匂いに呼ばれて
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刊行日 2025/10/21 | 掲載終了日 2025/10/23
ハッシュタグ:#匂いに呼ばれて #NetGalleyJP
内容紹介
香りは過去をよみがえらせる。
良い思い出も、
そうでないものも――。
すべての香りに物語がある。
時代も距離も越えて辿る、美しく哀しい記憶の旅。
香りと人と時間が奏でるショートストーリー。
悲しみの匂いとはどんなものだろう。人の気配を匂いから感じることがあるが、不在の匂いとはどんなものだろうか。
誰かが死ぬとき、この世界の秘密の一部は永遠に失われてしまう。
人はみずからの秘密を抱えてあの世に旅立つ。残されたものにできることは、物語を語ることだけ。それが真実か否かは一生わからないまま。
秘密はどのような匂いをさせているのだろう。
〈本文「ニューヨークで」より〉
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著者/関口涼子(せきぐち・りょうこ)
1970年東京都生まれ。翻訳家、詩人、作家。フランス語と日本語で創作を行う。1989年、第26回現代詩手帖賞受賞。早稲田大学在学中の1993年、詩集『カシオペア・ペカ』を刊行。1997年、東京大学総合文化研究科比較文学比較文化専攻博士課程満期退学。その後パリに拠点を移し、フランス語で二十数冊の著作、日本文学や漫画の翻訳を100冊以上刊行。2012年、フランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエを受章。2013年、ローマ賞受賞。著書に『カタストロフ前夜―パリで3・11を経験すること』、訳書にM・ウエルベック『セロトニン』、ダニエル・ヘラー=ローゼン『エコラリアス』、P・シャモワゾー『素晴らしきソリボ』(日本翻訳大賞受賞)などがある。2018年、フランス語で『Nagori』を刊行、4つの文学賞を受賞し、7ヵ国語に翻訳される。ピキエ社刊行の食をめぐる日本文学の叢書「Le Banquet (饗宴)」編集主幹。2022年、『ベイルート961時間(とそれに伴う321皿の料理)』の仏語版で第42回フランス-レバノン文学賞審査委員特別を受賞。
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★★★
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出版情報
| ISBN | 9784065412176 |
| 本体価格 | ¥2,000 (JPY) |
| ページ数 | 247 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
匂い 実に奥が深い 物語が 紡がれている
違う国 場所 人 がテンポよく 進んでいく。
匂いって 記憶に直結するな など 感傷に浸りながら 初恋 失恋 大病などを 回想しました。正に 人生において 気がつかないけど 自然と そこにあるものなんでしょうね。
教育関係者 645139
《匂いは記憶を解きほぐし、幻想へと誘う》
目を閉じたら見えなくなる。
けれど、匂いは遮られることなく、訪れる。
この物語の冒頭を読んで、初めてそのことに気づいた。
世界がひとつ広がった気がした。
———
匂いにまつわる幻想的な短編集。
その主人公はすべて“彼女”。いや、それだけではない。
彼、K、Y、S——登場人物たちはいずれも〈記号〉のよう。
そして皆、匂いに囚われ、迷宮のような幻想の世界に取り込まれていく。
たとえば、言葉の奥から立ちのぼる匂いのホログラムを紡ぐ彼女。
夢の中で、赤い糸のような香りを織りあげるSと彼女。
料理の匂いを音楽として聴く彼女。
嗅覚を失って初めて、匂いが“物の身体”を形づくっていることに気づく彼女——。
読み進めるうちに、匂いが“見えてくる”ような錯覚に陥る。
“彼女”たちの体験が、読者のまわりにも静かに漂いはじめる。
そして、物語がひとつ終わるたびに立ちのぼる、新たな“彼女”と新たな匂い。
去り際に残るのは、彼女たちの言葉。
「人は死者と正しい距離を取ることは決してできない」
「影という影は、みな香りを含んでいる」
それは、目眩くような幻想体験の余韻。
短編のあいだに挟まれたエッセイもまた印象的だ。
その放胆なイメージと静かな語りに導かれ、何度も立ち止まりながら読む。
やがてエッセイも、幻想の霞の中に溶けていく。
———
稀有な読書体験のあと、しばし、虚空を見上げていた。
香りの余韻だけが、そこに残っていた。
教育関係者 528943
すべての人に物語があるように、すべての香りにも物語がある。パリ在住作家による耽美な香りが立ち上がる幻想的な短編集。
