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この世は生きる価値がある 表紙

この世は生きる価値がある

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刊行日 2025/06/02 | 掲載終了日 2025/06/08

ハッシュタグ:#この世は生きる価値がある #NetGalleyJP


内容紹介

生きることの素晴らしさを斬新な視点で描く、野間児童文芸賞著者新作!

「どうしても、一度、生きてみたいと思ったんだ」

主人公は、人間の世界を知らない「魂」。

ある時、ある中学2年生男子の体に飛び込み、季節がひとめぐりする間だけその子として生きることになる。

聞いて憧れていた世界で、最初は見ること、やること、すべてがキラキラしていたけれど、やがて人と交わるうちに、どうしようもできない苦しい気持ちにも襲われ──。

悩みや痛みに苦しんでも、生きたいと思える日常があることが感動とともに伝わってくる、新しい切り口で青春を描いた物語。

生きることの素晴らしさを斬新な視点で描く、野間児童文芸賞著者新作!

「どうしても、一度、生きてみたいと思ったんだ」

主人公は、人間の世界を知らない「魂」。

ある時、ある中学2年生男子の体に飛び込み、季節がひとめぐりする間だけその子として生きることになる。

聞いて憧れていた世界で、最初は見ること、やること、すべてがキラキラしていたけれど、やがて人と交わるうちに、どうしようもできない苦しい気持...


出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784591186510
本体価格 ¥1,600 (JPY)
ページ数 272

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NetGalley会員レビュー

急死した中学生の天山の体に入った魂は、感情の一つ一つに驚き人生を謳歌していく。そして不登校の女子生徒を立ち直らせようと、負の気持ちに向き合っていく。
「生きる」こととは何かを白紙の眼差しから描いていく、プロローグで終わる人間賛歌!

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中学生2年生天山の死んだ直後の体の体に入った魂《それ》は、生き返った天山のフリをして様々な〈感情〉を始めて一つ一つ体験していく。
ポジティブなもの、ネガティヴなもの。生きている人なら当たり前の感情。でもそれを初めて感じるものとして鋭く描写されていく様子が、胸にぐっときた。特に人の「笑顔」を見た時に浮かび上がる〈幸せ〉が心に迫ってきた。

記憶喪失の天山と偽り、全てを〈初めて経験する〉ことで〈生きる〉ことの喜びを知っていく《それ》の純粋さ。更に他人のさりげない仕草に気づいていく鋭さ。それらは、日常に浸り切っている自分にとっては心が洗われる思いだった。

一方、《それ》の行動を否定し連れ戻そうとする《キツネ》。世界の秩序か個の喜びか。二つの存在はそれを象徴しているのだろうか?

演奏も歌う事も大好き、生きることが楽しい《それ》。だから、宮下の希死念慮ほど《それ》に縁遠いものはない。でもそれがわかる。だから手を差し伸べようとしたのだろう。でも《それ》や《キツネ》が存在していたとしても、万能の「魔法」はない。だから、死を望む心に対しては地味に対応していくしかない。私達と同じように。

なら、それを実行していく《それ》が味わう胸の痛み、初めてのネガティヴな気持ちは何なのだ?それは「命」への責任感?死んだ天山の命への?死にたがっている宮下の命への?

でも、これだけは言える。みなが生きている「この世界は素晴らしい」と。そして、苦しみがあるからこそより輝く、と。ネガティヴがあるからこそ、ポジティブに大きな意味がある。

とうとう、間借りしていた期限が迫ってくる。天山の体と《それ》の繋がりが切れそうになっていく。だから、《それ》は天山の中から世界を見ていく。そうなったからこそ、《それ》は感じ取れてきたのだろう。「人の心」を。表面的な「楽しみ」の奥にある「人の心の優しさ」を。ぶれることがあっても、みんな「いいやつ」なんだ、と。そう、生きるとは何かを。
そして、宮下に対しては感じていた苦しみは、《それ》の出自に関係していたのだと、遅まきながら気がついた。《それ》にとっては本来あり得ない気持ちだったのか。だからこそ、本気になった。必死に助けようとしたのか。

そうして、プロローグでこの物語は終わった。その意味に気づいた時、この世界で生きていく者達への人間賛歌への涙がとまらなかった。

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面白いといっては語弊がある
だがしかし 小説ならではの空想にどっぷり浸かれた 
わーっ 澄み切った今日の青空に 大きな声をだしたくなるような読後感
~主人公は、人間の世界を知らない「魂」~
宮藤官九郎さんを彷彿とさせる かっと跳んだ内容紹介に
情感をひきこまれてしまう 予感があった

