雫
寺地はるな
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刊行日 2024/11/06 | 掲載終了日 2024/11/05
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内容紹介
「今日が、雨でよかった」――時を超え、かたちを変えて巡る、“つながり”と再生の物語。
ビルの取り壊しに伴うリフォームジュエリー会社の廃業を起点に時間をさかのぼりながら、物から物へ、人から人へと、30年の月日のなかで巡る想いと“つながり”、そして新たなはじまりを描く、寺地はるな(2023年本屋大賞9位)の真骨頂が光る、感動長篇。
出会い、卒業、就職、結婚、親子、別れ……。中学の卒業制作づくりで出会った4人がそれぞれ直面する数々の選択と、その先にある転機、人生のままならなさ。不器用に、でもひたむきに向き合う彼らの姿を通して、日常のささいな不安や違和感を丁寧にすくい取って人の弱さにそっと寄り添いながら、いまを生きるあなたにエールを贈る大人の青春小説。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784140057483 |
本体価格 | ¥1,700 (JPY) |
ページ数 | 288 |
閲覧オプション
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じんわりと心に染み入る作品でした。
なんとなくぎこちないように見える4人には、過去に何があったんだろう?!と思っていたけど
読んで分かったのは、特別大きな何かが起きたわけではないということ。それがなんともリアルだった。
何かがあったとかでもなくものすごく仲よくずっと一緒にいるわけでもない、でも心のどこかでお互いを信頼しあっている、そんな関係がとても心地よかった。
主人公のジュエリーリフォームの仕事が興味深く、この仕事の部分をもっと読んでいたいなと思えるほどでした。
古いジュエリーを蘇らせるリフォームジュエリー店。
その店舗が廃業するところから物語が始まるという斬新な小説。
ジュエリーデザイナーの永瀬珠
シャチョーの高峰能見
同じビルで働く森侑
ジュエリー職人の木下しずく
この4人の物語が、現代から少しずつ過去へ遡っていく。
大人になると忘れてしまうことってある。
夢中になるほど好きだったこと
希望を持っていたこと
あの人の言葉がきっかけになったこと
少しずつ過去へ遡ることで、明らかになっていく。
ジュエリーデザインの話がもう少し出てきて
くれたら嬉しかった。
スリーピングビューティーターコイズが出てきた時は上がった(貴重な石、という認識には疑問)。
『彼女が天使でなくなる日』のあの場所も出てきた!
終わりから始まる物語だけど、希望もあり
面白かった。まさに大人の青春小説。
寺地はるなさんの作品を読むたびに私の今年のいちばん本が更新される
私がどれだけ好きかを綴りはじめたら このまま夜が明けてしまうだろう
壮大なスケール感?ないかもしれない。
頁をめくる手が止まらない夜通し一気読み必至の奇想天外ストーリー?真逆だった。
心のひずみに、ぴたーっと入り込んでくる。
その度に 頁から離れがたくてなる
心のかわりようや動きがしぐさとなって表出する
そこ、突きますか。嗚呼嗚呼 身悶えしそうになる
~悲しい日こそ、晴れていてほしい。あしたからはなんでもないただの永瀬珠~
~おもしろさ求めてないわりに、高峰くんの人生って山あり谷ありやな。もう余生やとおもってるし~
~森くんはこんなに痩せてうつろな目をしていても、まだ友だちのために走れるのだ~
~ときどき「しずくはいいな」と思ってしまい、
同じだけ、しずくほどの努力をしたわけでもないくせに成果だけ欲しがって羨望する自分のあざましさが嫌になる~
そんな四人のあの頃からいま
~ぼく、これからエレベーター乗るたびに今日のこと思い出すと思うわ~
31階で降りるエレベーターで手をつなぐ場面での一言。彼らは中学から続く同級生。
感情を勢いで放たない そこも好き大好き
少し前まで、表に出してはいけないと圧し潰してきた感情がある
仕方ないと思っていた。そういうもんなんだと自分に言い聞かせていた。
私は、声にすることを許されなかった母の世代を責めることはできない。
寺地はるなさんの作品はどれも想像を超えてきて
想う、をあちこちにちりばめる
いいことだけ、なんてなかった。侮蔑、嫌悪、別離、妬み。
それでも、それでもなお、が此処にある。
溜った感情が溢れて いま雫となり こぼれ落ちる
届け!
