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語られなかったアメリカ史③

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教育関係者 556316

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歴史嫌いに面白く歴史を教えるという事は確かに必要なことかもしれない。「たいていの教科書は、二国間の政治的な対立だけを説明し、冷戦が普通の男女、子供たちに与えた影響についてはほとんど触れていない。本書では、普通の人々に何が起きていたかを語ってみたい」(16頁)と著者は言う。本書の出版前公開部分を読んだ感じでは、大きな国家間・政府レベルでの歴史と、著者の言う「普通の人」レベルでの歴史の記述はそれでも7対3位の比重であろうか。個人名とその人の暮らした州の名前が、個人的なキューバミサイル危機の回想のコメントと共にちりばめられている。
 残りの大きな歴史の部分には歴史家にとっては真新しいことは無い。ただし、一般人誰でもが知るところでは無いような史実についての記述で、きちんと出典が明らかにされていないのは問題である。特定の政策担当者の発言の直接引用として括弧づけになっているものくらいは出典を明らかにすべきだ。思わず吹き出してしまうような高官の発言が同事件を題材としたフィクション映画でも聞かれたのは、著者の出典が映画なのか、それとも映画も本書も共にれっきとした史実をあたって制作されたのか、曖昧にしてしまう。
 兵器についての詳細な説明が不足しているのは、翻訳の過程でそうなったというよりは、著者の知識不足のせいと思われる。キューバ周辺海域でソ連潜水艦の強制浮上を試みた米海軍が使った「爆雷」が、破壊力を殺した模擬弾であったことが、おそらくは本書の情報源であるガーディアン紙(2017年10月27日)Nicola K A Davisの記事では明記されているのに、本書ではその区別がされていない。キューバへ持ち込まれた核兵器の戦略・戦術用の区別も説明されておらず、かつアメリカ側がいつの時点でどのタイプの核兵器の存在をどの程度確信していたのかという重要な史実について、おおざっぱな記述しかしていない。
 「普通の人」の歴史を書くにしても、もっと深く、系統だった書き方もあるだろう。アマチュア歴史家によるエンターテインメントとしても、その方がうまくいった可能性がある。
エリック・シンガー(編・著)鳥見真生(訳)の本書の表紙に、両名より大きくオリバー・ストーン、ピーター・カズニックの名前が入っているのも、残念な売り方と言わざるを得ない。

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