
みんなで決めた真実
似鳥 鶏
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刊行日 2025/08/04 | 掲載終了日 2025/08/06
ハッシュタグ:#みんなで決めた真実 #NetGalleyJP
内容紹介
//ミステリ雑誌《メフィスト》の人気作、待望の書籍化!!!!!! //
裁判中継が国民的娯楽に!?
真実なき時代のモキュメンタル・ミステリ!!
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犯人はあなた。
名探偵がそう決めました。
裁判の生中継番組が一大エンターテイメントとなり、「名探偵」が活躍するようになった社会。法学部生の僕はじいちゃんと裁判中継を観ていた。
一瞬でトリックを暴く名探偵。有罪は確定。しかし、じいちゃんは言う。
名探偵の推理は間違っている。
凄腕の探偵だったじいちゃんは法廷でかつての弟子と推理対決をすることに――。
論理(ロジック)の刃は、
空気で決まる“真実(フェイク)”を切り裂くか?
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担当編集者より
フェイク・ニュースに騙されたことはありますか――?
ミステリ作家・似鳥鶏が描くのは“おもしろい嘘”が真実より優先されるようになった社会。
裁判の生中継が人気コンテンツとなり、“考察”が一大ムーブメントに。
こんな社会になったら怖いなあ(もうなってるかも?)、と思いながらお読みいただけますと幸いです。
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著者/似鳥 鶏(にたどり・けい)
1981年千葉県生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で第16回鮎川哲也賞に佳作入選しデビュー。魅力的なキャラクターやユーモラスな文体で、軽妙な青春小説を上梓する一方、精緻な本格ミステリや、重厚な物語など、幅広い作風を持つ。デビュー作を含む「市立高校」シリーズや、「戦力外捜査官」シリーズ、「楓ヶ丘動物園」シリーズなど、複数の人気シリーズを執筆している。他にも『叙述トリック短編集』『推理大戦』など多くの著作がある。「戦力外捜査官」シリーズは、武井咲・EXILE TAKAHIRO主演で連続ドラマ化された。『彼女の色に届くまで』は本格ミステリ大賞、第70回日本推理作家協会賞短編部門の最終候補になった。『推理大戦』はぼんタメ文学賞2021下半期(たくみ部門)大賞を受賞。
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★★★
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恐れ入りますが<講談社 書籍営業部>まで直接お問合せをお願いいたします。
★★
出版情報
ISBN | 9784065399071 |
本体価格 | ¥1,800 (JPY) |
ページ数 | 304 |
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名探偵の活躍がテレビのエンターテイメントとして利用される未来の話。
ミステリ好きとしては、一度でいいから名探偵による華麗な推理を拝聴してみたい、と思っている。だから、そんな私の願いを聞き入れてくれている作中の世界観に何も考えず没入しそうになった。
しかし、そこで繰り広げられている推理と基礎の内実を知れば、『なにかにつけてエンターテイメントとして消費することの危険性』に触れることとなった。
場を盛り上げるために必要なのは、名探偵が披露する且つ『みんなが求めている真実』。だから、たとえ真犯人を逃そうとも、正しい正義による真実は水を差す迷惑なものでしかないのだ。
では、濡れ衣を着せられた人はどうなるのか。フェイクに歯向かう人はいないのか。
そんな疑問や批判は作中でも噴出するが、『名探偵の絶対性』や熱狂する世論には敵わない。その虚しさに心折れそうになるも、中盤以降に発生する事件によって形成は変わっていく。
正義を取り戻すことができるのか。
大衆という巨大な壁に、穴を穿つことはできるのか。
名探偵の絶対性、や彼らの存在意義というものをうまく利用した終盤のたたみかけが良かった。
そうして、先述した『名探偵を拝みたい欲求』に決定的な答えを突きつけられ、私は恥じ入るのだった。
エンタメに溢れる現代だからこそ、棲み分けの必要性を知るべきなのだ。

