涙の箱
ハン・ガン
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刊行日 2025/08/08 | 掲載終了日 未設定
ハッシュタグ:#涙の箱 #NetGalleyJP
内容紹介
ノーベル文学賞作家ハン・ガンがえがく、大人のための童話
この世で最も美しく、すべての人のこころを濡らすという「純粋な涙」を探して
昔、それほど昔ではない昔、ある村にひとりの子どもが住んでいた。その子には、ほかの子どもとは違う、特別なところがあった。みんながまるで予測も理解もできないところで、子どもは涙を流すのだ。子どもの瞳は吸い込まれるように真っ黒で、いつも水に濡れた丸い石のようにしっとりと濡れていた。雨が降りだす前、やわらかい水気を含んだ風がおでこをなでたり、近所のおばあさんがしわくちゃの手で頬をなでるだけでも、ぽろぽろと澄んだ涙がこぼれ落ちた。
ある日、真っ黒い服を着た男が子どもを訪ねてくる。「私は涙を集める人なんだ」という男は、大きな黒い箱を取り出し、銀の糸で刺繍されたリボンを解くと、大小、かたちも色もさまざまな、宝石のような涙を子どもに見せた。そして、このどれでもない、この世で最も美しい「純粋な涙」を探していると話す。男は子どもがそれを持っているのではないかと言うのだが――。
「過去のトラウマに向き合い、人間の命のもろさを浮き彫りにする強烈な詩的散文」が評価され、2024年にノーベル文学賞を受賞したハン・ガン。本書は童話と銘打ちながらも、深い絶望や痛みを描き、そこを通過して見える光を描くハン・ガンの作品世界を色濃く感じられる作品です。
幸せな出会いが実現し、日本語版の絵はハン・ガン自身、長年ファンだったというjunaidaさんが担当。ハン・ガンが、「読者それぞれのなかにある希望の存在」としてえがいた主人公や、どこともいつとも特定しない本作の世界を美しく描き、物語とわたしたちをつないでくれます。
2008年、韓国で発売され、本国では子どもから大人まで幅広い年齢層に愛されている本作。ハン・ガン作品との出会いにもおすすめの一冊です。
「きみの涙には、むしろもっと多くの色彩が必要じゃないかな。特に強さがね。
怒りや恥ずかしさや汚さも、避けたり恐れたりしない強さ。
……そうやって、涙にただよう色がさらに複雑になったとき、ある瞬間、きみの涙は
純粋な涙になるだろう。いろんな絵の具を混ぜると黒い色になるけど、
いろんな色彩の光を混ぜると、透明な色になるように」
―本文より―
涙をめぐる、あたたかな希望のものがたり。
出版社からの備考・コメント
・雑誌「イラストレーター」の特集”夏の美術学校特集2025”で表紙と
挿画を描かれたjunaidaさんの特集でも紹介されています。
・月間MOE9月号でもご紹介されます。
・雑誌「イラストレーター」の特集”夏の美術学校特集2025”で表紙と
挿画を描かれたjunaidaさんの特集でも紹介されています。
おすすめコメント
担当編集者より:ハン・ガンさんが、だれもが自分の物語として読めるよう、どこともいつとも特定せず、美しく、シンプルなことばで紡いだ物語。Junaidaさんがその思いを受け、描いた絵は、物語の世界を静かに広げ、読み手へとつないでくれます。心のなかで大切にしている原風景を思わせる、美しい一冊です。 ★レビューでご指摘いただきました。「P28の最後の行に、「はやり」とありましたが、意味不明。「やはり」の間違い?」につきましては、校正後、「やはり」に直させていただいております。本日、見本で確認いたしました。
販促プラン
・POP/ポスターのご要望は下記、評論社販売部までご連絡ください。 ➡ hyoronsha-eigyo@hyoronsha.co.jp
・初版品切れの為、9月上旬に重版が決まりました!
詳しくはHPをご覧ください!
https://www.hyoronsha.co.jp/info/%e6%9b%b8%e5%ba%97%e3%81%94%e6%8b%85%e5%bd%93%e8%80%85%e6%a7%98%e3%81%b8/
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784566024892 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
ページ数 | 81 |
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NetGalley会員レビュー

