宝石のこえ
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刊行日 2026/06/15 | 掲載終了日 2026/06/16
ハッシュタグ:#宝石のこえ #NetGalleyJP
内容紹介
★★第20回小説現代長編新人賞受賞作!★★
宇宙人は人間の声を聴くと「宝石」をくれるらしい。
どこにもない故郷を求める痛切なメモワール。
ある日突然、地球に宇宙人がやってきた。
もはや言語を使わずにコミュニケーション可能な彼らだが、人間の声を聴くと宝石のような物質を排出するらしい。
わたしは、彼らのその習性を利用して対価をもらう「宇宙人の店」で働く代わりに、大学に進学するための費用や生活費を奨学金として援助してもらっている。
都会で新たな友人もでき、予備校で出会った了一と恋人になるなど日々を謳歌するが、親密になったはずの彼に、捨ててきた故郷の思い出をうまく話すことができず困惑する。
根っこを失い、枝葉にも寄りかかることもできなくなって、言葉の通じない、宇宙人に自らの過去を語り始め……。
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著者/野沢きみ(のざわ・きみ)
1988年生まれ、青森県弘前市出身。2025年、「ようこそ! ここはあなたのふるさとです」で第20回小説現代長編新人賞を受賞し、翌年同作でデビュー。
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★★★
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出版情報
| ISBN | 9784065435274 |
| 本体価格 | ¥2,100 (JPY) |
| ページ数 | 279 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
書店関係者 681228
ラストまで読み、こんなにも美しくて胸が苦しくなるほどに愛おしさが伝わってくる“こえ”があるだろうか、とそっと目を閉じました。私なら、私ならばその選択肢は選ばない。けれど主人公がそうするだろうことが読むと伝わってきました。おばあちゃん、のろちゃん、桜井、愛ちゃん、五代先生、和則さん、詩織さん、カナちゃん、りょうちゃん…主人公にとってまさしく宝石のような人々の描写が、彼らの煌めきがこちらにまで伝わってくる筆致にただただ見惚れました。本を読みながら見惚れるという表現はおかしくないかとは思いますが、そう言いたくなる作品でした。宇宙人たちがだす宝石がどのように美しいかを思い浮かべながら読む時間はとても心地よいものでした。
図書館関係者 603863
地球に宇宙人が来て、でも平和的な宇宙人で、人間の声を聴かせると宝石を吐いてくれるという風変わりな設定。
主人公は宝石を吐いてもらうために声を聴かせる仕事をしている女性。
彼女が自分の過去を振り返るパートと、現在のパートとが交互に一人称で語られる。
全体に静かで淡々としていて微かに諦念のようなものが漂う雰囲気。
つまり、彼女は孤独であって、孤独を苦にしなくなっているのかも?
客観的に見たら、大変なこともあったけれど運のよい出会いがたくさんあり、特に「のろちゃん」の母性は素晴らしく、だから彼女が恵まれていないとか愛されていなかったとか、とりたてて不幸だったわけではない。
それなのに、出会いは常に別れとセットになっている。
だれも彼女を地球に繋ぎとめることが出来ないと感じて、落涙してしまった。
不思議で独特で、なぜか心惹かれる作品。
教育関係者 645139
《気持ちを言葉にできない少女が、
誰かの言葉を読む声で宇宙人を魅了する。
その透明な声の奥にある、ひとつの願いとは》
柔らかな霞の中で、淡々と語られていくような不思議な物語だった。
最初は、彼女が何をしているのか皆目見当がつかなかった。
「お客さん」に本を読んで聞かせる彼女。
「お客さん」は「宝石」を残して消え、彼女はそれを箱にしまう。
その「お客さん」とは宇宙人。
この宇宙に、地球人以外でただひとつ存在する知性体。