面白すぎてびっくりした…
コンテンツ化された”名探偵”、SNSに依存した現代社会を揶揄するような舞台設定に、風穴をあけるおじいちゃん名探偵!
言語化することがとても難しいのですが、とにかくマジで面白いし、おじいちゃんがとても格好良いです。
ミステリ好きな方必読!一度読んでみてください。

裁判が娯楽となった世界。空気で人を罰し、考えることをやめた恐ろしい世界だと思う。探偵役が事件を解決するミステリーというよりは、反論ショーのようなミステリーである。
“真実に面白いつまらないもない。作られた真実に何の意味があるのかわからない。”今もしそう思えているのであれば、まだ本のような世界は訪れていない、訪れないと信じたい。
しかし、SNSでは私刑がおこなわれ、今を生きるみんなが思考停止せず考えられるようにならなければ、いずれ訪れる世界なのかもしれない。

裁判中継が、まさかの国民的娯楽番組に!
しかも「名探偵」が、犯人を決める。
攻めすぎなくらい大胆な設定なのに、それがもう、とてつもなく面白い。
空気で決めるという経験はありませんか?
あの人が言うなら正しい気がするとか、声の大きい人の意見がなぜか通ってしまうとか。
そんなふうにして、真実がねじ曲がっていくこともある。
テレビは「オールドメディア」と言われがちだけれど、
良くも悪くも、いまでも強い影響力を持っている。
ネットの声だって、決して無視できない。
この時代の空気が、鋭く切り取られていて、本当におもしろかった。
そして、名探偵と対決するじいちゃんが、とにかくかっこいい。
真実よりも空気が優先されがちな世の中に、警鐘を鳴らすような作品だ。

その事件現場は異様だった。被害者、関係者、警察。そして探偵とTVクルー??
あらゆることをエンタメ化し消費し尽くしてしまう今の世を端的に示しているようだ。あり得ないのにあり得るかもしれないと思ってしまう怖さは、嫌悪感にも似た違和感を感じながらもいざそのコンテンツを目の当たりにすると夢中になってしまうかもしれないという予感への気恥ずかしさにも通じるのであろう。
一方ロジックは明確且つ段階を踏むような展開で王道のミステリーとしても楽しめる。
事件発生→謎提示→証拠集め→推理・解決という王道の流れを逆手にとったミステリー。

殺人事件の裁判を「名探偵」というコンテンツで消費する世界。
リアルでやられたらゾッとするけど、何でも娯楽として消費する現代にはありえなくない未来なのかもしれないと思ってしまった。
民主主義を笠に着た行きすぎた正義の弾圧も恐ろしい。
殺人事件の名探偵はフィクションだからこそ輝くのだ。
名探偵じいちゃんかっこいいよー!
だけど紳士探偵の活躍もまた読みたいと思ってしまったので探偵を娯楽として消費する業を背負って生きていきます。
似鳥先生といえばあとがきの面白さなので、あとがきのファンと言っても過言ではない(過言です本編が抜群に面白いです)

大人気テレビ番組の裁判生中継に待ったをかけたのは介護施設で暮らすじいちゃんだった!
テレビ放送での裁判生中継が国民の娯楽として一世を風靡していた。大衆は熱狂し、犯罪の謎を解き明かす名探偵たちが持て囃される。それに違和感を持つ者はいない。だが、じいちゃんは違った。介護施設でのんびり余生を過ごしていたじいちゃんは裁判中継が始まると目つきが変わった。名探偵が流暢に解説したあのトリックは間違いだと断言したのだ。そこからじいちゃんの戦いが始まった。
大衆心理というものは恐ろしい。自分はそんなことはないと思っていても知らないうちに多数派になっていたりする。無意識に思考が誘導されていく。全国放送のテレビ番組は多くの人が影響を受けやすい。テレビで伝えているから正しいのだろうとか、今まではなんとなくそんな気持ちでいた。ネットが普及してSNSでの発信が活発になっている現代でも、まだまだテレビの力が強くネットの意見がかき消されることも多々あるだろう。情報が大量に押し寄せてくる世界で思考を停止して流れに身を任せてるのは楽だけど、考える力を手放しちゃいけない。じいちゃんはちょっとカッコ良かった。