あまり事件が起きない淡々とした映画が好きな私にぴったりな、しみじみと味わい深い作品でした。
章ごとに5年ずつ遡っていくことにとまどいはありましたが、読み終えて最初に戻った時に、これまで読んだ内容がタネ明かしのように散りばめられ、まるでメビウスの輪のようで、繰り返し読みたい作品となっています。作者の見事な腕前に驚くばかりです。
特に印象に残ったのは、語り手である珠の、母親との葛藤です。
また、しずくという人物の描写にも心惹かれました。
30年にわたる物語、そのそれぞれの年代における人生の悩みや問題が描かれ、つまづき倒れたりしながらも、ゆっくりと前に進んでいこうとする登場人物たちを、いつの間にかとても愛しく思うようになっていました。
貴重なものを贈られたような読後感です。まるで、作中に描かれている美しい宝石のような。
悩めば悩むほど間違った方を選びがちな永瀬珠の30年が描かれている。しかも、作品は一章読み終わるごとに5年ずつ過去へと戻っていき、逆走する時の流れがなんとも不思議で、前に進むと思ってたら逆の方向に戻るから、前後の出来事に生じる違和感や不穏さが際立つのでしょうか。
彼女たちのゆるやかな繋がりが少しずつ変化しつつもおだやかに続いている様が永久を思わせ、“これからも”が含まれたような終わり方が永遠を体感させてくれているようで、これまでのまばゆいほどの時の流れに愛おしさ以外の言葉が見つかりませんでした。
気持ちを伝える難しさはいつも感じるけど、“だいじょうぶだよ”と伝える大切さと、言われる安心感には思い至ってなくて、優しい気持ちを思い出させてくれる寺地はるなさんの作品が大好きだなぁ、と再確認しました!
中学の卒業製作班で一緒だった4人の
30年にわたるあゆみを、
描きあげた作品です。
端正に張り巡らされた伏線が
鮮やかに活かされる瞬間が
少なくありませんでした。
味わい深いわ~。
地元の美容師の意外な素性など
読み返して初めて気づく
仕掛けにも心が躍りましたよ。
かめばかむほど美味しい、
何度でも楽しめる逸品ですね。
主人公は一見パッとしない脇役タイプ。
自分には何も特別なことがないと
思いつつ日々を過ごしていた彼女に
実は人とは違うものがあると
明るみになっていくストーリーです。
メインの4人の不器用な生き様に、
のっけから釘付けでしたよ。
なかなか本心を明かさないけれど、
いざというときには手を差し伸べる
友情を超えたつながりが沁みる!
脇役の美術の先生にいたっては
何もかもが最高でした。
特に自然体で生徒を圧倒する場面。
のちの結婚とは何かを語った言葉は
思わずメモしましたよ。
もう、この先生が登場すると
キターッ!って鼓動が跳ねましたもの。
こんなふうに、脇を固める陣容が
バッチリ魅力的で盛り上げてくれるのも
寺地先生の作品の魅力のひとつですね。
15歳だった4人の関係性は
時間の経過とともにどう移ろうのか?
迷える主人公が45歳で辿り着くのは
どういった境地なのか?
すべて持ってるように見えた男の
意外な葛藤とは?
ぜひ作品を手にして
物語に思い切り身を投じ、
その中に潜むあらんかぎりの熱を
体感してほしいと思います。
(対象年齢は13歳以上かな?)
