不死鳥少年

アンディ・タケシの東京大空襲

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刊行日 2019/02/15 | 掲載終了日 2019/04/23

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内容紹介

父の国に爆撃され、 母の国を命がけで走った少年がいた。 いま読まれるべき「新しい戦争小説」の誕生。

14 歳の少年タケシはハーフである。家族で米国に住んでいたが、日米開戦 を機に日本人の母親とともに、東京・錦糸町の母の実家に身を寄せた。時は 太平洋戦争末期、町工場を継いだ伯父は2 度目の召集で戦地に。残されたの は伯母、いとこの姉弟、お手伝いさんと年老いた工員のみ。タケシが仲間らと 束の間の憩いを満喫した1945 年3 月10 日未明、東京の下町をB29 が襲う。 のちの東京大空襲である。家族らを守るために、タケシの長い夜が始まった—。  


「願わくば、この作品が主人公と同じ14 歳の少年少女に広く読まれますように。心に 焼き印を押されたように、東京大空襲を忘れませんように。 ひとつの作品を書き終えて、祈るような気持ちになったのは、20 年を超える作家生活 で初めてのことだった。その意味では、この小説はぼくにとって新しい場所に通じる扉に なったのかもしれない」(石田衣良)

父の国に爆撃され、 母の国を命がけで走った少年がいた。 いま読まれるべき「新しい戦争小説」の誕生。

14 歳の少年タケシはハーフである。家族で米国に住んでいたが、日米開戦 を機に日本人の母親とともに、東京・錦糸町の母の実家に身を寄せた。時は 太平洋戦争末期、町工場を継いだ伯父は2 度目の召集で戦地に。残されたの は伯母、いとこの姉弟、お手伝いさんと年老いた工員のみ。タケシが仲間らと 束の...


おすすめコメント

【アピールポイント】

・2017年11月~2018年9月に毎日新聞夕刊で連載された小説の書籍化です

・初めて「戦争」をテーマにした石田衣良さんの意欲作です

・「東京大空襲」を題材にした小説はあまりないので、小説を読む中で「東京大空襲」について知ることができます

・挿絵は『ドラゴンヘッド』(講談社)で有名な漫画家・望月ミネタロウが担当しています

【アピールポイント】

・2017年11月~2018年9月に毎日新聞夕刊で連載された小説の書籍化です

・初めて「戦争」をテーマにした石田衣良さんの意欲作です

・「東京大空襲」を題材にした小説はあまりないので、小説を読む中で「東京大空襲」について知ることができます

・挿絵は『ドラゴンヘッド』(講談社)で有名な漫画家・望月ミネタロウが担当しています


出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784620108391
本体価格 ¥1,600 (JPY)

NetGalley会員レビュー

SF要素が混ざる東京大空襲を生々しく描いた作品。
過去に戦争が齎した悲劇を伝える作品を数多く見てきたが、日米混血児にスポットをあてた作品を手にするのは初めてで、今までとは少し違う新たな視点から戦争を考えさせられた。
長男だから、男だから、たった14歳の男の子達が命を擲ってまで家族を守る姿、普段の無邪気な姿との懸隔に何度も目頭をおさえました。
所々に出てくる親しみやすい挿絵も味があってとても良かったです。

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様々な感情が揺れ動いた作品でした。
アメリカ人の父親、日本人の母親をもつ少年からみた、戦時下の様子が東京大空襲を中心に描かれています。
当初は戦時下の生活の様子に苦さを感じ少し重いと感じていましたが、引き込まれるにつれ、当時の差別に対して悩み苦しむ少年の心のみずみずしさ、少年期特有の感情の揺れ動き(純粋さ、恋心)にほほえましくも感じられたりもしました。そしてクライマックス(不謹慎な表現だが)の空襲から逃げるところでは戦争のむごさに強烈なインパクトを感じながら、この危機をどう乗り越えるのかのある意味ドキドキしながら(これも不謹慎な表現かも)読み進みました。
著者あとがきも含め、読んでほしい作品です。

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アメリカ人の父と日本人の母を持つタケシ。
戦争に巻き込まれた若き命のことを思うと、胸が押しつぶされそうになる。
タケシの瞳を通して語られる物語は、当時の人々が見た景色。
無残な姿で朽ち果てた人々。帰ってこない家族。変わり果てた街。
たった、たった70年前の出来事なのだ。
タケシが見せてくれた物語を、私は決して忘れない。