大好きな似鳥鶏さんの最新作ということで、楽しみにしておりました。
いつもと変わらずとっても読みやすい文体で、さくさくと読めました。
脚注やあとがきも面白く、最後まで楽しく読めました。
題材も遠いようで近い、考えさせられるものでした。
学校や会社、友人関係、家族……。
紺野星人の話のように、小さいコミュニティであればあるほど、みんなが面白がる「嘘」が真実になってしまう、それはきっと昔からあって、今も変わらずそこにあるのだろうな。

名付けるのなら近未来ディストピア裁判ミステリーというジャンルになるのだろうか。荒唐無稽な設定でありツッコミどころは沢山ある。が、純粋な娯楽読み物としては楽しめる作品だった。例えば今から見たら魔女狩りなんてとんでもない話だと思うがその時代の価値観では当たり前だったのなら、最初に荒唐無稽といったこの物語が本当に楽しく読めるかは、、、

タイトルが「みんなで決めた真実」
真実って話し合いで決めるの?なんだそれどういうことだと期待して読み始めたのですが
なんだこれ はじめから用意されていたそれっぽいだけでツッコミどころ満載の答えに予定通り人々が納得してそれを真実とするというなんとも恐ろしい物語。
いやいや いくらなんでも人間ってこんなに愚かじゃないでしょって強く思いすぎてどこかイライラしてしまいました それでもとても読みやすく引き込まれる部分もあり途中で投げ出すことはなかったです 現実ではこれからのあり方を問われているテレビ業界がいちばんやってはいけないありえないことのはず 問題提起する声はかき消され大衆はこんなおかしなものを娯楽して受け入れる 正義というのは油断しているとここまで捻じ曲がるぞという警告なのか皮肉なのか
それこそもっと単純にバカみたいなエンタメの物語をエンタメとして楽しめばいいのだろうとわかるのだけど、もう不快で不安で大変でした 当たり前のことを大衆に理解してもらうためにはその当たり前のことをまっすぐに伝えても無理で、それにも目を引く演出が必要だなんてもう頭がクラクラします それでも歪んだ正義が正しい方向に修正されていくラストにようやくホッとしました なんだかんだ著者の手のひらで転がされた感じがします あとがきがとっても面白かったので(笑)

裁判を生中継して"名探偵"が検察側で推理を披露するテレビ番組が娯楽として消費されるようになった日本。"名探偵"の"師匠"であるじいちゃんは疑問を抱くが、そんな折"犯人"にされてしまった男性の父親が駆け込んでくる。じいちゃんは"名探偵"の推理よりおもしろい真実を見つけられるのか?
こんな世界になったら嫌だなぁと小説を読んでいるときは当たり前に思うけれど、未来でこうならないとも限らない、絶妙なリアリティがおもしろかったです。じいちゃんや安藤さん、弁護士の向山先生といったキャラクターがちょっとした癖や言動から人間として立ち上ってくるあたりは、作者の真骨頂を感じ楽しかったです。扱っているテーマは重大ですが、全体としてはライトな読み心地に仕上がっていて、普段ミステリや本をあまり読まない人にもおすすめしやすい一冊です。

裁判の生中継が娯楽として扱われるようになり、「名探偵」が活躍するようになった社会。真実よりその場の空気で全てが決まり、名探偵が犯人と言えばその人が犯人となる。…ありえない!ともやもやしながらも読んでいましたが、おじいちゃんがびしっと決めてくれてスッキリしました!おじいちゃんかっこよかった!読み出したら止まらなくて一気読みでした。とても面白かったです!

とにかく怖かった。身に覚えのない罪を着せられる。冤罪とかいうレベルじゃない。
警察も検事も、推理したとされる探偵だけじゃなく、裁判官も弁護士も、何より本人が一番わかってる「真犯人は他にいる」。
それを誰も声に出来ない怖さ。
そして、そんな社会になりうるかもという怖さ。
何よりその前触れに、無関心でいることが引き金になるかもしれない怖さ。
そんな気持ちで読んでいたから、探偵VS探偵のシーンは手に汗握り、ドキドキが止まらなかった。
正直、「トリックなんてどうでもいい!」と思いながら読んだミステリーは初めてかも!?