読み終えた後、もう一度読み返したくなる作品でした。
ジュエリーデザイナーの永瀬の視点から、1995年から2025年までの30年間に中学の同級生4人に起こった出来事が垣間見られる。2025年が最初の章で、物語は5年刻みで徐々に過去に遡っていきます。
4人の決して親密というわけではないけれど、互いに信頼しているのを感じれば感じるほど、第1章を思い出して、悲しくなってしまっていましたが、読後はとても温かな気持ちになりました。
4人だけでなく、周囲の人々も魅力的で、出てくる人皆の側にそっと寄り添いたくなるような、そして、私自身も寄り添ってもらえたような、そんな作品でした。
30年。長い人生を遡っていく。
特別に仲良しでもないし、事件が起きるわけでもなく、ただただ静かに流れる時間。
折々に出てくる4人のつかずはなれずな関係は心地よく不思議な感覚。
美術の先生の登場がこのストーリーに良いエッセンスを加える。
生きにくさを抱える人に静かに寄り添ってくれる。
未来は単なる未確定ではない。選択を繰り返すのが人で、その選択をもとにどうに生きるか、それが未来を創っていく。
珠達の生き様を5年ずつ遡り、選択する様を見てきた。それは世界を巡る水のような繰り返しだった。その象徴が、まさに蒼き〈雫〉。
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人生、何が起きるかわからない。一寸先は闇。
そうかもしれない。でも、人生はその時その時の選択の積み重ね。それが正解か不正確かは、その後の意思と生き方で決まっていく。そして今の自分があり、更に選択しつつ生き方を定めていく。
この、5年前に遡って語られる「未来を知らないその時の自分の選択」を繰り返し見ていくことによって、未来は自分で創るものだと実感した。
特にしずくの生き様を見て。確かに、過去には苦しみが、未来には不慮のことがあるはず。でも、過去の苦しみを乗り越えるのは自分の選択。一方、未来に対するのは選択を繰り返して成った、今の自分。だから、再び自分から選択していく。それにより未来は良い方向に向くのか逆となるかを真摯に受け入れながら。それが、自分で生きる「人生」なのか。
そしてとうとう。彼らの人生の「起点」へと辿り着く。そこには、森がしずくを見てつくったキャラクターがあった。それはティアドロップ、涙、〈雫〉。雨から始まり世界を回っていく〈永遠〉の象徴。
そして再び〈今〉。20年の間に溜まった皆のすれ違いの清算。ここが新たな「起点」。奇しくも外は雨。雫に見守られて再び珠の〈永遠〉が始まる。でも今度は、笑顔で始まり、それが続く〈永遠〉。まさに蒼い〈雫〉。
暖かな気持ちで、本を閉じた。
5年ずつ過去を遡っていく物語。
「2025年4月」は、まさに現実という感じの話だったけど、徐々に永瀬さんそのほかの人たちの若い頃を知るたびに、未来へと繋がっていく彼らの「今その時」が大事に思えた。
「1995年9月」、彼らが中学3年生だった章を読み終わり、現在の「2025年10月」に話が戻った時、世界がキラキラして見えた。
人生なんて、大きなことを伝えるつもりもないのだろうけど、作中の駒さんの言葉(「1995年9月」)が全てを語っているのかもしれない。
たまには「良かった」と思える素敵なこともある、世の中捨てたものじゃない、そうしたことを教えてもらった気がする。
卒業制作のモチーフに「雫」を選んだ4人。
「雫」には「永遠」という意味もあるのだと美術の教師に教えてもらう。
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雨は循環しているかもしれないけど、人は変わっていくし、いつか死ぬ…
「永遠ってなんですか?」
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卒業後、4人はそれぞれの人生を歩みながらも関わり合って30年間を過ごす。
この4人の関係性がとても素敵に描かれている。
そして、雨が好きだ。雨でよかった。と語るラストが心に沁みた。
