代替伴侶

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刊行日 2024/10/10 | 掲載終了日 未設定

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内容紹介

白石一文、書き下ろし長編小説
「愛の本質」を問い続ける名手が贈る、衝撃の物語。

もしかしたら目の前の妻が、夫が、明日死んでしまうかもしれない。
朝『行ってきます』と言い『いってらっしゃい』と言った人ともう二度と会えなくなるかもしれないんだ。

人口が爆発的に増え、「代替伴侶法」が施行された近未来。伴侶を失い精神的に打撃を被った人間に対し、最大10年間という期限つきで、かつての伴侶と同じ記憶や内面を持った「代替伴侶」が貸与されることとなった。それは「あり得た夫婦のかたち」を提示すると同時に、愛の持つ本質的な痛みを炙り出すことともなったのだった――。

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(あらすじ)

不妊で悩んでいた隼人とゆとりの夫婦。ある日、ゆとりは隼人に別の男性との間で妊娠したことを告げ、隼人の元を去ってしまう。

失意の隼人は「代替伴侶」の貸与を人権救済委員会に申請し、それ以後隼人はゆとりの記憶を複写された「代替伴侶」と生活を共にする。

ところが、今度は隼人が「代替」のゆとりの許を去ることになる。すると「代替」のゆとりはなんと隼人の「代替伴侶」を申請し、それが委員会に認められてしまう。こうして元の夫婦二人の関係は破綻したが、代わりに「代替」同士が共に仲睦まじく暮らすという皮肉な状況が出来する。そもそも「代替」の二人には、自分たちが「代替」であるという自覚が持てないようにプログラミングされているのだ。

その様子を見ながら生身の隼人とゆとりは、あらためて自らの夫婦のかたちが当初から大きく変質してしまったことを思い知り衝撃を受ける。

「代替」の二人の関係は、あり得た未来の、もうひとつの自分たちの姿なのだ。

そして「代替伴侶」には、始動から10年という期限が設定されていた。まず「代替」のゆとりが死を迎えた瞬間に、生身の隼人はある決意をする――。

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【著者プロフィール】

白石一文(しらいし・かずふみ)

1958年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で第22回山本周五郎賞、10年『ほかならぬ人へ』で第142回直木賞を受賞。主著に『不自由な心』『すぐそばの彼方』『僕のなかの壊れていない部分』『どれくらいの愛情』『翼』『火口のふたり』『記憶の渚にて』『光のない海』『一億円のさようなら』『プラスチックの祈り』『ファウンテンブルーの魔人たち』『我が産声を聞きに』『道』『松雪先生は空を飛んだ』『投身』『かさなりあう人へ』『Timer 世界の秘密と光の見つけ方』他多数。

白石一文、書き下ろし長編小説
「愛の本質」を問い続ける名手が贈る、衝撃の物語。

もしかしたら目の前の妻が、夫が、明日死んでしまうかもしれない。
朝『行ってきます』と言い『いってらっしゃい』と言った人ともう二度と会えなくなるかもしれないんだ。

人口が爆発的に増え、「代替伴侶法」が施行された近未来。伴侶を失い精神的に打撃を被った人間に対し、最大10年間という期限つきで、かつての伴侶と同じ記憶や内面を持った「代...


おすすめコメント

09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、10年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞し、これまでに数々の話題作を放ってきた白石一文さんの書き下ろし長編小説『代替伴侶』を刊行します。本作は、「ほかならぬ人へ」「翼」「火口のふたり」を始めとする、白石さんが一貫して追求されてきた「愛の本質とは何か」というテーマに対する最新の回答です。愛にまつわる哲学、すなわちそのかたちが変わっていくこと、その代替不可能性、理想のかたちの模索、生命の有限性について…… この衝撃の物語(メッセージ)にどうぞご注目ください。

09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、10年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞し、これまでに数々の話題作を放ってきた白石一文さんの書き下ろし長編小説『代替伴侶』を刊行します。本作は、「ほかならぬ人へ」「翼」「火口のふたり」を始めとする、白石さんが一貫して追求されてきた「愛の本質とは何か」というテーマに対する最新の回答です。愛にまつわる哲学、すなわちそのかたちが変わっていくこと、...