事件現場にカメラが入る!ドキュメンタリーとしてリアルタイムに事件を解決!?斬新で面白い!演技なのか真実なのか、どきどきワクワクして読み進めていたので野次馬になった気分でした(笑)
ドキュメンタリーというあくまでも作品としての側面や、実際に捜査が行われている事件としての側面をどちらも一緒に味わえる。更には視聴者として無関係な立場にもなれる。一石三鳥。
場面の切り替えが多々行われるが読みやすく物語に没頭出来る素晴らしい作品でした。

著者の中では真面目な方に分類される作品。
裁判がエンタメ化した世界線の物語。
多くの作品は名探偵をいい意味で使うが、本作はそれを悪い意味でエンタメに落とし込むことで大衆意思の恐ろしさが表されていて新鮮だった。

「事件も裁判も、実はエンタメになり得たんです」
名探偵による、事件解決のドキュメンタリー番組の撮影。
密室のペンションで発生した殺人事件に探偵佐伯が謎を解く。
コンテンツとしての法廷の限界と娯楽の消費と消えゆく名探偵。

裁判がエンタメ化し、あらかじめ世の中が求めるイメージで犯人が決まり、台本のまま裁判が進み、有罪判決がでる社会。
こんな社会、絶対嫌!と思いつつ、普段ドラマや二時間サスペンスを見る時に俳優さんの知名度やイメージで「この人が犯人!」と決めつけることが多い自分を読みながら思い出していました。
やっていることはCDを見て無責任にコメントしている視聴者と一緒だなと……

「犯人はあなた。名探偵がそう決めました」粗筋からはポンコツ探偵が何となく解決するコメディかと思ったのですが、いい意味で違いました。裁判が娯楽として消費される時代、名探偵はテレビの中で鮮やかに事件を解決する。でも犯人は本当にその人なのか?声の大きいほうが正しい、悪いヤツは叩いていい、悪く見えるヤツも叩いていい、そして誰も責任を取らない、そんな今どきの「正義」の危うさ。リアリティがありすぎて、このテレビ番組すでに存在するのでは?と震える。この本自体が社会の異常を察知する炭鉱のカナリアのよう。怖くて面白かった!参院選の投票日にNetGalleyにて読み終わりました。この本をフィクションとして面白がっていて大丈夫だろうか。怖。

空気が正義を決めるということは怖いことだと思う。名探偵が言ったことだから真実であり、それを裁判所が鵜呑みにする。それがテレビで放映され皆が信じて、名探偵の意見に裁判官ですら逆らえないという空気。つまり、これはみんなで決めた真実であり、民主主義なのか。それも犯人は捏造されたものである。犯人にされても、たいした罪にはならない。何だ、この世界は・・・。それを明らかにする名探偵と助手たちの活躍を描いたミステリー作品。かなりハラハラドキドキさせてくれる。楽しかった。

衆愚政治という言葉を思い出しながら読みました。
裁判官て本当に偉いの?とか、偉い人のこと信じられる?とか、
テレビってなんだっけ?とか、三権分立とは?とか、
日頃なぁなぁに流してしまっていることに立ち止まらされるというか。
現在のところエンタメ小説として成り立っているし、読めるけれど、
うっすら他人事とも言えない感じがするのが日本の「空気」の圧力。
おかしいことはおかしいと口に出せる空気の醸成こそが、
民主主義が衆愚政治にならないために大事だなと痛感しました。
お名前は存じ上げながら初読みだった似鳥さん。
あとがきもぬるっと現実からすべっていく感じがお上手でした。