中学の卒業制作で同じだった男女4人組。15歳から45歳までの30年間の歩みを5年刻みで時代をさかのぼる。四者四様に不器用な4人はその時代ごとに支え支えられ友情を深めていく。
受験、卒業、進学、就職、結婚、離婚。15歳からの30年間には人生のイベントが凝縮されている。
読み終えたあとには答え合わせのように二度目の読書に誘われる。
人生最期に何を読むかと問われたら、間違いなくこの作品だと答える。
認められない所もあるし、全部が好きでもない。いつでも一緒に居たいわけじゃないし、鬱陶しい時もある。
でも、お守りのように安心感を与えてくれる繋がり、自分らしくいられる関係性ってある。
登場人物達はみんな不器用だ。その不器用さがリアルで、永瀬さんとも、高峰とも、森くんとも、しずくとも、自分を重ね合わせて見てしまう。気持ちがピタッと当てはまるのだ。
私も雨の日が好きだ。放つ台詞が深く強く胸に響く。共感の涙が溢れて止まらなかった。
珠の颯爽とひとりで立ち、歩き、生きている様が好きだ。
そんな珠だから、人は打ち明け話をしたくなるのだろうし、頼ってしまうのだろう。
『人は人。自分は自分。あなたたちは好きにしろ。私も好きにする。』という一文があって、ほんとそれとつくづく思う。
良い、悪いではないのだ。みんな自分の好きにしているだけ。
その好きが自分と違うからといって、わざわざ非難や批判をする必要なんてない。
そうなんだね、あなたはそれが好きなんだね。それだけだ。
そんな珠もしずくに対しては「もっと○○したほうが」と助言をしてしまう。
それは心からしずくを案じての言葉だけれど、そのせいで彼女は自己評価が低い。
そのままの自分ではダメだと思ってしまうからだ。
まるで我が家の長女のようだと心がヒリヒリと痛くなった。
私もついつい親として、子供に自分の理想とする姿、
身につけてほしいマナーを押し付けてしまっている。
娘にとっても必要なのは、そのままのあなたで十分素敵だよといい所をいっぱい伝えることなのかもしれない。
川地さんの小説はいつも読んでいて心地いいのに、心に小さな楔を打つ。
人生の岐路に立ったジュエリーデザイナーの珠が、中学で出会った3人との交流を軸に45歳までの30年を遡っていく、青春と門出の物語。
逆再生の面白さが全面に出た作品。結末(未来)を知りたくて急く気持ちと、過程(過去)への好奇心から生まれる高鳴りと、両方に掴まれて夢中になった。たくさん出てくる過去と未来とが繋がる瞬間が劇的でないのも、この作品の温度感を表していて、とても心地好かった。
タイトルの『雫』がいくつもの要素にかかっているのも素敵。
ポジティブとネガティブ、表裏一体の心の裡を、ちぐはぐな4人組が曝け出し合う不器用さも愛しく思えた。
急ぎ過ぎて苦しくなっている時こそ、過去のエネルギーに頼るのも良いのかも。ありのままを受け入れてもらえた気がした。
しっとりとした話で、とてもよかった。
2025年の4月、永瀬珠45歳から始まり、その後は章を追うごとに5年遡り、1995年の中学生まで行ったら、最後は2025年の10月に戻る。
主な登場人物4人が同じ中学出身なのでできる方式だけど、おもしろいなと思った。
この時系列が逆というのが、よく効いていた。
今こうしてここで会えている、という事実に、ただただ心がぎゅっとなるのは、自分もそれなりの時間を重ねたからなんだろうか。
雫というかたちが、しずくという人が、彼らを繋ぐ存在で、それは何年経っても変わらない。
30年という時間の中で、誰が何をと深く語られなくても、それぞれの人生の色々を思う。
もがきながら悩みながらも人生は続く。しずくと珠の手のサインは、読んでいる私たちにも送られたような気がして、歩き出す一歩になると思う。
「今日が、雨でよかった」読み終えてこの言葉の意味がじんわりと心の奥にしみてくる。そして再度読み直した。過去を知り読み直すと登場人物たちの言葉の意味や、語られる思い出話に理解が深まった。もし紙の本だったら最初から付箋を貼っただろうなと思うほど、たくさんの心に残る言葉と問いがあった。