涙を集めるおじさんの孤独と、純粋な子どもの純粋さゆえの未熟さというものが描き出されているのかな、と思いました。涙をこらえることを覚えた子どもは、少しだけ強さを手に入れて少しずつ色彩のある涙を流せるようになるのかもしれない。美しい涙は見た目だけのものではなく、その人自身がにじみ出た美しさのことなのかなと思いました。表紙の雰囲気と、本文の描写の美しさに惹きつけられます。完成した本を手に取るのが楽しみです。

装画のjunaidaさんのファンなので、この本は必ず手にしようと心に決めていました。
しかも物語はハン・ガンさん。なんという嬉しい一冊でしょう。
どんな挿絵になるのか、本の発売日が楽しみです。
涙を集めるおじさん。
そして、思いもよらぬ場所で涙を流す「涙つぼ」と呼ばれる子ども。
おじさんが飼っているのは、“青い明け方の鳥”。
見せてくれるのは、さまざまな色の涙。
ふたりは、ある人を訪ねていきます。
色や心情の描写がとても美しくて、読んでいるうちに心が優しくほぐれていきました。
まさに大人のための童話だと思います。
私は読みながら何色の涙を流していたのでしょう。
おじさんが集めているような、特別な色ではないですが、無意識に遠ざけてきた過去の出来事を思い出し、ゆっくりと涙がこぼれました。
「涙つぼ」と呼ばれるその子は、きっとこれから、喜びや悲しみ、怒りや戸惑い、たくさんの感情と向き合いながら、大人になっていくのでしょう。
複雑な心があるからこそ、涙は美しいのだと思います。

泣くこと、自分の感情をあらわすことを大事にしたいと思った物語でした。読み進んでいくうちに、物語の世界が頭の中に広がり、心が静かに揺れ動きました。紙の本になったとき、ゆっくりとページをめくりながら、文章と挿絵を味わいたいと思いました。

P28の最後の行に、「はやり」とありましたが、意味不明。「やはり」の間違い?
セリフが子どものイメージと合わないところも。
この子は男の子だと思ってたんですが、女の子の言葉みたいだったり。
他の人のセリフももう一度読み返したほうがいいような気がします。
すみません、おせっかいなレビューで。
お話はおもしろかったんですが。

とても不思議な物語でした。涙を集めている男と涙がたくさん出る子ども。
自分自身年齢とともに涙もろくなってきましたが、子供の頃は単純なことで涙を流していた気がします。悲しかったり、悔しかったり、恥ずかしかったり。
純粋な涙は美しく、人の心を動かします。涙が流れなくとも、心の中で泣いている人は涙を流しているのと同じです。

もしかしたら、長いお付き合いになるかもしれないと
根拠のない自信をもって手にした80頁あまりの本を わたしはここ数日ずっと気持ちに携えている
終わったはずの物語の世界へ性懲りもなく戻って その度に違う箇所に嗚呼嗚呼と声が漏れる
日常ではない遠い想定場面を 感じ入ろうと気持ちを静粛に保つ
涙に色?生涯泣いたことがないって どんな人生?
お互いが交わす言葉の端々に滲み出るものを 私はなんと持ち合わせていないのだろうと哀しくなった
「泣いちゃダメ!」という言葉をたくさん聞いて大人になった人の話が、胸を打つ
どうして?と思う他者の行いを黙って受ける
それを留めておくか流すかは委ねられた
わたしはわたし自身のために読んであげようと思う
声をだして
もしかしたら、長いお付き合いになるかもしれないと
根拠のない自信をもって手にした80頁あまりの本を わたしはここ数日ずっと気持ちに携えている
終わったはずの物語の世界へ性懲りもなく戻って その度に違う箇所に嗚呼嗚呼と声が漏れる
日常ではない遠い想定場面を 感じ入ろうと気持ちを静粛に保つ
涙に色?生涯泣いたことがないって どんな人生?
お互いが交わす言葉の端々に滲み出るものを 私はなんと持ち合わせていないのだろうと哀しくなった
「泣いちゃダメ!」という言葉をたくさん聞いて大人になった人の話が、胸を打つ
どうして?と思う他者の行いを黙って受ける
それを留めておくか流すかは委ねられた
わたしはわたし自身のために読んであげようと思う
声をだして
鍛えられよう 立ち向かう勇気を 背中を押された
私がつぎに流す涙は 何色なんだろう