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本書は、マンガ『この世界の片隅に』および劇場アニメ映画版が提起した、「どうすれば若い世代に戦争体験が伝わるのか」という問いへの、ひとつの返答である。『片隅』は、徹底的に主人公の体験から「痛み」を取り除くことによって、若者の関心を引き出すことに成功した。画期的だが、本当にそれでいいのかという思いも残った。
 本書には、たくさんの「痛み」がある。主人公は日米ハーフの少年であり、日米戦争の過酷な環境下で容赦のない差別にさらされる。だが、彼は負けない。ハードボイルドとすらいえるタフな心意気で日々を乗り越えていく。現代日本人の価値観に近く、若者も共感を持って読むことができるだろうし、日々の闘いに声援を送るうちに、引き込まれていくはずだ。ようやく自分の居場所を見つけたと思った瞬間、少年を襲う東京大空襲の惨劇。あの時代を徹底して調べ尽くし、凄みのある筆致で描き切る。確信を持った。大丈夫だ。これならば伝わる。

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1945年3月10日、アメリカ軍が東京大空襲を決行。一日で10万人以上の人々が亡くなったという惨劇がおこる。この作品には、14歳の混血の少年とその家族が体験した東京大空襲の様子が描かれている。

太平洋戦争真っ只中の東京で、14歳の時田タケシ(武)は軍需工場で勤労奉仕をしていた。タケシは日本人の母・君代とアメリカ人の父との間に生まれた混血児だった。戦争が始まるまではアメリカで暮らしていたが、始まると日系人というだけでいじめられ、身の危険を感じて母と一緒に日本に帰って来たのだ。目の色が少し異なるだけで外見は日本人に近いタケシだが、日本では明らかに混血児とわかる。同い年の従姉妹・登美子や友人のミヤとテツたちとの愉しいひとときもあるが、戦争が激しくなるにつれ、アメリカのスパイではないかと、近所の人々や学校の級友たちからもいじめられた。

3月10日の真夜中、突如としてB29の大軍が押し寄せ、空から焼夷弾を落とし始めた。瞬く間に東京の街は火の海と化す。タケシはアメリカにいる父と母の兄・義雄から「時田の家族を守るように」と言われていた。自分の命よりも時田一家を守り抜く。それが自分ができる日本人としての使命である。タケシは自分で自分を励まし、時田一家を火の海から脱出させるために奮い立つ。

何のため、誰のために戦争をするのだろう。戦争の犠牲者になった人々の無念さを思うとたまらない。さらに2つの国籍を持つタケシの複雑な想いと願いが終始作中に描かれ、戦争体験記だけに終わらない問題点も投げかけている。SFっぽい要素も入っているので、重いテーマだが興味深く読める作品である。

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石田衣良の『不死鳥少年』は、東京大空襲の記録を丹念に掘り起こして書かれた歴史小説であるとともに、読者に小説の方法についての判断を迫る《問題作》である。

タケシは、日米ハーフの14歳の少年である。母と共に、日本へ帰国してきた。混血ということで周囲の猜疑の目線にさらされる。しかし、伯父一家、娘の登美子、小さな直邦はタケシを温かく包んでくれた。軍需工場では親友も出来た。ミヤやテツと夢を語り友情を深めた。もちろん、淡い恋心も経験する。そして、3月10日未明を迎える。タケシや、伯母一家、親友たちの運命はいかに。

歴史に《if》はないからこそ、空襲に翻弄される人々の姿は、心を打つ。しかし、それを描くために石田が導入した手法は、あなたを戸惑わせ、憤慨させるかもしれない。それでも、石田がこう描いた意図は何なのか。これが『不死鳥少年』が提起する、最大の「問題」なのだと思う。ぜひ、その勇気を読まれたし。

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多くの人々にとって東京大空襲というのは「忘れてはいけない」ものであって、具体的に自分が体験する可能性がありえたものとして想像できるものではない。しかし、本書で石田衣良は、戦争を憎む人間としての祈りと、娯楽作家としての手練手管を最大限に融合させて、不死鳥のごとく単に忘れてはいけないだけだった大空襲の光景を読者の目の前に蘇らせてみせた。

ここには石田衣良がこれまで鮮烈に描いてきた友情や恋愛や青春が全部詰め込まれているだけでなく、戦中という背景がそれらの切なさと輝きを逆に強調し、戦争小説としての哀しみをも相乗効果で増幅させている。それだけでなく、SF的なギミックの導入で最後の最後に神話的な余韻まで残して見せている。まさに作者渾身の一作というべきだろう。

