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ぬすびと 表紙

ぬすびと

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刊行日 2026/03/16 | 掲載終了日 未設定


ハッシュタグ:#ぬすびと #NetGalleyJP


内容紹介

「母がそちらに行っていませんか」

あなたとは住む世界が違った。

だから決別の言葉を握りしめて生きてきた。

20年後にかかってきた電話が、すべてを変えるまでは。

かつて喫茶店で働いていた鳴海は、ひょんなことから気難しいお坊ちゃんの子守役として南雲家へ呼ばれた。

菓子メーカーの創業者である南雲家で過ごすほどに、自分の暮らしとの違いを実感する日々だった。

それでも年上の奥様と、お坊ちゃんの栄輝だけはみょうに鳴海に懐いてくれたのだった。

しかしあの日、絆は砕かれた。奥様から「二度と会わない」と突き放されたはずなのに、20年を経て大人になった栄輝から、突然電話で問われる。「母がそちらに行っていませんか」と――。

若く無鉄砲だったわたしと、美しく慎ましかった奥様の過去と現在。

ノスタルジックでほろ苦くも、きっとページをめくるたびに力を取り戻す。

傷も老いも刻んだ体で、どこまでも自由に踊り出すための物語。


〇著者プロフィール

寺地はるな

 1977年、佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。20年『夜が暗いとはかぎらない』が第33回山本周五郎賞候補作に。同年度の咲くやこの花賞文芸その他部門を受賞。21年『水を縫う』が第42回吉川英治文学新人賞候補作に選ばれ、第9回河合隼雄物語賞を受賞。23年本屋大賞『川のほとりに立つ者は』がノミネートされる。

近著に『そういえば最近』『リボンちゃん』『ナモナキ生活はつづく』『世界は君が思うより』などがある。

「母がそちらに行っていませんか」

あなたとは住む世界が違った。

だから決別の言葉を握りしめて生きてきた。

20年後にかかってきた電話が、すべてを変えるまでは。

かつて喫茶店で働いていた鳴海は、ひょんなことから気難しいお坊ちゃんの子守役として南雲家へ呼ばれた。

菓子メーカーの創業者である南雲家で過ごすほどに、自分の暮らしとの違いを実感する日々だった。

それでも年上の奥様と、お坊ちゃんの栄...


出版社からの備考・コメント

※発売前作品のため、読書メーターやブクログなど外部書評サイトで発売前にレビューを投稿することはお控えください。
※書影は仮のものです。
※ゲラは校了の前のデータにつき、修正が入る可能性がございます。

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出版情報

発行形態 ソフトカバー
ISBN 9784575248746
本体価格 ¥1,700 (JPY)
ページ数 200

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タイトルが表す意味はとても深い。この物語の中に幾つかの盗みが出てくるがそれぞれが象徴するものは、あやとりの毛糸のように絡まっている。ある意味では盗まれた心を取り戻す物語であると言って良いかもしれない。
資産家であるが故に心を閉ざさざる得ない親子の心を開いたのは何も持たない姉弟と姉の恋人である。そして一人一人がとても魅力的である。特に恋人の暖の語る言葉が秀逸だ。名前の通り関わる人を暖かくしてくれる。本に囲まれた狭い部屋は彼の本質を表していて、言葉の力を感じさせる。自分を律するために言葉を受ける小さな器を増やしていくのだと、ある場面では発してはいけない言葉があるのだと彼は言う。言葉は武器にも癒しにもなる、よく言う台詞だが心に染みて感じさせる力が彼にはある。
物語の構成に加えた人物の魅力。横に置いて時々ページをめくり台詞を読み返してみたい。

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人が恵まれて見える時がある。
互いに違うはずなのに、見える部分だけで羨む。鳴海というフィルターを通して、人に期待しなければ傷つくことはないと予防線を張っていた若い頃の自分を思い出した。

子どもの頃からずっと、思うにならぬ生き方をしてきた彌栄子さんにとって、鳴海は憧れの自由を手にしているように見えたのかな。
自分らしく生きたいと願うことを諦めていただけで、本来、人は強く生きられるものなのかもしれない。
小さな一歩が大きく軌道を変えていくこともある。
私はこんな人だからと、誰かに決められるものじゃない。これ、かなり響いた!
自ら変わろうとすれば、いつだってリスタートできるんだとエールをもらえました。
傷つき、ひび割れた心さえ唯一無二。
ひねくれた性格も一周回ればフラットになって、なんだか愛おしいのでは?!
家族ではない、友人でもない。
会わなくても、それでもその人らしく居てくれればよいと思える人がいるなんて幸せだ。