家では、すぐに泣いてしまう子供でした。
涙には様々な名付けられない想いがくっついて、流れ出すことで心が落ち着いていたんでしょうか。
涙つぼと呼ばれる子に幼心を思い出してしまう。
涙を集め旅をする不思議なおじさんと青い鳥との出会いは、好奇心とちょっぴりおっかない気持ちも合わさって
惹き込まれます。
辛く悲しい時の印が涙とするならば、それが現れないと...人の心は複雑で不可思議。
いろんな輝きを持った美しい結晶と、人間の可笑しみの詰まった物語でした。
民族博物館に青い首の長い涙壺が展示されているのですが、見る度にこれからハン・ガンさんのこの物語を思い出すと思います。

涙を流すのは、悲しかったり、つらかったりする時が多いけれど、ビックリしたり、嬉しかったりして涙を流すことがあります。でも、なぜ涙が出るのかわからないのって、心がいつのまにか揺れ動いてしまうからなのでしょうか。
世間では、泣いちゃいけないって信じ込まされている人がいて、それが自分に無理を強いているということなのだと気づかない人もいます。あの男の人は、そういう人を助けるために働いているのでしょうか。
「純粋な涙」が、心のつかえや、汚れを落としてくれるのでしょうか?
涙は心を洗うもの、なのかしら?

心が綺麗で真っさらな涙つぼちゃん。
涙を集めるおじさんとの旅は、さまざまなものを自分の目で見て、耳で聴いて、実際に感じて、涙つぼちゃんの心を豊かにしてくれます。その様子があたたかく、私の心にもたくさんのものが降り積もりました。
そして最後のお爺さんとの出会いは、涙つぼちゃんに新しい涙を与え、その心を成長させてくれる。愛に溢れ光に満ちたラストでした。
優しく語りかけるような物語が心に沁みる、美しい一冊。

junaidaさんの美しい表紙絵に惹かれて読むのを決めたが、残念ながらゲラ段階では装画はないのですね。ハン・ガンさんは初めて読んだが、童話らしい透き通った雰囲気を纏った文章だった。「涙つぼ」とあだ名付けられた少女が、涙を売る不思議なおじさんと出会い、旅をするお話。おじさんと一緒にいる青い明け方の鳥が随所に可愛らしく幻想的な印象を残す。個人的には涙の影の話が素敵だと思った。重ね重ね装画がないのが残念だが、装画がないからこそ、どんな装画が飾られるのか、一層想像をたくましくしながら読むことができたのは良かったのかもしれない。出来上がった絵本を手に取るのが楽しみだ。