声を出すこと なにかを食べるって はじめての風呂 中学3年の合唱コンクール 
自分に笑顔を向けてくれる人がいるということ 好きという感情 
体を持って生きる やがて 人としての苦しみを知るようになる
その至極当たり前
許された限られた時空のなかで それはとても刹那な時間だかもしれない

それでも これほど生にまっすぐで生きることへの渇望を堂々と吐露する
~だって、生きたいんだもの~
これを上回る名言が今は浮かばない 尽きる
喝采

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自分が生きる価値を感じる瞬間はありますか?
自分の存在を否定したり、希死念慮を持ったりすることはありませんか?
生きていると、嬉しいことも、悲しいことも、辛いこともあって、日々いろいろな感情が湧いてきます。感情は揺れやすく移ろいやすいものです。

中学2年生の体に飛び込んだ「魂」が主人公。
でもその体を使えるのは季節がひとめぐりするまで。
目にしたものに感動したり、友達との日々を楽しんだり、むかついたり。生きるとはなんと忙しいことでしょう。
この世に生きることに憧れた「魂」
最初はただ楽しんでいるだけなのに、次第に違う感情も湧き上がってきます。感情が揺れ動き苦しいこともありますが、これこそが生きるということなのだろうなと思います。

ただ生きていれば価値があるという安直な展開ではなく、苦しい思いをしている人に対してもぎこちないけれど精一杯の思いを伝えようとする姿にも心打たれました。
もしかしたら辛い思いをしていて『この世は生きる価値がある』というタイトルに抵抗感を抱く人がいるかもしれません。そんな人にはいつか感情が落ち着いたときに届いてくれたらと願っています。
無理に背中を押すのではなく、季節がめぐる中で揺れ動く気持ちを丁寧に描き、寄り添ってくれるような物語でした。
読後には私自身の視界もクリアになり、見上げた空がいつもより綺麗に感じました。

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引き込まれるプロローグから読み始めます。今まで人という形を所有していなかった魂が人間に入り込むという話であることは紹介文から知っていました。
 主人公は目覚め、《鼓動》というものを理解したり、《色》や《電気》という言葉を理解していきます。はじめて音というものを体験します。ここで、読み手は、主人公がいわゆる人間になったことのないある魂であることを思い出します。肉体を得てはじめて「生まれた」のです。一瞬、映画『ジョー・ブラックをよろしく』を連想させました。
 数ページ読み進んで最初から読み返すと、「すべすべしたシーツ」や「軽い布団」、「清潔なシーツのにおい」「天日干しした太陽のにおい」など、いかにも人間の五感による経験がないとわからない表現をしていることに気づきます。窓の外で散りゆく花びらを見てすぐにそれが桜だと理解し、こんな美しいものを見たのは生まれてはじめてだと思う感覚も、不思議です。肉体を通した五感に基づいた感覚を、人間として生まれてすぐにどうしてわかったのか、謎でした。正直、最初の2ページで引っかかることがありすぎて困惑したのですが、これから読む方はここで読むのをやめず、このまま進んでください。やがて、はっきりと、その理由が露呈していきます。
 些細な日常を生まれてはじめて味わい楽しむ主人公のドキドキを、手に取るように感じられます。はじめて肉体を獲得した魂が天山という少年になりすまし、生きる喜びを表現していくのです。この問題だらけの世の中で、風呂に入ったりプリンを食べたりだれかの笑顔を見たりという日常生活がどれだけすばらしいことか、そして自分が自分であることの大切さを思い出させてくれるでしょう。
 そしてまた、ただ楽しかった主人公が自我に目覚め、退屈や不快感という、負の感情を覚えてはじめて本当の人間となっていく過程こそ、読み応えがあります。非常に宗教的な考えかたや描写も、無宗教の私に違和感なく入ってきました。エピローグがすてき。

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なんとダイレクトなタイトル!でも様々な生き辛さを抱え苦しむ思春期界隈の子どもたちに、何としても伝えたい、分かって欲しい心からの必死な言葉ではないだろうか。風邪を拗らせ急死した中学生・天山の身体に、人間の世界に憧れた"魂"が入り込み、記憶喪失と共に生き返った"ニセ天山"として生きる話。五感や身体で感じられる感覚全てが新鮮で、喜びに溢れる日々を過ごす描写は、人間に生まれたからこそ得られる幸せそのもの。でもその幸せに、人は普段あまり気付けない。"今ここ"を味わう幸せ実感は、きっと悩みに立ち向かうパワーとなる。斬新な1冊!