出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784480805225
本体価格 ¥1,700 (JPY)
ページ数 192

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NetGalley会員レビュー

夫婦にとっての本当の幸せってなんだろう。無限に存在する未来の可能性はあるけれど、隼人とゆとりの代替伴侶同士の夫婦をみて、お互いを愛し尽くすことだけができたらどんなに幸せだろう…!と、2人の愛のかたちに胸をキュッと掴まれました。
そういう風にプログラムされているだけ、と言われてしまえばそれまでですが。
それでも、確かに愛は存在していたはず!
そして「子供」について深く考えさせられる物語でした。
おもしろかったです。

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近未来だろうか。子どもを授かるのに色々規制がある世界。子どもが出来ない夫婦の苦悩やあり方を問う物語。代替伴侶ってなんだ?アンドロイド、AIが発展してそれぞれの人間と同じくらいのものが出来た。しかし限られた寿命がある。という設定の物語なのだが現実の人間と同じように感情がある。こんな世界が現実的に待っているかもしれない。それを知るほど豊かではないが子どもがたくさんいた時代がいかに幸せであったかを再認識する。しかし想像のつかない小説がうまれたもんだと思う。

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「良い家庭を持つことと、良い夫婦でいることは全然違う」

夫でない男性の子を妊娠したことで妻に去られた隼人はアンドロイド製の代替伴侶を作成することに。
その期限は十年間。

夫婦をやり直すチャンスと妻であったゆとりの示す答えとは。
愛について問い続ける著者による新境地。

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不思議な物語ですね。何が不思議かはネタばれすになるから詳しくは書けないのだけど。SFは何十年後かに実現することが少なくないけど、この物語も少子化や人口減少を考えるとそうなるかもと思わざるを得まさんが、そうなると怖い世界かも…。ハッピーエンドで終わるのかなと匂わせて、それをまんまと裏切り切ないラストで終わるところも筆者の筆力でしょうね。

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国連の「地球人口爆発宣言」から半世紀、一人っ子の徹底や不妊治療禁止等々の未来。そしてその為の心の傷を癒す、連れ添った相手のコピー「代替伴侶」が一般化していた。
そんな、同じ心を持った2人ずつの男性と女性を通した、私達の〈愛〉の本質を探すめくるめく旅路。

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国連の「地球人口爆発宣言」、「代替伴侶」、「生活圏分離」等々物々しい言葉が平然と並ぶ。そこから、人口爆発抑制と人権尊重を両立させようとする、社会的にアンバランスな綱渡りの必死さが伝わってくる。でも、人の心はそんなに簡単に割り切れるものでは無い。

本人とコピーの「代替伴侶」、2人の隼人と2人のゆかり。元は同一だった愛する〈心〉。それが異なる考え方をする〈心〉に変わっていく。人との関係が〈心〉とその愛を変えていく様子に、不安を抱きつつ読みながら引き込まれていった。

〈愛〉とは何か。心と体を分離できるこの時代だからこそ、それを突き詰められていく。大切にする愛、求める愛、感謝する愛、嫉妬し恨む愛、裏切らないようにされた愛、そして感謝の末に別れを選ぶ愛。そして、この時代だからこそ成立する、改めて育む〈愛〉。今や人の数より多くなった〈心〉と、その数だけ愛の姿があった。

「代替伴侶」の契約が終了する時に至った。2つの〈心〉のうち、後に生まれたものが消える時。この年月は4つの〈心〉のわだかまりを流し流し落としていた。コピーされた〈心〉との別れは距離に関係なく伝わり、残された〈心〉は素直な気持ちで悼む。消える〈心〉もまた、残ることになる〈心〉に託すものを用意していた。

そして、残された〈心〉の一つは、その〈愛〉が本物であるか試していく。その試みが実を結ぶよう、心から、心から願う。

このような方で〈愛〉を〈心〉を問う小説に巡り会ったことに感謝して、読み終えた。

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物語世界に浸る愉しさを思う存分に味わいました。
複雑な世界観なのに、その複雑さをさらっと最後まで書ける作者さんの筆力に、こんな素敵な作品を書いてくれてありがとうございますと伝えたいです。現実、こうなるかもとこわさも含みつつ考えされられました。