すべてのことに涙を流す「涙つぼ」。涙を集めて歩く「黒いおじさん」は、その涙を「純粋な涙」ではないと言う。やがて「涙つぼ」は泣けない「子ども」となり、「黒いおじさん」と一緒に旅に出る――「純粋な涙」を求めて。
そんな、大人のための童話。
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「涙つぼ」が涙を流すのは、心が震えたとき。葉が日差しにきらめいた瞬間や、どこからか笛の音が届くとき、近所のおばあさんが頬をなでてくれたとき。世界をそのまま感じ取ることのできる、そんな透明な心だからこそ、涙は自然にあふれ出すのだと思った。
「黒いおじさん」が「涙の箱」から見せてくれた涙の一粒一粒――それは、生きている場面そのものの感情が詰まった、美しく澄んだものだった。でも、「黒いおじさん」が探している「純粋な涙」はこれらとは違う。それは「自分が泣いていることにすら気づかず流す涙」だと言う。
「涙つぼ」は、頼まれても涙を流せなくなった。自分の涙が“純粋”でないことを知ってしまったから。「黒いおじさん」は謝り、去ろうとする。その誠実さが、かえって胸を打つ。
だからこそ、泣けなくなった「子ども」は、「純粋な涙」を探す旅に出ることに決める。両親がいつも笑っていられますように――そんなささやかな願いと共に、自分の涙の意味を知りたくて、そして「心の居場所」を求めて。
泣けない理由は、自分の涙が「純粋な涙」と思っていたものが、実は“寂しさ”に近いものだと気づき、恥ずかしく感じたからだろう。だからこそ、その頭を撫でてやりたくなった。「そんな涙も大切だよ」と伝えたくなった。
「黒いおじさん」が、いかに「純粋な涙」を求めているかは、「空が涙を流してらっしゃる」と雨に敬意を込めて語る姿からも伝わってくる。そして旅を続ける中で、「子ども」は次第に喜びや笑いも知っていく。それはきっと、喜ばしい変化なのだと思った。
旅の終わりで出会うのは、悲しみを抱えながらも泣けない「お爺さん」。「黒いおじさん」がもたらした涙達によって、長い苦しみの末にようやく涙を流す。喜びの涙さえも。涙は「感じること」そのものであり、立ち直りや新たな一歩のためにも必要なものなのだ、と実感した。
更に、「泣いてはだめ」と抑え続けた涙が影にあふれ、「お爺さん」の顔の影に泉のようにたまっていく幻想的な場面。「子ども」の目を通して見たその情景は、痛々しくもどこか懐かしく、あたたかく、ただただ圧倒されるばかりだった。
そして旅立つ「お爺さん」が吹く笛の音色で、「子ども」の涙と青いウグイスのさえずりがよみがえる。清められた心で響くその音は、優しさと慈しみをもたらしてくれたのか。
「子ども」はまた涙を流せる「涙つぼ」となったが、以前とは違う。喜びや愛も知った涙は、どんな色とも異なる美しい輝き。でもまだ「完全な涙」ではないことを、自分は「黒いおじさん」が語る前にわかってしまっていた。「純粋な涙」とは、無垢でなく、すべてを経験し包み込んだ涙のことなのだから。
この旅の終わりに、「黒いおじさん」が黒ずくめの理由もわかってしまった。彼もまた深い悲しみを背負って「純粋な涙」を探している。だからこの姿なのだと。
別れの場面で、初めて涙をこらえる「涙つぼ」。そうやって、自分の影と一緒に、一歩ずつ「純粋な涙」へ近づいていく。その先にある再会を、心から願いながら、読み終えた。

強い言葉というのは良くも悪くも印象に残る。ハン・ガンさんの紡ぐ言葉は美しく、どこか儚げだ。
目が覚めた時に良い夢を見ていたという記憶はあるが、どんな夢だったのかぼんやりとしか思い出せない。そんな感覚に似ている読後感だった。
junaidaさんのファンなので、挿絵も楽しみです。

涙とは何か。感情とは何か。大人になって忘れてしまった「なぜでもなく、ただ涙がこぼれる」感覚を、思い出させてくれる物語です。
美しく、やわらかく、ひとしずくの余白が、読む人の心にそっと染み込んでいきます。
子どもはもちろん、大人の胸にも響く一冊です。朗読にも向いていそうだな。

とても幻想的で美しい物語だった。
涙という物は、いろんな理由で流れるものだと改めて思ったし、泣かないからといって、その人が悲しんでいないわけでもない、ということもわかった。
他人にはわからない、本人にしかわからないことがあるよなあ、と。
残念ながら現段階では挿絵を見ることができなかったのだが、これで挿絵が着いたら、素晴らしい本になることだろうと思う。

