのだ。

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表題作とその続編の「明日、ここは静か」の2篇。

デビュー作が某文学賞にノミネートされ、日常を侵食してくる。作中作も気になり、現実と虚構の境目が不安定になり、ザラリと心を揺らされた。

私も主人公の友人である帆奈美と同じで、作品だけあればいいと思う読者である。
しかし、主人公の「長居朝陽」が侵されていく日常や家族や同僚の反応があまりにもリアルすぎて、作家としての「早見有日」の作品さえあればと思いながらも、朝陽と高瀬さんが同化していき、Wikipediaで高瀬さんを検索してしまった。
やはり、この物語はフィクションなのかと思い安心した。しかし作品を読み、作家本人の母校の偏差値や職場など、作品とは関係ない面になぜ興味を持ち検索してしまう気持ちに少し理解出来た気がする。

覚えのない友人という人から連絡が来たり、電報が届いたり、本名で活動していないのにサインを求められたり。この様な思いを持ちながら作品を書いているのかなと、心の内を覗き見たようだった。そしてラストの一言にたどり着いた時、なぜだか私まですっきりした。ずっと言えなかったことを言うのは本当に心の体力を使う。
高瀬さんの作品は何作か読み、何か心をザラリと揺さぶられ傷跡のように心に引っ掛かりが残り、その残った感情を突然思い出すことがある。こんな心に残る作品が読めるなら、偏差値や職場なんか知らなくていい。やはり作品さえあればいいと改めて思う。

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どこまでが小説で、どこまでが現実なのか。
ずっと心がざわざわする話だった。

始めは完全に、小説とリアルが分かれていたのに、
途中から現実に侵食していくようなうすら寒さを感じた。
小説とリアルの境目。朝陽と有日の境目。

高瀬さんの次回作もぜひ読みたいです。

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作家と会社員、それぞれの肩書きが、本心の妨げになっていく心の機微に、
もどかしい気持ちが込み上げました。
また、その時々の状況で、色々な顔を持つ、人間の心理描写が、
見事に描かれていて、私の心にも重なりました。
そして、主人公が、芥川賞を受賞したことで、今までの生活が激変していく様子が、
リアルでドキドキします。
相反する、本音と建前で揺れる感情の波に、
包まれるようでした。
心のざわめきが止まらない、私たちの日常に近い人間ドラマ。
最後の言葉が、胸に突き刺さりました。

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心の動きが細かで、前の作品ってこんなだったかなあ。『おいしいごはん』や『水たまり』ではもう少し分り易く表に出してたよなあ。でも『いい子』で内に秘めるようになり、今作でさらに内側にシフトした。視点が主人公と共にあるので変人さは薄まっているが奇異であることに変わりない。

人との距離感がとても気になる。その近さが騒音雑音を奏でるのだな。うるさい、静かにしてよ。

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何度も朝陽なのか有日なのかわからなくなりながら読み進めた。
みんなが欲しがっている言葉を自然と口にする事が嘘に嘘を重ねることなる。
それでも自分の都合よくまとめるところなど、ザラザラとした気持ちになった。
こんなにも見られたくない心情を描くのはすごいと思う。

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世の中に出版される小説の数は多く、読めるのは、そのほんのほんの一部だ。賞を獲った作品だってほとんど読んでいないし、本屋で平積みされていなければ、ポップがなければ、どこかで書評を目にしなければ初めての作家の本と出会うことはまずない。
なので、芥川賞を獲った「おいしいごはんが食べられますように」とも出会っていなかった。その代わり、この「うるさいこの音の全部」でこの作者と出会うことができた。出会えさえすれば、遡って作品を読むことができる。なんと幸せなことか。
この作品は、ひっそりと小説を綴っていた働く女性が芥川賞を獲り騒ぎの渦中に巻き込まれる様を描く、半ば私小説風の物語。ちょっと長めの表題作と、その後を描く短編で構成。
最初に学生時代のエピソードから始まるが、もうここですっかり心を掴まれてしまった。実にうまいエピソードだ。まさに小説のたくらみのお手本のような掴み。
心の揺れを一切逃さないように観察する筆致は、温かくもあり、冷めてもいる。だから信用できるってことなのだ。