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寺地はるな先生の小説には、いつも、メモしたくなる文章があるが、この『ぬすびと』は、一冊丸ごと忘れられない、忘れたくない作品となった。
 スポーツジムの清掃の仕事をしている鳴海は、ある人からの電話で泥棒と言われるのだが、いったい何を盗んだのか?それがまず気になってストーリーを追っているうちに、自分や他人を尊重すること、自立することなどについて深く考えさせられる。
 相変わらず人間を鋭く、そして暖かく描く寺地先生、出会いに感謝、です!(読んだ人にはわかる、このフレーズ!)

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#寺地はるな さんの新刊「#ぬすびと 」NetGalleyにて読了。
人によってはあまりにもささいに思えること。夜中に手をとりあって踊ってしまったり、その人だけが自分を見る眼差しが違って面白がってくれたり。それだけで心の中に宝物が宿る。それを物語でみせくれた。寺地さん。やっぱり凄い。

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まずタイトルに驚いた。ぬすびと。つまり泥棒?と思いながら読み進めていったけれど、この本は「泥棒」というより「ぬすびと」がぴったり合う話だった。
盗んだのは単純にネックレスだけじゃない。ぬすびとが複数人いるけど誰も悪者ではなかった。それが果たして良かったことなのか、私にはまだ判断がつけられない。

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ぬすびとのくせに ぬすびとなんでしょ
ぬすびとによる ぬすびとのための 三度泣き小説

やったことないけど
聖書を通読したような 滝に打たれたような
脳内清浄 視界夜凪 心中春暖 

こういう大人になれるなら 
わたしは喜んで ぬすびとと呼ばれる

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「ぬすびと」という少し不穏なタイトルに反して、とても優しい物語だった。主人公とある製菓会社の一家との一年にも満たない関係。誰が誰から何を盗んだのか。ぜひ読んで確かめてほしい。最後は自分でも驚くくらい温かな気持ちになっていた。

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今回の話はタイトルもドキッとするし、どういう状況になるのか読めなくて、いつもより更に不安な気持ちが大きかった作品でした。私はこの不安から抜け出せるのだろうか、と思いながら一気に読み終えました。まるで主人公に乗り移ったのかと思うぐらい、何かが足りないような寂しいような不安な気持ちにさせられながら読み進めていき…そしてラストに繋がった瞬間、両手を握ってもらえたような安心感に包まれました。
寺地さんの作品はいつも何かが欠けているような、けれどすぐ隣にいそうな人たちが息づいている。だからこそ読むたび心がほんのりと満たされたような心地になれます。

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寺地はるな先生の作品が大好きなんですが、もちろんこの「ぬすびと」も大大大好きな作品になってしまいました!今まで読んだ寺地はるな作品のなかで、一番です。ぶっちぎりの一番!(ついに白ゆき紅ばらを超える作品が…!)
そしてこの作品を読んで気付いたことがあります。
私は寺地先生の、心を雑に扱わない、蔑ろにしない。誰もが味わったことのある、うまく言葉にできない苦い感情を、当たり前のように理解してくれている。そんな文章が大好きなんだ!と。
この作品は、女性ならではの社会や家庭での理不尽な仕打ちや、私なんてと諦めてしまう気持ちに、少しのユーモアを交えながらも芯のある声で、「違うよ」、「大丈夫だよ」、「あたたも出来るよ」と、励まし、よろよろとしていた背中を支えてくれます。
鳴海や暖の声が、力をくれます。
ラストは年齢も性別も住む世界も関係なく、手を取り合うことができる鳴海と彌栄子さんの姿が眩しくて眩しくて…
俯いていた背中がすっと伸びるような読後感。心が満たされる物語でした。