なんて素敵なお話なんでしょう。涙を箱に詰めて売り歩くおじさんと常に涙が出てそのわけもわからない少年の旅。涙には数限りない種類があることを少年は聞き、そしてそれを自分の心で感じ取ることができるようになる。涙を堪えることの意味も、より美しい涙への問いかけも少年の中に芽生えてくる。少年の涙の色を語るとき、絵の具が混じれば黒色にどんどん近づくがいろんな光が混じればどんどん透明な色になるんだよとおじさんは言う。人とは違う特性を持つ子どもがさまざまな体験を通して、この涙のように色を変えながら強くなり自分自身の在り方を見つけ出していくのである。原石を磨くと言う言葉はよく聞くが、心の中の一番弱く繊細な部分をあらわにする涙を題材に紡がれた物語の温かさに深く胸を打たれる。鳴けない鶯、涙を流せないお爺さん、彼らに起こった奇跡もまたこれ以上にないドラマであり人と人とが繋がれる証として信じていける。
ハン・ガンさんの作品は初めて読んだが本当に心の奥深くにいつまでも残るような作品だった。小川洋子さんの作品に似た不思議な世界のなんとも言えない温かさを感じることができた。ぜひ他の作品も読んでみたいと思う。

とてもふしぎで美しい物語でした。
涙つぼちゃんが家族には伝えずにおじさんについて旅に出てしまったのは心配になりましたが、読後は充足感があります。junaidaさんがどのような装画をつけられているのか、紙の本で拝見するのが楽しみです!

涙がでることが、大人になればなるほど恥ずかしいことのように思われるのはなぜでしょうか
自分の感情をコントロールできない人だと思われてしまうのでしょうか
鳴くのをやめたウグイスのようにいつからか泣かなくなった、泣けなくなったなという人に読んでほしい作品です。
そして泣けないことを冷たい人間のように言われて悲しんでいる人にも。
当たり前に存在すると思い込んでいる世界の美しさに涙したくなる、美しい一片の詩のような、大切な人に贈りたくなる一冊でした。
junaidaさんの挿画もとても楽しみです。世界の広がりのような、ひとりがみんなでみんなでひとつのような作品や細かなところまでモチーフが盛り込まれている作品、多彩な色がそれぞれに尊重しあっている作品がとてもとても好きです。(NetGalleyでは未公開)

岡村何某さんが歌っていたあの歌 涙の数だけ強くなれるよ。涙。最近泣いてないな。職業から小2の子供達は よく泣く。ケンカ、気持ちが上手く伝えられない。校舎内で迷子。運動会で負けた。弁当忘れた。笑いすぎた。なんか生きてるな〜 と 強く感じる。教室のという パワースポットで 今日も 元気を もらっています。

美しくも可愛らしい細密画を描かれるjunaidaさんの絵がきっとこのお話の魅力をぐっと上げてくれるに違いありません。実物を手に取るのが待ち遠しい作品です。涙の性質によって色が変わるという発想は、自分が子供の頃考えていたことでもあり、興味深く読みました。ハン・ガン作品の入門にピッタリかと思います。

涙は、感極まって流れるだけにあらず。様々な感情・状況、或いはおよそ言葉にならない感受性の底から殆ど自覚無く湧き出ることもある。子どもの涙は純粋か。泣けない大人の苦しみは如何ほどか。涙を集めて旅をする黒服の男の登場には、摩訶不思議な神秘性が怪しさを上回り、どんな時にも涙を流す"涙つぼ"と呼ばれる子どもへの、深い受容さえうかがえる。ファンタジーは現実世界に根ざしており、色や音、光と影、時間の流れや情景など描写の隅々まで表現の澄んだ美しさが映像化して心に広がり残る。この世界観にjunaidaさんの装丁・挿画は楽しみ過ぎる。

