蛍たちの祈り
町田そのこ
ログインするとリクエスト可能か確認できます。 ログインまたは今すぐ登録
出版社がKindle閲覧可に設定した作品は、KindleまたはKindleアプリで作品を読むことができます。
1
KindleまたはKindleアプリで作品を閲覧するには、あなたのAmazonアカウントにkindle@netgalley.comを認証させてください。Kindleでの閲覧方法については、こちらをご覧ください。
2
Amazonアカウントに登録されているKindleのメールアドレスを、こちらにご入力ください。
刊行日 2025/07/21 | 掲載終了日 2025/07/21
ハッシュタグ:#蛍たちの祈り #NetGalleyJP
内容紹介
蛍が舞う夜、中学生だった民子と隆之は罪を抱えた。十五年後、二人の再会をきっかけに、周囲の人生が大きく動き出す。「家族」と「罪」に翻弄される人々に温かな眼差しを注ぐ感動の連作長編。
蛍が舞う夜、中学生だった民子と隆之は罪を抱えた。十五年後、二人の再会をきっかけに、周囲の人生が大きく動き出す。「家族」と「罪」に翻弄される人々に温かな眼差しを注ぐ感動の連作長編。
出版社からの備考・コメント
・多くのレビューをお待ちしておりますが、物語の核心をつくような、所謂「ネタバレ」はお控えください。
・ネタバレ行為はネットギャリーのみならず、読書メーター、ブクログ、Twitter 等の多くの方が目にする場でも同様にお控えいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
・本作は校了前の大切なゲラデータを著訳者よりご提供いただいた上で公開をしています。本作の刊行を楽しみにお待ちいただいている、多くの読者のためにも、ご理解、ご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
・多くのリクエストをお待ちしておりますが、過去のフィードバック状況やレビュー内容からリクエストをお断りする場合がございます。予めご了承ください。
・いただいたコメントは帯やPOP、X等SNSでのご紹介など、弊社販促活動に使用する場合がございます。予めご了承ください。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784488029296 |
本体価格 | ¥1,800 (JPY) |
ページ数 | 288 |
関連リンク
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー

罪を背負うということ、罪を背負わせられるということ。その過酷さに胸を痛めては、なんで、どうしてと、思わずにはいられません。でも、どんなにつらい現実を生きていても助けてくれる人がいて、そして誰かの助けになれることもある。
正道の人生をみていると、生きることは痛みだけではない。優しさに触れる瞬間もあるんだと、希望が湧いてきました。
また、物語のなかのたくさんの叫びに胸を打たれました。とくに正道の言葉は鋭い!沁みる!
「おれが、こうされたかったからだよ」「愛と罪は別だ!」「しあわせをくれたひとには、最後は『ありがとう』しか言えないんだな。」などなど、ガツンとくるものばかり。
ラストは祈りが届く瞬間、祈りが生まれる瞬間をみた気がします。
読者の胸にあたたかい祈りが届く一冊。
素晴らしい作品をありがとうございました。

連作作品。視点が変わりながら、正道が生まれる前から青年になるまで語られていく。
隆之と正道の出会いでもある2章目「少年の日」が良かった(実際は、1章目と2章目の間に、書かれていない出会いがあったのだと思うけど)。
3章目「神様にお願い」で登場した可憐が、その後どうしたかなと気になる。正道によって救われたけれど、うまく大人になれただろうか、、、。
直前に読んでいた町田そのこさんの作品が、『コンビニ兄弟』シリーズだったので、今作のテーマの重さにぐっときたけど、“底“と思える状況の中でも人の優しさを見ることはできるのだなと思うような、そんな作品だった。
そして、見守りたくなるような人物たちが多く、ハラハラしながらも応援してしまった。
300ページに満たない作品だけど、じっくり読み込んでしまう物語だった。

「逃亡のよる」で、正道のルーツである幸恵のエピソードから始まり、正道が成長する過程を通してストーリーが進んでいきます。「少年の日」も「神様にお願い」も、禄でもない教師が子どもたちを更に追い詰めてるのが腹立たしい。でも、正道の誕生に立ち会った隆之との再会が正道を救い、「少年の日」のラストには明るい兆しが見えました。「神様お願い」からは、正道が人を救ったり助けたりする姿に、頼もしさを感じつつもせつない気持ちになりました。隆之が自分の罪に課した罰もだいぶせつないです。子どもたちには健やかに育ってほしいという願いを正道も口にしますが、多くの大人たちがそう願うのにも関わらず、不幸な境遇の子どもたちは大勢います。子どもたちが無事に自分たちの望んだ未来を手に出来る未来があるべきなのに。つらい描写の中にも所々救いがあって、ホッとできるお話になっていました。

「親ガチャ」「毒親」という言葉が一般的になってから数年が経つけれど、この本を読むと改めて親子って何だろう、家族って何だろうという考えてしまう。
血のつながりよりも、他人に救われることだって、きっと多い。どんな人に会うかによって、その後の生き方が変わることもある。それならば、できるだけ誰かにとっての小さな小さな光になれたらと願うような物語だった。

