アリゲーターガーは、月を見る
山本悦子
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刊行日 2025/05/20 | 掲載終了日 2025/04/27
ハッシュタグ:#アリゲーターガーは月を見る #NetGalleyJP
内容紹介
お城のお堀にアリゲーターガーという巨大魚がいるらしい。捨てられ、怖がられ、でもどこにも行く場所のない外来魚のガー。その孤独に引き寄せられるように夜の堀にやって来た3人の若者が出会う。母の信仰が原因でクラスに馴染めず不登校になった航、弟の交通事故死に責任を感じ自分を責め続けている朔哉、高校卒業直前に祖母が急死し天涯孤独になった葉月。ガーはなぜか3人の前にだけ姿を現し、静かに話を聞いてくれる。それぞれの過酷な現実につぶされかけていた3人が、孤独に向き合いながら歩みはじめるまでを描く青春小説。
おすすめコメント
「なぜだろう? ガーはぼくらの前にだけ現れる」 町の片隅で、行き場のない3人と1匹が出会った──孤独の向こうに見えてくる、透明な光のような物語 野間児童文芸賞・日本児童文学者協会賞受賞作家による、最新青春小説 ガーは、おれたちがそばにいる間は、決して離れていかなかった。なんとなく……本当になんとなくなのだけど、おれは毎日お堀に通うようになった。別に、航や葉月さんと仲よくなったわけでもないし、アリゲーターガーに興味を持ったわけでもない。
出版情報
| 発行形態 | ハードカバー |
| ISBN | 9784652206450 |
| 本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
| ページ数 | 192 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
教育関係者 645139
名古屋城のお堀で、体長2mある大人しいアリゲーターガーに毎夜話しかける朔哉達3人。生きることを再び始める心の様が、月が見下ろす中で紡がれていく。
息をひそめて読んでみて。静かな静かな、そして心に深く残るこの物語を。
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外来種は絶対悪なのか?だから殺してもいいのか? 持ち込んだのは人間なのに、正義の名の下に手を下すのも人間。命を持つものを自分の都合で二つに分け、その一歩を悪として殺すのを楽しむなんて。
アリゲーターガーを巡る人々の様子にそれを感じ取ったからこそ、朔哉達もまた自分を振り返るきっかけを得たのだろう。苦しみに潰されて、それを毎夜アリゲーターガーに一人ずつ交代で話しかける三人。それは自分が写る鏡に向かってつぶやいているのと同じこと。でも、自然に互いに言葉をかけあうようになる。それに気付いて話をするようになる。つながるようになる。だんだん変わっていく三人と、ただその場で傾聴しているアリゲーターガーの様子が、月の光のもとに浮かび上がってくるイメージが音もなく浮かび上がってきた。
でも、それだけでは足りなかったのだね。朔哉には弟についての父の言葉が、航には母の後悔を知ることが、葉月には祖母の喜びが何かを知ることが、必要だった。人は自分だけでは気付けないことがある。近しい人と本当の意味で交わることで、これからの道への扉に気付くもの。
そして、アリゲーターガーもまた、自分の願いをかなえてもらった。
きっとこれからの三人は、自分の意思で、自分の足で人生を歩んでいくはず。でも、きっとこのお堀に戻ってくるだろう。だって、アリゲーターガーは長寿だから。三人がリスタートを始めた証として、ずっとずっとそこにいてくれるから。そして、今どうに歩んでいるか話を聞いてくれるから。