涙を流してばかりいるこども、涙を集めるおじさん、涙が流せないお爺さん。ハン・ガンが描く大人に向けた童話は、涙涙というものはなんなんだろうと問いかけてくる。いろんな悲しさや喜びや、感情の昂りから溢れてくる。それはとても美しいものだと語りかけてくる。NetGalleyでは挿画はないが、完成した本を見るのが楽しみになる。

カバー絵が素敵で興味を持った。去年ノーベル賞(文学)を受賞した作家が、2008年に書いた物語。
短編で、すぐに読めてしまうお話だけど、きれいな涙を思い浮かべながら読むと、その時間がとても豊かになる。
登場人物はごくごく少ない。途中出会うお爺さんは可哀想な経験をしているけれど、きっとこれからの人生は少しだけ明るくなる。
涙の箱を持つおじさんについて行ってしまう涙つぼ、どうなることかと思ったけど、それぞれがいるべきところに向かっていくから良かった。
涙つぼのお母さんが流す涙のいろが印象的。

私が一時期関わっていた、当時小学3年生の発達障害のある男の子。その子の流す涙の粒が大きくて、そして目からキラキラと溢れ出てくるのがとても綺麗で、つい、その涙に見惚れてしまったことを思い出しました。
人の涙を見て、綺麗だなんて思ったことがありませんでしたが、あの時、私は「純粋な涙」を見たのではないか?と、ハン・ガンさんの「涙の箱」を読んで感じました。
子どもが影の涙の箱を開けるのはいつ、どんな時なのだろうか?開ける時は来るのだろうか?そんな思いにふけっています。
素敵な「大人のための童話」でした。

涙に込められた諸々の感情やことばにできない思い、そういったものが成分となってさまざまな涙の色や形が出来上がること、興味深くテキストを追いました。
涙つぼと呼ばれる子どもの涙を集めされ欲しいといった黒い服の男は、子どもにいろいろな涙を見せ、そして、最も純粋な涙を欲した。
純粋ということばの上面だけを理解していたわたしが恥ずかしくなった。
純粋とは何も混じっていないという意味ではない。色なく透明という意味でもない。
もっともっと深い、力強い人間の尊厳に関わるものが濾され、圧縮され、込められているのだとわかった。
泣くのを堪えられるようになった子どもの変化は、これからもっとさまざまな方向へと心を向けていくのでしょう。
Junaidaさんの挿絵とあらば、紙の本でぜひ読み直したいです‼︎

涙は感情の表現。涙の量は心の豊かさ。感情の発露に涙はとても大切な役割を果たすが、上手く流せない人もいる。溜め込んでしまえばさらに苦しく人間性まで歪めてしまうかもしれない。逆に繊細過ぎて泣き虫な子もいる。そんな人たちに手を貸す涙の行商人。メルヘンの中でちょっと理知にすぎるところもあったがとても美しい話だと思った。

本書を読んで、涙とひとことで言っても色々あるんだなぁと改めて思った。悲しい涙もあるけれど、嬉しい時の涙もある。感動して出る涙、そして嘘の涙。涙が思わぬ時にあふれ出てしまう女の子が涙を集めているという男と出会い、旅に出るという物語。涙を集めている男は女の子の涙が欲しくて来たのだが、女の子は、何故かなかなか涙が出なくなり、旅を続ける。その男が連れている青い鳥も、きれいな声を持っているはずなのに、何故か声をまだ男は聞いたことがないという。男は涙を買おうと待っているある老人のところに女の子と一緒に訪れる。そしてその老人の過去と、涙を集めている男がどうして涙を集めているのかが、徐々に明らかになっていくのだ。女の子は、その旅を終えて、また家へと戻っていくのだが、たぶん前のように人と違う自分を恥じたりすることはないのだろうと思う。本書の最後に、作者がどうしてこの物語を思いついたのかということが書いてあった。それもまた現実なのかどうかと思うほど不思議な話でもある。涙っていったいどんなものなんだろう。きれいで無垢なイメージがあったけれど。そして悲しい時、うれしい時、人は涙を流すのだけれど、そこにある浄化のようなイメージも心に浮かんだ。色々なメッセージを含んだとても素敵な一冊だった。