裁判の生中継、探偵が犯人を決める。という舞台設定がスムーズに理解できる構成で、事件・裁判・主人公たち。と様々な場面に切り替わるので、だれることなく最後まで一気に読むことができた。
個人的には、探偵の推理に説得力がなく、この推理で視聴者の多くが納得している。という設定が無理に感じたため、もう少し説得力があれば世界観として納得できたと思う。しかし、それ以外の被害者や裁判官たちが間違った推理に従っている理由や、本編で犯人役を引き受けなかった人の理由には納得感があり、フィクションでありながら現実にも起こるかもしれないと思わせられた。
本作では裁判がエンタメとして取り上げられたことを問題提起しているが、現実でも人のことを面白おかしく取り上げたり、第三者がエンタメとして炎上させる。といった、SNS上の問題にも関わっており、現実問題として考えさせられる結末であった。
また、本作では主人公たちは一般的なキャラクターではあるが、〇〇探偵。といった現実離れしたユニークな探偵たちが登場しており、リアリティとフィクションが上手く融合したエンタメ小説になっていると感じた。

法廷の生中継と聞いて、最初はきわもの的な〈特殊設定ミステリ〉かと思った。だが、実際はまるで違った。
これほどまでに広い視野を持ち、緻密で骨太に構築されたミステリに、ただただ唸らされた。
これは、“ifの現代”における、究極の劇場型社会を描いた作品だった。
殺人現場を名探偵が調査し、その様子をテレビ局が撮影する。さらに、その名探偵を軸に裁判までもが進行し、しかもそれが「生中継」される。検事に代わって、名探偵がトリックを暴き、〈犯人〉を一方的に追い詰める。まるでロールプレイングのように。それを、視聴者は「CD(Case Documentary)」という予定調和の番組として、熱狂とともに受け入れている――この構造に、鳥肌が立った。
テレビ局、警察、司法、そして世論までもが迎合し、「証拠裁判主義」は崩れていく。代わりに浮かび上がるのは、「空気で決める」CD中心主義。人々は思い込みを信じ、疑わず、エンタメの流れを喜んで受け入れていく。
その歴史が、あまりにも緻密に描かれていて、読みながら寒気が止まらなかった。
なぜここまで突飛な設定を構築する必要があったのか。そう思いながらも、読み手の私はその問いを押し殺してページを繰り続けた。
私と同じような違和感を持っていたのは、要介護2の車椅子の老人・芳川だけだった。この〈世界〉にも、共感できる人物がいる――そう思ってホッとした。だからこそ、彼の〈名探偵〉佐伯への反応に、わずかな不自然さが感じられた。
番組終了後、芳川は佐伯の推理をあっさりと覆す。だが、CDでは、「名探偵の推理は間違えない」のが前提。そしてたとえ真犯人でなくとも、〈容疑者〉が自白すれば社会的な救済が用意されている。つまり、名探偵の推理を否定することは許されず、そこには反論の余地さえ存在しない。
善悪よりも、真偽よりも、何より重視されるのは“話題性”――。その構造に、言いようのない恐怖を覚えた。
そんな中で、佐伯の探偵事務所で彼を真正面から見据えて〈正義〉を語る、芳川の姿に胸が熱くなった。大衆の欲望に迎合する佐伯と、その行き着く先を見抜く芳川。2人の対峙が、まるでこの物語全体を象徴しているようだった。
芳川が挑むのは、CD番組内で名探偵の推理を覆し、〈犯人〉の無罪を勝ち取ること。それは、佐伯のみならず、裁判官、検事、放送会社、そして視聴者までも敵に回す闘いだ。今や施設に暮らす、80歳を超えた元名探偵が、その全てに挑もうとしている――この構図がもう痛烈だ。
予定調和を打ち壊すべく始まった作戦。名もなき者たちや、CDに疑念を抱いていた関係者の後押しによって、ついに“放送事故”というかたちで、それは実行に移される。
そして最後に明確になる、「CDの構造的危険性」。その決定打になったのが、単なる傍観者で語り手の筈の悠人が、物語半ばで佐伯にぶつけた抗議とその返答だったとは。
これは、ただのエンタメでは終わらない。この〈ifの現代〉において、一時的な社会風刺にとどまらず、構造改革を促す起爆装置のようなミステリ。作者はそこまで踏み込んで描いていたのか。読み終えて、ただただ舌を巻くしかなかった。
久々に、こんな痛快なミステリに出会った。
だがそれだけではない。これは、〈現代〉の私たちが“意識して向き合わなければならない社会”そのものでもある、と感じた。
忘れてはならないメッセージが、しっかりとここにあった。