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作品は作家の想像力によってつくられる。そのことを改めて感じさせてくれる作品であった。1960年生まれの石田衣良は戦後生まれであることは言うまでもない。戦後73年を経て少年たちは80を超える老人となり、戦争を記した作家たちの多くがこの世を去った。叫びのような作品は暗く理不尽な戦争の姿を詳細に描いて私たちに警鐘を鳴らし続けた。しかしそれが読み継がれることはなかなか困難である。読後に絶望的な、人間への不信感が残らざる得ないそれらの作品を手にするのをためらうのを責めることはできない。

戦後生まれのこの作家が描き出す世界は、誰もが逃げまどったあの3・10の東京大空襲、劫火の地獄絵図である。しかし「ウエストゲートパーク」に描かれた社会からはみ出ざるを得なかった少年たちの友情と同じように、国家総動員体制の中でもお互いを認め合い、想いを共有し合う3人の少年、ほのかな恋心など温かな石田ワールドが読後にさわやかな感動を呼ぶ。結末が受け入れることができない悲劇であっても。

日本人の母とアメリカ人の父を持つタケシ。父の国を追われ、母の国でいわれのない中傷と悪意にさらされる。戦争には個人の存在を認める余裕など存在しないのだと。その人がどんな思いでいるか、どんな行いを心掛けているか、そして夢や希望にいたっては持つことさえが罪であるかのように。

さらにその戦争の非情さは、空襲という無差別殺人の詳細の記述によってより克明に描かれる。私もこの東京大空襲は児童図書などで知るのみだったが、今回、いかにB29からまかれ、地上でどんな風にそれがたけり狂ったかを初めて知った。多くの資料を読み解いて劫火に逃げ惑う人々の苦しみを浮かび上がらせてくれた詳細な表現は、「願わくば、この作品が主人公と同じ14歳の少年少女に広く読まれますように」というこの作家の願いが込められているからだこそであろう。戦争体験者が少なくなり、その想いを受けた戦後世代が豊かで自由な時代に生きたからこそ書ける物語を綴っていかなければならない、そんな使命感のようなものも感じられる。

時代をとらえて少年たちの生きざまを描き続ける作家。「北斗」では虐待を淡々と描いたように見えたが、やはり石田ワールドはこちらの方ですね。(逆に言えばそうしか書けないような対象だったということかもしれないが)彼が今、戦争を描くのは、多くの人が抱くこの国の未来に対する不安ではないだろうか。読者である私もまた同じ思いである。

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母の国の街・日本で、父の国・アメリカの爆弾から命からがら逃げる14歳のタケシの戦争。東京大空襲。
愛する国同士が殺し合うとき、彼に託された過酷な運命とも呼べるべきものに、ただひたすらに、誰かと憎み合うことの意味のなさや悲しさをヒシヒシと感じた。
私たち戦争を知らない世代も、聞いているだけで暗澹たる気持ちになる戦争のことを、絶対に忘れてはいけないのだと痛感した。
戦争文学は恐ろしいから……という理由で、ここ数年、読むのを避けていた。
だが、IWGPシリーズをはじめ、どんな時代でも、しなやかにたくましく生き抜く登場人物が印象的な石田衣良さんが作者ということで、手に取ったのだが、読めて良かったと思う。
いずれ、私たちが戦争の恐ろしさを語り継がねばならない番が来る、目を逸らしてはいけないと考えた。

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著者の石田衣良氏は、高校生のとき母親から東京大空襲の体験を聞いたことがある。女学校に通っていた母は、真夜中の空襲警報でたたき起こされ、ひたすら逃げ回ったという。はじめは遺体に手を合わせていたが、「30分もすると道に道に転がる丸太でも越えるように、遺体なんか見むきもせずに飛び越すようになった」と母は語った。
 戦争体験を話してくれたのは、後にも先にも、このときただ一度きりだったが、石田氏の心に強くのこった。
 小説家になり、『池袋ウエストゲートパーク』シリーズでイマドキの若者達の姿を描いてきた著者は、40代なかばから、東京大空襲の資料を集めはじめる。そして50代後半になったとき、毎日新聞からの連載依頼をうけ、このテーマを書くことに決めた。戦争を体験していない自分の世代が、戦争の語り部を継いでいく責任を感じるようになったのだ。
 希代のストーリーテラーが反戦文学に新たな一里塚を築いた。ご一読あれ。