五感の中で一番強く、長く保たれるのは嗅覚らしい。視て、触れて、聴いて―――比較すると、嗅ぐ、味わうは何故か劣っている気がしていたからビックリ。忘れたい何かに出会ってしまった時は、目や耳を塞ぐより先に、鼻を抓んだ方がいいのかもしれない。
匂いを遠くに届けるテレ=オルファクションなど、ユニークな発想がとても面白かった。
書店関係者 1816442
「香り」をテーマにした短編集って珍しいなと思って読み始めたのですが、想像していた以上に幻想的で、美しくて、どこか哀しさも漂う不思議な一冊でした。
香りは、目に見えないし、触れることもできないもの。でも、ふと懐かしい匂いを嗅いだ瞬間に、ずっと忘れていた昔の出来事や、そのとき一緒にいた人のことまで急に思い出すことがあります。この作品では、そんな「香りと記憶の結びつき」がいろいろな角度から描かれていて、読んでいるうちに香りそのものがひとつの物語を持っているように感じられました。
特に印象に残ったのが、「悲しみの匂いとはどんなものだろう」「不在の匂いとはどんなものだろう」という部分です。
人がそこにいることを、姿ではなく匂いで感じることって確かにあると思います。香水だったり、煙草だったり、シャンプーだったり、その人がよく作っていた料理だったり……。だからこそ、その人がいなくなったあとにも残っている匂いって、もしかしたら姿を見るよりも強くその人を思い出させるものなのかもしれないなと思いました。
「誰かが死ぬとき、この世界の秘密の一部は永遠に失われてしまう」という考え方も、とても切なくて好きでした。
人は誰でも、自分だけしか知らない記憶や感情、誰にも話さなかった秘密を持っていると思います。その人が亡くなってしまえば、それが本当はどんなものだったのかを確かめることはもうできません。残された人たちは、その人が残した言葉や記憶を集めて、「きっとこうだったんじゃないかな」と物語を作っていくしかない。それが本当に正しいのかどうかは、永遠に分からないままなんですよね。
そう考えると、秘密にも匂いがあったら面白いのにな、なんて思いました。隠している秘密は甘い香りなのか、それとも苦い香りなのか……。そんなことまで考えさせられるところが、この作品の面白さだと思います。
登場人物が「彼女」「彼」「K」「Y」「S」など、まるで記号のように描かれているのも印象的でした。はっきりとした人物像が決められていないからこそ、余計に夢の中を覗いているような感覚があります。
言葉の奥から立ちのぼる匂いをホログラムのように紡いだり、夢の中で赤い糸のような香りを織りあげたり、料理の匂いを音楽として聴いたり……。現実ではありえないような出来事なのに、文章を読んでいると不思議とその光景を想像できてしまいました。
中でも面白かったのが、嗅覚を失って初めて「匂いが物の身体を形づくっている」と気づくお話です。
普段は匂いなんてそこまで意識していないのに、実は私たちは匂いも含めて、その場所や物、人を認識しているのかもしれません。読み進めていくうちに、本当に匂いが目の前に色や形を持って現れてくるような感覚になって、文章なのに「匂いが見える」みたいで不思議でした。
短編と短編の間に挟まれているエッセイも印象に残りました。物語とは少し違う静かな語りなのですが、読んでいるうちにその境界まで曖昧になって、いつの間にかエッセイも幻想的な世界の一部に溶け込んでいるように感じます。サクサク読むというより、一度立ち止まって文章を味わいたくなるような一冊でした。
そして何より驚いたのが、五感の中でも嗅覚による記憶はとても強く残るということです。
私はなんとなく、「見る」「聴く」「触れる」のほうが人間にとって大事で、「嗅ぐ」や「味わう」はそれより少し地味な感覚だと思っていました。なので、香りがこんなにも記憶や感情と深く結びついていることにびっくりしました。
嫌なことを忘れたいときは、目や耳を塞ぐより先に鼻をつまんだほうがいいのかも……なんて思ったり(笑)。
匂いを遠く離れた場所へ届ける「テレ=オルファクション」という発想もすごく面白かったです。もし本当にそんな技術が当たり前になったら、写真や動画だけでは伝えられない「その場所の記憶」まで誰かに送れるようになるのかな、と想像が膨らみました。
「人は死者と正しい距離を取ることは決してできない」「影という影は、みな香りを含んでいる」など、読み終わったあとまで頭の中に残る言葉も多かったです。
すべての人にそれぞれの物語があるように、普段何気なく嗅いでいる香りにも、それぞれの記憶や時間、誰かの人生が隠されているのかもしれない。
読み終えたあと、いつもの香水やコーヒー、雨上がりの空気みたいな身近な匂いまで、ちょっと違って感じられました。
幻想的で綺麗なのに、どこか寂しくて切ない。でも、その余韻がすごく心地いい作品でした。香りという目に見えないものから、ここまでたくさんの物語が生まれるんだ……!と驚かされた一冊です。