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カバー画像: ふみきりペンギン

ふみきりペンギン

刊行日:

レビュー投稿者

メディア/ジャーナリスト 1036613

大人になると現実がしっかり見えてきて、そのせいかうわさで知る「ふしぎなこと」にはあまり興味がなくなってしまう。また、自分の「ふつう」が「ふつう」になってしまい、その「ふつう」とは違った人を「ヘン」扱いし、その人とは距離を置きたくなる。この物語に登場する小学三年生の子どもたちは、見えないものが自分だけに見えたり、うわさを信じてそれを確かめにいこうとしたり、勇気を出して「ふつう」の殻を破ろうとしたり、こうしたわくわくした体験を重ねることで子どもは人との関係を学び、成長していくんだな、と思わせる。タイトルにもなっている「ふみきりペンギン」は左ききのゆうとにだけ見える。学校で左ききをバカにされ、悔しくてふみきりのヒラヒラを左手で握りしめたとき、ふみきりの向こうにみえた5匹のペンギン(と、犬の「マル」)。ペンギンたちは口々に「左きき」のことを「ふつうじゃない」とか「ヘン」と言ってバカにするけど、最後の5匹目のペンギンだけが左ききを「みんなとちがってて」「かっこいい」とほめてくれた。この本をこの年齢の子どもたちが読むとどう感じるのかな、と興味がわくのと同時に、大人が読むと、小さかった時に抱いた「ふしぎなこと」へのわくわく感を思い出すことへの楽しみがあるのではないか、と思った。

ぜひ本作品をお好きな書店で注文、または購入してください。