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「この物語が誰かの命を救いますように」

そう願っている自分がいました。

生への渇望がこれほど響いてくる本を
他に知りません。

当初は、人間賛歌的なタイトルに
暑苦しかったらどうしようと
思いながら読み始めたのですが、
いきなりヒヤッとさせられる展開に
首根っこを掴まれました。

さらに死の匂いが濃くなってくると
心臓までもわし掴み。

気づけば物語の虜になっていました。

この本の素晴らしさの秘密は、
第一に、コントラストにあると思います。

生きたい少年と死にたい少女の対比。
単純思考から複雑系への変化。
冷静に見えたナニカから溢れる熱量。

こういった振れ幅の吸引力が
私を捕らえっぱなしだったんです。

そしてメッセージ性。

「生きて!」という著者のひたむきな祈り。

これが主人公の命を燃やすさまを
通じて、幾度も全身に降り注いできました。

まるで魂から洗い清められるような、
不思議な読書体験になりましたよ。

なるほど、悲観の極みにいる人には
魔法の治療法も、すぐ効く言葉も、
ないのかも知れない。

けれど、この作品に出会えば、
出会いさえすれば、何かが変わるのではないか?

純粋で真っ直ぐなあたたかさが、
心にスッと沁み込むのではないか?

そんな気にさせられる一冊でした。

ごく自然な形でメンタルヘルスを
学べるのもこの本の魅力。

セルフケアの方法は「食」を含めて、
少なくとも3種類はありました。

外部からの働きかけについては
さらに多く、しかもリアルに刺さる
イメージが湧きました。

いずれ読者自身や周囲が心の罠に
はまる場面に置かれるだろうことを
考えると、ストーリーを通じて
予習できるのはメリットしかありません。

この物語は暗闇をさまよう人々を照らす幾筋もの光です。

その輝きでひとりでも多くの人を
照らして欲しいと願わずにいられません。

(対象年齢は11歳以上かな?)

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予測不能の展開に始終、ジェットコースターに乗っている時の叫びだしたい気持ちと、いつもとは違う部分に焦点を合わせて見えてなかったものを認識した時の動揺とで、心は大きく揺さぶられ続けました。
この物語の主人公はインフルエンザで亡くなった天山…ではなく、死にたてホヤホヤの身体に入り込んだ魂のような存在の天山もどき。彼には人智を超えているとしか思えないほどの知識があるけど、それにはムラがあり、体験がともなってないちぐはぐな状態で、読んでいるこちら側も戸惑ってしまうが、生きている喜びがひしひしと伝わってきて、天山もどきを元の場所へ戻そうとする謎の追っ手であるキツネに少し同情してしまう。
天山をアシストする親友や登校拒否中の同級生、進学を望まない父親、何かを隠す祖父母…周囲の様々な人との交流により少しずつ“喜び”以外の感情も芽生え、生き続ける難しさにも思いを馳せるようになる頃にはタイムリミットが近づいてくる。
一ヶ月ずつ丁寧に描かれているので気持ちの成長も把握しやすくて、天山もどきの“人として生きる事”への願望とか執着が不思議だったんですが、彼が何者なのか分かった瞬間、納得とやられた!感が凄かったです。
ひと足早く読ませて頂き、ありがとうございました。

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そうなんだなあ!
読み始めの実感は森絵都の「カラフル」のオマージュなのかな? でした。
おそらくはそこからスタートして、そこに作者が抱いているテーマをより斬新にアレンジして加え、より明確にしていったのだろうなあ。
宮崎駿っぽいタイトルですが、いえいえ、ここまではっきりと提示してこその長谷川まりるさんだと思います。
それに、それほど、今、子どもの自殺という問題はエスカレートしているのですから。
この作品がたくさんの子どもたちの手に届けばいいなあと思います。
あと、もうひとつ別のラストが用意されていて、みんなが未来を生きている、そんな姿も読みたかったなあ。だって、そんな楽観的な希望の展開こそ、苦しんでいるみんなは望んでいるのでしょうから。
読ませていただきありがとうございました!

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森絵都の『カラフル』が大好きです。
本書のあらすじ紹介を読んで、こちらを思わせる内容であったため読ませていただきました。
主人公が名もなき「魂」であることからまず面白く、一体どんなラストを迎えるのだろうと
最初から最後までわくわくしながら一気読みでした。
「魂」が出会う女の子が抱える悩みは重いものですが、根っこから明るい魂くんのキャラのおかげで
終始明るいトーンで話が進むのも安心感があってよいです。
同世代の読者のこどもたちも、同じような悩みを抱えた子や、その友人のそばにどのようにいるとよいか
ヒントになるのではと思いました。
この世は生きる価値があるよ、というまっすぐで光に溢れたメッセージがあたたかく、
胸の中にすうっと入ってくるような心地よい作品でした。

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