いやいや驚きましたね。仮定の話しとはいえ裁判中継が国民的娯楽になるなんて。しかも犯人を決めるのは、刑事でも検事でもなく何と「名探偵」と呼ばれる輩。読み進めながら(舞台が東京なので)「警視庁の刑事部長や東京地検の検事長あたりはこの作品読むとおこるたろうなぁ」と思わずため息をついていると、最後はまさかの…。これを書いちゃうとネタバレになりますからねぇ!

こんなミステリー初めて読みました。
ヒーローが出てきます。
ストーリーは奇想天外な話なのに、違和感なく受け入れられて、しかも現実これからありそうだなと。
殺人事件の裁判が公開されたら観たいし。自分の都合で人の命を奪うような人間は公開処刑にするべきだよ、日々理不尽な人の死のニュースを見ながら思っていることを、現実にしてくれたよねと。
名探偵がTVで活躍なんて、楽しくない訳がない。彼が犯人はお前だ!と解決して犯人は涙の反省、それが見たかったんですよ。みんなそうだよね?ね!
イヤな人なんていないよね?いるの?ダレ?何処に住んでる何て名前?知ってる同中!写真あるよ!
もうすでに、ネット社会での一言がまさに燃え上がるこんな時代に、「いやいやそれ違うでしょう」と当たり前の事を言って解決してくれるヒーローおじいちゃんがカッコいい!

裁判がエンタメ化した。探偵が謎を解き、被疑者がうなだれる。そして、判決。
誰もが探偵の鮮やかな推理を信じこみ、納得する。
台本が存在し、それらしい犯人、視聴率が稼げそうな事件が注目される。
犯人は懺悔し、執行猶予がつき、タレント化していく。そんなちょっと変わった設定。
しかし、SNSが普及し、それによって民意が作られていくこともある現代。フィクションだと過ごしてはいけない恐ろしさを感じる。
作品は軽快なテンポで楽しめた。

今作でも弱者のポジションにいる人への優しい視点が感じられて、あぁ似鳥作品を読んだなぁという気持ちで読了。
舞台は論理的な正しさより「空気」で真実が決まるようになった社会。裁判の生中継が国民的娯楽になり「名探偵」が活躍するように。
法廷はともかく、現実でも学校やSNSでは紺野君の件のように「空気」で「有罪らしき雰囲気」が確定することがある。恐らく自分が吊るし上げられるまで危機感はない。つまらない真実より面白い嘘の方が世間にウケる。犯人が動機に情状酌量の余地がある美男美女なら尚更だ。
もしこの作品のように裁判がエンタメになったら私は観てしまうと思うけれど、じいちゃんのように疑義を感じたら声をあげられるだろうか。
じいちゃん、カッコイイよ。

一見軽い(ライトノベル風)が実は重い作品。筒井康隆の再来かも。北海道大学法科大学院在学中に小説家デビューした似鳥鶏(にたどりけい)の最新作。犯罪が娯楽の対象となり法廷でのテレビ中継が台本で進行するという話なのだ。誇張はあるが将来、実現する可能性はゼロではない。何しろ政治は既に娯楽化している。要は政治でいえばポピュリズム で裁判でいえば、こちらも昨今話題になる「大川原化工機事件」等の冤罪事件を考えると恐ろし話。ちなみに本文中やたら出てくる聞いたことがないCDという言葉。これが本作、唯一の欠点。「Case Documentary」の略で、この種の番組は英語圏ではそう呼ばれているらしい、とあるのだが出典は不明。ただ確かにアメリカでは法廷のテレビ中継が可能で「密着!アメリカ裁判24時」という番組があるそう。私も警察(警官)の行動をテレビカメラが密着取材した番組は知っていたが、まさか裁判までテレビ番組化しているとは知らなかった。もっとも元凶は私が大嫌いな番組だった日テレの「行列のできる法律相談所」(今春まで放送していたがタイトルは「行列のできる相談所」に変わっていた)だったのではないかという気がする。結論として推理小説としては「面白かった」程度だがディストピア小説としては大傑作。