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人口が爆発的に増えた近未来。
不妊で悩む夫婦には、今の倫理観では大炎上してしまうような権利があたえられている。途中まで読むとなぜそんなことが許されるのか?と気持ちを抱く人がいるかもしれない。でも、これは白石先生が「愛の本質」を問う物語だ。だから最後まで読み進めてほしい。

白石先生の作品を読むと不思議な世界観に引きこまれ、色んな形の愛について感じることができる。
どんなに時代が代わり価値観や倫理観が変化したとしても、「愛の本質」そのものは変わらないのだと感じた。

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近未来の夫婦に課せられた、子どもの産み方。人口爆発を食い止めるために、厳しく管理された妊娠のシステム。
圧力の強い社会で、伴侶に去られた者が十年という期限付きで許される、代替伴侶との暮らし。
隼人とゆとりの夫婦の破綻と、そこからの人生の変転。くるりくるりと入れ替わる伴侶の姿に、愛も流転するかのようだ。
別れた後の人生が、照射し返してくる数々の疑問。夫婦の愛とは、どうあれば最善なのか。
かけがえのない唯一の人への愛は一体どこへ向かうのか?突き詰めていく隼人とゆとり、それぞれの懊悩は美しく結晶した。

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本当は…
ずっとそのことばかり考えていた

親の老後とか長女の重責とかなかったら
本当は…行きたかった進路があった
男女同一賃金とか自宅生のみ採用とか
今となっては意味不明の制約がなかったら
本当は…飛び出したい世界があった
年齢とか世間の圧など度外視できる勇気があれば
本当は…異なる人と人生を歩んでいただろう
いつ?いつ?の常套句に翻弄されない強さがあれば
本当は…子ども?いただろうか。どうなんだろう

地球人口爆発宣言、一人っ子政策、婚外子を妊娠すれば強制堕胎、
出産した場合は安楽死が義務付けられている
そして、代替伴侶という猶予

現時点では想像できない事象
だからこそ、今ならば、たちどまり、考えられる
本質を見失わないために
~僕たちには、こういう人生もあったんだね~
その選択を過去形にしないために

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いくら仲の良い夫婦であっても、一般的にはどちらかが先に亡くなり、どちらかは取り残される。でもそのことを意識したことはなかったなと、読み終わってから考えた。 パートナーがいなくなり、人生にぽっかりと穴ぼこがあいてしまうその虚脱感はいかほどのものなのか、想像するだけで恐くなる。

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伴侶を失い精神的に打撃を被った人間に対し、最大10年間という期限つきで、かつての伴侶と同じ記憶や内面を持った「代替伴侶」というアンドロイドが貸与されることとなった。

読み進むにつれて、「代替伴侶」と人間の区別がつかなくなってくる。
そのくらい、アンドロイドは人間の世界に順応し、コミュニティを広げ、親交を深めていく。

人間もアンドロイドも、そこに感情や気持ちがあり、他人に伝えることができるのであれば、そこに能力の差はなく、愛を育むことができるのだと見せつけられた。

夫婦とは何か。人間とは何か。
そんな問いを提示してくれた物語だった。

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~絶対に自分を裏切らないパートナーとの残り10年を、どう暮らしますか?~

カズオ・イシグロの『私を離さないで』を読んだときのような、素晴らしい読後感でした。今、映画化で話題になっている『本心』も、ちょっと近いかな。
白石さんの小説は、『道』に続いて二冊目なのですが、前作に続いて、突飛な設定から、大人の夫婦の感情の機微をうまく描いていると感じました。


最近、こういう小説を書く人が少なくなったと思います。
20年くらい前までは、大人のための小説を書く人がたくさんいて、書店の平台を埋めていました。江國香織、藤田宜永、小池真理子、森瑤子、ほかにもたくさん。
今は恋愛自体が「ツンデレ」とか「甘々」とか、うすっぺらいチープな言葉に還元されて、子どもじみたものになってしまった――というか、感情自体が安物になってしまったように思います。はっきり言ってこれは文学の敗北ではないかとも思います。
大人の感情を丁寧に描くことのできる、白石さんのような小説家を、出版業界は大事にしてほしいです。

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