ことあるごとに涙をこぼす「涙つぼ」と呼ばれる子ども。
ある日、涙を集めているというおじさんが村を訪れる。
特別な、純粋な涙とは?
からかわれて、家族からも持て余されていた子どもの成長の物語。
不思議で美しい物語を、挿し絵とともに読めるのが楽しみです。

ノーベル賞作家ハン・ガンの書いた「童話」(大人向きだが)なので極、薄い本。ちょっと長めの短篇小説。残念ながら画家junaida (ジュナイダ、1978-)の描いた挿絵が見れないので、刊行されたら再度、読んでみたい。テーマは「涙」、美術品でガラスや陶器でできた「涙壺」というものもあり、それだけで期待できる。また小川洋子の連作短篇集「耳に棲むもの」と似た不思議な物を蒐集・販売する話という意味でも面白かった(目と耳という意味でも対になっている)。短篇小説らしく「純粋な涙」というものの正体は「お預け」ではあるが成長物語という側面から、これはこれで良いと思う。泣いてばかりいた子が真っ黒い服を着た男を介し泣いたことがない老人と出会う。著者の作品を読むのは二作目だが先に読んだ「別れを告げない」と真逆のようでいて通じるものがあるような気がした。要は涙を流すだけでは駄目だし涙も流せないようなのも駄目なのだ。飛躍していえば対立する、分断された、右と左、両方の人たちに、本書の感想を聞いてみたい。

涙つぼちゃんと呼ばれるほど涙を流す少年の前に現れた涙を箱に集めるおじさん。
純粋な涙を探すおじさんとともに少年は旅に出ることを決意。
そこで出会ったのは涙を流すことができないおじいさん。
ハンガンによる寓話。
小川洋子さんのような静謐な物語。
人を救うための涙、そしてその物語。

静かで透明で純粋。
大人になって子どもに読み聞かせをすることも終え、童話を読む機会も
なくなりましたが、大人になったからこそ読みたいと思える一冊に出会えたことに嬉しく思います。
大好きなJunaidaさんの挿画を見ることが出来なくて残念ですが、きっとハン・ガンさんの純粋で
美しい文章にそっと寄り添っているのでしょう。
いろいろな感情を表している『涙』がキラキラと輝いて周りの人、モノ全てを照らしてくれますように。

ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンの童話。
「涙つぼ」と呼ばれるその子は、些細なことで涙を流した。
芽吹いた葉を見ては泣き、笛の音に泣き、生まれた子犬を見ても、壁にかかった影を見ても泣く。
いつしか周囲の人々はその子を心配しながらも、疎ましく思った。
ある日、特別な涙を探しているというおじさんと出会う。
自分の涙の意味を知りたいと思った「涙つぼ」は、そのおじさんについて村を出る。
この物語を読んで「自分は最近いつ涙を流しただろうか」と思った。
嬉しい、悔しい、感動、怒りでも涙が出る。
その涙も純度の高い感情の結晶のように思う。
それを著者は繊細に表現していると思う。
ラストは泣き終えた後のような…自分の感情に一区切りつけたような気分になった。
なかなか泣かなくなった大人にこそ読んでもらいたい。

ノーベル文学賞作家がえがく、大人のための童話ということで、興味を持って読んでみました!
私には、純粋な涙は出せないなぁと感じつつ、「私たちの涙が結晶になった時、どんな色をするのだろうか。」とかなり気になりました。まぁ、確認する方法はありませんが💦
私も、主人公のように、純粋な感情を持ちたいなと思いました。
やはり、子どもの頃の純粋さは、大人になるにつれて消えていってしまうような気がする。
自分も、昔の純粋さを改めて思い出し、さまざまな価値観にとらわれることなく、真っ直ぐに生きていきたいと考えさせられた1冊でした!