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日米ハーフの少年・タケシが体験した「東京大空襲」の凄絶な物語。
昭和20年3月10日未明に起こった「下町大空襲」。東京の下町、木造家屋の密集する地域を中心に、30万発超の焼夷弾がバラまかれ、東京市街の約3分の1を焼き尽くし、約10万人が死亡、罹災者の数は100万人を越えた。
読者は、主人公のタケシとともに、止むことのない焼夷弾の雨の下、執拗に襲いかかる灼熱の炎から逃げ、音もなく人々の命を奪う猛毒の黒煙に怯え、突如巻き起こる炎の竜巻を逃がれ
……息つく暇もなく、とにかく逃げ続けるという恐怖の体験をすることになる。
もちろん戦争の悲惨さを描くだけではない。戦争によって家族を引き裂かれ、父の国と母の国、2つのアイデンティティに悩み、差別に苦しみ、友情に喜び、ほのかな恋への憧れに心をときめかせる14歳の少年の揺れ動く心がみずみずしく描かれる青春小説でもある。この作品が多くの人に読まれることを強く望みたい。

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小学生の時、「戦争の話を取材する」という宿題があった。

都営住宅に住んでいた私は、母と相談して「13階の高橋さんのおじさん」にお話を伺うことにした。

高橋さんは、少年時代に第二次世界大戦を経験。

航空機に追いかけられて、すぐそばに爆弾を落とされ、九死に一生を得た体験を語って下さった。


この小説を読んで、高橋さんのことを思い出した。

戦争が、ただの歴史でなく、人と人が殺し合う最高にむごいことであることを実感したのだ。


時は、1945年3月。
物語の舞台は、東京の本所区(現在の墨田区)。

主人公のタケシは14歳。
アメリカ人の父、日本人の母のもとに生まれた。

9歳の時にシアトルから東京本所に母と引っ越してきた。

父の国と母の国が戦争をしている。

「鬼畜米英の子」「スパイ」などと酷い言葉を浴びせられながらも、中学生の青春の日々は続く。

そのささやかな日常を、戦争が全て奪っていく。


1945年3月10日未明。
東京大空襲。
タケシの住む地域では半分の方がなくなり、9割の家屋が焼き尽くされた。

父の国の飛行機から焼夷弾が落とされ、町中が火の海に包まれる。

目の前で人が死んでいく。たった数時間のうちに何度も何度もだ。

これが戦争だ。


著者は、文化の力で絶対悪の戦争に切り込んでいく。

「池袋ウエストゲートパーク」にも必ず登場するクラシックの名曲を、戦時下のタケシの部屋に登場させる。

戦争に立ち向かう文化の力。

暴力に対する対話の力。


戦争は美談なんかではない。

青年の未来を奪い、子供の希望を打ち砕き、母に涙を流させる。

語り継いでいかなければならないものがある。

戦争ほど残酷なものはない。
戦争ほど悲惨なものはない。

タケシ、ミヤ、テツ、登美子。

1945年の4TEEN。

石田文学の金字塔がまた一つ。

#石田衣良
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#池袋ウエストゲートパーク
#4TEEN

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古典となっているような以前の戦争文学には成し得なかった、新たな戦争文学ともいえる作品。
その肝は主人公・タケシの特殊な設定にある。「日系アメリカ人」としてアメリカ人の父・日本人の母を持つという境遇。それにSF的な要素を織り込みながら、「敵」と「味方」の二極に分かれる戦争の様相をあえて「そのどちらもの立場に属する」少年を主人公にすることで、従来の戦争文学にはなかった斬新な物語展開を生み出している。
東京大空襲のおぞましい光景や戦時下の厳しい生活にも焦点を当て、後世にも戦争の記憶を伝えるために緻密な描写にも力を入れ、なおかつ次世代の読者にも戦争について触れてもらうきっかけになりえるように工夫を施している努力が随所に垣間見える。「その時代に確かに人が生きていた」と思わせる描写の生々しさや時代背景描写、タケシが日系アメリカ人であることで周囲にもたらす様々な感情なども汲み取った描写や戦争を主軸に描きながらも「決して悲しい気持ちにだけにはさせない」ふとした描写など、全体的にバランスが良く、小説として楽しめる上に戦争についての思考を深めさせてくれる物語となっている。老若男女問わず、タケシ達と同年代の少年少女には特に読んでもらいたい「新しい戦争文学」としての小説だと感じた。

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