中学校で出会った4人を軸に現在から過去へと5年毎に遡りながら30年の物語は進む。永瀬さんに秘密を話したがる、森くんと高峰くんとは対象的に訊ねないと話さないしずく。
「人は人。自分は自分。あなたたちは好きにしろ。私もすきにする。このスタンスを得るまでに、なんと四十年もかかってしまった」永瀬さんのこういう考え方が好きだ。しかしこの境地に至るまでの日々にも色んな壁があった。そんな境地になっても、他人にもっと〇〇したらと思ったりもするそんな心情がリアルだった。人は人と思っていても私も他人に対して同じようにもっとを求めてしまっているなと思い知らされた。
寺地先生の作品はほぼ読んでいるが、この作品もとても好きだ。
読みながら「雨垂れ石を穿つ」という言葉を思い出していた。言葉の雫が一粒ずつ私の心の奥底の凝り固まった思いを砕いてくれるような作品だった。
リフォームジュエリーの『ジュエリータカミネ』で、専属のデザイナーとして働いてきた永瀬珠による一人称で進む。2025年4月から始まる物語は、いきなり店の廃業=失業という重苦しい展開となるが、その先は1章ごとに5年ずつ遡っていく珍しい形式だ。
過去に遡る形式のため、現在の時点ではうやむやにされていた出来事が、次の章(5年前)で明確になったりする。登場人物たちのつながりも、曖昧な状態から徐々に肉付けされていくような印象だった。
そしてタイトルの読みである「しずく」という名を与えられた人物が、この作品のキーパーソンだと読んだ。主人公は実はしずくで、珠は語り手に過ぎないのではないかと。
あまり大きな事件は起きない淡々とした小説だが、なかなかに味わい深い作品だった。
リフォームジュエリーで働くデザイナーの女性が主人公、同級生である社長、友人で同じビルで働く森君、職人で親友のしずく。テーマは永遠の定義。時系列が現在から過去に推移していくことで、四人の関係性が浮き彫りになっていく味のある佳作です。そこにある優しさがいい。ダメ人間の高峰社長ですら最後は善人に思えてくる。
長年勤めた会社が無くなる。今日が引っ越し、最後の日。珠は25歳から20年この店に勤めた。ジュエリーデザイナーだ。専属デザイナーと紹介される。悲しく淋しい日なのに晴れのよい天気だった。物語はだんだん過去へ遡っていく。中学で知り合った二人との日々だが人生だから色々ある。商品でもある雫、その深い意味を知る。神の涙が川へ、海から空へ戻る。その繰り返し。自分の人生と重ねながら読んでいく。人生とは肩の力を抜きながら考える。そしてなぜかすっきりしている自分にほっとする。
「雨の雫は空から地へと降り注ぎ、やがてあつまり、川となり、海に流れつき、また空に帰る」。その巡りの起点となる雫は、それゆえに「永遠」を象徴するそう。「永遠」が、決して形を変えることなく続くもの、ではなくて、変化を繰り返しつつも続いていくもの、であるなら、人の人生もまた、永遠と言える。禍福はあざなえる縄…、ではないけれど、良いことも、悪いことも、出会いも、別れも単なるステージ。大事(おおごと)ととらえず、人生を紡ぐ変化の一つと思えば、それが生きていくということと、少し心も軽くなる。
中学時代の出会いから、30年。時々に訪れる人生のままならなさも、本人は決して口にしなくても、いつだって理解して、見守り、そして、いよいよという時には、誰かがすっと手を伸べる。そうやって救い救われ続いてきた4人のつながり。どこにいたってお互いがお互いのよすがとなり、きっと”永遠”はこれからも続いてゆくのだ。
「今日が、雨でよかった。」
期待よりも不安の大きい新しい門出の日、雨天はむしろ、身軽な一歩を踏み出させてくれる。
大好きな寺地はるなさんの新刊、楽しみにしていました。
最初は淡々と読んでいましたが、途中から引き込まれて、最後は余韻の残る素敵な作品でした!
最後まで読んだら、また最初の方が気になり、読み返したくなる。
しずく形のネックレスのこととか、高峰のこととか、いろいろあるけど…
みんな4人とも不器用で、もどかしくなるけど、ゆっくり進んでいくのもいいのかな、と思わせてくれました。
リフォームジュエリー、とっても素敵でいいな~。
読ませていただき、ありがとうございました!