なんだか温度感というか匂いが小川洋子さんに似ているように感じました。
透明感と、硬質さと脆さのバランスあたりでしょうか。
涙の結晶化自体は新しいアイディアではないですが、
その表現の美しさ(といってしまうとなんだか安っぽいですが)は、
作者特有のものに思えました。
小鳥の存在と描き方もステキ。

特別な涙を流す「涙つぼ」と、涙を集める黒い男。黒い男の黒い箱の中身は、宝石のような涙のコレクション。なんて美しい描写だろう。
集めた涙を売り歩く黒い男と、男と出会ったときから涙が出なくなった涙つぼは旅に出る。旅先での出会いから知った美しく純粋な涙の秘密とは?
柔らかく繊細なイラストが描く世界観と、易しい言葉で語られるのに奥深い寓話。多くの人に受け入られ、愛される普遍的な物語だと感じた。

よく泣く子供と、涙の売買をしている不思議なおじさんの二人旅。綺麗な青い鳥というペットを伴っている。優しい世界観です。その涙を目に入れると、それが身体に影響を・・・。不思議な世界観でした。童話に近い内容でした。

哀しみから零れ落ちる涙は、やすらぎに満ちてとけていく。枯れてしまった潤いはどんなに苦しんでも戻ることはない。雨が降り続いているのに、流れていくこともできない。消えた一雫、そこに込められた願いは、眠る思いは、固く結ばれた包みを紡ぎなおして、解き放たれる。きっと輝きを取り戻す、あの日を忘れないために。赤、青、黄、それぞれの感情が混ざり合うと何色になるのだろう。読者にそっと語りかけてくる。明け方には青い鳥がきらめいている。どんな涙色なのだろう。影に灯る光は、この世界を何色に染めるのだろう。感性を刺激される一冊。

文章はハン・ガン、挿絵はjunaidaという、夢のように美しい本。涙を集める老人が探しているのは、この世で最も美しく、すべての人のこころを濡らすという純粋な涙。涙なんて普通は悲しいもののはずなのに、そんなにも待ち望まれているのは、涙は凍りついた哀しみを溶かしてくれる救いでもあるから。『すべての、白いものたちの』ではさまざまな白が印象的だったが、こちらはきらきらと美しい色をまとう小さな涙、抑えきれずこぼれ落ちる涙が美しい。泣くことは弱さではない。泣かないことは強さではない。優しくて美しい、希望の物語でした。

まず、表紙に引きつけられた。
静かな音楽が耳に心地よく流れているような感覚。
読み終わった後、この世に戻ってきたような感覚。
読書していた感覚がなく、まるで夢を見ていたような、夢から覚めたときのような読後感。
不思議な体験でした。

心に沁み入るお話です。
いつも泣いてばかりいる子どもの所に、ある日涙を集めているという1人の男の人が訪れます。この出会いから子どもが成長していく様が清々しいです。また、涙の素晴らしさと、人が心に秘めた辛い思いとその解放について考えさせられました。読んだ後には爽やかな気分になれたのが驚きでした。

泣くこと、涙を流すこと。
心の自然なふるえを、それが表れることを、なぜ恥とするのだろう。
些細なことにも心を動かされ、涙してしまう子ども。周囲から揶揄され、孤独を抱えた子どもが出会ったのは、涙の結晶を集める人だった。
まだ年端のいかない子どもにとって唯一の居場所でありながら、ありのままの自分を受け入れてはくれなかった故郷。涙を集めて旅をするおじさんと共に、子どもは生まれ育った地から新たな場所へと踏み出していく。たくさんのものを見て、たくさんのことを感じて、たくさんの人の涙の物語を知って。これまで知る事も考える事もなかったとりどりの経験が、子どもの心に満ちていく。
たくさんの涙を経験してきた人のための、物悲しくも美しい、愛に溢れた童話。
涙が込み上げるほどの悲喜こもごも。涙には、その人の想いが、経験が詰まっている。
私が、そして貴方があの時流した涙は、何色だったろう。
『純粋な涙』の一節を、ずっと心に留めて生きていきたい。