似鳥鶏は、ユーモアの衣をまぶしてエグい中味のものを出すオモウマい作家の筆頭だと思っている。
本作も語り口は軽妙、されど読み進めるうちに、語られているテーマが昨今の日本全体の風潮を激烈に批判していると気がつくことになる。笑って行われていることが怖すぎて、ホラーの感すら覚える。それでも描かれている令和のテレビ番組はあまりにリアルで、チャンネルを回せばすぐ見ることができそうだ。
社会派? ホラー? SF? いいえ、似鳥鶏です。

冒頭、テレビ局のクルーとともに名探偵が登場する様子から想像したものとは全く違う展開で驚いた。この小説はリアリティを求めたものというより極端な世界観のもと描かれているけれど、現実においても「(聞いて見て)ただこちらが気持ちよくなれる物語」を求めてしまう愚かさが人間には、もちろん私自身にもあると日々思わされているのでなんだかぞっとした。あとがきが相変わらず楽しいのが似鳥作品のよいところ。

一世を風靡していたテレビ放送の裁判生中継に出演した名探偵が、一瞬で事件のトリックを暴いて有罪が確定する推理。しかし法学部生の主人公と一緒に裁判中継を観ていたかつて凄腕の探偵だったじいちゃんが、これはおかしい、その推理は間違っていると法廷でかつての弟子と推理対決する展開で、空気感や雰囲気といったものに流れが左右されがちな状況が生み出されて、有力な発言者がそういえば果たしてそれは正しいことなのか。それでもおかしいものにおかしいと言える、論理で真実を導き出すじいちゃんの姿はカッコ良かったですね。

さすが似鳥鶏、の一言。終盤の「みんな忘れっぽく、飽きやすいのだ。」は今(に限らない?)の日本を表してる。殺人事件が起きて名探偵が解決する、がエンターテイメントになってテレビ放送されるようになった日本の話。でも名探偵の推理は穴だらけで…という。解決が主筋ではないから正確にはミステリーではないのかもしれないけど、社会風刺込みの面白いミステリーだった。

名探偵の推理(適当)で犯人が決まる世界。
間違ってても間違ってなくても犯人とされた人には色々と便宜が図られる。
怖い世界だ!!
でその名探偵の師匠が元の正常な裁判に戻そうとしてるのが面白かった。

裁判で「名探偵」が事件を解決する様子が生中継されるテレビ番組。論理的、倫理的な正しさより、空気という同調圧力に支配される世界の恐ろしさを描いたリーガルサスペンス。
こんな事あってたまるか、とひっくり返りそうになる程の理不尽な設定。そう思いながらも、心のどこかで「この空気知ってる」と訴えかけてくるリアリティ。声の大きさで正義が決まってしまう事の危うさと、一方でその声に頼らないと動けない情けなさと、人の狡猾な部分をガツンと突き付けられた。じいちゃんヒーローの鮮やかな活躍から、後からでも過ちを認める勇気をもらえる前向きな作品。
とにかくじいちゃんの包容力がハンパない!どうやってあのじいちゃんが出来上がったのか、じいちゃんと名探偵たちの過去編も読んでみたい。

似鳥鶏氏の作品では、以前『叙述トリック短編集』という作品を読んだことがあった。今回の作品では、トリックの巧妙さや密室の謎といったミステリー要素よりも、裁判が民主化してしまうとどうなるかを描いた社会派の作品であると感じた。心情描写やところどころクスッと笑えるような小ボケなど、作者の持ち味が存分に行かされた作品だったと思う。紳士探偵佐伯と芳川の推理合戦は非常に緊迫感があって面白かった。

密室殺人事件発生!
裁判が中継され、名探偵が登場して解決する…。
ドラマのような状況が現実に繰り広げられる世界。
しかし、そこにはテレビ局が用意した台本があり、本当に犯人か分からないのに、犯人に指定されてると断れないという状況。
なんていうエンターテインメント。
そこに名探偵の師匠による大どんでん返しにグイグイ惹き込まれました!
すごく好きな作品です!