進化の果てに音声でのコミュニケーションを必要としなくなった彼らは、地球人の声に魅了されていた。
その設定はSFでありながら、どこか寓話のようにも感じられる。
そこから、語られることのない彼女、るぅの気持ちが、時を前後しながら少しずつ並んでいく。
大学生のるぅ。
「宇宙人の店」で働きながら、恋人の了一との穏やかな日々を過ごするぅ。
高校生のるぅ。
さまざまな出会いと別れの中で、宇宙人奨学金制度を知るるぅ。
小学生のるぅ。
母親に邪魔にされ、のろに世話をしてもらう中で温かさを知るるぅ。
時を前後する中で、彼女の生きてきた道が浮かび上がってくる。
高校時代、詩織は彼女が書く文章についてこう評した。
「気持ちを文章に入れないって、結構難しい」
「好き嫌いとか喜怒哀楽を感じなくて、でもとても面白い」
そう言われても、きっと彼女は嬉しくはなかったはず。
だって、彼女は人一倍感じてきたはずだから。
感じていないのではない。
感じているのに、それを自分の言葉としてうまく渡せないから。
近しい人には伝えたかったはずの気持ち。
そこで、はっと気づいた。
霧がかかったようでいて、透明感のあるこの物語。
これは、彼女自身が書いた物語なのだと。
気持ちが見えにくいから、霧がかかったように感じる。
けれど、鋭い感性を持つ彼女の視点から描かれる世界は、そのぶん透き通っている。
でも彼女は、きっとこの物語に満足できなかったのだろう。心を込められないことに。
人と話すことに引け目を感じていたのだろう。自分の気持ちを語れないことに。
でも、文を読むことはできた。
他人の書いた文を、その綺麗な声で。
だから、この仕事に合っていただけでなく、宇宙人に憧れたのか。
テレパシーという、誤謬のないコミュニケーションでつながる彼らに。
そして、言葉の内容ではなく、彼女の声そのものの美しさに反応する彼らに。
たくさんの思い出がある。
優しい人たちもいる。
それでも、最後には決断をする彼女。
その決断を知った時、読み手として、それを受け入れている自分がいた。
きっと、了一も同じだったのだろう。
彼は、のろと並んで、彼女の人生でいちばん彼女に近しく、彼女をわかっていた人だから。
了一の一言で、彼女、るぅの本当の名前を知った。
「瑠璃」
彼女も宝石だったのか。
宇宙人がその声に魅了されて生み出すものと同じ、宝石。
だから彼女は憧れたのか。
すべての思い出、優しい人とのつながり、今の自分よりも、はるかに強く。
自分の思いを抑え、最後まで彼女に付き添う了一。
彼がいてくれたから、彼女はありのままの自分でいられたのかもしれない。
彼女が持っていくもの。
それは、彼女が今あることへの感謝のしるし。
彼女が残したもの。
それも、彼女が今あることへの感謝のしるし。
読み終わった時、私は「これからの彼女に幸あれ」と願うのではなく、
「宝石のこえ」である彼女に、静かに憧れていた。
出版事業関係者 869218
時間が経てばいつの間にかどんなことも日常になる。
普通ではない状況。宇宙人と働くなんて金輪際訪れるものではないはずなのに読めば読むほど日常として溶け込んでいくような物語の展開と言葉の優しさが味となる不思議な一冊でした。
あまりにも世界観に圧倒され、個々人の感情もなくなっていくようなSF小説もありますが、本作はしっかりと人の感情が残されていて、相手を思い重くなるシーンだったりがあったのでその辺りも新鮮味があって、それなのに宇宙人の感情は全く見えてこない。その辺りの線引きがしっかりとある作品で新鮮さと不思議さが魅力的でした。
教育関係者 528943
突然やってきた宇宙人と共存する地球人の主人公。現在と過去を淡々と「こえ」にしていく。掴みどころのない不思議な物語。
何を伝えようとしているのかわからない、というのが第一印象。穏やかな空気感の物語だが、時々ポロっと毒のある物言いが飛び出すのが好き。そんな感じに宝石も出てきたのだろうか。
設定が面白く、それがどう作用していくのか注意深く読み進めたが、やはり第一印象から変わらずに理解は難しい。
人が頑張る理由みたいなものを語っているように感じる時もあれば、人が動く時には特別な理由なんてないんだよ、と少し嗤われたように感じたり。とにかく不思議としか言い表せない作品。