夜のイメージが、こんなに澄んで感じられるとは。こんなに静かなイメージでも、これだけ心にしみ込んでくるものとは。今ままでにない、月の光に照らされた、さざ波もない水面から深い深いみな底をのぞくような希有な読書体験だった。
レビュアー 1469440
言ってくれるねー という台詞に幾度も出会った
孤独も悲しみもそんなに悪いものじゃないですよ そんな出会いたまらんわ
ノリのいい少年探検小説だと思っていたら とんでもなかった
本で知らなかった!を知れるのは私にとってよくある
しかし今回のそれは、なんじゃこりゃ!!! 副産物多すぎっ
家庭の事情 という本人にとっては不意に訪れた転機で居場所を失った中学生
近親者少なめ19歳 えっと後藤さんは何歳?とりあえずおじさん
そして アリゲーターガー@名古屋城のお堀
誰にでも見える月と 誰かにしか見えない魚
孤独の匂いを知っているひとは 見えるひと
どうして人はつながるんだろう 家族じゃないのに 利益なんてないのに
泣かせるよねぇ
見つけだす糸口 点と点 事は静かにだけど少しずつだけど 前へ進んでいる
人生は面白い らしい それなら行く 行くしかない
それも含めて自分 行け 行ってこい
図書館関係者 841977
アリゲーターガーという魚がいることをこの本で初めて知りました。検索して、その姿や生態について少しだけ知ることができました。人間の勝手で本来の生息地から離れて生きるガ―と、朔哉・航・葉月の3人、と後藤さん。生きていればどこかに悲しみや孤独を抱えているもの。後藤さんは朔哉たちより少し長く生きてるだけに、そういうものを自分の一部として考えられるようになるのが早かったのだと思う。悲しみや孤独に飲み込まれている時、そこから一人でに抜け出すことは難しい。誰かの言葉や、何かのきっかけがその人にちゃんと届かなければ、ますますそれは深刻になってしまうかもしれない。だから、タイミングも必要な気がする。航は父に失望してしまったけど、父は父なりに自分に余裕のない時に心を閉ざしている息子を不用意に傷つけたくなかったのかもしれない。その時のことを正直に話し過ぎて結果的に傷つけてしまったけど。離婚が成立して気がゆるんだのかな。それぞれに希望の見える結末で良かった。朔哉のお母さんも、あのお父さんとだったら大丈夫な気がします。安易に飼育して途中で勝手にそれを放棄することの残酷さも伝わってきます。
レビュアー 1045834
心を優しく包んでくれる物語。
さみしさに溺れそうな3人の若者が、
お堀で出会った異形の外来魚“ガー”に
自分を重ね、誰かを投影して、
思い入れと絆を深めていきます。
重すぎる過去、すれ違う家族、
そして大切な人との別れ。
それぞれの抱える闇の奥深さに
胸を衝かれ、一気に引き込まれました。
彼らを見守る例の御仁も魅力の塊。
ビックリするような行動の理由が
まぶしくて、差し伸べる手も温かくて
大ファンになりましたよ。
彼らが、“ガー”最大のピンチに
やばい計画を実行するくだりでは、
さらに感情を持って行かれました。
何このドキドキの奔流は!
そして、せつなさの向こうに
ほのかな希望が感じられる終幕。
もう、これしかないってラストですね。
それぞれが浮上してゆくさまを
心地よく想像しながら読み終わりましたよ。
おいそれといかない現実、それこそが真実。
誰しも孤独を抱え傷つきながら生きている。
さみしさと手をつないで
進んだっていいじゃないか。
物語からそんな想いが伝わってきました。
(対象年齢は11歳以上かな?)