つながりと、再生。まさにその言葉通りの物語だった。
登場人物は皆、何かしら生きにくさを抱えていて、それに抗いながら生きている。
周りの全ての人に理解されなくても、一人でもいい、そばにいるひとりにわかってもらえれば。
彼らが自分の生きる道をみつけ、一歩ずつ歩いて行くことを切に願う。
寺地さんの作品は、優しく強い。だから好きだ。
過去に遡っていく章ごとのお話に、最後まで読んで、また最初に戻って読みたくなります。出てくる人たちとのつながりがわかる瞬間がいとおしく、それぞれの状況がどうつながっていくか分かるのがしみじみきます。
主人公ら4人のつながりも現在と過去を知るとより心にぐっときて、また戻って読みたくなる、そんな本でした。
いきなりジュエリーショップをたたむところから物語が始まり??となる。
その後、章ごとに5年づつ遡り彼ら彼女らのこれまでに積み重ねられてきた物語が語られ、深みがどんどんと出てくる。
それを読み終えまた第一章を読むと感慨深い。そしてこのループする事を会社のロゴマークの元として高峰が採用した雫型の説明として美術の先生が「永遠」を語る。最初読んだ時はさらっと流したこの場面が二周目には気になってしまう。
ラストでしずくのパートナーとの会話で「心配する」想いが「もっと…した方がいい」という言葉に繋がるのは実生活でもよくあること。伝え方ひとつで人は変わるのかも…と。
最近、寺地さんにはまっていて立て続けに読んでいる。登場人物がみんないじらしくて愛おしい。前に出るよりは一歩下がってしまう人達にとても共感を覚える。
生きていれば晴れの日も雨の日もある。雨の日は残念な、悪い日のよう思ってしまうがこの小説の最後の言葉がそれを変えてくれる。「雨の雫は空から地へ降り注ぎ、やがて集まり、川となり、海に流れつき、また空に帰る。何かが終わって、また何かがはじまる。傘を開いて一歩踏み出した。今日が雨でよかった」
「雨でよかった」と思えるまでの心の動きが丁寧に描かれていて読みごたえがあった。
4人の同級生の半生が交わり、繋がり、絆を深めていく...
4人それぞれ全く違い、だけどそれぞれに悩みを抱えていて、
お互いを想い合っている。友情よりも深いつながりを感じた。
スマートでかっこよくて人気者だった高峰。でも、離婚を経験。
優しくおっとりした森は大手企業に就職したのに上司にめぐまれず
つまずいてしまう。物静かだったしずく。地金職人になって独立しても
感情を表すのが苦手で、人とうまく関われない。ジュエリーデザイナーに
なった永瀬もまた勤めていた会社のジュエリー部門が閉鎖されて失業する。
それぞれ不器用にもがき、悩み、それでも前に進んでいく。
4人の不器用さが愛おしく、それぞれの幸せを願わずにはいられない。
過去に遡っていくのに最初は戸惑いましたが、様々関係性が明らかになっていくとぐいぐいと引き込まれました。
ほどよい距離感といい不器用ながら相手を想う気持ちといい、あー4人の関係性が羨ましい。
そして、装丁がとても素敵です!!
それぞれが不器用で、でもそれぞれが認めていて、付かず離れずの関係で30年
いろんな姿を見てるからこその信頼関係が心地よい
ところどころで寺地さんの笑える言葉が出てきたりしてニヤッとすることもあり
お店が閉まるということが今の自分の状況と一緒でどきっとしました笑
ジュエリーリフォームのデザインという仕事を珠が心から愛しているのが読んでいてとても心地良かったです。同級生で共に働く高峰や雫の世話を心ならずもしてしまう珠。無表情で我が道を行く雫。坊ちゃんで女性の前では良い格好をしてしまう高峰。時々現れて珠や高峰をアシストする森くん。4人の20年をとても愛おしく感じました。心配していると伝えることが相手のためにはならないという指摘には痛いところを突かれました。大丈夫のサインを伝え合う二人の姿に思わず目から雫がこぼれました。
性別もタイプも考え方もばらばらの4人の同級生。
ジュエリーのリフォームのデザイナー主人公の永瀬、その雇い主の高峰、地金職人のしずく、高峰ビルのテナントの一つだったかに印刷に勤める森くん。
彼らのつかず離れず何とも言えない絶妙な距離感が読んでいてとても心地よかった。