こんな世の中になったら本当に怖い!!!
とブルブルしながら読みました!メディアのために、面白いからとかウケるからとか、そんな理由で殺人犯にされてたまるかー!!
とはいえ、この作品ほどではないにしろ私たちが日々見ているネット記事にどれだけのフェイクが含まれているんだろう。「みんなそう言ってるから」なんて理由では済まされない。たとえ小さな記事だとしても、そんなフェイクニュースの被害者になったら心に一生消えない傷が残る。誰しもが考えを自由に発言できる時代だからこそ、書く側も読む側もをつけないといけないのにね。
あとがきの面白さについつい笑ってしまいました。似鳥鶏さん、以前から読ませていただいてますが本当にユニークな発想で楽しませてくださいますね!

裁判が生中継されエンターテインメント化された近未来、名探偵が登場し、犯人を暴く!
しかし、裏側はテレビ側に都合が良い人物を犯人とした台本が用意されていた・・・
似鳥さんらしい奇想天外な設定でスタート。
スポンサーや制作側の意図で犯人にされてしまった人はどうするの?(真犯人はいるのに)と、思ったら犯人は起訴猶予になり実刑にはならず、代わりに暴露本やTV番組のコメンテーターとしての報酬が用意されている。
このあたりの設定、構成も面白かったです。
次の事件で犯人にされそうになるのが宇宙飛行士の最終審査に残っている青年。
少年の頃からの夢・宇宙飛行士になるためには、何としても冤罪を晴らさなければならない!
そこでかつての敏腕探偵・おじいちゃんが登場して・・・
テレビ探偵との対決もお見事
ただのエンターテインメントだけでなく、何が「真実」であるかをきちんと考えさせてくれる終わり方も良く、伏線回収もしっかりとされていて楽しむことが出来ました。

仕組みがいい。 プロローグとエピローグが別にあるわけではないが、最初のチャプターをプロローグとして使って目を引き、色々な場面を見せながらクライマックスに向かって一歩一歩進んで好奇心を呼び起こした後、クライマックスで事件解決と葛藤解消を見せ、最後のチャプターをエピローグとして使ってきれいに仕上げた。
素材も独特だった。殺人事件の裁判の様子を生中継するなんて、こんなことができるのか。 このように考えながらも、何でもすぐ撮影して放送する現代人たちを考えれば、可能かもしれないと思った。 どうしで裁判を中継するようになったのか、検察側と弁護側に分かれ、証拠と証言を土台に平凡に進行していた裁判になぜ名探偵が登場したのかを詳細に説明し、最初は公正だった裁判がどういうふうに変化したのかを見せてくれる。小さいだけど疑問が生じられる部分をあらかじめ解消してくれるようだった。 このように段階別に着々進む方式が、さらに好奇心を呼び起こしたりもした。面白かった。

犯罪心理やマーダーケースに興味があるのでアメリカの裁判がTVで観れるのは羨ましく思っていたのだが…。本作は日本で裁判がTVショーとして人気を誇っている。それは視聴率第一のもので、全てに台本があり驚く事に名探偵が検察側の席にいる…。まさにディストピア状態。知人の冤罪を証明し、視聴者を納得させ無罪を勝ち取れるのか。こんな話を思い付く作家は凄いと思いながら読んだ。個人的には弁護士のキャラがとても良かった。

この世界線は怖すぎる〜!
名探偵と呼ばれる人たちが殺人事件の推理をして事件を解決。その裁判がテレビ中継される。
犯人はテレビ映えする人が選ばれる。本物の殺人犯かなんて関係ない。
矛盾がある推理だったとしても司法は動かない。そんなことをすれば世間からバッシングを受けるから。
ありえないはずなのに現代の風潮に似ていて危うさを感じた。
間違ったことでも世間の声が大きければそれが真実になってしまう。
これをテレビにもネットにも弱い元名探偵のおじいちゃんがどうやってひっくり返すのか?
いつも物語には関係のない似鳥先生のあとがきも楽しかったです。