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知らない番号からの電話に出ると、久しぶりに聞く声が「母がそちらに行っていませんか」と問う。
声は母親を心配していながら、鳴海へ対して敵意はむき出しのまま、あなたは泥棒なんだから、と。
あの頃の鳴海はどこか人生に達観めいた諦めを含ませながら、若者らしい真っ直ぐさもあった。ひょんなことから、友人のエミリ経由で手にした新しいバイトは地元の有名な製菓会社の家の息子の子守りで、何故か、お坊ちゃんの栄輝と南雲家の奥様である彌栄子に好意的に受け入れられる。穏やかとはいえないけど、手のかかる栄輝を中心に慌ただしくも賑やかで、慎ましい彌栄子からの信頼も得て充実した日々だった。あんな事が起きるまでは。

読みながら、豊かな人生ってなんだろう。人が生き続けるために必要な“豊かさ”って、目の前にある時にちゃんと気づけるだろうか。何度も何度も考えてしまった。
どう考えたってあの頃に戻れるわけではないけど、それでも、そっと大切に守り続けた、守りたいと思える人に出会えたことは彌栄子さんにとって豊かで幸せな時だったんだろうな、と。
肉親に振り回され、時代に振り回されたように感じる鳴海も、寄り添える暖に出逢えたのは僥倖だろうし、間違った時の、相手を傷つけてしまった時の修正のチャンスを逃さない眩しいくらいの素直さがこの物語を明るく灯しているな、と感じました。

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暖の言葉にハッとさせられることが何度もありました。特に「言葉は、人を試すために使っちゃいけないんだよ」は胸にきました。それぞれの20年を思うと辛いです。皆の幸せを願わずにいられません。いつも3冊ほどを並行して読むのですが、これは一緒に読み出した本を忘れるくらい一気に読んでしまいました。

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お金持ちの弥栄子さんと雇われる側の鳴海。立場は大きく違いながらも少しずつ相手のことを理解し距離が縮まっていく。でもやっぱりふたりの間には見えない溝みたいなものが存在している。立場の違いからくる嫉妬、それぞれの優越感、劣等感。人間は生まれながらに平等ではない。ひとの心の複雑さを思った。それから20年がたち郷愁のような思いがわきあがってくる。あぁ、またいい作品に出会えたと思いました。

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この物語はきっと自信がなくなった時、心に寄り添ってくれる。お守りみたいに。自分に味方が出来たような気持ちになった。複雑で生きづらい社会だが、自分と人とは違うということを前提にした繋がりは息苦しくなさそうだ。マウントを取ろうとしたり、上手くやろうという気持ちを優先させない方がいい。主人公の鳴海の対等な立場で人との関係を紡ぐ姿は読んでいて気持ちが良かった。ゆっくりでも前に進もう、と勇気がもらえた。上手くいかなかったらまた、何度でも読見直して寄り添ってもらおう。

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人は意識的であれ、無意識であれ、なにかレッテルを貼りたがる。
男だから、女だから、年齢と自分ではどうしようもないこともある。
学歴や服装といったものまで、フィルターをかけられ他人から見られている。
あとさきを考えない若い頃の鳴海の言葉や、人との距離感も良かったが、20年の時を経た姿も良かった。
鳴海が大きく変わったわけではない。でも鳴海に出会ったことで確実に変わった人たちがいる。
一歩踏み出すのはいつだって怖い。
本当の気持ちを言うのも怖い。
だけど、鳴海のように言葉をかけてくれる人がいたら、新しい世界へと歩いて行けそうな気がした。

好きな言葉がたくさんあったが、一番好きな言葉は「言葉は、人を試すために使っちゃいけないんだよ」という言葉だ。
私もきっと試すために言葉を使われたら、立ち直れないほどショックを受けると思う。
たくさん言葉を知っていても、言葉で簡単に人を傷つけることもできる。
寺地先生の作品はいつだって、お守りのように寄り添ってくれる。
この作品も、私のお守りとなり、自分自身の言葉の使い方に悩んだときや、迷ったときの道しるべとなるだろう。

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読み終わって、うまく言葉にならない思いが溢れて苦しくなって、胸を押さえてうぐうぐ泣いてしまいました。

寺地さんは私が日々うまく言葉にできないけれど、それはおかしいのではないか?と思っていることを、とても分かりやすく言葉にして読者に届けてくれる。
読めばいつも心救われ、勇気づけられる。今回もそうでした。

「ぬすびと」という不穏なタイトルから想像していた物語とは少し違うのだけれど、
やはり「ぬすびと」の話で、ハラハラさせられる展開でストーリーもとても面白かったです。