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現実と小説の世界の境界線が曖昧になってきて、ザワつき出します。

嘘はつきなくない。正直に生きたい。
だけど嘘が嘘でなくなる一つや二つは嘘をついても構わない。
現実と虚構(嘘)の間で揺れ動き、葛藤する朝陽。
そして小説家・夕日として嘘の世界を描く。
なのに嘘が現実を侵食していき、「うるさいこの音の全部」に嫌われたくないと、
本当のことが言えなくなる。
もう朝陽の口からは嘘しか出てこないのではないかと心が痛くなる。
最後に本当のことを言えたなら、朝陽のまわりからうるさい音がなくなりますように。

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会社員朝陽が文学賞を受賞したことで、職場の上司、同僚、地元の家族、友人たちがそれぞれの反応を見せる。細やかな感情表現で読者に「うるさい」と感じさせる。早見有日(朝陽のペンネーム)が書いたこと、話したことが日常生活をかき回し、入り交じる所の描写がスリリングで面白かった。
文学賞の話なので私には経験できないが朝陽の迷い、葛藤はとても身近に感じた。「うるさい」中で生きて行くことに共感した。

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並行する二つの物語が次第にどちらの物語なのか?と惑わされていると、主人公の朝陽もどんどん自分を見失っていた。
作家に限らず、役者やアーティストなど、何かを表現する人というのは、このようなものを抱えているのだろうか。
そして、「書いたもの勝ちだ。書かれた側は負けるしかない」という言葉が印象的だった。
これだけSNSが普及した現在では、自分の発する言葉により慎重にならなくては、と改めて考えさせられた。

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アミューズメント業界に就職し、働きながら作家活動を行う主人公。デビュー二作目が芥川賞となり…
フィクションであると同時に私小説、いっそ当事者小説と言いたくなるほどの生々しさを感じる作品だった。主人公である作家の願いはただ一つであるのに、周りはそれを許さない。著者作品に共通する、周囲の人間のリアルな刺々しさと無神経さに傷つけられる痛み。同時にその人々は主人公に傷つけられたとも感じている、このすれ違いとままならなさ。読んでいる間も読後もざらりとした感情が残り、胸が苦しくなるようだった。
やわらかで静かな場所で、ただ一つだけの仕事をしたい。かなわぬ願いと分かっていながら誰もが望むことであるだけに、多くの人が主人公に共感するのではないかと思う。

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作家と、その作品と、その日常。
言動の奥の奥にある本心をほじくり出して文字にした文章がめちゃくちゃおもしろかったです。
朝陽の、もしくは有日の、このありあまるサービス精神、わかる…。
いい人だからじゃない。
求められているよりいいものを差し出したくて、いやなのに、なんでかそうじゃない自分ではいられないのだ。
そしてもう1つ、頭の中でぐだぐだしゃべってつっこむ感じも、めちゃめちゃわかる…。
私も起きているときはほぼずっと頭の中でしゃべっていて、頭の中で発するセリフが、今読んでいる本の文体に引きずられた口調になったり、性格とか考え方を何かに寄せていて本心とは違うことがしょっちゅうある。
自分の頭の中だけでのことなのに、何かを演じている謎。
そのもう1人の自分が、実体を持ちはじめるような、どんどん自分から離れていくような、公の顔を持つってそういうことなんだろうか。
引き裂かれていく早見有日が痛ましかったです。

言うことと書くことは全然別のことだとわかっているのに、この作品を読めばさらにそのことを実感してしまうのに、読みながら、高瀬さんの気持ちめちゃくちゃわかると思ってしまう、なんたる矛盾!
作家という職業の孤独を思いました。

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約180ページから成る表題作「うるさいこの音の全部」と、約70ページから成る続編にあたる「明日、ここは静か」の2作が収録されています。

主人公・長井朝陽は、ゲームセンターで働きながら、早見夕日というペンネームで小説を書いています。朝陽の日常と夕日の作品が交互に表示されますが、読んでいるうちにどちらが現実でどちらが創作なのかわからなくなってしまいました。「あの人物は実在するのか」「あの出来事は本当にあったことなのか」と考えると、頭がこんがらがって、何度も読み返して確認しました。とはいえ読み返してもはっきりできず、「?」と思ったまま読み進めることになりましたが・・・。

