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失失失楽園殺し 表紙

失失失楽園殺し

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刊行日 2026/07/17 | 掲載終了日 2026/07/19


ハッシュタグ:#失失失楽園殺し #NetGalleyJP


内容紹介

21世紀の最先端研究施設で、キュートな天才が挑む、現代本格ミステリの限界突破!

最先端の研究者が集まる瀬戸内無境界大学院大学。

アカデミックな孤島に一匹のカエルの死体が現れた時、知の〈楽園〉に崩壊の足音が聞こえだす。

事件解明に乗り出した〈暗号の魔術師〉坂口庵子と〈量子神〉幻月幽香だが、二人を嘲笑うように今度は

舌を切られた研究仲間の死体が密室で発見される──。

さらにはネズミの大量死。予測不能の死、死、死……。

知の〈楽園〉は犯人の手で〈失楽園〉となるのか?

すべての鍵を握るのは究極の問いかけ。

人の感情は本物か、模倣か? 

暗号、量子論、美学、生成AI、流体力学、異種対話…21世紀の知の限界を突き破る境界なき天才たちが

織り成す無数の論理の糸を手繰り、黒猫シリーズの森晶麿がしかけた知の企み。

特異と驚きに満ちたミステリ、ここに開幕!

21世紀の最先端研究施設で、キュートな天才が挑む、現代本格ミステリの限界突破!

最先端の研究者が集まる瀬戸内無境界大学院大学。

アカデミックな孤島に一匹のカエルの死体が現れた時、知の〈楽園〉に崩壊の足音が聞こえだす。

事件解明に乗り出した〈暗号の魔術師〉坂口庵子と〈量子神〉幻月幽香だが、二人を嘲笑うように今度は

舌を切られた研究仲間の死体が密室で発見される──。

さらにはネズミの大量死。予測...


出版情報

発行形態 ソフトカバー
ISBN 9784839989385
本体価格 ¥0 (JPY)
ページ数 272

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タイトルが非常に気になるものでした。
読み終わるとなるほどなぁ、と納得。
研究者がこの場所を楽園と感じていたなら、これは失楽園ですね。
カエルの死体が発見されたことから楽園の崩壊が始まっていきます。
個性豊かで優秀な研究者たちが集っているので、考察には事欠かない。ても、協調性はあんまりなので究明まではなかなか。
AIのミカちゃんも容疑者に入る?誰もが怪しく見えても動機はさっぱりわからない、と犯人の予想はとっくに諦めて、主人公の庵子ちゃんと幽香さんに推理は丸投げして読み進めてました。
初めの方で犯人がこの人だと睨んでいた幽香さんはすごいです。
いろんな角度からの推理へのアプローチが面白いお話でした。

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《特殊設定ミステリの果てで、解は感情へ到達する》

舞台は、台風の嵐に閉ざされた「瀬戸内無境界大学院大学」東館F類フロア。

その大学院大学は、異能と言っていいレベルの天才たちが集まり、交流の中で知の境界を超えることを目指して設立された楽園。

坂口庵子は、偶然性を呼び込む〈暗号の魔術師〉。
幻月幽香は、超実践量子力学を駆使する〈量子神〉。
入見那雄は話すアフリカツメガエルを飼い、脳の活動を視覚化する光学ニューロイメージングを研究する。

などなど、登場人物の一人ひとりが特殊設定ミステリそのもののように立っている。

嵐の中に孤立した十人。
そして、入見が密室死体として発見される。

楽園は、そこで失楽園となる。

庵子は幽香をパートナーに犯人を見つけることになる。
けれど、日常からかけ離れた特殊な環境の中、方向性がまったく違う桁外れの天才たちの中から、どうやって犯人を探すのだろうか。

そんな不安を抱きながら読み進めると、死体が次々と見つかっていく。
人だけでなく、アフリカツメガエルやハムスターたちまで。

しかも、そのすべてが無理数に関係していく。
そこに何が隠されているのか、皆目見当がつかない。

それどころか、ロジカルで整合性を重視した庵子の解は、通常の「実現可能性」を前提とする推理とは次元が異なっている。

正しい解に辿り着く。
けれど、その犯人はすでに死んでいる。

そうやって積み重なっていく多重解。
解に辿り着くほど、世界は安定するのではなく、さらに崩れていく。
失楽園の「失」の文字が、無慈悲に増えていく。

暗号、量子論、神経科学、無理数、植物、心理、AI、そして楽園/失楽園の神話的構造までが、ひとつの推理空間に詰め込まれている。まさに超現代版『薔薇の名前』。
慎重に読み進めても、十分に拾い切れたとは到底思えない。

それどころか、めまいよりも激しい、見当識さえ失うような感覚に襲われてしまった。

本当に最終解を得て、並いる天才たちの中から犯人を見つけることができるのか。

とにかく、読み進めるしかなかった。

とうとう最終的な解、すなわち真相に至る推理を提示する幽香。その口振りと使う言葉には、まさに飲み込まれるような感覚を覚えた。

人の気持ちを、量子的もつれと。
人の行動を、量子測定と。
想定外を、波動関数の崩壊と語る。

それはまさに、〈量子神〉が操る言葉。

でも、その最終解は感情について語っていく。
非感情的な表現で、これほどまでに感情へ迫っていくとは思わなかった。

〈真理〉は得られる。
でも、それだけでは真実とはならない。
だから〈推理〉をしなければならない。

そのことにやっと気づいて、幽香が〈量子神〉であっても人間であることにホッとした。
その人間性がもたらす悔しさに同情しながらも。

今までにないミステリだった。

楽園とは、本来、神が人のために創造したもの。
でも、この楽園は人が作ったもの。

中にいる人の死が、その楽園を崩壊させ、失楽園としてしまう。
さらには、それを観測している者までも死へと飲み込むたびに、失楽園は、失・失楽園へ、そして失・失・失楽園へと変質していく。

解は重なり、推理は多重化していく。

そして、楽園に住む神という矛盾した存在が、その最終解を提示する。

まさに、今までにないミステリ。
まさに、森晶麿先生の新境地だった。



付記

舞台となる、「無境界」大学院大学。
その名は、トランスパーソナル心理学の論客であり、のちにインテグラル理論を提唱したケン・ウィルバーの著作『無境界』を連想させた。
自己と世界のあいだにある境界を固定的なものと見なさないこの本を舞台名として置いたことに、ただの設定以上の意図を感じる。

さらに作中で、一言だけルパート・シェルドレイクに触れられているのにも驚いた。
彼は形態形成場やモルフィック・レゾナンスで知られ、生命・記憶・行動を個体内部だけで閉じずに、外部の場へ開こうとした人物。

ケン・ウィルバーもルパート・シェルドレイクも、心と身体、個と世界、科学とその外側という、それぞれの境界に問いを投げかけた存在と言える。

本作のタイトルや構造、殺人の原因さえもが「境界の崩れ」を扱っていることを考えると、これは偶然ではなく、かなり意識的に置かれた手がかりなのではないかと思う。

この独特なミステリの仕掛けの奥に、それを支える思想的な足場がちらりと見えた気がした。

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