今回の話で一番好きは所は、主人公鳴海のパートナーが鳴海の弟に、本を読むことで人間の器の数が増えると感じていると語るところ。
共感する部分がたくさんあったのですが、読みながら、わかる!わかるよ!心の中で叫んでいました。

今までの寺地作品の中で、読みごたえメッセージ性ともに、一二を争う作品だと思います。
多くの人に届いてほしい、そんな作品です。

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SNS「いいねいいね」ネタを見ると
ニヤッとしてしまう私は、そう、
はるな中毒者。

そんな私のような
寺地はるな先生の大ファンでなくても
虜にしてしまうパワーを秘めた一冊でしたよ。

主人公は45歳の一見パッとしない女。

バイトにしがみつき
自分をすり減らすように生きてきた彼女が
思わぬ人からの連絡をきっかけに
誰かと満たされる時間へいざなわれます。

序盤のざわつきを孕んだメッセージに
グッと引き込まれましたね。

あやしげな女の影もあいまって
「真相は一体?」ってなりますもん。

タイトルの「ぬすびと」という語への
引っ掛かりも没入に効きました。

20年も前の人間関係が疲弊したモブを
特別へ仕立て上げてゆくさまは滑らか~。

だから最初と最後で主人公の印象が
ガラリと変わっているのに
読み返してみて驚きましたよ。

ダンナの人間力には目を見張った!

やさしいだけでなく、人を差別せず
怒るべきところで怒るさまも魅力的でしたよ。

人を試すような言葉はいけないって
私も肝に銘じました。

人間の器を語るエピソードも素晴らしいです。

主人公の人生に最も影響を与えたのは
弟かもしれませんね。

人のこらえ性のないところへの耐性が
幼少期から染みついていたからこそ
ダンナやあの坊やの特性と向き合えたと思うので。

幸せの基準ってなんだろうって
あらためて感じました。

経済的には対照的なファミリーが
幸せさでは真逆に見えたから。

自分に足りないもののせいで
お互いに嫉妬する瞬間もありましたし。

けれど、だからこそ、
必死で足掻き続けてきた人に訪れる
まばゆいひとときに私も満たされましたよ。

(対象年齢は14歳以上かな?)

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「ぬすびと」という思わずドキリとしてしまう驚きのタイトルに、
読み始める前は戸惑いを覚えました。