メディア/ジャーナリスト 1036613
「選ばれし者」だけが見ることができる名古屋城のお掘にいる巨大魚「アリゲーターガー」。母の再婚相手との間に生まれた弟を置き去りにしたことで弟が事故で亡くなり、以来、自責の念にかられ続ける中学生の朔哉、ほっぺにあざがあり、新興宗教にのめり込む母の教えを守ることでいじめられ、小学校時代から不登校、引きこもりになっている航、両親を交通事故で亡くし祖母と二人きりで暮らしていたが、その祖母が亡くなり高校卒業後は何もしていない葉月、この男女3人が一匹のアリゲーターガーのいるお堀で出会い、次第に打ち解け、自らの閉ざされた殻を破って前に進んでいこうとする。「月」と「孤独」をテーマに書かれたこの作品は、心を静めてくれる月のもつ力が最大限に生かされ、また人間の誰もが抱えているかもしれない孤独さを外来魚として嫌われ者になっている一匹のアリゲーターガーにも反映させることで「孤独」と共に生きていくことの勇気を教えてくれる。アリゲーターガーを大切に思い、外来魚として捕獲されそうになるアリゲーターガーの命を必死に守ろうとする男女3人の行動が心強く、また彼(彼女)等を理解し、手を貸す大人の存在が有り難かった。とても素敵な作品だった。
教育関係者 468529
理科の授業で「外来種」について学ぶ時間はかなり盛り上がる。
どうやってきたのか、どうやって根付いていったのか。
そこに人間の関与、勝手な行動、無責任さなどが存在することを知り、子どもたちは怒るのだ。
そしてもうひとつ、いわゆる外来種というのはどの時代からの区分を言うのか、も疑問に持つと
面白いと思うらしい。
この本は、そんな子どもたちとのやりとりを思い出しながら、ひんやりとした空気を感じつつ
月あかりの下で読んでいるような、そんな気持ちになる本だ。
人間のエゴによってそこに存在させられてしまっているアリゲーターガーと、自分ではどうしようも
なかった環境によって追い込まれた孤独に身を置く人たち。
彼らの心のうちを水面から一緒に眺める読者である私は、手を差しのべることもできず、聞くことしか
できない。
話すことのないアリゲーターガーは、ひと言も発しないけれどやはり主人公である。
命について考える一冊である。
図書館関係者 584759
とてもよかった!惹かれたこの切なげなタイトルも、読後には静かな希望を感じた。自分の境遇に孤独や悩みを抱える3人のティーンズたち。城の堀で何処にも行けずひっそりと暮らす大型外来魚・アリゲーターガーに自身を重ね、夜な夜なガーに話を聞いてもらうことで、どうにか生き延びていた。そしてある時3人は、知り合いの年配男性に手伝ってもらって、ガー救出作戦に乗り出すが…。最初はガーと1対1だった対面も、3人が互いに話すようになってから、それぞれが段々自分の生きる道を前向きに捉えられるようになっていく展開が胸熱!おすすめ良書!
レビュアー 1049450
児童書ではあるのだけれど、大人用の小説の棚に並んでいてもよさそうな物語だった。
名古屋城の堀に住むアリゲーターガーをめぐる四人の物語だから、ところどころに名古屋弁が出てきた。
名古屋弁を美しいと思ったことはないのだが(当方、愛知県出身、バリバリの名古屋弁話者。外部からディスっているわけではない)、名古屋弁とは、実は、哀愁に満ちた、柔らかい言葉だったんだなあ、と気づかされた。
どこか武骨で、洗練された言葉とは、お世辞にも言い難いのだけれど、それが、不器用なほどまっすぐな四人の気持ちとうまい子と重なっていたと思う。
切ないような、寂しいような、とても素敵な話だった。
装画の色合いが、この物語の雰囲気をよく表していると思う。
レビュアー 1246685
タイトルが気になって読みました、山本悦子さん初読です。
捨てられ、行く場所のない外来魚・アリゲーターガーに引き寄せられるように、居場所のなさを感じている若者3人を出会わせる。
母の信仰が原因で不登校になった航、弟の交通事故死に責任を感じ自分を責め続ける朔哉、高校卒業直前に祖母が急死し天涯孤独になった葉月。
3人それぞれが背負っている苦しみについての描き方も巧いです。
外来魚として駆除されようとしているガー、何故か、この3人の前にだけ姿を現す。
そしてガーの前でだけは、素直に自身の苦しさを語れる3人。
ガーを助けるために無気力だった3人が動き出し、前向きになっていく過程をじっくりと書かれている点についても好感を感じられました。
図書館関係者 704885
名古屋城のお堀に住みついた外来種アリゲーターガーは、なぜか航、朔哉、葉月の前には姿を現す。心に傷を抱える三人の「孤独のにおい」をかぎつけて、孤独を食べに来てくれるのかな。いじめ、宗教二世、家族の死。アリゲーターガーが何かしてくれるわけではない。ただ、話を聞いてくれるんだ。心を開き、孤独や悲しみを受け入れ、前に一歩進む勇気をもらえる、静かで優しい月の光のような物語。