2025年から始まり、5年ごと章を経るにつれてさかのぼっていく場面。その時々の4人の変化。
4人の変化を読み進めると同時に読んでいる自分の変化にも自然と目を向けていってしまう。
良いことがあったり悪いことがあったり色々だけれど、変化を恐れず前を向いて生きていこう。
そんな勇気をくれる物語。
中学時代の同級生4人の30年の物語が、5年ずつ遡って語られる。あの時ああしていれば、みたいな劇的な何かが起こるわけではない。大人になって記憶も曖昧な過去のささやかな出来事、でも今の彼らの大切な部分を確かに形作った出会いや言葉が、あたたかな光を放っていることがとても愛おしい。ままならない人生につまずき悩んでも、きっと恐れなくていい。雨の雫が川となり、海へと流れ込みやがて空にのぼるように、変わりながらゆっくりと進んでいけるはずだから。緩やかにつながる4人の距離感が良い。読み終えて、また初めから読みたくなった。
「あなたにだから話せる」とか「あなたにだけ伝える」とか。
話す側は秘密を託せていくぶんラクになるかもしれないけれど、
そしていつかその秘密を開示する自由も持っているけれど、
託された側は自分の意志ではその重荷を下ろすことができない。
秘密を打ち明けられるのはそんな非対称性のあるものだということが、
この本の本筋ではないながらも、よく伝わってきました。
自分では打ち明けたくないけれど周りに知っていてほしいことを、
「秘密」といって伝えてくる人も世の中にはいると聞きますが、
この本の主人公たる永瀬珠さんはそんなこと思いつきもせず、
みんなの重たい荷物を一人ひっそり抱え続けてくれるひたむきさに、
きっと心を開いてしまう人が多いのだろうなと感じました。
章が進むごとに過去に遡っていく。それによって登場人物それぞれの関係や人物像がとても分かりやすく感じられた。特に大きな出来事が起こるわけでも変わった人物が出てくるわけでもないけれどそこがまた良い。誰もが辛い事や悲しい事があったり悩んだり迷ったりしながらも、その中で小さな幸せや希望を見つけたりしながら生きているんですよね。同級生4人が付かず離れず、それでもずっとお互いを想いあっている友人関係もとても良かったです。
あ、今度はこう来たか!
・・・と、まず思った。
過去に向って動いていくなんて、何度ももどって読みたくなるにきまってる。
きれいにまるめられた毛糸の玉を解いていくように、
逆戻った時間が開かれていく。
そうか、そうだったんだ。
だから、こうなったのか・・とうなずきながら読み進めた。
人間関係が良いのだ。
べたべたせず、突き放しもせず、
それでも、太くつながっている糸が見えるのだ。
この中の一人になりたい。
今回もやっぱりそう思ってしまった。
やられるもんかと思うのに、今回も寺地さんにやられてしまった。
いろいろあっても長く繋がっていられる友達っていいな、と思った。互いに相手の性格が分かっていて、それぞれの生き方を尊重しながらも、事あるごとに自然に気にかけフォローし合える間柄は、人生の宝と言えると思う。宝石リフォームの自社ビルで働く社長とデザイナー、そのテナントで働く職人と印刷会社社員の4人の30年を、遡る形で描く。主人公・珠の感じた思いや、彼らの中学時代の美術の先生の言葉など、寺地さんのグッとくるセリフが其処彼処で胸に迫る。人が自分として生きていくことを何処までも肯定してくれる、共感と希望の物語。今回も超おすすめ!
「親から受け継ぐものは自分で選べる」
リフォームジュエリーを営むタカミネジュエリーで働くわたしはビルの取り壊しに伴う閉店により、職を失う。
小学校の同級生である四人の25年を描いた一作。
寺地さんの代表作になりうる一作なので多くの人に届くであろうと期待してやまない。
時代が逆行していくのにもかかわらず、人物の描写が積み上げられていくのが一見当たり前なんだろうけれど不思議に感じる構成でとても楽しめました。寺地はるなさん。好きで読ませていただく機会が多いのですが、まれに登場人物がもやっとすることがあって掴みきれずに終わることもあるのですが、珠という主人公をはじめ、一人一人がとても濃く印象に残りました。むしろ思いがけない方向に行った二人の関係性が意外でした。