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優等生サバイバル

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メディア/ジャーナリスト 1036613

高校生で将来自分のやりたいことがはっきりしている人は一体、どれくらいいるのだろう。大抵の人たちは、自分の将来への道を見出だせず、周囲と同じように、名門高校に入るために小学校から塾通いをし、一流大学へ入るために高校で一番の成績をとることを目標とするのではないだろうか。でも一体、それでいいのだろうか。『優等生サバイバル』の主人公ジュノは「幼い頃からほめられることに慣れていて、認めてもらえないなんてことは一度もなかった」。そしてシミン中学からはわずか2人だけしか合格していない、という名門校のトゥソン高校に首席で合格し、最上の設備が整っている自習用の「正読室」の利用許可をもらった。父のがん治療費のため塾通いのお金の余裕がないジュノにとっては、「正読室」を追い出されないために成績は上位を保っている必要があった。ジュノにとって、成績は弱い者たちが物色されがちな世界を生き抜くための「保険」みたいなものであり、誰かを好きになる気持ちは「生きるエネルギー」であった。だが、そうした誰かに認めてもらいたい、という「承認欲求」は恐ろしく深い。ジュノの幼馴染で両親が離婚後、父が再婚し、継母との三人で暮らすビョンソは、成績トップで「自分の世界がそのまま世界のすべて」だと思っている。ビョンソがなにかにつけてジュノをライバル視してくるなか、ジュノは時事討論サークル「コア」の仲間との交流により、自分は何をしたいのか、を考えるようになっていく。この作品は「学歴社会」と言われる韓国社会の過酷さを背景に、その中で自分を見つめ、自分の心に向き合っていく高校生たちの成長を描いている。韓国だけではなく、日本、そして私の住むアメリカでも「学歴社会」は存在する。また「承認欲求」は誰にでも存在する。そんな中、いかに自分の信じる道を保っていけるか、を問われている気がした。

ぜひ本作品をお好きな書店で注文、または購入してください。