しかし、ページをめくるたびに、その印象は静かにとけていきました。

日々を生き抜くことに精一杯な20代の鳴海と、菓子メーカー創業者の妻として暮らす40代の奥様。

生きてきた道も、立っている場所も、
まったく異なる2人が出会い、これまで知らなかった世界が
少しずつ開かれていく様子に静かに引き込まれていきました。

そして、性格も考え方も違うからこそ、
言葉を重ねるたびに新たな感情が芽生えていく彼女たちの様子に、
愛しさがあふれました。

しかし、ある出来事をきっかけに、
今までの関係性が思わぬ方向へと進んでいく。

その、どうにもできない現実の前で立ち尽くす姿に、
やるせなさと切なさが胸いっぱいに押し寄せました。

離れ離れになっていた20年越しの絆がもう一度むすばれ、
大切な心を取り戻していく物語。

怒ってもいい。
叫んでもいい。
泣いたってかまわない。

心に蓋をしてきた本当の気持ちが解き放たれていくラストに、
凍っていた心が、ゆっくりと温もりを取り戻していくようでした。

読み終えた今も、
自分らしい自由の翼で飛び立つことを支えてくれる、
やわらかな優しさに包まれています。

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物語は唐突に始まる。状況説明などなくとも、ぐっと世界に引き込む力があるのが寺地さん。
パートで働く40代の女性・鳴海の元にかかってきた電話
「母がそちらに行っていませんか」20年前に縁を切られた相手からだった。
20年前、5歳の時に面倒をみていた少年・栄輝は、老舗の跡取として生まれたが手のかかる子で、今まで子守何人もが辞めてしまったという。
履歴書を偽装し、向かった面接の場、泣き喚く栄輝の心を掴んだ鳴海は、シッターとして働くことになる。
高齢の母・彌栄子は、弱く、自信がない。創業家の娘でありながら、女にはあとは告げないと年の離れた元従業員との結婚。
自由な鳴海と弱い彌栄子の対比がとても良い。
彌栄子が思い悩むことをひょいと簡単に手に取る鳴海、鳴海に感化され、新しいことにチャレンジし始める彌栄子。
亀の歩みのようにゆっくりだが、彌栄子が変わろうとする姿も良かったです。
彌栄子の夫が倒れ、鳴海は彌栄子たちから引き離される。
鳴海が知らなかった彌栄子の20年間の歩みが徐々に見えてくる。
亀はゆっくりながらも、しっかりと歩み、女社長となり、不倫をしていた夫のことなどもはや必要とはしていなかった。
それが例え遺骨であっても。
鳴海が蒔いた種が彌栄子と栄輝の中でしっかりと根付き、育っていたことが解っていく様子がとても良かったです。
じんわりと全体が見えてくる構成、読者の心の中に灯が灯され、あたりがゆっくりと見えてくる、素敵な作品でした。

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誰が「ぬすびと」なのか、なにを盗んだのか。
鳴海が高級スポーツクラブで清掃係として働いていたので、そこで何かを盗むのかと思って読み始めたのだが、全く予想を裏切るストーリーだった。

鳴海の視点からの物語なのだけれど、彌栄子さんの成長物語のように思えた。
彌栄子さんが鳴海に出会って、「なにもできないわたし」から、少しずつ小さなことに挑戦していき、自分でできることを増やしていく。
そして、菓子メーカーの社長になる。
夫から、精神的に自立することにもなる。

もちろん、そうなる彌栄子さんには、鳴海との関係が大きかったわけだから、彌栄子さんの成長物語であるのと共に、鳴海と彌栄子さんの、階級を超えた心のつながりの物語でもあるのだろうな。

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一気読みでした。

寺地はるなさんの小説は、心のどこかでモヤモヤしているものを言葉にして可視化してくれる。
日常で小さなささくれのようにちょっとひっかかりつつも、振り返ることなく通り過ぎてしまう何か。
本当は、そういったことをないがしろにせず、きちんと向き合ってくるべきだった...と気づかせてくれる。
だから、なにげなく感じる1行にハッとさせられる。

この小説の登場人物たちは、経済的な豊かさ貧しさに関係なく、「家族」というものに縁が薄い人たちだ。
社会とのつながりを学ぶべき基板が脆弱なまま大人になり、それぞれ生きづらさを抱えている。

主人公の鳴海と彌榮子、境遇の全く違う二人が関わった時間は決して長くはないが、互いを信頼している。
「シスターフッド」と言えばわかりやすいのかもしれないが、この甘くない世界に小さな希望をともしてくれる。

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登場人物たち、特に主人公で語り手の鳴海が、自分を取りまく物事について複数の視座を持っているのが独特。そして、だからだろうか、彼らは奇妙に優しい。
 物語後半以降の突拍子もない展開にはわくわくさせられた。

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古い記憶は遠ざかるだけで消えることはないのだ。記憶の蓋が一気に開いたように、鮮やかに過去の2人が目の前に現れた。
何もかも手にしている彼女と何も持たない彼女が、お互い惹かれ羨み、共に時間を過ごす。
ふたりの関係に名前をつけることに意味はないけれど、きっと特別で大切な存在だったんだ。
ぬすんだものは何だったんだろう。時が経ち、ふたりが再会した時、モノクロだった景色に色が戻ったような気がした。
大好きな本がまた1冊増えた。

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タイトルが不穏に感じて、なかなか読み始められなかったのだけど。
全くイメージの違うお話でした。
寺地はるなさんの物語には毎回気づきがあるし、力づけられます。

作中、ある登場人物が読書に目覚めます。
なぜなら、「言葉」をたくさん知ることで自分が変われるかもしれないと気づいたから。
以前、何かの番組で、暴力を振るう子供にその気持ちを表す言葉を学ばせたら暴力が減ったもしくはなくなった、てやっていました。

本筋ではないかもしれないけど、
読書の大切さも教えてくれる物語です。

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製菓会社社長夫人・彌栄子、その息子・栄輝、栄輝の子守りで雇われた鳴海。共に過ごした時間は、栄輝にも、2人にも、互いの奥底に、深く人間的魅力の種を植え付けた。会わなくなった20年の間、彌栄子の紆余曲折・波瀾万丈の人生を支え、栄輝が自身を見つめ大人になることを助け、鳴海に忘れ得ぬ親子の姿を焼き付け、雇用関係を超えた結びつきをもたらした。大切な人、欠けがえのない存在は、日常で育まれる。真に相手を思う言動が、時に正反対に映ったとしても、いつかそれを理解し受け取れるということ。泣いたり笑ったり、共に心のまま振る舞える瞬間が永遠の宝。また寺地さんに泣かされた。珠玉のストーリー!

