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キャパとゲルダ

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教育関係者 556316

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ナチスによるユダヤ人迫害の迫るパリの亡命者コミュニティーを舞台に、カメラマンとして生計を立てる青年(キャパ)と、詐欺まがいのマーケティングで彼をプロデュースする美しい女(ゲルダ)の物語は始まる。
 内戦の始まったスペインへ乗り込み、女も写真家としての腕を磨いていく。イデオロギー対立の左翼側に徹底して身を置き、そこに属する人々の栄光と挫折を記録していく。そこには、ヒトラーとスターリンの世界制覇の野望をめぐる駆け引き、国内政治の事情から介入に踏み切れない米英仏の国益の計算を離れた、世界中から義勇兵として集まった理想主義の若者達の革命への情熱が溢れていた。二人のカメラマンは「戦闘」の撮影を追い求め、膠着した内戦に伴う倦怠感には飽きやすかったが、フランコ軍のマドリード攻略を食い止める左翼勢力の戦いでは、男は避難民化する一般市民を撮った作品を残していく。一方、この仕事に同行できなかった女は、男の成功に喜びと妬みを感じる。
 「写真を物語のように順に並べていく」フォトエッセイのスタイルをリードする二人の関係において、同志、恋人、ライバルという3つの側面が、いくらかの危うさを秘めながらも共存してゆく。「スペイン内戦への外部介入は無い」という建前で米英仏ソの反ナチス連合が維持され、報道管制がその建前を維持している。
 この物語の主人公よりも有名な人物も、脇役に使われている。その著作「1984」で全体主義への警鐘を唱えた作家のジョージ・オーウェルも、スペイン内戦左派に参戦した一人で、主人公との交流が描かれている。同様に関心を持ち乗り込んできたアメリカ人作家のヘミングウェイも登場する。ヘミングウェイの連れる女性作家・ジャーナリスト、マーサ・ゲルホーンとの対比の中に、女(ゲルダ)の男を利用はしても頼らず、自らのキャリアを伸ばす性行が描かれている。スタイルは異なるものの、戦闘を追っていた二人の写真家がお互い刺激しあいながら、その「対象に共感し、悲惨で暴力的な光景の核心にあるものを見出すこと」を「写真家としての使命」とするようになる。
 この作品は、多くの切り口から読むことが可能である。戦争カメラマンのような男性至上とされていた職種への女性の参画、報道倫理から考える報道写真の在り方、革命理想主義と共産主義ソ連との間の関係などである。いずれも著者からの明確な回答はないし、そもそも著者が意図的に上記の全てを切り口として考えていたかも、評者の想像の域を出ない。スペイン内戦を舞台とした革命ロマンスを他に読んだことはないが、本書を読んでから訪れるマドリッド、バルセロナやグラナダは、また違った表情を見せてくれることだろう。

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