産まれる前から様々な人とその死に関わってきた正道の半生。その生き様に、親子関係とはついてまわるもので、家族とはつくっていくもの。そして何よりも運命とは人が運んでくるものと感じた。
---------------------
『逃亡の夜』
生きる気力もなくなった幸恵に残されたのは、お腹の中の子の胎動だけ。
やってくる運命には2種類ある。突き落とす運命と、救い上げる運命。そしてどちらも運んでくるのは人。幸恵のもとへは逸彦と隆之が運んできた。
そして自ら選ぶ運命もまた、人との関わりの中での選択となる。幸恵は15年前に続いて2回目の辛い運命を選ぼうとする。でも今回はお腹の中の命が、産まれる前からの親子関係がその選択に待ったをかけてくれた。だから幸恵は始めて強い意志を持って、最後の選択をしたのだろう。
『少年の目』
優等生の小学5年生の正道。しかし、引き取った夫婦など彼を取り巻く人がもたらす運命に心が引き攣った。その中で、正道は自分を知り、他人を知り、そして心が限界を超える寸前に佐吉に会う事ができた。同じ佐吉なのに人々と正道の目に映る様のなんと違うことか。だからこそ佐吉が正道の元へと連れてきた運命は、救い上げる運命だったのだろう。
そして、佐吉の息子隆之と幸恵の息子正道のやり取り。親子とは何かを考えさせるとともに、それを超える、家族をつくっていく結びつきもあり得ると信じさせるものだった。だからこそ、正道は歩んでいくだろう。その名前に相応しく。
『神様にお願い』
正道が転校してきた中学校の同級生となった可憐。彼女も、正道や隆之とは異なる親子関係に振り回されていたとは。やはり、彼女の運命も母からの破綻という形でもたらされた。
それに対し、産まれる前からの自分の話をする正道。〝その臭い〟がとれないという正道。だからこそ、「自由に踏みにじっていいのは、自分の命だけだ」から続く、彼の言葉を読むのが辛かった。声変わりもしていない正道に大人びた雰囲気を纏わせてしまっている本心だから。そして、そこから助けてもらいたいと願っているから。
『しあわせのかたち』
運命は人がもたらすもの。ならば人との結び付きのない紅実子には、運命は訪れない。だから悩むこともない。そんな彼女の人生に関わってきた隆之と正道。紅実子から見た2人の様子が語られていく。似た雰囲気をまとった、でも親子ではない2人の。
そんな紅実子も、初めて自らの意思で運命を選択する。やはり人と繋がりたかったから。そんな紅実子と彼女のお腹の子に、正道は自分と幸恵を投影したのだろう。過剰と言ってもいいほどの「子どもの親への愛と幸せ」ついての想いを彼女に訴える様子に言葉もなかった。3年前の可憐との落ち着いたやり取りとのあまりの差に、正道の心の深い傷を見た思いだった。
しかし、この結末とは。正道の心の傷が更に深くならないか、その事で頭がいっぱいになった。
『蛍が舞うころに、また』
20歳になった正道。でも葬式や火葬など、死に関係する事柄は今だに辛すぎるのか。
でも、「幸せをくれた人には、最後に『ありがとう』しか言えない」との気づきは、隆之の最後に残してくれたものなのだろう。そして、幸せに手を伸ばせなかった人への同情と共感。それを理解しない者への怒りが言葉になっていく。ただ、神代がいてくれた事と、血の繋がらない家族をつくれたことで、正道はどれだけ救われてていたことか。これも、人が連れてきた運命。
そして、あまりにも正道らしい就職先。とうとう22歳の誕生日、正道は蛍を見るために「あの場所」に戻る。そして、隆之が幸恵を励ますために見せたものを、神代を通して知る。希望の光を。やっと、やっと正道が子どもらしささえある笑みを浮かべることができたその時、2人は新たに見たもの。それでようやく運命が一回りした。
だから、これから正道は自分の運命を創り出していくのだろう。彼に、本当の意味での幸あれ。

聖書の勉強のために通っていた修道院でシスターから「人はみな原罪を背負って生まれてくる」と聞き、
「え?知らんうちにこの世に存在していたのに、原罪といわれても理解できん」と思ったことを思い出しました。
そしてこの本を読む間、この世界にのめり込みながらどこか「読む側の立場でよかった」とヒリヒリした想いを
抱えながら読んでいる自分に気づきました。
それほどまでに、1つひとつが深い連作短編集なのです。
親は選べないが子も選べない・・・なんと過酷な言葉なのでしょうか。
それぞれに出てくる登場人物たちの境遇が、身近なようでとても厳しくそのなかで隆之の存在が光り輝くように
見えたりもする。決して聖人君子ではないのに。
暗闇をほんのり照らす蛍の光と、朝の空に救われる。
ずっしりと重く、それでいて爽やかでもある読後感に包まれる本でした。