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不穏なタイトルです。寺地さんの新作はこれまでの作品とはひと味違うように感じました。
鳴海が21歳のときに身代わりで子守りバイトに行った先で出会った5歳の栄輝と母親の八重子さんと家政婦の三枝さん。
三人に受け入れられていく過程を楽しく読みました。
鳴海がネックレスを盗もうとしたと疑われたとき、鷹揚な八重子さんの対応と大胆なごまかし方、「うまくいったわね」と喜ぶ姿に育ちの良さが現れていました。
鳴海に子どもの頃の出来事や、兄の死で会社の後継者となった経緯、栄輝が懐いていることへの嫉妬めいた気持ちなどを話すシーンが印象的でした。自身をあさましいと言う八重子に返した鳴海の言葉「自分のきれいじゃない気持ちに向き合える人は、あさましくないです」が素敵すぎます。寺地さんの作品からはいつも大切にしたい言葉をもらいます。
25年後の鳴海の生活、暖くんとの日々や昔は問題児っぽかった弟との交流に心が癒されます。
タイトルの「ぬすびと」は何を指しているのか見つけられなかったので再読します。

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「ぬすびと」っていうことは、誰かが、誰かの、何かを盗んだ話なんだろうな〜不穏だな〜と思って読んだけど、不穏どころかじんわりあったかくなる話でびっくり。

主人公の鳴海の、我慢できず他人に怒ったりする人間らしいところがすごく好きだ!


言葉ひとつや行動ひとつが、
知らぬ間に誰かの可能性や勇気や行動する原動力を
奪ってるのかもしれない。
奪われた側は、盗まれたと感じているかもしれない。
そういう意味ではみんな「ぬすびと」だなぁとも思ったりした。

それでも人は変われるし、前を向けるし、
そのきっかけは家族や友だちだけでもないし‥と、
いつどんなことでなりたい自分になれるのかわからないな、
出会いを大切にしたいなぁ〜と、
前向きになれる本だった!✨

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ドキッとするタイトルでした。
多分だいたいの人は縁遠い言葉のはずだけど、住む世界が違うと思えば簡単に人をこの言葉の檻に閉じ込めてしまえるのかな。

生まれ育って生きている環境って本当に人それぞれで、考えていることも望んでいることも、簡単には想像できない。
なのに自分の物差しでわかった気になって、あとから、思慮が足りなかったと居てもたっても居られなくなることが、後悔にのたうち回ることが、私にもたくさんあります。
住む世界が違うと何度も線引きされた、彌栄子さんも忠雄も栄輝も、鳴海と同じ切実さで、きっとそれぞれ自分に足りないと思うものを求めていたのかなと思いました。

あの時はどうしようもなかったすれ違いを、今ようやく擦り合わせて向かい合える。
人生の先には、もしかしたらこんな瞬間が待ってるかもよって囁いてくれるような、素敵な作品でした。

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過去の痛みや、「住む世界が違う」という断絶を乗り越えていく二人の女性の姿に、静かな感動を覚えました。
20年という歳月は残酷なようでいて、実は二人の心を熟成させるために必要な時間だったのかもしれません。かつては守られる側だった人が強さを手に入れ、対等な人間として向き合う場面には胸が熱くなりました。
特に、すべてを受け入れて海辺でステップを踏むラストシーンは、映像が浮かんでくるほど美しいです。
読み終えた後、自分の老いや古傷さえも少しだけ愛おしく思えるような、優しく力強い余韻が残る素晴らしい作品でした。

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寺地さんファンで今までたくさん読んで、毎回心に刺さるものがありますが今回もやられました。

いろんなカタチの家族がある。
裕福だから幸せでもないし、貧しいから不幸せでもない。
過去に置いてきていた忘れ物を取り戻すような。複雑に絡んでいた心情を解きほぐすような。
読了感がとてもよかったです。

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