トラディション
鈴木涼美
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刊行日 2023/12/06 | 掲載終了日 2023/12/05
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内容紹介
強烈な欲望が毎晩消費される街の中では、自分の本来持っていた願いはかすんで見えなくなる――
ホストクラブの受付で働く「私」、ホストにハマる幼なじみ。
夜の世界を「生き場所」とする彼女らの蠱惑と渇望を描く傑作小説。
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かつて街から出て別の場所で働き、五年前から兄を頼って再び街の片隅で金勘定をしている私から見ると、街の外の変化に比べれば、この街の変化など微々たるものに過ぎない。もうずいぶん前に、夜と心中するような女はいなくなったし、今では男と心中するような女も少なくなった。表面だけ明るく、少し退屈になった街で、みんながごく個人的に病んでいく。
群像8月号掲載の中編を単行本化!
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著者/鈴木涼美(すずき・すずみ)
1983年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒。東京大学大学院修士課程修了。小説『ギフテッド』が第167回芥川賞候補、『グレイスレス』が第168回芥川賞候補。著書に『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『愛と子宮に花束を 夜のオネエサンの母娘論』『おじさんメモリアル』『ニッポンのおじさん』『往復書簡 限界から始まる』(共著)『娼婦の本棚』『8cmヒールのニュースショー』『「AV女優」の社会学 増補新版』『浮き身』などがある。
装幀/ 岡本歌織(next door design)
カバー写真/ むらきゃみだいち
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恐れ入りますが<講談社 出版営業局>まで直接お問合せをお願いいたします。
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出版情報
ISBN | 9784065339114 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
ページ数 | 117 |
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NetGalley会員レビュー
この本の著者である鈴木涼美さんは非常に興味深い存在だ。書かれるエッセイは物事の芯をくっているし、俯瞰ながら真っ直ぐと捉える視線は、鋭く厳しい。
以前から小説も書かれているようだが、浅学にして読んでいなかった。
しかしこの作品を読ませていただき、人に対する温かい眼差し、同じ目線から人を描き、同情もせず、軽蔑もせず、愛しすぎることもないその態度に感服した。
人が人を描く覚悟がある。そんな強い小説だ。
有名ホストの兄を頼り、ホストクラブの受付をする事になった女。男側の立場から、女として、ホストと姫たちを見詰める、歌舞伎町の明暗を描いた作品。
人の力で得たものの上に座り、自分の力で得ようとしている人たちを見下す。そうする事で自分を必死に保とうとしている主人公が、実は一番空っぽなんだと自ら気付いていく様に、人間味が感じられて良かった。
120頁ほどの短い作品の中に度々出てくる、冗長な表現に少し挫けそうになった。その言い回しに何か特別なものが隠されていたのかもしれないが、私には上手く読み取れなかったのが残念だった。
夜の街を舞台としているが、きらびやかな面を美化しているわけでもなければ、過激さや悲壮感を強調しているわけでもない。ホスクラの受付をしている女性の日常が淡々と綴られている。珍しい視点だと感じた。
リアリティのある緻密な描写はノンフィクションのよう。一文が長いのに読みにくさがなく、心地よく読むことが出来た。印象に残る文章が多く、《繰り返される言葉は繰り返された分だけ意味がそぎ落とされていく。》が特に好き。