読んでいる間ずっと、小説という迷路というか迷宮に紛れ込んだような気分でざわざわし通しでしたが、それは読み終えても変わらず、今でもそこをさまよい続けているような気がします。この気分をひとりでも多くの読者さんに味わっていただきたいです。

スリリングなお仕事小説、ということですが、個人的には特に「明日、ここは静か」を読んでスリルというよりホラーを感じました。長井朝陽と早見夕日はこれからどうなってしまうのか、そっとも守っていきたいと思います。

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小説家デビューした朝陽はゲームセンターで働いているが、受賞をしたことで周りの環境が変わっていく。
小説と現実の狭間で途中からどっちがどっちなのか分からなくなりながら読んだ。
作家名も本名をもじっていて面白いなと。
朝陽としての自分を見て欲しいのに周りは作家としての自分を見ていて結婚式のスピーチや広報誌など、そちらを期待しているのが見えてしまう場面では嫌悪感が出る反面嫌われたくないという誰にだってある感情を刺激してくる。
嘘に嘘を重ねて取り返しが付かなくなるハラハラ感や知らない知り合いが増える気持ち悪さなど、
偶然口の中に入ってしまった砂がいつまで経っても取れないざらざら感のようななんとも言えない気持ち悪さがあった。
今回の高瀬隼子さんも最高でした。

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これは巧みな私小説なのか、フィクションなのか。
あまりに赤裸々でヒリヒリする朝陽の心のうちを覗き込むうちに、のめり込むように一気に読んだ。
たとえ朝陽のような小説家ではなくても、他者との関係性で朝陽のように、内心と外面が乖離していくことに思い悩む経験は、誰しもにあるだろう。だけど朝陽は小説家で、彼女はこの先ずっと悩み苦しみ続けるのだろうか。それとも、将来はふとした瞬間に上手く立ち回れるようになるのだろうか。彼女なりの幸せをいつか掴んでほしいと思わされるいい意味で「しんどい」小説で、面白かった。

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空想の世界なのか現実の世界なのか…翻弄される物語の中で、答えが知りたくて読み進める…。

人に合わせるような態度や言葉は、誰しもしていると思う。
それで表面上は穏やかにすぎる世界。
でも本当の自分はどこ?

本当のことが言えたら、本当の自分としてこの世界にたっているということなのか?

ざわつく心が、主人公にリンクしたような感覚でした。

ありがとうございました。

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主人公は、小説家としてデビューしたばかりの女性。
ある職場で正社員として働きながら、周囲との違和感に不穏になっていく。

この不穏さがしんどくて、それでいて
あちこちに共感。
心の中の本音が溢れ出す。

主人公が小説家なので、高瀬さんご自身と
どうしても重ね合わせてしまうのだけれど、
それを一蹴する内容。

読みながら誰の話かわからなくなってくる仕組み。
小説の中の小説も大変面白く、ぞわぞわきた。

周囲の「うるささ」が彼女の職場の大音量と重なり、発狂しそう。

この主人公が高瀬さんだとは思わない。
ただ、一人の女性の心の奥底までを見てしまった気分になった。

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はじめは完全に別々だったのに、徐々に小説と現実の境目が分からなくなった。
主人公の朝陽なのか、新人作家の有日なのか、分からなくてぐるぐるしながら、読み進めた。朝陽の現実に侵食してくるこの感じ…堪らなくザワザワするこの不穏な感じ…。ものすごく好きでした。

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小説家と会社員の二足の草鞋を履く主人公ということで、高瀬先生の体験されたことも織り交ぜられているのだろうなと思いながら読みました。
悪意と悪意のつもりのない悪意が、墨を白い紙にボタリと落としてじんわりと広がっていくように、小説全体をだんだんと黒く染めていくように感じました。
急に有名になる代償というか苦しみがひしひしと伝わってきました。

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主人公の朝陽が文章を書いている自分と、日常生活を送っている自分の境目がぼやけていく感覚がやけにリアルで、読みながらなぜかドキドキしました。
人間という存在を客観視することに長けているからこそ、自分が自分自身を見失っていくことがわかるのは恐いだろうなと。
背筋が冷たくなるような感覚もありつつ、
どこかに人間らしさを感じる高瀬さんワールドを感じる作品でした。

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会社員として働きながら作家デビューした朝陽が、筆名の早見有日に徐々に侵食され、現実と虚構の境目が曖昧になっていく様がとてもリアルでゾッとしました。読んでいるこちらも、今は朝陽の話なのか有日の話なのかだんだんわからなくなるときもあり、物語の世界に飲み込まれそうになりました。作家の方たちは普段こんなことを考えながら小説を書いているのかもしれないと想像しながら読みました。表題作「うるさいこの音の全部」の続編「明日、ここは静か」のラストが好きでした。

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「うるさいこの音の全部」とその続編の2作を収録。

…ノンフィクション?いやいや違う。でも赤裸々(なのかどうかも懐疑的になるほど惑わされる)。

「※この作品はフィクションです。」というテロップを脳内に流しながら読みました。

受賞後から課されていくいわゆる有名税にじわじわと身動きが取れなくなっていく、
自分自身にも止められない、賞味期限のカウントダウンをひしひしと感じる、
毎作品なにかに囚われている人を描く高瀬さんの真骨頂。

フィクションとノンフィクションのマーブル模様。面白かったです…今後は
賞の授賞式を観るとヒヤリとしそう(汗

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芥川賞を受賞した兼業作家の女性が主人公。小説家デビューしたと同時に、見知らぬ同級生から連絡が来たり、特に仲良くなかった人が友人としてSNSに投稿していたりと、ありそうだな〜と思えるモヤモヤなエピソードが満載で、心がざわついた。
インタビューに嘘を交えて答えると、それが地元の人たちに知れ渡り、それが事実だったと語る人が現れる。
小説の中の主人公が自分に重なり、現実にも影を落としてくる。
会社員である自分と、作家である自分が分離して、心の中で言い合いを始める。

色々な境目が曖昧になり、何が真実なのかがわからなくなって、最終的に「どうでもいいや」になっていく主人公の心境に同情しながらも、不安定な危うさを感じる。
終始、ざわざわと落ち着かない気持ちで読んだ。これも読書の醍醐味。

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ゲームセンターで働く朝陽。兼業作家にして芥川賞も受賞する夕日。あさひとゆうひ。想像又は創造あるいは夢に対する現実である日常。それらの境界線が時にぼやけて曖昧に浸潤する。先輩から借りた軽自動車の助手席に乗せた「息子の人」は、幽霊なのか現実に生きている人なのか?ふわりとゆれながら漂う境界線が、夢の中の柔らかな風のように心地よい。そんな作品でした。

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ザワザワ…
 『おいしいごはんが食べられますように』は題名とのギャップにザワつきましたが、今回もキツめの題名の割に主人公は対応力のある柳のような人です。

 これは私小説?
 ゲームセンターで働く主人公の長井朝陽は「早見有日」というペンネームで小説を書いています。その小説が文学賞を受賞して出版されてから特に職場の環境が微妙に変化していって…

 現実も夢も、朝陽も早見も。嘘か誠か一般人には整理できません。境目のグラデーションがお見事!
気づくとザワザワが心地よくなっている不思議。

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ゲームセンター正社員にして、作家を兼業する長井朝陽。ペンネームの早見夕日が新人賞を受賞したことでひとり歩きを始める。書かれたことと現実が、同僚や出身地の人々において混じり始める。自意識は個人と作家の立場を揺さぶり、どちらが本当の世界のことなのか、軸がぐらぐらする印象。作家の脳内の再現か、完全なるフィクションかと読み手に思わせるあたり、高瀬隼子ワールドは一層深まった印象。心の声が漏れ出た地の文は、本当におもしろい。リアルと小説内のリアルに接点を見つけたがる読み手。勝手な物語が増殖していく気味悪さ。続編の作中作も迫力があった。

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どこが本当でどこが嘘?それとも全部?どちらかというとあまり幸せそうでない人が成功しても、これまでの人格は変わらず。むしろ余計にネガティブになっている?幸せになってほしいなと思いつつ読んでいました。なんだか心がザワザワする本でした。

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